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【プラットフォーム事業者必見】景品表示法とデジタル・プラットフォーム

 従来から、ネット通販、ネットショッピングは、画面上の指示に従ってクリックするだけで契約が成立する等、商品選択や注文などをするうえで消費者が誤認をしやすいという特徴が指摘されていました。そのため、公正取引委員会は、これまで、ネットショッピングの表示についてのガイドラインを公表するなど、消費者にとって必要な情報を正確かつ明瞭に伝えるための活動をしてきました。

 ところが、近年、ネットショッピングの場をつくるデジタル・プラットフォーマー(楽天、Amazon等)が急速にその存在感を増したことで、取引に不慣れな事業者や悪質な事業者などがネットショッピングに参加することが容易になり、消費者との間のトラブルが増加しています。

 このような状況を問題視し、現在、デジタル・プラットフォーマーの介在する消費者取引における環境整備等が活発に議論され、デジタル・プラットフォーマーに対する新たな法整備を設けることなどが検討されています。
そして、議論されている問題の中には、商品の表示に関する問題、すなわち、景品表示法に関する問題もあります。

そこで、本稿では、
●まず、景品表示法についてわかりやすく簡単に概説し、
●デジタル・プラットフォームにおいて生じている景品表示法に関するトラブルを紹介したうえ、
●デジタル・プラットフォーマーが負いうる責任と、今後の議論について解説していきます。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「【プラットフォーム事業者必見】景品表示法とデジタル・プラットフォーム」
について、詳しくご解説します。

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景品表示法とは? 目的・意義

景品表示法は、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。この法律の目的は、「一般消費者の利益を保護すること」であり、同法は、過大な景品類の提供、商品・サービスについて不当な表示を禁止しています。
規制の対象となる「景品類」とは、

  • 顧客を誘引する手段として(目的)
  • 取引に付随して提供する(提供方法)
  • 物品や金銭など、経済上の利益(内容)


をいいます(景品表示法2条3項)。具体的には、物品、建物、金券、株式、労務などが含まれます。

また、「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について、消費者に知らせる広告や表示全般を指します。具体的には、チラシ、パッケージ、ポスター、テレビ、セールストーク、ネット広告などが含まれます。

商品・サービスについて、過大な景品類の提供が行われると、消費者が景品に惑わされて質の良くないものや割高なものを買わされてしまうことになり、消費者にとって不利益になります。加えて、景品による競争がエスカレートすると、事業者は商品・サービスの内容での競争に力を入れなくなり、これがまた消費者の不利益につながっていくという悪循環を生むおそれがあります。

また、品質や価格などは、消費者が商品・サービスを選ぶ重要な基準になりますから、消費者の利益のためには、その表示は正しく、分かりやすくなければなりません。しかし、誇張が程度を超えた広告(誇大広告)など、商品・サービスの品質や価格について実際よりも著しく優良又は有利と見せかける表示が行われると、消費者の適切な商品・サービスの選択が妨げられてしまいます。

そこで、景品表示法は、このような不当景品や不当表示を禁止して、消費者がより良い商品・サービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守り、消費者の利益を保護しています。

なお、景品表示法は、公正な競争を阻害するおそれのある行為を規制する独占禁止法の特則になります(独占禁止法については、別の記事で詳しく解説していますので、そちらをご参照ください)。

「独占禁止法とは? デジタル・プラットフォームと独占禁止法1」
「独占禁止法上問題となる行為 デジタル・プラットフォームと独占禁止法2」
「独占禁止法に違反した場合の罰則と処分など デジタル・プラットフォームと独占禁止法3」

景品表示法が禁止している行為とは

過大な景品類の提供の禁止

景品表示法4条は、過大な景品類の提供を禁止しています。同条によれば、景品類の制限・禁止は、内閣総理大臣の告示により行われます。
景品類を提供する方法としては
①懸賞の方法を用いる場合(一般懸賞、共同懸賞)
②懸賞の方法によらない場合(総付景品)
があります。

