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【賭博罪と景品表示法】オンラインゲームの法律上の問題点2

Q
当社ではオンラインゲームを運営しています。

このたび、利用者に自身で購入したポイントでゲームをプレイしてもらい、その結果次第でポイントや景品を獲得できるという企画を始めようと考えています。
このような企画を行う場合に、法律上気をつけるべき点はありますか?

A
Qの事例のようなオンラインゲームを運営する場合、運営者には、刑法の「賭博罪」または「賭博場開帳図利罪」が成立する可能性があるので、その点注意が必要です。

また、そのゲームが賭博に該当しない場合でも、景品表示法の規制対象となる可能性があるので、その規制内容についても理解しておく必要があります。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「【賭博罪と景品表示法】オンラインゲームの法律上の問題点2」
について、詳しくご説明します。

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賭博罪とは

Qの事例のようなオンラインゲームを運営する場合、賭博罪が成立する可能性があります。
まずは、賭博罪に関する解説からしていきたいと思います。

「賭博」とは

刑法第185条は、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。」と、賭博行為を罪として規定しています。
また、「賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。」(刑法186条2項)と、主催者として賭博をさせる場所を設けることも罪として規定しています。

ここでいう「賭博」について、刑法は具体的に正式な定義を定めていませんが、一般的に「賭博」とは、「偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為」であるとされています。

賭博罪の構成要件

上記の賭博の定義からすれば、賭博罪の構成要件は、

  • ①勝敗の偶然性
  • ②財物や財産上の利益の得喪を争う行為

となり、①と②の両方の該当性が認定されると、賭博罪が成立することになります。

①の「偶然性」とは、当事者において結果が確実に予見できないこと、または結果を自由に支配できないことを意味します。
そのため、当事者の技量によって勝敗の結果に影響がある場合であっても、勝敗があらかじめ歴然としている場合でない限り、多少なりとも偶然の事情によって勝敗が左右されえるような場合には、偶然性があるということになります。
このことから、賭け麻雀や賭け将棋のように、当事者の技能が相当影響する場合であっても、偶然性が多少でも認められれば、「偶然の勝敗」にあたるとされているます。

②の「得喪を争う」とは、勝者が財産上の利益を得て、敗者はこれを失うことを意味します。
そのため、当事者の双方または一方が財産上の利益を失うことがない場合には「得喪を争う」とはいえないことになります。

なお、刑法185条は但し書きで「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」と規定して、一定の場合には行為の違法性を否定しています。

「一時の娯楽に供する物」とは、経済的な価値が僅かなものであって、単なる娯楽のためにその場で費消される物のことです。具体的には、少量・少額の飲み物や食べ物、たばこなどがこれに当たります。
「一時の娯楽に供する物」に当たるか否かの判断は、個々の事案ごとにその具体的な状況に応じて判断されることになります。その際には、当事者の社会的地位や賭博行為の回数、財物や財産上の利益の種類・数量・価額などが重要な判断要素となります。

オンラインゲームの賭博罪該当性

以上の構成要件に従って、Qの事例のようなオンラインゲームの賭博罪該当性を検討すると、以下のようになります。

  1. 勝敗の偶然性
    利用者はゲームの結果を確実に予見できるわけではなく、また、ゲームの結果を支配することもできません。ゲームの内容によっては、利用者の技量が結果に少なからず影響を及ぼすこともあるでしょうが、偶然の事情による影響を排除しきれるケースはほとんどないと思われます。
    したがって、勝敗の偶然性は認められると考えられます。
  2. 財物や財産上の利益の得喪を争う行為
    ゲームをプレイする際に使用する「ポイント」は、その取得のために金銭の支払いが必要であることや、「ポイント」によりゲームをプレイできる(役務の提供を受けられる)ことからすると、「財産上の利益」に当たると考えられます。
    そして、利用者がゲームで勝てば新たな「ポイント」や景品という財産上の利益を得ることができますが、ゲームで負けると参加料としての「ポイント」を失うことになるため、運営者と利用者とは「財産上の利益の得喪を争う」関係に当たる可能性があります。
    もっとも、利用者が失う「ポイント」を参加料の範囲に限定した場合には、この参加料はゲームをプレイするための対価であり、利用者は賭金に相当する財産上の利益を失うわけではない、と考えることもできます。この点については、個々の事案ごとにゲームの内容を詳細に検討する必要があります。
  3. 一時の娯楽に供する物
    「ポイント」は、本件ゲームという娯楽のために使用されるものですが、将来にわたってゲームをプレイするために継続的に保有することが予定されているものとして、即時に費消されるものとはいえず、「一時の娯楽に供する物」ではないと評価される可能性があります。


