澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「【倒産した取引先の担保権の実行】債権回収を図るには?」
について、わかりやすく解説します。
約定担保物権
約定担保物権とは、当事者間の契約によって生じる担保物権です。
所有権留保
(1)所有権留保とは
所有権留保とは、商品販売にあたり、買主が代金を支払うまで所有権は売主から買主に移転しない旨を定めるものです。留保された所有権を根拠に、代金未払いの商品を引き上げることで、債権回収を図ります。
(2)実行方法
所有権留保の実行には、まず目的物が取引先の手元に存在することが必要です。
第三者に転売済みの場合には、第三者が即時取得(動産を占有している無権利者を真の権利者と過失なく誤信して取引した者に、完全な所有権を取得させる制度)により所有権を取得している可能性もあります。したがって、第三者に転売され、引き渡されているような場合には、所有権留保を行使することはできません。
ただし、第三者に転売され、かつ、引き渡されている場合には、動産売買先取特権に基づく物上代位により、転売代金債権の差押えができる可能性があるので、これを検討します。
目的物が取引先の手元に存在することを確認したら、取引先の手元にある所有権留保物件を引き揚げます。
しかし、取引先に無断で引き揚げる行為(自力救済)は禁止されていますので、目的物を引揚げる際には、必ず取引先の承諾を書面で得るようにしましょう。なお、予め売主が目的物を引揚げることができる旨を契約書で定めたとしても、かなり限定的な場面でしか有効性が認められません。
また、取引先が転売する恐れがあるときには、裁判所に目的物を処分・占有移転を禁止する保全処分を申し立てることもできます。
所有権留保物件を引揚げたら、市場で適正価格にて売却するなどして金銭化し、売買代金債権に充当します。
(3)注意点
取引先が倒産手続きの申立てを行った場合、他の債権者が取引先に押し寄せて、所有権留保物件を持ち出すおそれもあります。
そのため、倒産の知らせを受けたら、取引先に急行しできるだけ早く物件を引き揚げたいところです。引き揚げが実行できない場合であっても、物件が現存するか、どのような状態で保管されているかを確認すべきです。
そして、他の債権者の持ち出しを防ぐため、自社のものと示す張り紙をしましょう。
加えて、取引先の弁護士(申立代理人弁護士)に対して、所有権留保物件を有していることを知らせたうえで、他の債権者に持ち出されないように物件の管理徹底を要請しましょう。
また、無断で引き揚げを行った場合、窃盗罪に問われる可能性もあります。弁護士もしくは現場の代表者に了承を得たうえで引き揚げを行うようにしましょう。
集合動産譲渡担保
(1)集合動産譲渡担保とは
譲渡担保は、取引先(債務者)の財産の所有権を債権者に移転し、取引先の債務不履行時に対象物件を処分して、処分代金を債権回収に充てるものです。
そして、集合動産譲渡担保は、倉庫や店舗のなどの一定の場所に搬入された物を対象とし、担保の目的が変動する「集合物」を対象とする担保物権です。
(2)実行方法
集合動産譲渡担保の場合、取引先に担保権を実行することを通知します。通知を送付することによって、変動する集合物の内容は固定化され、集合物の処分権限を奪うことができます。
通知の方法は、内容証明郵便で取引先(債務者)に送付するのが基本ですが、内容証明郵便と併行して相手方代理人弁護士に電話または通知を直接持参をするとよいでしょう。
次に、取引先の承諾を得た上で、商品などを市場で適正価格で売却するか、市場価格により担保権者が引き取ります。そして、その処分代金を担保権者の債権に充当します。
それでもなお売却代金が被担保債権の金額を下回る場合には、取引先に対し、債権の残高の支払いを請求します。
他方、売却代金に余剰がある場合は、取引先に返還します。
なお、こちらはあくまで一般的なものに限ります。複雑な内容証明を作成予定の方は、お問い合わせよりご連絡下さい。
(3)注意点
所有権留保の場合と同様、
②申立代理人の弁護士と連絡をとり、集合動産譲渡担保の内容や状況を知らせる
③物件の引揚げについて取引先の了承を得る
④転売などの可能性があるときには保全処分を申し立てる