「懸賞」とは、
・ くじその他偶然性を利用して定める方法
・ 特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法
によって景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいます。

これらの提供は、内閣総理大臣の告示によって限度額が定められており、これに違反する景品類の提供は、景品表示法に違反することとなります。

①は、「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(懸賞制限告示)」によって、②は、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(総付制限告示)」によって、それぞれ規制されています。

なお、商品・サービスの購入や来店を条件とせずに誰でも申し込むことができる懸賞などは、一般に「オープン懸賞」と呼ばれ、景品表示法の規制は適用されません。オープン懸賞で提供できる金品等の最高額は、以前は1000万円とされていましたが、現在は規制が撤廃されているため、提供できる金品等に上限額の定めはありません。

⑴ ①懸賞の方法を用いる景品類の提供

ア 一般懸賞
キャンペーン中にお買い物いただいた方に抽選で商品券をプレゼントする場合のように、商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供することです。
具体例として、

  • 一部の商品にのみ景品類を添付していて、外観上それが判断できない場合
  • パズル、クイズ等の回答の正誤により提供
  • 競技、遊技等の優劣により提供


等が挙げられます。
一般懸賞の限度額は次の通りです。

購入した商品・サービスの価額 提供できる景品類の最高額 提供する景品類の総額
5000円未満 商品・サービスの価額の20倍 懸賞にかかる売上予定総額の2%
5000円以上 10万円

イ 共同懸賞
商品・サービスの利用者に対し、一定の地域や業界の事業者が共同して景品類を提供することです。
具体例として、

  • 中元・歳末セール等の時期に、商店街 (これに準ずるショッピングビル等を含む。)が実施
  • 「電気まつり」等、一定の地域(市町村等)の同業者の相当多数が共同で実施

  • 一定の地域(市町村等)の小売業者又はサービス業者の相当多数が共同で実施


等が挙げられます。
共同懸賞の限度額は次の通りです。

最高額 総額
取引価額にかかわらず30万円 懸賞にかかる売上予定総額の3%

⑵ ②懸賞の方法によらない景品類の提供

懸賞によらず、商品・サービスを利用したり、来店したりした人にもれなく景品類を提供することを、総付景品といいます。ただし、自己の商品やサービスに次回利用できるポイント提供や割引券発行のように、取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること又は割り戻すことは、値引と認められる経済上の利益に該当し、景品表示法上の景品類には該当しません。

具体例として、

  • 商品・サービスの購入者全員に提供(わかりやすい例としては、企業が配布するノベルティ、ペットボトル飲料についた袋入り景品(おまけ)など)
  • 来店者全員に提供
  • 申込み又は入店の先着順に提供


等が挙げられます。
総付景品は、限度額が定められており、これに違反する景品類の提供は、景品表示法に違反することとなります。
限度額は次の通りです。

購入した商品・サービスの価額 提供できる景品類の最高額
1000円未満 200円
1000円以上 取引価額の10分の2

不当表示の禁止

景品表示法5条は、不当表示を禁止しています。同条は、不当表示をしてはならない対象として、
①品質、規格、その他の内容
②価格、その他の取引条件
③内閣総理大臣が指定するもの
という3つを定めています。①を優良誤認表示、②を有利誤認表示、③を誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示といいます。

⑴ 優良誤認表示

優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格などの内容について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示をいいます。

品質とは、商品に関する成分(原材料、純度、添加物など)や属性(性能、効果、鮮度など)をいいます。
規格とは、国、公的機関、民間団体などが定めた一定の要件を満たすことで自動的に又は認証などを経て表示することができる等級などをいいます。
その他の内容とは、原産地、製造方法、受賞の有無、有効期限など、商品・サービスの品質や規格に間接的に影響を及ぼすものをいいます。