以上のことから、Qの事例のようなオンラインゲームを運営する場合、賭博罪が成立する可能性があります。

なお、運営者は、主催者として賭博をさせる本件ゲームという場所を設けた者であることから、賭博場開帳図利罪が成立する可能性もあります。

また、本件ゲームの運営を始めたならば、通常は継続的に運営することになると思いますが、そうした場合には、単純賭博罪(刑法185条)よりも刑が重い、「常習賭博罪」(刑法186条1項)が成立する可能性があります。

Qの事例のようなオンラインゲームを運営する場合には、このような犯罪行為に当たらないように、ゲームの仕組みに注意する必要があります。

例えば、ゲームをプレイするにあたって参加料を徴収しないようにしたり、ゲームの結果次第で何かしらをプレゼントすることにしても、その内容を財産的利益に当たらないもの(たとえば、アバターに装着させるアクセサリーや有名な絵画の画像など)にするというような仕組みにすれば、賭博罪には該当しないと考えられます。

~参考~賭博罪に該当するものしないもの~ 【賭博罪に該当するもの】
賭け麻雀・賭け花札・野球賭博・賭けゴルフ・裏カジノ(闇カジノ)・裏スロット など…

【賭博罪に該当しないもの】
宝くじ・競馬・競輪・競艇 など…

*パチンコは風営法の規制対象でルールをを守っていれば賭博罪に該当しないと解されています。

景品表示法の規制について

Qの事例のようなオンラインゲームについて、前述したとおり、運営者と利用者(ないしは利用者間)の関係が、「財物や財産上の利益の得喪を争う」関係でなければ賭博罪には該当しませんが、ゲームの結果次第でポイントや景品を付与するという仕組みについては、別に景品表示法による規制が問題となります。

そこで、次に、景品表示法の規制について解説していきたいと思います。

「景品類」とは

景品表示法は、「景品類」に関する規制を定め、消費者の利益を保護することを目的としています。

ここでいう「景品類」とは、「顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引・・・に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するものをいう。」(景品表示法2条3項)と定義されています。

そして、この規定を受けて、内閣総理大臣は、次のように「景品類」に該当するものを指定しています(昭和37年公正取引委員会告示第3号「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」)。

●物品及び土地、建物その他の工作物
●金銭、金券、預金証書、当せん金附証票及び公社債、株券、商品券その他の有価証券
●きょう応(映画、演劇、スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)
●便益、労務その他の役務

「景品類」に該当するか否かは、景品表示法2条3項に従い、

  • ①顧客誘引性
  • ②取引付随性
  • ③経済的利益性

の要件を検討して判断することになります。
Qの事例で付与されるポイントや景品(アイテムなど)をみると、

ゲーム内で付与されるポイントやアイテムには、ゲームを利用したことのない潜在的な利用者を獲得する効果や、すでにゲームを利用している者に対しては継続的にゲームを利用してもらうように誘引する効果があるため、顧客誘引性があるといえます。

また、本件のポイントやアイテムは、ゲームを利用することによって得られるものであるため、ゲームの利用という取引に付随するものだともいえます。

更には、本件のポイントにはゲームを利用するための対価としての経済的利益性があり、また、アイテムに関しても、そのアイテムが本来金銭を支払って購入できるようなものである場合には、経済的利益性があるといえます。