⑤売却する際には適正価格となるようにする
などの点に注意すべきです。
また、倒産手続き開始申立ての情報を得たら、ただちに対象物件の保管場所に行って、商品が自社に帰属することを、立て看板や張り紙など(明認方法)を掲げて示すべきです。
債権譲渡担保
(1)債権譲渡担保とは
債権譲渡担保とは、取引先(債務者)が第三者に対して有する債権を担保とするものです。とくに、現在存在する債権とともに将来継続的に発生する債権も包括的に担保にとる将来債権譲渡担保が多く使われています。
債権譲渡担保の対抗要件は、通常の債権譲渡と同様です。(債権譲渡の対抗要件の詳細については別記事参照。※近日掲載予定です)
なお、第三債務者への通知に、債権に譲渡担保設定した旨に加えて将来別途の通知があるまでは譲渡人(取引先)に弁済すれば足りる旨を記載しても、対抗要件としての効果を妨げることはないとされています(最高判平成13年11月22日)。ただ、債権譲渡担保の場合、取引先に信用不安を生じさせないよう、債権譲渡を第三債務者に通知しないサイレント方式(担保実行時まで債務者対抗要件を具備しない方式)で行われることが多いです。そのため、実行時に対抗要件の具備もする必要が生じます。
(2)実行方法
ここでは、担保実行時まで債務者対抗要件を具備しない方式で進められた場合の実行方法について説明します。
まず、債権譲渡登記を経由している場合はどうでしょう。
債権譲渡担保の設定の際に登記を経由することで、第三債務者以外の者(対象債権が譲渡担保権者以外の者に対しても二重に譲渡された場合における譲受人)との関係で対抗できることになります(これを第三者対抗要件といいます)。
もっとも第三債務者に対して、自身が債権者であること対抗できなければ、第三債務者に支払いを求めることはできません(これを債務者対抗要件といいます)。
債権譲渡登記がなされている場合に、債務者対抗要件を備えるためには、登記事項証明書(登記事項が記載された法務省発行の証明書)を第三債務者に交付して、債権譲渡がなされたことを通知します。
そこで、担保権者は第三債務者に対し、内容証明郵便にて、債権譲渡担保が実行されたことにより対象債権を確定的に取得したとの通知を行うとともに、登記事項証明書を配達証明郵便にて送付します。
これにより、第三債務者との関係でも対抗要件を備えたことになります。
では、債権譲渡登記をしていない場合についてはどうでしょう。
この場合、第三債務者対抗要件と債務者対抗要件を具備するため、取引先(債権譲渡人)から第三債務者に対するか確定日付のある証書による通知をするか、または第三債務者の確定日付のある証書による承諾を取得します(詳しくは別記事参照※近日掲載予定です)。
また、第三債務者への対抗要件の具備と同時に、取引先に対しても、債権譲渡担保を実行した旨を通知します。
取引先には取立権が留保され、取引先自身が第三債務者から債権を回収することができるので取立権を奪う必要があります。債権譲渡担保を実行する旨を通知することで取立権を奪うことができ、取引先が第三債務者から回収することを防止できます。
債権者は、第三債務者との関係で対抗要件を備えたら、第三債務者から直接取り立てを行います。
たとえば、債権譲渡担保の対象債権が売掛債権であれば、その買主から売買代金の取り立てを行い、被担保債権の弁済に充当します。
その際に、回収債権が被担保債権を超える、もしくは回収金額が被担保債権に満たない場合は清算を行う必要があります。余剰金がある場合にはこれを取引先に返還し、不足があれば取引先に残った債権額の支払い請求をします。
(3)注意点
取引先(債務者)に債務不履行があった場合、ただちに債権譲渡担保の実行手続きをとったうえで、第三債務者に直接連絡をとり、第三債務者からの回収を行いましょう。
取引先の取立権は債権譲渡担保が実行されない限り消滅しません。つまり、取引先が実行通知の到達前に第三債務者からの取り立てを行ってしまうと、譲渡を受けた債権が消滅してしまい担保権者が取り立てを行うことができなくなってしまいます。
また、担保権者は取引先に対して、第三債務者に対する債権の明細や根拠資料を提供するように求めるなど、譲り受けた債権の情報収集を行うことも重要です。
抵当権
(1)抵当権とは