具体的には、

  • 他校と適正に比較していないにも関わらず、予備校の合格実績を「〇〇大学合格実績No.1」のように表示する
  • 実際には5万km走行したにもかかわらず、「走行距離1万km」であるかのように表示する
  • ダイエット食品について、実際には合理的な根拠を示す資料がないにもかかわらず、あたかも食事制限をすることなく痩せられるかのように表示する
    最近では「飲むだけ 無理せずー10kgダイエット」、「減量アプローチ」、「カロリーブロック」、「するっとお通じ」及び「いつもの食事と一緒に飲むだけ重ね発酵ハーブ茶」等という表示について、合理的な根拠を示す資料がないとして措置命令があった違反事例があります。 健康食品について、実際には合理的な根拠を示す資料がないにもかかわらず、「がんが治る」など効果があるように表示する


などが例として挙げられます。
なお、化粧品、医薬品、医薬部外品については、薬機法(正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、旧薬事法)に表示できる効能効果の範囲が定められており、これを超える効果の広告は違反となります。
また、食品表示法が2015年から一部施行され、2020年に完全施工されました。全ての一般用加工食品等に、原則として栄養成分表示が義務づけられ、個別の原材料や添加物に、原則アレルゲンの表示が必要となっています。

⑵ 有利誤認表示

有利誤認表示とは、商品やサービスの価格などの取引条件について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく有利であると一般消費者に誤認される表示をいいます。

具体的には、

  • 実際には他社と同程度の内容量しかないにもかかわらず、「他社商品の1.5倍の内容量」であるかのように表示した
  • セール品であるとして「セール前価格」と比較対象する形で値段を表示したが、実際は「セール前価格」での販売実績がない場合


等が例として挙げられます。


この有利誤認表示の一つとして、不当な二重価格表示が禁止されています。
二重価格表示とは、商品等を販売する事業者が販売価格より高い他の価格を併記して表示することをいいます。簡単に言うと、他の事業者の価格や、自社が以前に販売していた価格を表示して、現在の自社の販売価格がお得であると消費者に感じさせるような表示です。
二重価格表示自体が規制されるわけではありませんが、不当な表示であれば消費者が誤認する恐れがあるため禁止されています。

具体的には、

  • 同一ではない商品の価格を比較対照する価格として表示する場合
  • 比較対照する価格について実際と異なる表示や曖昧な表示を行う場合


 なお、自社が過去に販売していた価格を比較対照価格とする場合も規制の対照です。当該比較対照価格で販売していた時期や期間などが問題となります。

(事例)
「通常価格3,000円の品 セール期間中1,980円に値引き」と表示しているが、実際には同一の商品について3,000円で販売した期間が2日間だけであった場合

また、将来の販売価格を比較対照価格に用いる場合も規制されます。


(事例)
「期間限定キャンペーン割引価格1,980円 来月以降は3,000円になります」と表示しているが、実際には同一の商品を来月以降も1,980円で販売する場合

また、場合によって優良誤認表示または有利誤認表示に該当しうる不当表示として不当な比較広告表示があります。
競争事業者の商品やサービスと比較する表示(比較広告)については、①比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること、②実証されている数値や事実を正確かつ敵性に引用していること、③比較の方法が公正であることという3つの要件を満たさない場合、不当表示として禁止されます。

具体的には

  • 他社でも同じ技術を採用した商品を販売しているのに、「当社だけの技術」として表示
  • 他校と異なる方法で数値化し、予備校の合格実績を「〇〇大学合格実績No.1」と表示
  • 他社の割引サービスを除外して比較し、自社が最も安いように表示

⑶ 誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示

内閣総理大臣は、次の6つの表示を指定しています。

  • 無果汁の清涼飲料水等についての表示
  • 商品の原産国に関する不当な表示
  • 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  • 不動産のおとり広告に関する表示
    例えば、実在しない不動産、取引の対象となり得ない不動産、取引する意思のない不動産についての不動産広告
  • おとり広告に関する表示
  • 有料老人ホームに関する不当な表示