したがって、本件のポイントやアイテムなどの景品は景品表示法2条3項の要件を満たす可能性があります。
そのうえで消費者庁は、このようなポイントやアイテムなどは、「便益、労務その他の役務」として「景品類」に該当する可能性があるとの見解を示しています。(消費者庁「インターネット上の取引と『カード合わせ』に関するQ&A」参照)

以上のような「景品類」に対する規制のうち、本件のようなオンラインゲームにおいて問題となる規制としては、「一般懸賞」に関する規制と「総付景品」に関する規制があります。

以下ではこれらの規制について解説していきます。

「一般懸賞」に関する規制

商品やサービスの利用者に対し、 くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供することを「懸賞」といい、共同懸賞(一定の地域内の複数の事業者が共同して行う懸賞)以外のものを、「一般懸賞」といいます。

「一般懸賞」に対する規制としては、提供する景品類の限度額が定められています(「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」2項、3項)。
具体的には、

  • ①懸賞による取引価額が5,000円未満である場合には、取引価額の20倍が提供できる景品類の「最高額」となり、
  • ②懸賞による取引価額が5,000円以上である場合には、10万円が「最高額」となります。

また、①②いずれの場合であっても、提供する景品類全ての価額を合わせた「総額」は、懸賞に係る売上金額の予定総額の2%までとしなければなりません。

Qの事例のような場合も、ゲームの結果という偶然性によってポイントやアイテムといった景品類を提供するものであるため、「一般懸賞」に対する規制の対象となる可能性があります。
その場合には、提供する景品類の限度額を超えないように注意する必要があります。

「総付景品」に関する規制

消費者に対し、「懸賞」によらずに提供される景品類は、一般に「総付景品(そうづけけいひん)」や「ベタ付け景品」といいます。

具体的には、商品やサービスの利用者に対してもれなく提供する金品等がこれに当たります。また、商品やサービスの購入の申込み順または来店の先着順によって金品等が提供される場合であってもこれに該当します。

「総付景品」に対する規制も「一般懸賞」に対する規制と同様に、提供する景品類の限度額が定められています。
もっとも、「総付景品」に対する規制には「総額」の規制がないという点で「一般懸賞」に対する規制とは異なります(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限 」1項)。

具体的には、

  • ①取引価額が1,000円未満である場合には、200円が提供できる景品類の「最高額」となり、
  • ②取引価額が1,000円以上である場合には、取引価額の10分の2が「最高額」となります。

Qの事例のようなオンラインゲームにおいては、システムトラブルやアップデートのために一時的にゲームの利用を停止することがあり、その場合に、お詫びとしてポイントなどを利用者全員に付与することもあると思います。このような場合は「総付景品」となるので、その限度額に注意が必要です。

「コンプガチャ」に関する問題

一時期、オンラインゲームにおいて、特定のアイテムを複数又は全て入手することによって、希少なアイテムを獲得できるというイベントを行う事業者が多くいました。
これは「コンプガチャ(コンプリートガチャ)」と呼ばれ、景品表示法の規制対象となるか否かが問題となりました。

景品表示法は、コンプガチャが問題となる以前から、いわゆる「カード合わせ」と呼ばれる景品類の提供を禁止していました。「カード合わせ」とは、「2以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供」(「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」5項)のことで、景品類の最高額や総額にかかわらず、提供自体が禁止されています。これは、その方法自体に欺瞞性が強く、また、射幸心をあおる度合いが著しく強いと考えられているためです。

消費者庁は、コンプガチャの問題に対して、この「カード合わせ」を禁止する規定を用いて、コンプガチャも「異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法」に該当し、「カード合わせ」として禁止される景品類の提供行為に当たる場合があるという見解を示しました。
消費者庁「オンラインゲームの『コンプガチャ』と景品表示法の景品規制について

したがって、現在ではこのようなコンプガチャは全面的に禁止されています
そのため、オンラインゲーム内で景品を提供する場合には、コンプガチャであると評価される景品類の提供にならないように注意する必要があります。


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