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採用内定を取り消したい!労務トラブル回避の方法

Q.当社では、この度、新卒者に対して採用内定を出しました。
ただ、内定を出した新卒者の中に、当社の経営を批判する口コミを自身のSNSに流している方がいることが発覚しました。
当社としては、この内定者の採用内定を取り消したいのですが、可能でしょうか?

A.SNSにおける発言や投稿について、その内容、目的、態様において、貴社に具体的損害を生じさせるものであるのか否か、また、これらの損害がSNSの投稿によって生じたものといえるのかどうか等、詳細な検討を要します。

投稿がいわゆる誹謗中傷に当たるようなものであれば別ですが、例えば会社の業務改善に対する提言のようなものであれば、その目的や内容において正当なものとも考えられ、このような発言自体が会社の具体的損害に結びつくとは必ずしもいえず、内定取消しは無効となる可能性があります。

そのため、まずはその内定者と話し合い、なぜそのような経営批判をSNSであえて行ったのか理由を確認し、貴社がどのような損害(迷惑)を被ったのか等を説明するとともに場合によっては、自主的に内定辞退をするよう説得することがよいでしょう。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「採用内定を取り消したい!労務トラブル回避の方法」
について、詳しくご解説します。

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採用の自由と採用拒否が違法となる場合

使用者が労働者を採用するということは、その労働者と労働契約を締結するということです。

したがって、契約法の基本原則である「契約締結の自由」として、使用者には「採用の自由」が認められます。

具体的には、どのような募集方法で、どれだけの人数を採用するか、またどのような基準で誰を選択して採用するかなどについて、使用者は原則として自由に決定できます。

もっとも、採用の自由にも「法律その他による特別の制限」が有り得るとされ、無制約に認められるものではありません(三菱樹脂本採用拒否事件・最大判昭48・12・12民集27巻11号1536頁)。

具体的には、法律上明確な制限規定があればその制約を受けることとなります。
また、明確な制限規定がない場合でも、公序良俗違反(民法90条)として採用拒否は違法と判断される場合もあります。

このように採用の自由が幅広く尊重されるものの、採用拒否が違法となる場合、一般的には不法行為(民法709条)による損害賠償請求が認められます。

なお、採用拒否が違法となる場合でも、労働契約の締結自体を強制することはできませんが、その例外として、採用拒否が不当労働行為(労働組合法7条)に該当する場合に、労働委員会が使用者に採用を命じる救済命令を出すことは有り得ます。

採用内定

採用内定の法的性質

採用プロセスの実態は個々の事例ごとに多様です。
しかし新規学卒者については4月入社を想定した一括採用の慣行が定着しています。

これによれば、学生は在学中から就職活動を開始し、使用者は採用を決定した学生に対して「採用内定」を通知します。
これに対し学生側が入社誓約書等を提出し、その後内定期間を経て学校卒業と同時に入社します。

ここでいう「採用内定」とは、正式な内定通知のことを指し、大卒採用者の場合、10月1日以降に出されることが多いです。

この「採用内定」通知よりも前になされる採用担当者からの口頭などによる採用が決まった旨の簡単な通知を「内定」と俗に言うこともありますが、法的には「内々定」(後述→3)と言って区別します。

内定取消しは内定者に大きな不利益をもたらすため、法的救済を求める前提として、採用内定は法的にどのような意味をもつのか問題となります。

この点について裁判例は、採用内定通知、承諾書の提出、採用内定式などを経た場合、採用内定によって労働契約が成立すると解しています。

大日本印刷事件・最判昭54年7月20日

大学卒業予定者の採用内定により就労の始期を大学卒業直後とする解約権留保付労働契約が成立したものと認められた事例です。

大学卒業予定者が、企業の求人募集に応募し、その入社試験に合格して採用内定の通知を受け、企業からの求めに応じて、大学卒業のうえは間違いなく入社する旨及び一定の取消事由があるときは採用内定を取り消されても異存がない旨を記載した誓約書を提出し、企業においては、採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることを予定していなかった等の事実関係のもとにおいては、企業の求人募集に対する大学卒業予定者の応募は労働契約の「申込」であり、これに対する企業の採用内定通知は右申込に対する「承諾」であって、誓約書の提出とあいまって、これにより、大学卒業予定者と企業との間に、就労の始期を大学卒業の直後とし、それまでの間誓約書記載の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したものと認めるのが相当である、と判示しました。