景品表示法に違反した場合の罰則と処分

⑴ 違反した場合の流れ

通報を受けた場合など、景品表示法に違反している疑いがある場合、消費者庁が、関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施します。

調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は、当該行為を行っている事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。(なお、平成21年9月に景品表示法の所管が消費者庁に移管される前は公正取引委員会の所管で「排除命令」という名称でした。)措置命令に違反した場合、下記の罰則が課されることとなります。
違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は指導の措置が採られます。
また、事業者が優良誤認表示、有利誤認表示をした場合、消費者庁は、その他の要件を満たす限り、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じます(課徴金納付命令)。

⑵ 措置命令に違反した場合の罰則

措置命令に違反した場合、違反の内容に応じて罰則が設けられています。

  • 措置命令に従わずに、措置命令違反となった場合、
    ― 2年以下の懲役
    ― 300万円以下の罰金
    のいずれか、または両方を科される可能性があります。

  • また、法人の場合、
    ― 3億円以下の罰金
    が科される可能性があります。

  • さらに、措置命令違反があった場合において、違反行為を知りながら、その是正に必要な措置をとらなかった代表者、役員に対しては、
    ― 300万円以下の罰金
    が科される可能性があります。

  • 加えて、措置命令を出すために必要な範囲で提出を求められる報告や帳簿書類などを提出しなかった場合、また、虚偽の報告などをした場合、
    ― 1年以下の懲役
    ― 300万円以下の罰金
    のいずれかを科される可能性があります。

⑶ 景品表示法に違反した場合の行政処分

事業者が、優良誤認表示、有利誤認表示にあたる行為をした場合、上記の罰則に加えて、課徴金の納付を命じられる場合があります。
課徴金納付命令は、不当表示という違法な手段で得た利益を徴収する目的で導入されたものです。

基本的には、不当表示をしていた期間に販売された商品やサービスの売上高の3%が課徴金対象金額になります。

デジタル・プラットフォームと過大な景品類の提供の禁止

インターネット上での過大な景品類の提供

インターネット上でも、ショッピングサイトでの購入者向けに懸賞企画を実施するなどの景品提供がよく行われますが、これらについても景品表示法の適用があります。
もっとも、インターネット上で行われる場合、実際の店舗等で行われる取引とは異なる側面があるため、いくつかの問題点が存在します。

⑴ ショッピングサイト等での懸賞企画

公正取引委員会は、懸賞を行うサイトが、ショッピングサイトからリンクしていたり、ショッピングサイト上にある場合でも、消費者はホームページ内のサイト間を自由に移動できるため、取引に付随しているとはいえず、原則、オープン懸賞として行うことができるとしています。
もっとも、ショッピングサイトにおいて商品等を購入しなければ懸賞に応募できない場合や、商品等を購入することにより懸賞に応募することが容易になる場合には、取引に付随していると認められ、景品表示法の適用を受けます。

⑵ 入会費無料の会員サービスにおける懸賞企画

入会費が無料である会員制サイトの場合、原則として会員登録をしただけでは何ら取引を伴っていないと考えられるため、会員に対して懸賞企画を行っても、オープン懸賞として扱うことができます。
もっとも、会員費無料であっても、入会に際して、クレジットカード番号の入力を条件とする等取引そのものに結びつく情報提供を要求するような場合には、取引付随性が認められやすくなるため注意が必要です。

⑶ インターネット上のショッピングモールでの共同懸賞

共同懸賞は、実際に存在する商店街や事業者の地域的な結びつきを前提としているため、インターネット上のショッピングモールで複数の出店者が、取引を行った顧客を対象とした懸賞企画を共同して実施する場合には、かかる前提を満たさず、共同懸賞には当たらないと考えられます。したがって、景品表示法で規定する共同懸賞に関する規定の適用は受けません。

