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監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の特徴と違い【IPOとコーポレートガバナンス2】

Q
上場準備会社は、最終的に監査役会設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社の3つの機関設計のいずれかを選択することになると伺いました。具体的にどのような機関設計なのか、違いも含めて教えてください。

A
上場するにあたり、会社法で定められた機関設計のルールに従い、機関の整備を行う必要があります。(詳しくは、コーポレートガバナンスとは?機関設計の基本について【IPOとコーポレートガバナンス1】の記事をご覧ください。)
監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社にはそれぞれ特徴があります。制度の違いも踏まえて、適切な制度設計を行う必要があります。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の特徴と違い【IPOとコーポレートガバナンス2】」
について、詳しくご解説します。

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はじめに

上場準備会社は、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社または、指名委員会等設置会社のいずれかを選択することとなります。
(詳しくは、コーポレートガバナンスとは?機関設計の基本について【IPOとコーポレートガバナンス1】をご覧ください。)

それぞれの機関設計について、詳しく見ていきましょう。

選択できる機関設計

監査役会設置会社

ア 監査役

監査役とは、会計分野を含む業務全般に関して取締役の職務執行を監査する機関です(会社法381条1項)。監査役の監査の目的は、法令定款違反行為の抑止にあります。そのため、適法性の観点からの監査が中心となります(適法性監査)。
監査役は、経営組織から独立し、独自の調査権限を行使して監査を行います。これを独任制といいます。
監査役の職務は、以下の通りです。

必要な情報を取得するために、いつでも取締役、会計参与、支配人そのほかの使用人に対して事業の報告を求め、会社の業務財産の状況を調査する権限を有します(会社法381条2項)
子会社に対しても、事業の報告を求めることができます(会社法381条3項)
取締役会に出席し、必要に応じて意見を述べなければなりません(会社法383条)
取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類等を調査しなければなりません(会社法384条前段)
各事業年度ごとに監査報告を作成しなければなりません(会社法381条1項後段)
監査役が、取締役による不正行為またはそのおそれ、法令・定款違反の事実や著しく不当な事実があると考えた場合には、遅滞なく取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会)に報告しなければなりません(会社法384条後段)。さらに、上記行為により会社に著しい本害が生じるおそれがある時は、取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます(会社法385条1項)。
監査役は、会社と取締役との間の訴訟において、会社を代表します(会社法386条1項)
【宮本】IPOとコーポレートガバナンス ②-1

イ 監査役会

監査役会は、監査役間の意思統一をし、組織的な監査を容易にすることを目的とする機関です。
監査役会は、3名以上の監査役で構成され、その構成員の半数以上は社外監査役でなければなりません(会社法335条3項)。つまり、最低でも2名は、社外監査役でなければなりません。
社外人材の登用については社外役員・取締役【IPOとコーポレートガバナンス3】の記事で詳しく説明します。
監査役会は、常勤の監査役を選定・解職し、監査の方針や会社の業務・財産状況の調査の方法、そのほかの監査役の職務の執行に関する事項を定めることができます(会社法390条2項)。
また、監査役・会計監査人の人事に関する決定も、監査役会で行います。さらに、監査役会は、取締役や会計監査人からの報告を受領します(会社法357条1項、2項,375条1項、2項,397条1項、3項)。
ただし、監査役会設置会社でも、各監査役の独任制が維持されています。
監査役会では各監査役の業務分担を取り決めることが多いですが、各監査役は、必要がある場合は自身の担当外の事項についても調査権限を行使できます。監査役会で決定された事項により各監査役の権限行使を妨げることはできません(会社法390条2項)。

【宮本】IPOとコーポレートガバナンス ②-2

指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社とは、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の三委員会を設置する会社です(会社法2条12号)。そして、指名委員会等設置会社においては、一定の会社の基本事項を除き、重要な業務執行の決定を取締役会から執行役に委任することが認められています(会社416条4項)。
各委員会は、取締役3人以上の委員で組織され、それぞれ社外取締役が過半数を占めることで、経営に対する監督機能を高めるほか、業務執行を執行役が担う事により経営の機動性が高まる効果も期待されています。
指名委員会は取締役の選任・解任に関する議案を決定し、報酬委員会は執行役及び取締役が受ける個人別の報酬内容を決定します。また、監査委員会は、取締役及び執行役の職務執行を監査します。

各委員会の権限
指名委員会 取締役の選任・解任に関する議案内容を決定します。
報酬委員会 取締役および執行役が受ける個人別報酬内容を決定します。なお。執行役が使用人を兼務する場合、使用人部分の報酬を決定することも可能です。
監査委員会 取締役および執行役の職務の執行を監査します。
【宮本】IPOとコーポレートガバナンス ②-3

