澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「賃料増額請求の弁護士費用~相場と抑える方法を徹底解説~」
について、詳しくご説明します。
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賃貸物件を所有している場合、時には入居者(=賃借人)と賃料を増額する交渉をする必要が出てきます。
自分で交渉してもうまくいかない場合は弁護士に依頼することも選択肢の一つですが、費用面で躊躇する方もいるかもしれません。
実際に弁護士に依頼するべきかどうかは個々の状況にもよるため、弁護士費用と依頼の効果を整理して考えてみましょう。
賃料増額請求における弁護士費用の詳細

令和7(2025)年現在、賃料増額請求における弁護士費用について、一律の基準はありません。
平成16(2004)年4月1日以降は、弁護士と依頼者との間で報酬を自由に定めることができるようになったためです。実際の費用は依頼先となる弁護士によっても異なることに留意してください。
ただ、多くの法律事務所は、かつて日本弁護士連合会が定めていた報酬基準(以下「旧日弁連報酬基準」といいます。)を参考にして弁護士費用の基準を決めています。そのため、弁護士費用の相場を知りたい場合、旧日弁連報酬基準を理解することで、概ねの相場を知ることができます。
以下では、旧日弁連報酬基準に基づき弁護士費用をみていきましょう。
弁護士費用の種類と相場
旧日弁連報酬基準によれば、賃料増額請求を含め、弁護士に依頼する際の費用としては以下の4種類があります。前述のとおり、旧日弁連報酬基準を一応の相場と考えることができます。
費用の種類 | 定義 | 日弁連の報酬基準(≒相場) |
---|---|---|
法律相談料 | 依頼者が弁護士に相談する際にかかる費用 | 初回 : 法律相談料 30 分ごとに 5000 円から 1 万円の範囲内の一定額 一般法律相談 : 30 分ごとに 5000 円以上 2 万 5000 円以下 ※ 初回無料で相談できる事務所もあり |
着手金 | 弁護士に依頼する際、最初に支払う費用 (基本的に一括払いとなり、結果にかかわらず発生する) |
〔訴訟事件の場合〕 事件の経済的な利益の額 (賃料増減額請求の場合は賃料増額分の7年分の額) 300万円以下 : 経済的利益の 8% 300万円超3,000万円以下 : 5% + 9万円 3,000万円超3億円以下 : 3% + 69万円 3億円超 : 2% + 369万円 ※ 最低額は10万円 |
報酬金 | 結果の成功の程度に応じて支払う成功報酬 (全面敗訴の場合は発生しない) |
〔訴訟事件の場合〕 事件の経済的な利益の額 (賃料増減額請求の場合は賃料増額分の7年分の額) 300万円以下 : 経済的利益の 16% 300万円超3,000万円以下 : 10% + 18万円 3,000万円超3億円以下 : 6% + 138万円 3億円超 : 4% + 738万円 |
実費 | 事件処理のために要する諸費用 (具体的には交通費 ・ 宿泊費や郵便費用が含まれる) |
1万 ~ 数万円程度 |
なお、実際の費用は依頼する弁護士により異なるため、事前に見積もりを出してもらいましょう。
また、案件によっては日当などの追加費用がかかることがあります。日当とは、弁護士が事件の処理のために、裁判所に出廷したり、遠方に出張したりするなど、時間的に拘束される場合に支払われる費用で実費の一つです。
なお、宿泊費や交通費は別途かかります。
実費につきましては、別記事「弁護士業務における『実費』について【直法律事務所】」もぜひご参照ください。
弁護士費用の計算方法
賃料増額請求の一般的な流れは以下のとおりです。
- まず、賃借人と賃貸人間で交渉をする
- 合意に至らなければ、内容証明郵便で賃料増額請求の通知を行う
- 通知を受けて協議を行う
- 協議がまとまらなければ、最終的には賃料増額請求の調停、民事裁判の提訴に至る
民事裁判の提訴にまで至った場合は、裁判所への出廷、主張書面の作成、資料の収集と証拠化など多大な労力が必要となり時間もかかるため、弁護士に依頼しないと難しいケースが多いです。
また、その前の段階であっても、交渉の代理やアドバイス、内容証明郵便の作成などを弁護士に依頼することができます。
では、賃料増額請求における着手金と報酬金の基本的な計算方法を、具体例も交えて解説しておきましょう。
旧日弁連報酬基準では、着手金や報酬の額を算出するにあたり、原則として経済的な利益を基準にしています。
賃料増額請求事件の場合「増減額分の7年分の額を経済的利益とする」と定められています。
なお、経済的利益とは「交渉、調停、審判、訴訟等により、最終的に獲得もしくは減額できる権利利益の合計金額」です。
たとえば、賃借人に対し、月額5万円分の賃料増額を求める事件を弁護士に依頼したとします。
この場合の経済的利益、および着手金は以下のように計算することが可能です。
着手金:420万円 × 5% + 9万円 = 30万円
そして、調停・訴訟を経て、月額5万円の増額で和解した場合、獲得できる経済的利益と報酬金の目安は以下のとおりです。
報酬金 : 420万円 × 10% + 18万円 = 60万円
賃料増額請求に関するその他の費用