デジタル・プラットフォーマーの責任

景品規制の対象となる「景品類」は、上記の通り「自己の供給する商品又は役務」の取引に付随して行われる必要があります。
したがって、デジタル・プラットフォーム上の出品者が景品類を提供したとしても、消費者に対して自己の商品又は役務を提供するわけではないデジタル・プラットフォーマーは、景品表示法上の責任を負いません。
また、デジタル・プラットフォーマーがデジタル・プラットフォームの利用者に対して景品を提供する場合であっても、「自己の供給する商品又は役務」に付随しなければ、景品表示法の適用はない、ということになります。
もっとも、デジタル・プラットフォーマーが、デジタル・プラットフォームの有料会員に向けて一定のサービスを提供している場合、当該有料会員に対して「景品類」を提供する行為には、景品表示法が適用されることとなります。

デジタル・プラットフォームと不当表示

デジタル・プラットフォームにおいて、不当表示としてよく問題視されているものには、「消費者を誤認させる虚偽・誇大な広告表示」と、「消費者の信頼を損なうレビュー」があります。

消費者を誤認させる虚偽・誇大な広告表示

デジタル・プラットフォーム上において、虚偽・誇大な広告表示などが見受けられ、消費者の誤認を生じさせていることが問題視されています。
最近の具体例として、新型コロナウイルスの性状特性が明らかになっていないにもかかわらず、新型コロナウイルスに対する予防効果があると表示していることなどが挙げられます。

このような表示は、まさに景品表示法により禁止されている不当表示に当たります。

消費者の信頼を損なうレビュー

デジタル・プラットフォームにおけるレビューの中には、商品等の出品事業者やその代理人等が、第三者(レビューワー)に対して一定のレビューを書き込むように依頼し、当該レビューワーがその依頼の事実を伏せて書き込んだものが含まれているとの指摘があります(やらせレビュー、サクラレビューなどとも呼ばれています)。

景品表示法上の不当表示は、商品等の内容等について「実際のものよりも著しく優良又は有利」であったり、「事実に相違して他の事業者が供給するものよりも著しく優良又は有利」であると消費者に誤認される表示です。

ここでいう商品等の内容等は、品質、規格のように商品等そのものに直接関わるものだけでなく、顧客による評価(顧客満足度など)のような事項も含む広範な概念であるため、上記のようなやらせレビューが、商品等の内容等について具体的な記載をする際に、虚偽・誇大な表現をしていたものである場合、そのようなレビューは、景品表示法上禁止される不当表示に該当すると考えられます。

具体例:

ダイエット食品について、具体的な成分の紹介をしつつ、「一日2回これを飲んだだけで、1か月で5kg痩せました」等の虚偽・誇大に当たる具体的な痩身効果をコメントとして記載する場合

また、レビュー内容が虚偽・誇大であるとまでは言えない場合であっても、好意的なレビューを書くことを依頼された事実を伏せることにより、あたかも多くの顧客が自発的に好意的な評価を書き込んだものであるかのように消費者に認識せるようなレビューは、不当表示に該当する場合があると考えられます。

具体例:
ある本について、出品者から依頼を受けて「ためになりました」、「良い本です」などの好意的な感想をコメントとして記載する場合

デジタル・プラットフォーマーの責任

事業者が景品表示法の表示規制の対象となるためには、

  • まず、当該事業者が、問題となる商品・役務を「供給」しているといえること(「供給主体性」が認められること)が必要であり、その上で、
  • 当該事業者が不当表示を行ったといえること(「表示主体性」が認められること)が必要です。


供給主体性が認められない限り、その事業者がどのような表示を行っても景品表示法の規制対象とはならなりません。

そして、オンライン・ショッピングモールに出品されている商品の表示は、その多くが、当該商品を消費者に対し販売している出品事業者により行われているものであり、通常は、当該出品事業者が景品表示法の規制対象となるものと考えられます。