抵当権とは、金融機関等が債務の弁済がなされなかった場合に備えて不動産等に担保を設定するものです。特定の債権を担保する普通抵当権と一定範囲の不特定の債権を極度額の限度で担保する根抵当権があります。
(2)実行方法
抵当権は競売の申立てによって実行する場合が多いのですが、売却代金のみでは債権回収の見込みがなく、かつ、対象物件が収益物件である場合、物上代位による賃料の差押えか、担保不動産収益執行の申立も検討する必要があります。どの手続き選択するべきか、同時に進行するべきか等、状況に応じて判断することになります。
競売の申立ての場合には、抵当権の存在を証する、登記事項証明書などの法定の文書を、不動産所在地を管轄する地方裁判所に提出する必要があります。
また、根抵当権の場合は、行使の前提として被担保債権の範囲を確定させる必要がありますが、競売の申立てにより、被担保債権の元本が確定するため、普通抵当権と同様に実行します。
(3)注意点
抵当不動産の所有権が取引先から第三者に移転している場合には、第三取得者から抵当権消滅請求(民法379条)がなされる可能性があります。抵当権者が第三者から抵当権消滅請求の通知を受領した日から2か月以内に抵当権を実行して競売をしないと、第三取得者が抵当権消滅請求に際して提供するとした金額を承諾したものと見なされ、その金額 の提供を受けることにより抵当権が消滅してしまいます。
また、競売の申立てを行う場合には、債務者や関係者が競売の妨害のために物権の占有者を次々変えるという執行妨害に及ぶ場合があります。その場合には、競売の申立先の裁判所に競売開始決定前の保全処分の申立て(民事執行法187条)を行うことを検討しましょう。
競売開始決定前の保全処分とは、債務者、不動産の所有者若しくは占有者が価格減少行為(不動産の価格を減少させ、または減少させるおそれのある行為。典型例は、暴力団関係者に不動産の占有を移転するなど。)をする場合において、特に必要があるときに裁判所が発令する保全処分のことです。
当該不動産につき担保不動産競売の申立てをしようとする者の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間に限って発令されます。ただし、価格減少行為による価格減少または価格減少のおそれの程度が軽微である場合には発令されません。
保全処分の内容としては、執行官保管の保全処分(占有者に対し、不動産への占有を解いたうえで執行官に引き渡すように命ずるもの。占有者による使用を認めず、執行官が物理的に不動産を保管するもの。)や占有移転禁止の保全処分(占有者に対し、不動産に対する占有を解いたうえで執行官に引き渡すように命ずるもの。占有者の使用を認め不動産の占有移転を禁止するもの。)などがあります。
執行官保管の保全処分、占有移転の保全処分については、占有者が競売を申し立てた抵当権者に対抗できる占有権限を有している者(抵当権設定前から当該不動産を賃借していた者など)には発令されません。
質権
(1)質権とは
質権とは、債権の担保として債務者または第三者から受領したものを、債権者が占有することにより、債務の弁済を間接的に強制するものです。
質権の対象としては、動産や不動産もありますが、金銭債権や不動産物権(地上権など)・株式などといった財産権が多いです(これを権利質といいます)。
質権設定や被担保債権の弁済期前の契約において、競売等の法律に定める方法によらずに質物を処分することを約定することはできないのが原則です(民法349条)。
しかし、商行為によって生じた債権を担保するために、質権を設定する場合、質権の設定時や被担保債権の弁済期前に「流質契約」を締結することができます(商法515条)。流質契約とは、債務の弁済がなされない場合には質権者に質物の所有権を取得させるか、法律に定められた方法によらず質物を処分させることを認める契約です。
(2)実行方法
①私的実行による方法
流質契約をしている質権を実行する場合は、質権の対象(質物)が動産、不動産またはその他の財産権であっても、債務の弁済として、質物の所有権を自社に帰属させるか、質物を第三者に売却処分するのが一般的です。
質権の対象が金銭債権の場合(債権質)、流質契約の有無に関わらず、質権者は第三債務者から債権を直接取り立てることができます(民法366条1項)。
