1. ホーム
  2. 未分類

弁護士との委任契約書とは?範囲・費用・解約時の注意点まで解説

弁護士にトラブル対応や訴訟を依頼する際に欠かせないのが「委任契約書」です。
委任契約書には、どんな内容が書かれているのか?
着手金や報酬金はいくらかかるのか?
解約するとどうなるのか?

本記事では、実際の契約書の内容や条項をもとに、個人・企業の依頼者が安心して弁護士と契約できるためのポイントをわかりやすく解説します。
契約前の不安をなくしたい方、初めて弁護士に依頼する方はぜひご覧ください。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「弁護士との委任契約書とは?費用・範囲・解約時の注意点まで徹底解説【個人・企業向け】」
について、詳しくご説明します。

弁護士のプロフィール紹介はこちら直法律事務所の概要はこちら

\初回30分無料/

【初回30分無料】お問い合わせはこちら弁護士費用の詳細はこちら

当事務所では、LINEでのお問い合わせも受け付けております。お気軽にご相談ください。
登録はこちらから

友だち追加

弁護士との委任契約書とは?

弁護士に事件や法的トラブルの対応を依頼する際、多くの方が最初に戸惑うのが「委任契約書(いにんけいやくしょ)」です。
この書類は、依頼者(個人や企業)と弁護士が、どのような法律業務を、どのような条件で進めていくのかを明確にするために交わす大切な契約書です。

法律相談と委任契約の違い

まず大切なのは、「法律相談」と「委任契約」は異なるということです。

「法律相談」とは、弁護士が法律の観点から問題点を整理し、アドバイスを行うことです。これだけでは、弁護士があなたの代理人として行動することはできません。
一方、「委任契約」を締結することで、弁護士は正式にあなたの代理人となり、次のような業務を行うことができるようになります。

 相手方との交渉

 内容証明郵便の送付

 裁判手続への代理出席 など

つまり、法律相談が「アドバイス」だとすれば、委任契約は「実際の行動(代理活動)」に進むステップと言えるでしょう。

なぜ書面による契約が必要なのか

口頭で「お願いします」と伝えただけで事件が進むことも理屈上は可能ですが、実務上は書面での委任契約の締結が強く推奨され、実際ほとんどの法律事務所でこれを必須としています。

その理由は以下のとおりです。

 トラブル防止
後々、依頼内容や報酬の金額・範囲をめぐる誤解や争いを防ぐためです。

 弁護士職務基本規程
弁護士職務基本規程では、委任契約書の作成が原則として義務付けられています。

 依頼者が安心して依頼できる材料となるため
契約内容を明文化することは、弁護士と依頼者の双方にとって大切な信頼関係のスタート地点です。

委任契約書の基本構成とは?

弊所が対応した案件を前提にしますと、弁護士との委任契約書には、一定の共通した形式や構成があることが多いです。
その理由は、扱う案件が多岐にわたるものの、契約の基本的な枠組みは同じだからです。
ここでは、その主な構成要素を簡単にご紹介します。

民事事件・訴訟事件に共通する構成

実際に使われている委任契約書(例えば「民事事件」や「訴訟事件」用)では、主に以下のような条項が設けられています。

  • 事件の表示と受任の範囲
    どのような事件について、どこまでを弁護士に依頼するのかを明確にします。
    例:「〇〇事件に関する交渉および訴訟業務」「調停手続き」など。

  • 弁護士報酬・実費の取扱い
    着手金や成功報酬、出廷費用、実費(印紙代や郵便切手代など)について、金額や支払い時期、清算方法を記載します。

  • 契約の解除・中途終了の場合の取扱い
    途中で契約が終了した場合の報酬の清算や、返金の有無について定めます。

  • 依頼者・弁護士の義務と責任
    誠実な協力関係を築くため、事実の報告義務や交渉制限、説明義務などが盛り込まれます。

  • トラブルが生じた場合の解決方法
    契約に関する紛争は弁護士会の紛議調停に付託する旨が記載されることもあります。

書類の作成者と署名押印の意義

委任契約書は、弁護士が作成するのが一般的ですが、内容については依頼者が十分に説明を受け、理解・納得したうえで署名・押印する必要があります(最近は、電子契約の形で電子署名をするケースも増加しています)。
この「署名・押印」は、契約内容に合意したという法的な証拠となり、後のトラブル防止にもつながります。