もっとも、景品表示法の解釈上、例えば、オンライン・ショッピングモール運営事業者が、商品等を出品事業者と共に供給していると評価され(=供給主体性あり)、かつ、オンライン・ショッピングモール運営事業者が自ら表示又は出品事業者に関与して共同で表示していると評価される場合(=表示主体性あり)には、オンライン・ショッピングモール運営事業者自身も景品表示法の規制対象となると考えられます。

⑴ デジタル・プラットフォーマーの供給主体性

「供給主体性」は、商品等の提供・流通の実態をみて実質的に判断される要件です。
直接消費者と取引をしていない事業者に「供給主体性」が認められた例として、フランチャイズの本部が行う表示等に関し、本部自体は消費者との間で当該商品等の売買契約の当事者ではない場合でも、この要件を満たすと判断された処分事例があります。

もっとも、現在までのところ、出品事業者が販売する商品等について、オンライン・ショッピングモール運営事業者に対して行われた処分事例はないため、オンライン・ショッピングモール運営事業者にどのような場合に「供給主体性」が認められるのかについては、必ずしも明確には示されていません。

⑵ デジタル・プラットフォーマーの表示主体性

「表示主体性」は、不当表示の内容の決定に関与した事業者に認められますが、自らもしくは他の者と共同して積極的に当該表示の内容を決定した場合のみならず、他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた場合や、他の者にその決定を委ねた場合も含まれます。
しかしながら、出品事業者が販売する商品等について、オンライン・ショッピングモール運営事業者に対して行われた処分事例はないため、オンライン・ショッピングモール運営事業者及び出品事業者に対し、上記「表示主体性」についての考え方をどのように当てはめるのかについては、必ずしも明確には示されていません。

⑶ 今後の議論

デジタル・プラットフォーマーへの景品表示法の適用については、現在活発に議論されているところであり、いまだ適用された事例もないため、現段階では「適用される」と断言することはできません。
しかし、消費者の利益を保護するためにデジタル・プラットフォーマーにも責任を負わせようという議論があることは事実であり、今後は、デジタル・プラットフォーマーにも景品表示法が適用される可能性があります。
また、デジタル・プラットフォーマーが景品表示法の規制対象となる場合、同法による行政処分の対象となり得ることに加え、同法第26条に基づき、適正な表示を確保するためのコンプライアンス体制の整備に係る義務も負うことになります。
したがって、デジタル・プラットフォーマーは、景品表示法の改正や新たなガイドライン、適用事例について、積極的に情報収集することが肝要です。

デジタル・プラットフォーマーに対する今後の取り組み

また、現在、デジタル・プラットフォーマーへの景品表示法の適用のみならず、プラットフォーム上で生じる問題に対する積極的な取り組みをデジタル・プラットフォーマーに求める議論もなされています。
議論されている内容として、

  • 出品者が景品表示法に違反することがデジタル・プラットフォームの規約にも違反する場合の、デジタル・プラットフォーマーによる違反者への責任追及、是正要求の在り方

  • 不当な表示についてのモニタリングや、景品表示法等の順守に資する適切なコンプライアンス体制を構築するよう出品事業者を指導したり、出品事業者における景品表示法等にかかる知識向上を促進するなど出品事業者の管理を適切に行うこと

  • 行政機関や団体等と協力して積極的な情報交換を行うこと


等が挙げられます。
デジタル・プラットフォーマーは、これらの議論の動向を踏まえ、自己のプラットフォームで景品表示法違反がなされないようにする取り組みを行ってく必要があるといえます。

まとめ

以上に見てきたように、デジタル・プラットフォーマーは、今後、自己に景品表示法が適用される可能性を認識しつつ、出品者に景品表示法違反がないようにする必要があります。
もっとも、デジタル・プラットフォーマーへの景品表示法の適用は、まだ議論の最中であり、未来への見通しや、具体的にどのような行動をとればよいのかを自ら判断することは容易ではありません。

