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独占禁止法違反の罰則と処分 事例を交え解説! デジタル・プラットフォームと独占禁止法3


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「独占禁止法違反の罰則と処分 事例を交え解説! デジタル・プラットフォームと独占禁止法3」
について、詳しくご解説します。

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はじめに

この記事は、「独占禁止法上問題となる行為 デジタル・プラットフォームと独占禁止法2」の続きです。
前回は、独占禁止法上問題となる行為のうち、優越的地位の濫用と、競合事業者を排除し得る行為について解説しました。
本稿からは、取引先の事業活動を制限し得る行為、競争制限的な企業結合について、具体的に解説していきます。

独占禁止法上問題となる行為

取引先の事業活動を制限し得る行為

(1)規制の基本的な考え方

デジタル・プラットフォーマーは、デジタル・プラットフォームを自ら運営・管理する立場上、当該デジタル・プラットフォームの利用事業者の事業活動を制限することが可能です。
このような制限は、消費者の保護など正当な目的を達成するために行われる場合もあります。
しかし、競合事業者を排除したり、新規参入を阻止したりすることにより、価格維持効果や市場閉鎖効果が生じる場合には、公正な競争を阻害するため、独占禁止法上問題となるおそれがあります。

価格維持効果が生じる場合とは、取引している事業者の事業活動の制限により、制限された事業者とその競争者との間の競争が妨げられ、制限された事業者がその意思で価格をある程度自由に左右し、当該商品の価格を維持し又は引き上げることができるような状態をもたらすおそれが生じる場合をいいます。
具体的には、商品Xの生産者Aが、Aから商品Xを買って第三者に販売している事業者B・事業者Cに対して、Bが商品Xを販売できる地域を甲市、Cが商品Xを販売できる地域を乙市と制限し、さらに、甲市の消費者がCから、乙市の消費者がBから商品を買おうとした場合には、B・Cはこれを断らなければならないとする制限を加えた場合が考えられます。この場合、B及びCの間では、商品Xの販売について競争が起こらないため、B・Cは、その販売地域において商品Xの価格を自由に決定することができます。

市場閉鎖効果が生じる場合とは、取引している事業者の事業活動の制限により、新規参入者や既存の競争者にとって、代替的な取引先を容易に確保することができなくなり、事業活動に要する費用が引き上げられる、新規参入や新商品開発等の意欲が損なわれるといった、新規参入者や既存の競争者が排除される又はこれらの取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じる場合をいいます。
具体的には、小売業を営むY社、Z社の提供する商品が、卸売販売業者A以外から購入することが困難な場合において、Y社が、Aに対して強い影響力を有していることを契機として、Aに対し、Z社に当該商品を販売させないように指示するという場合が考えられます。この場合、Z社が商品を提供できなくなり市場から排除される、又は同市場における取引機会が減少するという効果が生じるおそれがあります。

以下では、取引先の事業活動を制限し得る行為のうち、特に問題となっている、最恵国待遇条項(MFN条項)、販売促進活動の制限、アプリ内課金手数料の設定とアプリ外決済の制限について解説します。

(2)最恵国待遇条項(MFN条項)

最恵国待遇条項(MFN条項)とは、契約において一方当事者(利用事業者)が他方当事者(デジタル・プラットフォーマー)に取引上、最も有利な条件又は地位を提供することを確約する条項のことです。
具体例として、MFN条項に独占禁止法違反の疑いがかけられた事例を紹介します。

【事例】
公正取引委員会は、アマゾンジャパン合同会社が、Amazon マーケットプレイスの出品者との間の出品関連契約においてMFN条項を定めることにより、出品者の事業活動を制限している疑いがあったことから、同社に対し、独占禁止法の規定に基づいて審査を行った。
その後、同社から、自発的な措置を速やかに講じるとの申出がなされ、その内容が疑いを解消するものと認められたことから、本件審査は終了した。

【MFN条項の具体的な内容】
① 価格等の同等性条件
Amazonの通販サイトでの価格が、他社の通販サイトでの価格よりも高くならないこと(Amazonで買うのが一番安いか、少なくとも他社で買うのと同じ価格であること)を、出品者等に約束させる条件。
② 品揃えの同等性条件
出品者が他社の通販サイトで販売する全商品について、Amazonマーケットプレイスにおいても全商品を出品するようにさせる条件。