また、契約書は2通作成し、依頼者と弁護士が1通ずつ保管するのが原則です。

委任の対象(事件の表示・範囲)の記載

委任契約書で最も重要な記載項目のひとつが、「どの事件を、どこまで弁護士に任せるか」という範囲の明確化です。
これは、弁護士と依頼者の双方にとって、委任した事項の境界線をはっきりさせる役割を果たします。

事件名・相手方・裁判所の記載

契約書には、次のような基本情報が具体的に記載されます。

  • 事件
    「〇〇債権回収事件」「〇〇遺産分割事件」など

  • 相手方
    トラブルの対象となっている個人・企業名など

  • 裁判所などの手続機関名
    「東京地方裁判所」「〇〇家庭裁判所」など

これにより、「どの紛争を対象に契約しているのか」が明確になり、別件について誤って依頼をしていたのか否かというトラブルリスクを回避できます。

示談交渉、訴訟、調停などの受任範囲

さらに、弁護士がどこまで対応するのか(受任範囲)も契約書で明確にします。
具体的には、以下のような項目から該当するものを選択・記載します。

  • 示談交渉
  • 書類作成(契約書、内容証明など)
  • 調停・審判
  • 訴訟(第一審、控訴審、上告審)
  • 強制執行(判決後の回収手続きなど)
  • 倒産手続(破産、再生など)
  • 行政不服申立て など

これにより、例えば「示談交渉までは相談をしている弁護士が担当し、訴訟はまた、別途の契約事項とする」といった契約上の切り分けが可能になります。

弁護士報酬の仕組み

弁護士に依頼する際、多くの方が気になるのが「報酬の仕組み」です。
委任契約書には、着手金報酬金実費日当など、費用の種類と金額・支払うタイミングが具体的に記載されます。

弁護士費用の詳しい内容は、別記事「弁護士費用の全体像をわかりやすく解説!相談料・着手金・報酬金・実費まで完全ガイド」をぜひご参照ください。

着手金・報酬金・手数料・時間制

弁護士報酬には、主に次のような区分があります。

着手金

事件を弁護士に依頼した段階で支払う「着手」に対する報酬です。
成果にかかわらず返金されないのが原則です。

報酬金

事件が成功・解決したときに支払う報酬です。
和解や判決によって依頼者が経済的な利益を得た場合に、あらかじめ合意されたパーセンテージで算出されることが多いです。

手数料

契約書の作成やレビュー、内容証明の送付など、単発の業務に対する報酬です。
通常は一括払いです。

時間制報酬(タイムチャージ)

弁護士が業務に要した時間に応じて、30分から1時間あたりの単価で報酬を計算する方式です。(※LAC基準では1分単位)
ビジネス法務や顧問業務などで使われることが多く、予納金制度と組み合わせて利用されます。

※LACについては、下記HPも併せてご参照ください。
「日本弁護士連合会HP:弁護士費用保険(権利保護保険)について 2.日弁連リーガル・アクセス・センター(日弁連LAC)」

成功報酬の「経済的利益」とは

報酬金の計算でよく登場するのが「経済的利益」という概念です。
例えば、下記のとおり、単に「勝ったか負けたか」だけでなく、依頼者が得た実質的な利益が基準となります。

• 請求額100万円を回収できた ➡ 経済的利益100万円
• 1,000万円の請求を100万円に減額させた(防御成功) ➡ 経済的利益900万円

出廷・出張費や実費の扱い

報酬とは別に、以下のような実費や日当が発生することがあります。
これらは、契約書に明確に記載され、実費は事件終了時に精算する形式が一般的です。

  • 出廷日当
    裁判や調停のために裁判所へ出向く場合の手当

  • 出張日当
    遠方への出張にかかる手当

  • 印紙代・郵便切手(郵券)代・交通費・謄写代などの実費
    契約時に概算で預かることが多い

弁護士報酬は一見すると複雑ですが、委任契約書を通じて「何に、いくらかかるのか」を事前に確認することで、不安や誤解を防ぐことができます。

依頼者(委任者)と弁護士(受任者)の義務

弁護士との委任契約は、単に「依頼する・される」という関係ではなく、相互に信頼関係を築く契約関係です。
そのため、委任契約書では依頼者(委任者)弁護士(受任者)のそれぞれに対して、果たすべき義務が定められています。