そのため、デジタル・プラットフォーマーの具体的な対応については、専門的な知見から、個別に検討することが望まれます。
デジタル・プラットフォームについて知識・経験のある弁護士に相談することにより、トラブルへの対応、トラブルの未然防止に関する助言を得ることをお勧めいたします。

【参考】
消費者を誤認させる表示の是正等について

デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会論点整理

景品表示法に関するよくある質問

Q.コンプガチャは景品表示法上どのように扱われるのでしょうか?
A.コンプガチャとは、オンラインゲームにおいて、ゲーム利用者に対し、有料ガチャ(ここでいう「ガチャ」とは、オンラインゲームの中で偶然性を利用して、ゲームの利用者に対してアイテム等を供給する仕組みを指します。)によって絵柄のついたアイテム等を販売し、異なる得た柄の特定の組み合わせをそろえた利用者に対して特別なアイテム等を提供するものをいいます。このようなコンプガチャは、全面的に禁止されています。
なお、有料のガチャ自体は、景品規制される訳ではありませんが、次のような違反事例があります。
アワ・パーム・カンパニー・リミテッドが「THE KING OF FIGHTERS’98 ULTIMATE MATCH Online」というオンラインゲームで行った5日間の期間限定の「ガチャ」で、「クーラ」という特定のキャラが3%の確率で当たると表示していましたが、実際の確率は0.33%だったという点で、有利誤認表示にあたるとされて消費者庁の措置命令を受けました。


Q.「飲むだけで●kg痩せる!」や、「●●に効果」等の表示があっても、「※コメントは個人の感想です。使用感には個人差があります。」などと表示していれば、問題ないですか?
A.効果を打ち消す表示(打消し表示)があっても、違法となる場合があります。打消し表示があっても、一般消費者が見落としてまうほど、文字が小さい場合や、強調表示された文字と打消し文字の大きさのバランス、配置箇所、背景との区別がつきやすいか否か等によっても景品表示法上問題となりうるので、チェックが必要です。
消費者庁は、「飲むだけ 無理せず-10kgダイエット」、「減量アプローチ」、「カロリーブロック」、「するっとお通じ」及び「いつもの食事と一緒に飲むだけ●●茶」等と表示することにより、あたかも、普段摂取している飲料を本件商品に替えるだけで、容易に著しい痩身効果が得られるかのように示す表示について、「※コメントは個人の感想です。使用感には個人差があります。」及び「※●●に寄せられたお客様の声であり、効果ではありません。」と表示していましたが、当該表示は、一般消費者が前記表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではないとして、措置命令を行っています。


Q.キャンペーン中にお買い物いただいた方に抽選で商品券をプレゼントをしたいのですがどのような表示が適切でしょうか?
A.商品券が一般懸賞に該当します。次の限度額を超えない商品券であればプレゼント可能です。購入金額に応じて景品とできる商品券の金額が異なりますので、景品価格は、例えば最低金額の商品の20倍以内とする、または、一律5、000円以上購入の方を対象として10万円以内の商品券とするなど工夫が必要です。また、景品価格の総額についても注意してください。
仮に販売している商品の最低価格が300円の場合、6、000円以下の価額の商品券であれば、「商品・サービスの価格の20倍」という要件はクリアできます。あとは、売上予定総額の2%以内に収まるよう、計算をすればよいのです。
そして、この規制の範囲内であることを前提に、
また、キャンペーンの対象期間を明確にするなど、消費者の誤認がないような表示をしてください。

購入した商品・サービスの価額 提供できる景品類の最高額 提供する景品類の総額
5000円未満 商品・サービスの価額の20倍 懸賞にかかる売上予定総額の2%
5000円以上 10万円


Q.税込価格と税抜価格を併記した場合に問題となることはありますか?
A.税込価格と税抜価格が併記されている場合、税抜価格の表示に対して税込価格の表示が小さい場合や、文字や背景の色、文字間の余白、行間の余白など、各要素を勘案し、一般消費者が誤認するような表示であれば不当表示とされる場合があります。




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