澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「PFIとは何か?官民連携の基本と導入実務をわかりやすく解説」
について、詳しくご説明します。
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今、改めてPPP/PFIが注目される理由
近年、地方自治体が抱えるインフラ老朽化、人手不足、財政制約といった課題に対し、官と民が連携する「PPP(官民連携)」「PFI(民間資金活用による社会資本整備)」の導入が加速度的に進んでいます。
これまで「PFI=箱モノ建設の委託」というイメージを持たれていた時代から、現在では、空港や上下水道、観光施設、さらには福祉・教育分野まで、運営主体そのものを民間に委ねる「運営重視型」「独立採算型」の手法へと大きく進化しているのが特徴です。
日本では1999年にPFI法が制定されて以来、数多くのプロジェクトが試行錯誤され、ガイドラインや制度の整備が進められてきました。
そして今、国の掲げる重点施策により、コンセッション方式の導入が推進されており、「PPP」「PFI」は単なる選択肢ではなく、自治体の事業手法の「主流」の一つとして位置づけられようとしています。
とりわけ、財政負担の平準化・人材不足の補完・技術革新の導入といった課題に直面する地域社会において、PFIは単なるコスト削減手法ではなく、「地域に持続的にサービスを提供するためのパートナーシップ構築の枠組み」として期待されています。
PPPとPFIの違いと関係
PPP(Public-Private Partnership)とは、「官民連携」の総称であり、広い意味で公共と民間が連携し、公共サービスの質を高める取り組み全般を指します。
日本では「包括的民間委託」「指定管理者制度」「第三セクター」「公的不動産活用(PRE事業)」などもPPPの一形態として位置付けられます。
一方で、PFI(Private Finance Initiative)は、PPPの中でも特に「民間資金・経営能力・技術力を活用して、公共施設の整備・運営を行う」ことを制度化した手法です。
日本ではPFI法に基づく正式な制度として整備されており、「実施方針の策定」「事業者の選定」「契約締結」といった手続きを経て進められる点が特徴です。

このように、PPPは「広義の官民連携全体」、PFIは「その中の制度化された手法」という位置づけになります。
PFIの活用により、自治体は初期費用の抑制や民間ノウハウの導入が可能となり、民間企業にとっては長期的な事業収入を見込めるという利点があります。
ただし、官民双方にとってリスク分担や契約管理の高度な対応が求められるため、法制度・ガイドラインを踏まえた実務設計が不可欠となります。
PFIの特徴とその仕組み
PFIの本質的な特徴は、「官民の役割分担とリスク分担の再設計」にあります。
ここでは、3つのキーワードからその特徴を整理します。
① 官民の役割分担の変化 : サービス購入型モデル
従来の公共事業では、設計・建設・維持管理などをバラバラに民間へ委託し、全体の統一性や効率性に課題がありました。
一方、PFIでは、施設の整備から運営までを一体的に民間に任せる「一括発注(パッケージ型)」となっており、自治体は「サービスの提供を民間から購入する」という構図になります。
つまり、民間は「運営の成果責任」を問われ、自治体は「対価を支払う契約管理者」として機能するという明確な分担がなされます。
② リスク分担の原則 : 「最も適切に管理できる者が負う」
PFIでは、各種の事業リスク(建設リスク、運営リスク、需要変動リスクなど)を精査し、「最もそのリスクを管理できる立場の者が負担する」という考え方を採用します。
たとえば、設計・工事の遅延リスクは施工を担う民間が、需要予測のブレは一定程度自治体が、というように、一律な責任の押し付けではなく、合理的な役割配分が前提です。
③ VfM(Value for Money)の実現 : 民間の創意工夫を引き出す制度設計
PFIにおいては、「公共が自ら実施するよりも効率的・効果的である(=VfMがある)場合に限って導入すべき」とされています。