この事例では、上記のような内容のMFN条項が、出品される商品の価格維持効果、他のプラットフォームを排除する市場閉鎖効果を生じさせ、独占禁止法違反となるおそれがあるとして、審査の対象となりました。

デジタル・プラットフォーマーが利用事業者に対してMFN条項を設定する場合、利用事業者は、当該デジタル・プラットフォーム外での販売における値引きや品揃えの拡充に制限を受けることとなるため、価格や品揃えについての競争が減少することとなります。
また、他のデジタル・プラットフォーマーにとっては、既存のデジタル・プラットフォームよりも安く商品を売うることで差別化を図るというビジネスモデルが潰され、新規参入が阻害されたり、品揃えの豊富さを巡って競争するインセンティブが減少したりすることとなります。

このように、MFN条項を設定すると、利用事業者間やデジタル・プラットフォーム間の競争を阻害し、価格や品揃えの充実を巡る競争による利益を消費者が享受できなくなるおそれがあります。
MFN条項が常に独占禁止法違反になるわけではありませんが、市場における有力なデジタル・プラットフォーマーが単独でMFN条項を定める場合や、複数のデジタル・プラットフォーマーが並列的に定める場合には、価格維持効果や市場閉鎖効果が生じないかどうかを、詳細に検討する必要があります。

(3)販売促進活動の制限

販売促進活動の制限として、

  1. デジタル・プラットフォームで商品を購入した顧客の情報を、利用事業者が利用することの制限
  2. 利用事業者がデジタル・プラットフォームに自社ウェブサイト等のリンクを張って販売促進活動を行うことの禁止


が挙げられます。

1.について、このような制限は、個人情報保護という正当な目的を達成するために行われることもあります。
しかし、デジタル・プラットフォーマーやその関連会社の販売を有利に進めるためにこのような制限を行う場合には、利用事業者の販売を不当に妨害するものとして、独占禁止法上問題となるおそれがあります。

2.について、このような制限は、商品の販売がデジタル・プラットフォーム外で行われることによりデジタル・プラットフォーマーの手数料が減少し、デジタル・プラットフォームのビジネスモデルが成り立たなくなる (これを、フリーライダー問題といいます) ことを防ぐ観点から、必要とされることもあります。
しかし、有力なデジタル・プラットフォーマーがデジタル・プラットフォーム外における販売促進活動を制限することにより、利用事業者間におけるデジタル・プラットフォーム外での価格競争が阻害され、価格維持効果が生じる場合には、独占禁止法上問題となるおそれがあります。

したがって、デジタル・プラットフォーマーは、利用事業者による顧客情報の利用やデジタル・プラットフォーム外での販売促進活動について制限を設ける場合には、その範囲、理由等について書面に定めておくことが必要です。

(4)アプリ内課金手数料の設定とアプリ外決済の制限

アプリストアを運営するデジタル・プラットフォーマーが、アプリ購入の決済方法をアプリ内で自らが提供する方法に限定しようとすることがあります。
同一の商品について、アプリ内で決済するか、アプリ外(出品者のウェブサイト等)で決済するかは、本来消費者が自由に選択できなければなりません。
したがって、アプリ内決済に限定しようとする行為、すなわち、

  • アプリ外決済を禁止してアプリ内課金の利用を不当に強制すること
  • アプリ外決済の価格を拘束すること
  • アプリ外決済に係る情報提供を不当に妨げること


は、独占禁止法上問題となるおそれがあります。

そこで、デジタル・プラットフォーマーは、アプリストアを運営するにあたって、アプリ内決済への限定を過剰に行わず、アプリの利用にかかる手数料についても、合理的な根拠に基づいた水準に定めるといった対応をする必要があります。

競争制限的な企業結合

令和元年11月、ヤフー株式会社の持株会社であるZホールディングス株式会社と、LINE株式会社が株式取得などによって経営統合を計画した事案について話題になりました。https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1911/18/news123.html
この企業結合は、公正取引委員会が独占禁止法に違反する企業結合にならないか重点的な審査を行いましたがhttps://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/aug/200804.html
ここでは、競争制限的な企業結合について解説します。

(1)規制の基本的な考え方

ある市場を二分しているA社とB社が合併してしまうと、新会社のABが市場を独占することとなり、競争がなくなってしまいます。
そこで、公正な競争を確保することを目的とする独占禁止法は、このような競争制限的な企業結合を禁止し、買う会社と買われる会社の国内売上高が所定の基準額を超える案件について、公正取引委員会への事前(取引完了前)届出の義務を課しています。
国内売上高とは、会社等の最終事業年度における売上高のうち、国内において供給された商品の価額及び役務の価額を合計した額をいいます。