この判例に従うと、内定取消しは労働契約の解約(解雇)を意味するので、社会的に相当な理由がなければ内定取消しはできません(労働契約法16条)。

したがって、社会的に相当な理由のない内定取消しがされた内定者は、内定取消しの無効を主張することで労働契約上(従業員として)の地位の確認を請求することができます

また、違法な内定取消しに対しては、不法行為としての損害賠償請求も認められます。

このように採用内定の時点で労働契約が成立したとする判断は、新規学卒者だけでなく、中途採用者の場合でも該当します。

もっとも、どの時点で労働契約が成立したかは、あくまで個々の事案ごとに個別に判断すべきものであり、採用内定と呼ばれるものならば必ず労働契約が成立する訳ではないことに留意すべきです。

したがって、採用内定の法的性質の決定にあたっては、①契約書の文言、②採用内定以外に労働契約成立のための手続が別途予定されていたかなど、当該事案における事実関係に即しながら、契約締結過程や予約にすぎないのか、それとも労働契約を成立させるものなのかを判断していく必要があります。

内定取消しの可否

既に述べた通り、内定通知により労働契約が成立していれば、内定取消しは労働契約の解約(解雇)ということになり、内定取消しにも解雇権濫用法理(労契法16条)が適用されます。

通常、内定期間中の労働契約は、内定者側において不確定要素が少なくないため、通常の解雇の場合とは異なり、特別な事由に基づく解約権が留保されていると解されることが多いです。

前記の大日本印刷事件でも、採用内定通知書や誓約書に記載されている取消事由に基づく解約権が留保された始期付「解約権留保付」労働契約が成立していると解されました。

この場合、取消しの可否は、この留保解約権の行使の適法性によって判断することになります。

留保解約権の行使の適法性は、
①内定取消事由が「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実」であって、
②内定取消しが「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合」に当たるかどうかで決せられます。


SNSで内定先企業の評判を落とした場合

それでは、ご質問にあるように採用内定者が、SNSを使って内定先企業の評判を落としてしまった場合には内定取消しはできるでしょうか。

この点について、実務ではSNSにおける発言や投稿についても、その内容、目的、態様において、現に会社に具体的損害を生じさせるものであるのか否か、また、これらの損害がSNSの投稿によって生じたものといえるのかどうか等、詳細な検討を要します。

投稿がいわゆる誹謗中傷に当たるようなものであれば別ですが、例えば会社の改善に対する提言のようなものであれば、その目的や内容において正当なものとも考えられ、このような発言自体が会社の具体的損害に結びつくとは必ずしもいえず、「客観的に合理的で社会通念上相当として是認できる事由」があるとはいえないものと考えられます。

同様に、経営情報等についても、その情報の秘匿性や重要性の程度が低い場合や、投稿の趣旨、目的、態様に照らして、正当性が認められるような場合には、「客観的に合理的で社会通念上相当として是認できる自由」があるとはいえず、内定取り消しが認められない可能性があるものと思われます。


経歴や資格の詐称があった場合

経歴や資格の詐称があった場合、採用内定は取り消すことができる場合は多いです。

例えば、資格が必要な仕事で、内定者が採用試験時に「資格を持っている」と申告したのに、実際には取得していない場合などが該当します。資格の有無が仕事の可否に直結するからです。


研修不参加を理由に内定取消はできないか

後述します通り、内定期間中には業務命令として研修に参加させることはできません。

そのため、研修不参加を理由として、内定取消しをすることはできません。

会社の対応としては、研修不参加者についてはその理由を確認するというのが第一になり、その理由如何によってその後の対応を決めるということになるでしょう。

仮に学業以外の私的理由であるとか、単なる遊びである場合、また、後日、研修不参加者が述べていた不参加の理由と事実とが違ったことが判明した場合、内定辞退に向けた話し合いなどを行う際に内定者を説得する有効な材料となります。