そのため、自治体は導入前に「VfM評価(バリューフォーマネー)」を実施し、民間委託によってどれだけコスト削減やサービス向上が図られるかを検証します。
この設計思想のもとで、民間事業者は収益性を確保しながら、サービス水準の達成に向けて自社の技術やノウハウを存分に発揮できるというメリットがあります。
まとめ
PFIは、従来の「発注型」の公共事業から脱却し、「成果責任型」への転換を図る制度です。
公共と民間の「パートナーシップの再設計」ともいえるこの仕組みは、もはや一部の先進事例にとどまらず、自治体が地域課題に立ち向かうためのスタンダードになりつつあります。
PFIの法制度とガイドラインの全体像
PFIは、法に基づいた制度設計がされている点が、他のPPPスキームと大きく異なります。
日本におけるPFI事業は、 「PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)」に基づいて実施されており、実務を進めるうえではこの法律を軸に、基本方針や複数のガイドライン、さらには個別法規まで幅広く対応が求められます。
① PFI法の基本構造
1999年に制定されたPFI法では、以下のようなことが規定されています。
- 基本理念と政府の基本方針策定義務(第1条〜第4条)
- PFI事業の手続き(事業の選定 ・ 実施 ・ 契約締結など)
- 行政財産の貸付や無償使用などの支援措置
- 推進体制(PFI推進会議 、 推進委員会など)
PFI法に基づく特例措置として、「国有財産の貸付・使用緩和」「長期の債務負担行為の設定」「公務員の出向制度」なども整備されています。
② 政府の基本方針とガイドライン
PFI法に基づき、政府は基本方針を策定しています。これは国のみならず、地方自治体がPFI事業を行う際にも参照すべき基本的な方向性を示すものです。
さらに、実務上は以下の6つのガイドラインがPFI推進委員会により公表されており、事業実施者にとって極めて重要な実務指針となっています。
ガイドライン名 | 内容 |
---|---|
実施プロセスガイドライン | 実施方針策定から契約締結までの各手続きを解説 |
リスク分担ガイドライン | リスクの分類 ・ 移転原則 ・ 分担のあり方を整理 |
VfM評価ガイドライン | 民間活用が有効かを判断する評価手法を提示 |
契約ガイドライン | 事業契約 ・ 基本協定 ・ 直接協定の内容整理 |
モニタリングガイドライン | サービス品質維持 ・ 成果確認の手法を解説 |
公共施設等運営権ガイドライン | コンセッションに特化したルールと留意点 |
③ 個別法・自治体規則との関係
PFI法だけでは完結しない点も注意が必要です。
たとえば、空港や水道といった事業分野ごとに個別法(例 : 空港法、水道法、都市公園法など)が存在し、それに準拠した設置・運営が求められます。
また、PFI事業は予算措置や長期契約を伴うため、会計法・地方自治法・財政法・自治体の契約規則などの準拠も欠かせません。
つまり、PFIは法令の「総合運用型スキーム」であり、法務・財務・事業の三位一体での構築が求められるのです。
PFI事業スキームの類型
PFI事業には、多様なスキームが存在し、それぞれに契約形態や資金調達、リスク配分の違いがあります。
以下のように、2つの観点から分類するのが一般的です。
① 施設の「所有形態」による分類(事業方式)
スキーム名 | 所有権の移転タイミング | 主な特徴 |
---|---|---|
BTO方式 (Build-Transfer-Operate) |
施設完成直後に公共へ移転 | 日本のPFIで主流 税制優遇 ・ 補助金適用あり |
BOT方式 (Build-Operate-Transfer) |
事業終了時に移転 | イギリス型PFI 長期保有 ・ 内部留保必要 |
BOO方式 (Build-Own-Operate) |
民間が保有し続ける | 公共側に所有が戻らない 独立採算型に多い |
ROT方式 (Rehabilitate-Operate-Transfer) |
改修後に所有権は公共に留まる | 既存施設の再活用型 上下水道PFI等に多い |