(2)企業結合ガイドラインの改定

デジタル市場での企業結合には、買われる企業の売上高や市場シェアが小さい場合であっても、当該企業が有している大量のデータ(ビッグデータ)が買い手に独占されることにより、公正な競争が阻害されるおそれがあるという特徴があります。
そこで、公正取引委員会は、令和元年12月、「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(企業結合ガイドライン)を改定し、デジタル市場のこのような特徴をとらえた新たなガイドラインを示しました。
この改定により、企業結合ガイドラインに、デジタル・プラットフォームやデジタル分野の特性をふまえた競争分析の手法について具体的な解説が盛り込まれました。
また、国内売上高が事前届出義務発生の基準額に達しない場合でも、買収総額が400億円を超すと見込まれ、買われる企業の国内売上高の合計額が1億円を超える場合などには、公正取引委員会に相談することが望ましいとの考え方が示されました。
この改定は、公正取引委員会が企業結合の審査対象を実質的に拡大しようとしているものといえますが、デジタル・プラットフォーマーが、法的な事前届出義務がないにもかかわらず自発的に公正取引委員会に相談するか否かは、相談が行われなかった企業結合に対して公正取引委員会が厳正な審査等に乗り出すか否かにかかっています。

デジタル・プラットフォーマーは、訴訟や企業結合の審査事例等についての情報収集を欠かさないようにする必要があります。

独占禁止法に違反した場合の罰則と処分

デジタル・プラットフォーマーの行為が、これまで解説してきた行為に該当し、独占禁止法に違反する場合には、差止請求・損害賠償請求・行政処分・刑事処分などによって、制裁が科される可能性があります。
具体的には、以下の通りです。

  • 差止請求(独占禁止法第24条)
    ⮚ 不公正な取引方法によって、著しい損害を受ける、又は、受けるおそれのある者が、侵害の停止又は予防を請求します。

  • 損害賠償請求(独占禁止法第25条)
    ⮚ 独占禁止法違反が認められた場合、違反について故意や過失がない場合であっても、被害者に対して、損害賠償責任を負います。

  • 行政処分
    ⮚ 違反行為を止めるよう命じる排除措置命令を受けます。
    ⮚ また、課徴金納付命令を受けます。

  • 刑事罰
    ⮚ 法人は『5億円以下の罰金』(独占禁止法第95条)、個人は『5年以下の懲役または500万円以下の罰金』が科せられる可能性があります(独占禁止法第89条1項1号、2号)。
    ⮚ また、排除措置命令に背いた場合は、法人は『3億円以下の罰金』(独占禁止法第95条)、個人は『2年以下の懲役または300万円以下の罰金』が科せられる可能性があります(独占禁止法第90条3号)。


このように、独占禁止法違反は、デジタル・プラットフォーマーにとって非常に大きなリスクとなるといえます。

まとめ

以上に見てきたように、デジタル・プラットフォーマーに対しては、独占禁止法の観点から様々な規制がなされています。
違反した際のリスクも非常に大きいため、デジタル・プラットフォーマーとしては、自らの行為が、他の事業者との競争を回避する行為といえないか、他の事業者を市場から排除しようとする行為といえないか(優越的地位の濫用のような例外的な規制を除きます)を常にチェックすることが必要です。

もっとも、独占禁止法の規制内容は、他の法律と比較してみても特に抽象度が高く、具体的にどのような行為が違反となるのかを理解することは容易ではありません。
また、デジタル・プラットフォーマーに対する規制は固まったばかりであり、公正取引委員会が実際にどのような行為にどの程度厳正な措置をとるのかについては、未だ正確に見通すことは困難です。

そのため、デジタル・プラットフォーマーの具体的な対応については、専門的な知見から、個別に検討することが望まれます。
デジタル・プラットフォームについて知識・経験のある弁護士に相談することにより、トラブルへの対応、トラブルの未然防止に関する助言を得ることをお勧めいたします。

なお、3回にわたり解説してきた内容にについて、より詳しく知りたい場合には、以下の法律やガイドライン等を参照してください。


独占禁止法

公正取引委員会 「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書」

公正取引委員会 「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」

公正取引委員会 「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」

公正取引委員会 「消費者向けeコマースの取引実態に関する調査報告書」

公正取引委員会 「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査報告書」


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