能力不足を理由に内定取消しができるか

研修に参加してもらった結果、あまりに内定者のレベルが低いというケースにおいてはどう考えるべきでしようか。

この点、一般論としては、研修結果、指導状況、その後の反省の態度から見て吏正の余地なしというレべルであれば内定取消をする余地もありますが、例えば能力不足の正社員を解雇するケースを念頭において考えた場合、正社員に対しては再三の教育指導を行うことが求められます(エース損害保険事件・東京地決平⊥3・8・1O、セガエンタープライゼス事件・東京地決平11・I0・15など)。
そうすると、まだ任意の同意による研修教育が姶まったばかりであり、いまだ労働契約の始期が到来しておらず、本格的な研修も受けていない内定者については、教育指導の程度や能力不足の程度は賎しく問われるものと考えられます。
そのため、内定者に対して能力不足を理由とする内定取消を行う際の判断は慎重にとらえ、「どうしても内定取消を検討したい」というケースでも、まずは退職勧奨のように合意による内定辞退を目指して条件交渉をするというステップを踏むべきでしょう。


悪い噂があった場合

採用内定後、前職での「悪い噂」を理由とする内定の取消しが争われたケースについて「採用内定を一旦留保し、調査、再面接後、再度本件採用内定をした経過に照らすと、本件採用内定取消が適法になるためには、内定者の能力、性格、識見等に問題があることについて、採用内定後新たな事実が見つかったこと、当該事実は確実な証拠に基づく等の事由が存在する必要がある」とし、本件内定取消しの原因となった「悪い噂は、社長が内定者を再面接する前の噂と同じものであり、新たな事実ではないこと」や、「当該噂が事実であると認めるに足りる証拠が存在しないというべきであり、会社の本件採用内定取消は、この点からも理由がない」ものとして、内定取消しは無効とされています(オプトエレクトロニクス事件・東京地判平16・6・23労判877号13頁)。


内定者の健康状態が悪いとき

採用内定後に、今後の勤務に耐えられないと予測されるほど著しく健康状態が悪化した場合には原則認められると考えられます。

今後の勤務に耐えられるか否かは、医学的裏付けに基づいた客観的判断であることが必要となりますので、産業医に診察してもらう等を検討してもらうとよいでしょう。


採用内定後、内定者が逮捕されたとき

内定者が、相当程度に重大な犯罪行為を行った場合には、認められる可能性が高いと考えられます。

  • 内定取消しのまとめ
    卒業できなかった場合→◎
    虚偽申告の判明、健康状態の悪化、非違行為→△(客観的合理性+社会通念上の相当性)
    内定時に判明していた事情→×
    経営悪化→整理解雇に準じた判断(より厳格に判断される)

弁護士 澤田直彦

内定者のSNS投稿が「炎上」し、実際に企業イメージを損なわれる等の損害が発生した場合、上記考慮要素を検討した上で、内定取消の可否を事案に応じて判断することになります。

もっとも、その際には、内定取消が有効か否かは、裁判所の判断に委ねられることが多いため、実務的には、退職勧奨と同様に、解決金(支度金)の提示を行うなど内定辞退に向けた条件交渉を行うべきケースが多いといえるでしょう。

また、この交渉を有利に進めるためにも、内定時においてSNS利用に関する誓約書(内定時誓約書あるいは入社時誓約書)を取得しておくことも検討し、内定後研修などにおいても、SNS利用に関する注意点等を講義した実績を記録しておくことが重要になると考えられます。

一方、SNS投稿の内容が業務内容そのものであったり、守秘義務に反している場合には、業務そのものに対する処分となりますので、秘密漏洩の程度に応じて、処分を検討することになります。

内定期間中の法律関係

採用内定によってすでに労働契約が成立したと解される場合でも、内定期間中は、通常、労務の提供や賃金の支払という関係が直ちに開始される訳ではありません。

したがって、内定期間中の労働契約は、一般的に「始期付」解約権留保付労働契約と解されます。始期付とは一定の時期が到来することにより、法律行為の効果が生じることを意味します。