特に日本ではBTO方式が全体の7割以上を占めていますが、施設の性質や運営負担、補助金要件などを踏まえて適切な方式が選ばれます。
② コスト「回収方法」による分類(事業類型)
類型名 | 主な収入源 | リスクの重み |
---|---|---|
サービス購入型 | 公共からの対価支払い | 比較的安定 、 行政負担大 |
独立採算型 | 利用者からの料金収入 | 民間リスク高 、 自由度あり |
混合型 | 行政 + 利用者のハイブリッド | 運営難易度が高いが応用範囲広い |
従来はサービス購入型が中心でしたが、空港・上下水道・観光分野などでは独立採算型や混合型が増加傾向にあります。
まとめ
PFIを成功に導くには、「制度を知る」「仕組みを使い分ける」ことが不可欠です。法的な裏付けに支えられたPFIは、適切なスキーム設計により、官民双方にとって持続可能なインフラ提供を可能にします。
今後、各分野において制度活用が進むなかで、自治体・民間ともにこのスキームを使いこなす力が問われていくことになるでしょう。
PFIの基本的なプレイヤーと関係図
PFI事業は、官と民だけでなく、複数の専門事業者や金融機関が連携して進める「多層構造」の仕組みです。そのため、各プレイヤーの役割と関係性を理解しておくことが重要です。
主なプレイヤー | 役割 | 備考 |
---|---|---|
公共団体(発注者) | サービス仕様の設定 、 モニタリング 、 対価支払い | 実施方針の策定 、 契約締結主体 |
特別目的会社(SPC) | PFI事業を遂行するために設立される法人 | 民間事業者の共同出資で構成される |
建設事業者(EPC) | 設計 ・ 建設 ・ 改修等を担当 | SPCと工事請負契約を締結 |
運営事業者(O&M) | 維持管理 、 運営サービスの提供 | SPCと運営委託契約を締結 |
金融機関 | 資金提供(プロジェクトファイナンス) | 長期融資を通じて収益を回収 |
アドバイザー(法務 ・ 財務 ・ 技術) | 公共 ・ 民間双方の支援 ・ 助言 | 専門性に基づく第三者評価を担う |

このように、SPCが中核となって複数の民間プレイヤーと契約を結び、公共団体と事業契約を締結するという構図が一般的です。
入札・契約の流れと特徴
PFIは一般の公共調達と異なり、単なる「価格競争」ではなく、「サービス水準・リスク分担・提案内容」などを総合的に評価するスキームです。そのため、入札から契約に至るまでの流れにも特徴があります。
PFI事業の基本的な流れ
▸ 対象施設 ・ サービス範囲 ・ 契約形態の設定
▸ VfM評価(バリューフォーマネー)を踏まえた導入判断
2.募集要項の公表・入札手続き
▸ 総合評価一般競争入札 または 公募型プロポーザル方式を採用
▸ 技術点(提案内容) + 価格点で評価
3.落札者の決定
▸ 最高得点者 または 価格交渉による決定
4.事業契約の締結
▸ PFI契約(事業契約)を締結
▸ 必要に応じて : 基本協定 ・ 直接協定(金融機関との三者契約)なども整備
5.SPCの設立と契約履行
▸ 民間側がSPCを設立し、設計 ・ 建設 ・ 運営を開始
▸ モニタリング制度に基づき、自治体が成果を評価
発注・評価のポイント
「トイレを清潔に保つこと」「給食を栄養基準に沿って提供すること」など、達成すべき結果を定め、手段は民間に委ねる。
✓ 一括発注(設計・施工・運営の一体化)が基本
縦割りを避けて、コスト ・ リスク ・ 責任の最適化を図る。
✓ モニタリングと支払の連動(成果連動型)
成果未達成の場合、対価を減額するなどの制度設計がなされる。
まとめ
PFIは、従来の予算消化型公共事業とは大きく異なり、「成果責任」「リスク分担」「民間創意の活用」を柱とした制度です。
その成功の鍵を握るのは、各プレイヤーが自身の役割を理解し、「発注」「応札」「契約」「実施」の各段階で緊密に連携できる体制づくりです。
官民が「対等なパートナー」として事業に向き合うためには、制度への理解と丁寧な設計が不可欠です。
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