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インターネット上のウェブサイトを書籍化したい!著作権侵害になる?

Q
私の運営するウェブサイトでは、ユーザーが業務上悩んだ相談について、自由に書き込める掲示板を設けています。最近では、広く利用できそうな相談事項とそれに対する回答が、複数集まってきています。そこで、これらの書き込みをまとめ、書籍として出版することを検討しています。
この場合の法律上の問題点について、教えてください。

A
ユーザーの書き込みは、著作権法上の「著作物」(著作権法2条1項1号)にあたる場合があります。
著作物にあたる場合には、原則として当該書き込みの著作権は、書き込みをしたユーザー本人に帰属し、本人の許諾なしに書籍として出版することはできません。
ただし、サイトの利用規約により、ユーザーの書き込みについての著作権についての規定を設けて、サイト運営者に何らかの権利行使を認めることも可能です。
ユーザーにわかりやすく明確な利用規約を設定することで、ユーザーとの権利上のトラブルを未然に防止することが重要です。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「インターネット上のウェブサイトを書籍化したい!著作権侵害になる?」
について、詳しくご解説します。

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インターネット上の書き込みの著作物性

著作権法上の「著作物」とは

著作権法は、「著作物」の権利を定める法律です。
ここにいう「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいいます。

「著作物」にあたるには、3つの要件を満たしている必要があります。

  1. 「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であること
  2. 思想又は感情の表現であること
  3. 創造性を有すること


ここにいう3.創造性とは、表現者の個性がなんらかの形で現れていれば足り、独創性(客観的に他人の表現と異なること)や新規性(客観的に新しいこと)までは必要ないと解されています。

ユーザーの書き込みは「著作物」か

では、ウェブサイトの書き込みは、「著作物」にあたるでしょうか。

インターネットの掲示板への書き込みの著作物性が争われた事例として下記裁判例(東京高裁平成14・10・29判タ1098号213頁・「ホテル・ジャンキーズ事件」)があります。

【事案の概要】
原告らは、ホームページ上の掲示板に、〔1〕自己が計画する旅行先や予定を示して、ホテル、レストラン及び見学先等に関して、役に立つ情報の提供を求めるものや、〔2〕このような質問に対して、自己が直接体験したりあるいは間接的に見聞きした有用情報を回答するなどの書き込みを行っていたところ、被告らがその書き込みの文章の一部を複製して書籍を出版・作成しました。そこで、原告らは、被告に対し、著作権侵害を理由に、その書籍の出版の差止め及び損害賠償を求めました。

【結論】
原告らの書き込みの著作物性を認められました。
→執筆者に無断で当該書き込みを転載した書籍を著作、出版、販売する行為は、執筆者の複製権(著作権法21条)を侵害するとして、損害賠償請求及び出版等の差止めが認められました。

前述の通り、「著作物」の創造性は、表現者の個性がなんらかの形で表れていれば足ります。
そのため、インターネットの書き込みであっても、一個の記述全体として見たときに記述者の個性が発揮されていると評価することができれば、著作物性を肯定することができます。
なお、インターネット上の書き込みは、膨大であり全容を把握することが困難で、かつ匿名性を有するので、著作物性の判断についてもこれらの事情を考慮すべきとの被告の反論について、裁判例は

  • 膨大な表現行為が行われているため全容の把握が困難であること、匿名で行われた場合に表現者の承諾を得るのが困難であること、対価が得られないような程度の内容の表現行為が多く見られることは、インターネット上の書込みに限られず、他の分野での表現についてもいえる。

  • 匿名で行った書込みについては、内容のいかんを問わず、匿名者が著作権に関する権利を行使することが許されないなどど解することができないことは明らかである。


と述べて、被告らの反論を否定しています。
以上より、ウェブサイトの書き込みは、匿名でなされたものであっても「著作物」にあたることがあります。

書き込みの著作権は誰に帰属するか

原則ー著作者に帰属

ウェブサイトの書き込みが「著作物」にあたるとして、その著作権は誰に帰属しているのでしょうか。
著作権は、著作者に発生します(著作権法17条1項)。そのため、ウェブサイトの書き込みについての著作権も、その著作者である執筆者、すなわち書き込みをしたユーザーに発生するのが原則です。

例外ー利用規約の設定

しかし、例外的に、ウェブサイトの利用規約を用いて、ユーザーの書き込みの著作権をサイト運営者に譲渡するという形態で、ウェブサイトの書き込みの著作権が、サイト運営者に帰属する仕組みをとることも可能です。
一般に、利用規約は、サイト運営者とユーザーの間におけるサイト利用に関する合意を意味し、当事者間でこれに従わない旨の合意がない限り、原則として、利用規約の内容で当該サイトの利用契約が成立し、ユーザーを法的に拘束するものとなります。

利用規約の設定の注意点

ここで、利用規約の設定について注意すべきことがあります。

●利用規約の具体的内容がユーザーに対しあらかじめ適切に開示されていることが前提です。
利用規約は、サイト運営者が決定し、ユーザーはその内容について交渉する機会を与えられていません。そのため、利用規約の内容が、サイト運営者側に一方的に有利になりがちであるなどの問題があるので、相手方に対してあらかじめ開示しておくことが必要です。
例えば、サイトの利用開始時にクリック動作により利用規約の具体的内容を表示し、利用規約への同意を行わない限りウェブサイトのサービスを利用できないようなサイト構成になっている場合には、利用規約の内容が利用者に開示されているといえます。