問題は、内定期間中に両当事者はいかなる権利義務を負うのかです。

これは、個々のケースごとに当事者間にどのような合意があったかという契約の解釈によって確定されます。

したがって、例えば、内定期間中に研修の参加(後述→4)やレポート提出に関する義務を負うかについても、当事者間でそのような明示または黙示の合意があれば、内定者は、学業に支障が及ばないなど合理的な範囲で、かかる義務を負うことになります(宣伝会議事件・東京地判平17・1・28労判890号5頁参照)。

労働基準法の適用に関しても、各条文の趣旨や性質に照らし、個別にその適用の可否が判断されるべきでしょう。
例えば労働時間について規制する32条以下など、その性質上就労を前提としており、労働者が就労していない時点では適用されない規定が多いですが、均等待遇原則(3条)や賠償予定の禁止(16条)など就労を前提としておらず、就労開始前の採用内定期間中から適用され得る規定もあります。

労働条件を明示すべき「労働契約の締結」(15条)の時期については、採用内定時に労働契約が成立する場合には内定の時点と解すべきです。

内々定

採用内定に至る過程の中で、採用「内々定」の通知がなされることも多いです。「内々定」の法的性質もやはり個々の事案ごとに事実関係に即して個別に判断する必要があります。

例えば、採用を確信させるような言動があり、他社への就職活動を妨げるような事実上の拘束があるような場合には、内々定の段階でも解約権留保付の労働契約が成立していると解されることが有り得ます。

しかし、新規学卒者の一般的なケースを想定する限り、「内々定」の後に「内定」という労働契約の成立のための手続の機会が予定されていること、また当事者も内々定の時点では確定的な労働契約関係に入ったとの認識を持っていない(他社との間で就職活動を継続している)ことが多いことを考慮すると、この時点では労働契約は成立していないと解されることが多いでしょう。

ただし、労働契約が成立したとは言えない事案でも、相手方に対し事情を説明せずにその信頼を損なう態様で内々定を取消した場合は、契約締結過程における信義則違反等を理由に不法行為としての損害賠償請求が認められる可能性はあります(コーセーアールイー〔第2〕事件・福岡高判平23・3・10労判1020号82頁)。

会社の立場としては、内々定を出したものの、取り消さざるを得ない場合、無用なトラブルを回避するべく、なぜ、内々定を取り消さなくてはならないのか丁寧に説明、内々定者の理解を極力得られるよう説得することが肝要です。

研修

内定が決まった後、その会社で研修を受けさせられるケースがあります。

内定は始期付解約権留保付雇用契約ですから、内定時点においては、未だ雇用契約の始期が到来しておりませんので、そもそも研修・課題の提出を義務づけることができるのかという問題があります。

この点については、労働契約の開始時期がいつからであるかという契約解釈が問題となりますが、一般的には、例えば内定前から会社が内定後の研修などについて説明しており内定者側はこれを理解した上で、特に異議を述べていない場合などは、研修参加につき明示又は黙示の合意が成立していたと解することができるでしょう。

このように、基本的には、入社前研修は業務命令権に基づく一方的指示として行うのではなく、内定者の同意によって行っているという整理になります。

この点は裁判例も、「効力始期付の内定では、使用者が、内定者に対して、本来は入社後に業務として行われるべき入社日前の研修等を業務命令として命ずる根拠はないというべきであり、効力始期付の内定における入社日前の研修等は、飽くまで使用者からの要請に対する内定者の任意の同意に基づいて実施されるものといわざるを得ない」としており、内定後・入社前に行われる研修については内定者の同意により行われるものと整理しています(宣伝会議事件・東京地判平17年1月28日)。

もっとも、仮にこの同意を内定前に得ていたとしても、新卒採用を前提とした場合、内定者はいまだ学生の身分ですから、基本的には学業を優先すべき立場にあります。

この点については、前掲宣伝会議事件においても、「新卒採用に係る内定者の内定段階における生活の本拠は、学生生活にあるのであり、原告も同様であるが、更に原告については、単に大学院の学士課程を卒業するにとどまらず、論文審査を終了させることが求められていた」ものであるとして、学業を優先させるべき考え方を示しています。