しかし、取立ての範囲は、被担保債権の額に対応する部分に限られます(同条2項)。
また、被担保債権の弁済期が未到来のうちに、質権の対象となった債権の弁済期が到来した場合、質権者は、第三債務者に弁済金を供託するよう請求できます。
なお、取引先(債務者兼質権設定者)は、質権設定後は、第三債務者から債権を取り立てることはできません。
他方、債権質について流質として質権を実行する場合、対象債権を代物弁済として自社に帰属させるか、対象債権を第三者に売却することになります。
対象債権を自社に帰属させた場合、取立の範囲は対象債権の全額について行うことができ、被担保債権額に対応する部分に限られません。
②民事執行法の実行による方法
動産や不動産を対象とした質権の場合、流質契約をしていないときは、裁判所の手続により質権の目的物を差押え、競売に付す方法によって実行します。
また、債権質の場合、対象債権について、民事執行法に定められる担保権の実行手続をとることができます。対象債権が一定の条件が成就しないと取り立てができない場合には、売却命令を得たうえ、取立てに代えて裁判所の定める方法により債権を売却することができます。
(3)注意点
動産や不動産に設定した質権の場合、譲渡担保や先取特権のような緊急性はありません。目的物は質権者の手元にあるため、債務者が勝手に処分する恐れや第三者による引き揚げの恐れがないからです。
もっとも、時間の経過とともに価値が下落する場合も考えられるため、目的物の性質に応じて速やかに実行するに越したことはありません。
債権質の場合、債権譲渡担保と異なり、担保設定した債務者の取立権を剥奪するという措置をとる必要もありません。債権質が設定された場合、質権の設定に応じた債務者は、質権設定後は対象債権の取り立てを行うことはできないからです。
また、第三債務者は、質権を設定した債務者や、質権設定の通知・承諾後に対象債権を譲り受けた者に対し、対象債権の弁済を行ったとしても、その弁済の効果を質権者に主張することはできません。つまり、質権者に対し、改めて対象債権の弁済を行う必要があります。
取立権を剥奪する必要がないとしても、債務者が誤って質権者以外の者に弁済を行ったが、改めて質権者に対し弁済できるだけの資力がないという事態も起こりえます。そこで、対象債権の取立ては債権質の場合であっても速やかに行うべきです。
リース
(1)リースとは
リースというと、主として、民法上の賃貸借契約に基づくいわゆるレンタルを指す場合や、高価な備品などを導入する場合に売買代金相当額に金利などの諸費用を加算した金額をもとに、月額のリース料をきめて毎月支払う契約になっているファイナンスリースを指す場合があります。ファイナンスリースは、賃貸借契約の形式をとりつつも、実態は物件を取得する資金の融資という側面があり、これを約定担保と考えるのが一般的ですので、ここではファイナンスリースの場合について説明します。
もし、取引先が支払不能となったときに、取引先のもとに、自社のリース物件がある場合にはその引き揚げを早急に検討する必要があります。
(2)実行方法
リース物件の引き揚げのためには、利用権の根拠となるリース契約を解除して、ユーザーの利用権を喪失させるべきです。
リース契約を解除するためには、契約に予め定めた解除事由や実行事由が発生している必要があります。
通常、内容証明郵便でユーザーに対しリース契約の解除を通知します。通知には、リース物件をメーカー、品番などにより個々に特定する必要があります。
ただし、リース期間がすでに終了している場合には、契約の解除を行わずともリース物件の引き揚げを行うことができます。
リース契約が解除されたら、ユーザーの手元にあるリース物件を取引先の了承を得て引き揚げます。引き揚げたリース物件は市場で売却するなどして、リース債権(被担保債権)に充当します。
売却代金に余剰がある場合には、ユーザーに返還することになります。
(3)注意点
所有権留保の場合と同様の注意が必要となります。
すなわち、
②取引先の破産等申立代理人弁護士に積極的に情報を提供する、
③リース物件の引き揚げについて取引先の了承を得る、
④転売などの可能性がある場合には保全処分を申立てる
などの点に注意する必要があります。
法定担保物権