監査等委員会設置会社

監査等委員会設置会社は、監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の中間的機関設計として設置された制度です。
監査等委員会設置会社では、監査等委員会が取締役会の中に置かれ、組織として監査を担当しています。監査等委員会の構成員は、3名以上の監査等委員たる取締役で構成され、過半数が社外取締役である必要があります。
また、監査等委員は、業務執行取締役を兼ねることはできません。

自ら業務執行を行わない社外取締役を複数置くことにより、取締役会の内部で業務執行と監督の分離を図るとともに、そのような社外取締役を中心とする監査等委員会が、監査機能を担いつつ、業務執行に対する監督機能を果たすことを予定した制度です。

また、監査等委員会は、適法性監査に加え、妥当性監査も職務内容とし、その職務執行は監査等委員会の決議に従って行われます。

指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社では、監査役を置くことはできません(会社法327条4項)。監査(等)委員会との職務権限の重複を避けるためです。
ただし、監査役と監査(等)委員会は、以下の点で異なります。

①監査(等)委員会による監査は、監査役による監査と異なり、取締役会が設ける内部統制部門を通じて監査を行うことが予定されています。
そのため、指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社では、大会社であるか否かとは無関係に、内部統制システムの整備が義務づけられています(会社法399条の13第2項、416条2項)。

②監査役は主に適法性監査のみを職務内容としています。監査(等)委員は取締役であることから、適法性監査に加え、妥当性監査も職務内容とする点が異なります。

制度の比較

2020年の東証1部全企業2172社のうち、監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の選択状況は、監査役会設置会社が1448社、監査等委員会設置会社が661社、指名委員会等設置会社が63社となっています。
参照 https://www.jacd.jp/news/opinion/cgreport.pdf

東証1部全企業における組織形態の割合(2020年)

【宮本】IPOとコーポレートガバナンス ②-4

監査役会設置会社がもっとも多いですが、近年監査等委員会設置会社も増加傾向にあることがポイントです。
各組織形態ごとの違いについて、細かく見ていきましょう。

取締役会決議における議決権について

3名以上の取締役で構成される取締役会が、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会のいずれでも設置されています(会社331条5項・362条1項)。

指名委員会等設会社や監査等委員会設置会社においては、監査委員や監査等委員は取締役(過半数は社外取締役)ですので、取締役会の決議における議決権を有しています。

一方、監査役会設置会社の監査役(社外監査役を含む)は取締役会の議決権を有していません。
このことは、監査委員や監査等委員が取締役会の意思決定に参加し、経営のモニタリング機能を発揮することができ、海外の投資家からも理解を得られやすく、モニタリングの強化と海外からの投資の誘引という観点から監査役より優れているといえます。

しかし、監査役は、取締役会で取締役の業務執行について、取締役会で意見陳述することにより、違法不当な業務執行を予防するという効果をもっています。

監査権限について

監査役会設置会社においては、3名以上の監査役で構成される監査役会が設置され、監査役の過半数は社外監査役でなければなりません(会社335条3項・390条1項)。

したがって、社外監査役と社外取締役の両者が併存することになりますが、指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社においては、社外監査役は設置できないことから、社外役員としての機能の重複はなくなり、人件費の負担を軽減することができます。

しかし、 監査役会設置会社の監査役(社外監査役を含む)は、自らが独自に監査権限を行使できる独任制の機関であり、指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社の監査委員や監査等委員は独任制の機関ではないため、単独の権限は限定されています。

監査役と比較して機動的な監査を行うことができない点が指名委員会等設置会社や査等委員会設置会社にとってはデメリットともいえます。

各委員会の設置について

指名委員会等設置会社においては、取締役会の役割は、極めて重要な業務執行の決定を行う以外は、取締役や執行役の職務執行に対する監督機能に特化されております。
また、社外取締役が過半数を占める指名委員会・監査委員会・報酬委員会を設置しなければなりません。なお、各委員会で決定した内容については、取締役会の決議があっても、変更することはできません。

一方、監査等委員会設置会社においては、社外取締役が過半数を占める監査等委員会を設置するだけでよく、監査等委員会が選定する監査等委員は、取締役の選解任および報酬等について意見を述べることはできると定められているのに対し、指名委員会や報酬委員会の設置は必要ありません。

ただし、監査役会設置会社と監査等委員会設置会社においても、コーポレートガバナンス・コードにおいて、指名・報酬などの特に重要な事項に関して社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである(原則4-10、補充原則4-10①)と提言されていることから、社外取締役を構成員とする任意の諮問委員会を設置して、柔軟な運営を行う企業が増加しています。


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