なお、個人のスキルや資格につながるものであれば、個人負担をすべき部分もありますが、会社の業務として研修を受けさせる場合の費用は基本的に会社が負担すべきでしょう。途中で退職した場合に、違約金のような位置づけで研修費用を請求するのは、退職の自由を侵害するので無効になり得ます。

内定辞退

「入社誓約書」を提出した後に内定辞退した場合、すでに企業と契約を結んだ以上、内定は一応学生も拘束しますが、退職の自由があるので、辞退も可能です。民法627条は、労働契約解約の意思表示をして二週間経てば、使用者の承諾がなくても解約は成立すると規定しています。また労働契約の不履行について、企業が損害賠償や違約金を定めることは、労基法16条で禁じられています。

そのため、期間の定めの無い労働契約は、理由の如何を問わず14日前告知で解約可能(民法627条1項)となっていますので、少なくとも入社日の14日以上前に内定辞退の申出があった場合、これに対して法的な手続きをとる(例えば損害賠償請求をする)ことは難しいといえるでしょう。

また、複数企業に入社誓約書を出すことは、両立不可能な労働契約でも結ぶこと自体は可能であるため、法的問題はありません。

しかし、入社式当日にすっぽかすなど著しく信義を欠く内定辞退は、損害賠償の対象になる可能性があります。一度結んだ契約の解除を申し出る場合は、企業に丁寧に事情を説明し、合意の上で解約を取り付けるべく心掛けましょう。

企業としては、莫大なコストと手間を掛けて採用内定者を選考・決定する以上、内定辞退というのは出来る限り避けたいところであるのはいうまでもありません。

確かに、企業が内定辞退をある程度想定して、実際の想定入社人数よりも多く内定を出すことはありますが、4月1日の入社式直前(例えば前日)の内定辞退や、入社日前日まで何の連絡もないままの内定辞退については何らかの対応をしたくなるというのが偽らざる本音というところでしょう。

しかし、企業としては、事実上の警告文、抗議文を送るといった程度の実務対応に留まざるを得ません。

まとめ

多くの企業では、内定者には内定期間中に近況報告書の提出や施設見学、研修などの一定の行為を行わせています。

これらの行為を業務命令によって命じることは、採用内定によって労働契約の効力が開始しているタイプの採用内定では可能ですが、入社日に初めて効力が発生する採用内定においては認めにくいです。

また、研修などが労働に該当すれば賃金が支払われるべきこととなります。

内定期間中の義務は、内定の際に明示するのが適切とされるため、その時点で、しっかりと契約書等を確認し、安易な同意をしないよう注意しましょう。

そのほか、内定後に事故に遭い、入社日までに退院できない、業績悪化により内定取り消しをしたら無効であると主張された等、内定に関するご相談は以外と多いものです。

ご相談事項がございましたら、お気軽にご連絡をいただければと思います。

新型コロナと内定取消

Q 今回の新型コロナウイルス騒動のため、売上げが相当落ち込み、事業規模の縮小も検討せざるを得ない状況です。そのような状況に鑑みて、4月に入社予定の採用内定者について、採用内定を取り消したいのですが、採用内定取消しを適法に行うことは可能でしょうか。

A 解約権行使が適法か否かに関する具体的判断においては、上述しましたように裁判所は概して使用者のなした取消しに厳しい態度をとる傾向にあり、経済変動による経営悪化に際しての採用内定取消しについても、整理解雇に準じた検討が必要となります。

コロナウイルス騒動によって企業にどのような影響が生じたかを含め、事実関係を確認する必要がありますが、経営悪化に際しての採用内定取消しを適法に行うためのハードルは、一般に高いと言わざるを得ません。

補償や職種変更を含めた代替案についても、検討すべきであると考えられます。

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退職勧奨、解雇、退職をした社員に対して損害賠償請求をしたい等の労務トラブルは近年多くなってきています。このような労務トラブルは交渉戦略を誤ると、裁判になる等して会社にとって大きな損害となる可能性があります。お早めに、労務に強い弁護士にご相談ください。

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