賃料増額請求には、弁護士費用以外にもさまざまな費用がかかります。
ここでは、その主たるものとして鑑定費用、調停・裁判に関する費用について解説します。
鑑定費用
賃料増額請求を行う際、増額の根拠を示すために、不動産鑑定士に賃料の鑑定を依頼することが往々にしてあります。
賃貸人または賃借人のいずれかが裁判所で証拠として提出するために、独自に不動産鑑定士に依頼して作成するものを「私的鑑定」あるいは「当事者鑑定」といいます。
それに対し、裁判所が鑑定士として選任した者による鑑定を「公的鑑定」あるいは「裁判所鑑定」といいます。
賃料増減額請求の裁判で判決が言い渡されるようなケースでは、ほとんど公的鑑定がなされており、相当賃料額の認定に際して公的鑑定の内容が重視されます。
この公的鑑定定の費用は、公的鑑定を申し出た当事者が予納しますが、最終的に判決の中で当事者双方の負担とされることが多いです。
他方、私的鑑定は、裁判に至る前の交渉や調停を有利に進める上で、重要な材料になります。また、裁判上でも、公的鑑定が不利な内容だった際の反論の証拠となります。
ただ、私的鑑定も費用がかかります。そのため、費用対効果を考慮する必要があります。賃料増減額請求により求める賃料額と従前の賃料の差が大きいような場合には、私的鑑定を積極的に活用するとよいでしょう。
また、「不動産鑑定」ではなく、「不動産調査報告(簡易鑑定)」を行うことも考えられます。
不動産鑑定は不動産鑑定評価基準に基づいた、法律的に認められている信頼性の高いものとなっています。
そのため、証拠能力も不動産調査報告(簡易鑑定)に比べると高いため、賃料の増額幅が大きいなど重要性の高い案件であればできるだけ不動産鑑定を使うべきですが、費用対効果を考えると不動産調査報告を利用したほうがよい場合もあります。
具体的な金額は依頼する不動産鑑定士によっても異なりますが、不動産鑑定の場合安くても20~30万円程度(高い事案では数百万)、不動産調査報告の場合が5~10万円程度です。
ただし、これはあくまで相場であるため、依頼する際は事前に確認しましょう。
調停 ・ 裁判に関する費用
賃料増額請求の調停・裁判を申し立てる際は、調停の場合は申立手数料、裁判の場合は訴え提起手数料を印紙で支払わなくてはいけません。
調停の「申立手数料」や裁判の「訴え提起手数料」は、その手続で求める事項、つまり請求する価格に応じて定められています。その価格のことを、調停の場合は「調停事項の価額」、裁判の場合は「訴額」といいます。
賃料増減額請求における「調停事項の価額」や「訴額」の計算方法は以下のとおりです。
ただし、この額よりも目的物の価額の2分の1の方が低額であることを原告が疎明したときは、目的物の価額の2分の1を「調停事項の価額」または「訴額」とします。
ここでいう「期間」は月数をいいます。
例えば、5万円賃料を増額することを請求し、請求から半年経ったあとに調停を申立てた場合は 「5万円 × 18ヵ月 = 90万円」 となります。
目的物の価額は、市町村で発行される固定資産評価証明書の評価額により判定されるので、建物の評価額が180万円以上であれば、「調停事項の価額」または「訴額」は90万円となります。
このように算出した「調停事項の価額」や「訴額」を、手数料額早見表 などで確認できる基準に当てはめて「申立手数料」や「訴え提起手数料」を求めることができます。
調停事項の価額が90万円の場合、調停の申立手数料として4,500円分の印紙、訴え提起手数料として9,000円の印紙が必要です。
ただし、訴え提起手数料は、調停不成立から2週間以内に訴訟を提起した場合には、調停申立てに納付した手数料をそのまま使えますので、追加で支払えば足ります。
また、当事者の呼出しなどに使うため、郵便切手代も必要になります。先ほどの調停を申し立てる場合、2,950円(東京簡易裁判所の場合)が必要です。
参考:裁判所|簡易裁判所に「賃料等調停の申立て」をしたい方のために
賃料増額請求を弁護士に依頼するメリット ・ デメリット