事実の正確な説明

依頼者は、弁護士に対して事実関係を正確に、包み隠さず伝えるべきです。

弁護士は、依頼者から得た情報を前提に、事件の戦略や方針を立てていきます。そのため、仮に不利な情報であっても、それを隠したままだと下記のような重大なリスクが発生します。

 主張や立証に矛盾が生じる
 裁判で不意打ちを受ける
 弁護士の信頼を失う

自身に不利な事項であっても、必ず、事前に弁護士に伝えるようにしてください。

相手方との直接交渉の制限

委任契約を締結すると、依頼者は原則として、弁護士を通じてのみ相手方と交渉すべきとされます。
これは、依頼者が感情的になってしまったり、相手方に不利な発言をしてしまったりすることで、弁護士の戦略に悪影響を及ぼすことを防ぐためです。

依頼をした弁護士が全く動いてくれず、やむを得ず、依頼者本人が相手方に直接接触してしまったというような事案を目にしたこともありますが、そのような場合には、依頼をした弁護士との信頼関係が喪失したものとして、委任契約を解除するべきでしょう。

なお、弊所では依頼者様から、よく「事件相手から連絡が来た場合にはどうすればいいでしょうか?」というご質問をいただくことがあります。 その場合には、弊所では、「弁護士に依頼しているから、本件については私の弁護士と話してください」と伝えるようにお願いしています。

弁護士の説明義務・和解方針などの共有

一方で、弁護士にも当然ながら義務があります。

 事件の進行状況や重要な判断に関する説明義務

 和解提案がある場合は、その内容・妥当性を説明し、了承を得る義務

依頼者が納得したうえで意思決定できるよう、丁寧に説明する責任を負っています。これは、委任契約上の善管注意義務の一内容といえると思います。

もし、「知らないうちに手続が進んでいた」「勝手に和解された」という事態を不安に思われる場合には、契約書にも明文化することを検討してもいいかもしれません。

解約・中途終了時の対応

委任契約は、原則として事件の解決まで継続する契約ですが、事情によっては途中で終了する場合もあります。
その際の対応方法や費用の取扱いについても、契約書でしっかりと取り決められていることが多いです。

解任・辞任・継続不能とは

委任契約の中途終了には、主に以下のようなケースがあります。

• 依頼者による解任:「弁護士を変更したい」「対応に不満がある」など
• 弁護士による辞任:「依頼者が事実を隠していて信頼関係が喪失した」「報酬未払い」など
• 継続不能:依頼者が亡くなった、事件自体が消滅した、など

このような事態に備え、契約書では中途終了時の報酬の清算方法が明記されることが多いです。

着手金は返還される?途中終了時の精算の考え方

原則として、一度支払った着手金は返還されないことが多いです。
なぜなら、着手金は「事件に着手することに対する対価」であり、結果とは関係ない性質の報酬だからです。

ただし、契約書では例外的に、以下のような場合に応じて精算を行う旨が記載されていることがあります。

・ 事件の途中で終了した場合、処理の進行状況(進捗)に応じて、報酬の一部を返還する。
・ 事件が予想以上に長引いた際に、着手金を追加して支払う。

このように、「一方的に不利益を被らないようにするための調整」が可能です。
そのため、契約締結時に中途解約時の取扱いを確認しておくことが非常に重要です。

その他の条項・トラブル防止策

委任契約書には、事件処理や報酬以外にも、依頼者・弁護士双方を守るための「その他の条項」が記載されています。
これらは一見すると細かいルールに見えますが、トラブルの防止や弁護士業務の適正性の確保にとって非常に重要です。