担保には法律上自動的に発生するものがあり、これを法定担保物権といいます。
ここでは、実務上特に多く使われる、動産売買先取特権と留置権について説明します。
動産売買先取特権
(1)動産売買先取特権とは
動産売買先取特権とは、商品の売主が、商品の売買代金を担保して、売り渡した目的物に対して取得する担保権です。
動産売買先取特権が成立すると、商品が取引先にある場合には、その商品を強制的に競売し、その代金から優先的に配当を受けることができます。
また、商品が転売されている場合、取引先の転売先に対する転売による売買代金債権を差押えて、転売先から直接、転売による売買代金を回収することができます(物上代位といいます)。
(2)実行方法と注意点
動産売買先取特権の場合、担保権を有するだけでは取引先の処分を制限することはできません。また、担保権の実行通知を送付したとしても、取引先自身や管財人による処分を制限することもできません。
商品が転売されている場合も同様です。
そこで、動産売買先取特権による債権回収を行うには、取引先や破産管理人によって商品が売却される前に、先取特権を実行し、商品や転売による売掛債権を差し押さえる必要があります。
したがって、取引先が倒産状態に陥ったことが分かったら、すみやかに裁判所に対して動産競売許可の申立や、債権差押命令の申立てを行う必要があります(詳しくは、「取引先が破産手続を開始した場合に債権を最大限回収する方法とは?」の記事で説明します)。
留置権
留置権には商事留置権と民事留置権があり、一般的に多く使われている商事留置権について説明します。
(1)商事留置権とは
たとえば、パソコン修理業者が、顧客企業のパソコンを修理し、修理代金債権が発生したとき、顧客企業から修理代金の弁済を受けるまで、パソコン修理業者は、そのパソコンの引き渡しを拒むことができるというのが商事留置権です。
商事留置権は、以下の場合に成立します。
- 当事者双方が商人(法人や事業者の場合)であること
- 債権が当事者双方の商行為によって発生したものであること(会社間の取引はすべて商行為にあたります)
- 債権の弁済期が到来していること
- 商行為によって、(取引先)債務者の物の占有が債権者に帰属したこと
なお、商事留置権の対象は、債務者が所有する物または有価証券に限られます。
商事留置権が成立すると、留置権者は債務者から預かった商品を、債権に対する弁済を受けるまでそのまま保管することが可能となります。商事留置権は、債権全額の弁済を受けるまで、預かっている商品すべてに成立するため、債権の一部のみの支払いを受けても、他にも債権が残っている場合には商品の一部を返還する必要はありません。
もっとも、留置権者が占有を失った場合、商事留置権の効果は失われるため、占有を継続する必要があります。
(2)実行方法と注意点
留置権者は、商品の返還を拒絶することにより、債務者に弁済を促すことができます(留置的効力)。
そして、債務者の商品を商事留置権に基づいて競売の申立てを行うことができます。
商事留置権には優先弁済的効力がないため、留置権者は換価 代金を債務者に返還する必要がありますが、留置権者の競落代金の返還義務と留置権者の有する債権を相殺することによって、事実上の弁済を受けることができます。
ただし、債務者に法的倒産手続きが開始された場合、相殺禁止に該当し、相殺が認められない場合もあります。
破産手続開始決定後は、民法上の留置権は効力を失いますが、商事留置権は特別の先取特権とみなされ(破産法66条1項)、別除権として(破産法65条2項)、破産手続によらずに先取特権を行使できます(同条1項)。さらに、商人間の留置権の留置的効力は破産手続の開始後も存続します。
まとめ
まずは自社が有する担保権がどのような種類のものであるかを確認しましょう。
担保権の種類によって気を付けるべきポイントも異なりますが、どの担保であっても早急に手段をとらなければならない場合が多いです。
弁護士にも相談の上、一刻も早く回収に向けた手段をとりましょう。
なお、「取引先が破産手続を開始した場合に債権を最大限回収する方法とは?
」の記事でも担保権について説明していますので、そちらも参考にしてください。
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