賃料増額請求を弁護士に依頼することには、メリットがある一方で、デメリットもあります。
ここでは、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるかを踏まえ、どのような場合に弁護士に依頼すべきかについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼することで、以下のメリットがもたらされます。
- 調停 ・ 裁判で自身が望む結果が得られる可能性が高まる
- 交渉から裁判まで一連の手続きをすべて任せられる
- 将来的な利益につながることもある
弁護士に任せれば、専門家の視点から説得力のある交渉ができるため、賃借人も増額に応じてくれる可能性は高まります。
また、自分で賃料増額請求をするには、自分で証拠となる資料を用意したり、賃借人と交渉したりしなくてはいけません。相応の時間と労力が必要になりますが、弁護士に任せればこれらの負担を大幅に減らせます。
調停・裁判を申し立てる前の内容証明を送付する段階から弁護士に相談すれば、一貫して対応してもらえるため、さらに便利です。結果的に解決に至るまでのスピードや、賃料の増額率が変わってくることもあり得ます。
賃料増減額請求による賃料改定の効果は、長期的に継続することが予想されるので、弁護士に依頼することで上昇する賃料額が小さかったとしても、結果として長い目で見ればプラスになることも多いと考えられます。
たとえば、弁護士に依頼した結果月額5万円の増額に成功すれば、1年間で60万円、5年間で300万円のプラスになります。弁護士費用を払ってもなおプラスになる可能性も高いのです。
弁護士に依頼するデメリット
一方、賃料増額請求を弁護士に依頼することには、以下のデメリットもあります。
- 弁護士費用の負担が大きくなる
- 相手との関係が悪化する恐れがある
まず、弁護士に依頼する際は、着手金や報酬を支払わなくてはいけません。裁判所への出廷や遠方への出張があった場合は、日当も払う必要が出てきます。
賃料の増額幅が小さい場合、賃貸人が賃料増額により得られるその先の利益よりも、弁護士費用のほうが高くつく可能性もあるため、注意が必要です。
また、弁護士を介して交渉することで賃借人が態度を硬化させ、紛争が激化するリスクもあります。
穏便かつ早急な解決を目指すためには、賃借人と賃貸人が話し合ったうえで、双方にとって折り合いのつく形を探らなくてはいけません。状況によっては、弁護士に交渉自体を任せるのではなく、弁護士に状況に応じてアドバイスを求めながら賃貸人自身が交渉を進めるほうがよい場合もあります。
いずれにしても、弁護士に依頼する際は、自分の意向を伝えたうえで、慎重に交渉を進めてもらいましょう。
賃料増額請求の弁護士費用を抑える方法

賃料増額請求の弁護士費用を抑える方法として、以下の2つが考えられます。
- まずは当事者間での交渉で合意を目指す
- 宅建業者が作成した資料や簡易鑑定の資料を使う
賃料増額請求に限った話ではありませんが、調停や裁判まで進むと、弁護士費用だけでなく、印紙代や切手代、鑑定費用などさまざまな出費が生じます。
しかし、賃貸人と賃借人との間で話し合いをし、その場で合意できれば、少なくとも印紙代や切手代、鑑定費用はかかりません。調停前から弁護士に依頼し、当事者間での話し合いに立ち会ってもらうなどの対応を求めましょう。
また、賃料増額請求では裁判所が不動産鑑定士に依頼し、増額された賃料額が妥当であるか否かの鑑定を行います。これにかかる費用を抑えることはできません。
ただし、自ら証拠として用いる範囲であれば、不動産鑑定士による不動産鑑定ではなく、宅建業者が作成した資料や簡易鑑定の資料を使うことも可能です。賃借人が増額に納得してくれれば、費用を抑えられる可能性があります。
しかし、賃借人が増額に納得してくれなければ、より証拠力の強い資料として不動産鑑定士による不動産鑑定を検討する必要があります。
どんな場合に弁護士への依頼を検討すべきか?

弁護士に依頼を検討すべきケースとして、以下のものが考えられます。
基本的には、金額が大きい、内容が専門的、賃借人との話し合いもままならない状態であれば、弁護士への依頼を検討すべきです。
- 賃借人が全く交渉に応じない/従前の賃料を供託してきた
- 賃料に大幅な乖離がある(相場の半額の賃料で貸している 等)
- 契約条件が複雑、法人との契約やサブリースなど事案が専門的
- 訴訟を検討している場合(調停前置含む)
まとめ : 弁護士費用はコストではなく「回収戦略」の一部

賃料増額請求において、弁護士費用はコスト(かかる経費)ではなく「賃料を回収するための戦略」として考えましょう。前述したように、弁護士費用がかかったとしても、それによりもたらされる利益が大きいなら払うことに一定のメリットがあるはずです。
また、調停・訴訟にまで至らなくても、交渉の場に弁護士が同席することで、感情的なやり取りではなく、資料などをもとに客観的な説明をすることができるため、賃借人が納得してくれる可能性があります。
一度に多額の弁護士費用を払うのが難しい場合は、成功報酬型を取るなど、柔軟な対応をしてくれることがあるので一度相談してみましょう。事前に見積もりを取ったうえで、納得してから依頼するのが重要です。
不動産法務に関するご相談は、東京都千代田区直法律事務所の弁護士まで
賃料増額請求が当事者間で解決できず、調停・裁判にまで至った場合、弁護士費用以外にもさまざまな費用がかかります。
また、長期化すればするほど、精神的な負担も重くのしかかるので注意しなくてはいけません。
なるべく調停・裁判に至る前に解決できるよう、早い段階で弁護士などの専門家に相談しましょう。
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