犯罪収益移転防止・本人確認に関する条項

弁護士は「犯罪による収益の移転防止に関する法律(いわゆる犯罪収益移転防止法)」に基づき、依頼者の本人確認や目的の確認を行う義務があります。

そのため、委任契約書を締結する前に、本人確認書類などの提示・提出を求めることが多いと思いますので、ご留意ください。これは、マネーロンダリングや詐欺の加担を防ぐための措置であり、依頼者にとっても安心・透明な依頼体制を築くためのルールとなります。

弁護士会の紛議調停制度の活用

万が一、契約内容や報酬をめぐって弁護士とトラブルになった場合、裁判ではなく、弁護士会による「紛議調停制度」を利用できる旨が契約書に記載されている場合があります。

紛議調停とは、弁護士と依頼者の間に立って、他の法律事務所の弁護士が中立の立場から話し合いを進める制度です。裁判をすると長期化するケースも多いので、紛議調停は、費用も不要で、穏やかに解決を目指す手段として有効であるように思います。

特約事項の具体例

契約書の最後に「特約事項」を記載する欄があることが多く、個別の事情に応じた調整をここで行います。
たとえば、「着手金は2回払いとする」「LINEでの連絡を原則とする」など、柔軟な対応が可能です。

契約書は一律のテンプレートではなく、必要に応じてカスタマイズできることも知っておくとよいでしょう。

弁護士との委任契約についてよくある質問(Q&A)

ここでは、委任契約書に関して、依頼者の方からよくある疑問についてお答えします。

Q1. 委任契約書がないまま業務が始まることはある?

A. 基本的には契約書を交わしてから業務を開始します。
ただし、緊急対応や時間的制約がある場合、口頭での委任やメールでの合意のもとで一時的に業務を開始することもあります。その際は、後日改めて書面契約を交わすのが原則です。

Q2. 成功報酬は必ず必要?

A. 必ずではありませんが、成果に応じた報酬(報酬金)を設定するのが一般的です。
たとえば、「回収額の〇%」「減額できた分の〇%」といった設定をよく目にします。事案によっては報酬金がないケースもありますが、その場合は契約書に明記されます。

Q3. 契約後に報酬の増額はある?

A. 基本的には契約書に記載された報酬条件に従います。
ただし、事件が上訴審に進んだり、受任範囲を超える新たな業務が追加された場合は、追加契約や報酬の再協議が行われることがあります。その際は、依頼者の同意が必要です。

納得して弁護士と契約するために

弁護士との委任契約は、法律問題の解決に向けた第一歩です。
不安や疑問があるまま契約を交わすのではなく、契約内容をしっかり理解したうえで署名・押印することが、トラブル防止にもつながります。

お困りの際のご相談は、東京都千代田区直法律事務所の弁護士まで

直法律事務所においても、ご相談を随時受けつけておりますので、お困りの際はぜひお気軽にお問い合わせください。

\初回30分無料/

【初回30分無料】お問い合わせはこちら弁護士費用の詳細はこちら

【関連記事】
弁護士費用の全体像をわかりやすく解説!相談料・着手金・報酬金・実費まで完全ガイド
顧問弁護士とは?法律顧問契約を結ぶメリットや費用について解説!【企業向け】

直法律事務所では、IPO(上場準備)、上場後のサポートを行っております。
その他、プラットフォーム、クラウド、SaaSビジネスについて、ビジネスモデルが適法なのか(法規制に抵触しないか)迅速に審査の上、アドバイスいたします。お気軽にご相談ください。
ご面談でのアドバイスは当事務所のクライアントからのご紹介の場合には無料となっておりますが、別途レポート(有料)をご希望の場合は面談時にお見積り致します。


アカウントをお持ちの方は、当事務所のFacebookページもぜひご覧ください。記事掲載等のお知らせをアップしております。

顧問弁護士をお探しなら、
企業法務に強い弁護士にご相談ください

「直ぐに、この問題に対処したい」「この契約書を締結していいのか、今すぐアドバイスを欲しい」このような、日常、よく発生する法務に関するお悩みに迅速に対処してほしいといったニーズには、顧問弁護士がおすすめです。

クライアント企業一例