●利用規約の内容が、作成者に一方的に有利であり、内容に合理性を欠く場合には、当該規約が無効となったり、効力が制限されたりする場合があります。

利用規約は、一方的なものであり、約款の性質を有します。

改正民法(2020年4月1日施行)において、「定型約款」という概念が新たに設けられました。
定型約款とは、ある特定の者が不特定多数の者を相手型として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的で有ることがその双方にとって合理的なものをいいます(民法548の2第1項柱書)。
「定型約款」に該当するための要件は、以下の通りです。

①定型取引に用いられるものであること
①ー1 ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であること
①ー2 取引の内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものであること

②契約の内容とすることを目的として準備されたものであること

③当該定型取引の当事者の一方により準備されたものであること

これらの要件を満たした利用規約は、個別の条項について合意したものとみなされ、サイト運営者と利用者との間の契約内容となります。

しかし、
・相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって
・その定型取引の態様及びその実情ならびに取引上の社会通念に照らして、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては
定型約款の個別の条項につき合意をしなかったものとみなされます(548条の2第2項)。

そのため、利用規約の内容が不合理であると認められる場合には、当該条項については、合意をしなかったとみなされることになります。

では、ユーザー投稿の著作権帰属について、どのような内容の利用規約を設ければよいでしょうか。

サイト運営者としては、目的の制限なく自由にユーザーが投稿したコンテンツを利用、編集、改変することができれば、投稿されたコンテンツを集めた本を出版したり、映画化するといった二次利用も可能となります。例えば「書き込んだ内容につき、著作権は全て当社に帰属する」等の利用規定を置くことで、著作権を制限なく譲渡してもらう方法が考えられます。
もっとも、サービスの目的や性質の範囲を超えて、サイト運営者に有利でかつ内容が不合理な規約は、前述のように合意をしなかったとみなされることも考えられます。また、規約の効力そのものは有効であっても、ユーザーに無用な不安感や嫌悪感を抱かせ、批判を招くおそれもあります。加えて、サイトそのものの利用者が減って、サイトの価値がなくなるおそれもあります。

そこで、現在では、ユーザーが投稿するコンテンツに関する権利自体はユーザーに帰属させたまま、ユーザーがサイト運営者に対して、その使用を許諾する旨の規定とするのが、一般的となっています。
例えば、下記のような内容の規約となります。

(権利帰属)
本サイトにおいて、ユーザーが投稿、アップロード又は保存した一切の情報(以下「ユーザーコンテンツ」といいます。)に関する著作権は、当該投稿等を行ったユーザー自身に保留されるものとし、当社は当該ユーザーコンテンツに関する著作権を取得することはありません。ただし、当社は本サイトの提供・維持・改善又は本サイトのプロモーションに必要な範囲において、ユーザーコンテンツを複製、翻案、自動公衆送信及びそのために必要な送信可能化を無償、無期限かつ地域非限定で行うことができるものとします。

この規定は、ユーザーが投稿、アップロードまたは保存した情報を「ユーザーコンテンツ」と定義し、そのユーザーが投稿したコンテンツの権利はユーザーに帰属するとしつつ、サイト運営者に対しては使用を許諾するという内容を定めています。この記載であれば、ユーザーコンテンツの「複製(コピー)、翻案」の範囲内であれば、出版を行うことも可能と考えられます。
具体例として、Youtubeの利用規約には、このような記載があります。

お客様が付与する権利 お客様は、ご自身のコンテンツに対する所有権を保持します。ただし、YouTube に対して、および本サービスを利用する他のユーザーに対して、以下の一定の権利を付与していただく必要があります。
YouTube へのライセンス付与
本サービスにコンテンツを提供することにより、お客様は YouTube に対して、本サービスならびに YouTube(とその承継人および関係会社)の事業に関連して当該コンテンツを使用(複製、配信、派生物の作成、展示および上演を含みます)するための世界的、非独占的、サブライセンスおよび譲渡可能な無償ライセンスを付与するものとします。これには、本サービスの一部または全部を宣伝または再配布することを目的とした使用も含まれます。

なお、投稿されたコンテンツが、実名でなされており、コンテンツに加えて投稿者の実名も利用する場合には、別途実名の二次利用についても規約に明示する必要があり、注意が必要です。


利用規約の作成について詳しくは下記リンク記事をご一読ください。
あくまで一例ではありますが利用規約のひな形も掲載しておりますので参考資料としてご使用ください。
【法務担当者が一人でできる!】利用規約作成マニュアル【ひな形付】

関連事項ー著作者人格権について

「著作者人格権」とは、著作者がその著作者に対して持つ人格的利益を保護するための権利のことをいいます。
この権利によって、自分の著作物を公表するかどうかや、著作者名として自分の名前を表示するかどうかを決定することができます。さらに、自分の著作物の内容などを勝手に改変されない権利も、この権利に由来します。
この「著作者人格権」についての規定を設けていない場合、前述のような「権利帰属」についての規約によりサイト運営者側に使用許諾を定め、コンテンツを改変できる内容を定めていたとしても、投稿したユーザーから著作権人格権を行使される可能性があります。
そこで、利用規約に、ユーザーは「著作権人格権を行使しない」との内容を記載すべきです。
例えば、下記のような内容の規約となります。

(著作者人格権)
ユーザーは、当社及び当社から権利を承継し又は許諾されたものに対し、著作者人格権を行使しないものとします。

このように、ユーザーにわかりやすく、明確な利用規約を設定することで、ユーザーとの権利上のトラブルを未然に防止することが重要です。

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