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就職あっせん(就職斡旋)サイト運営の際に注意すべき法律上の問題点

Q
 私は、インターネット上のウェブサイトで、求人者と求職者がマッチングできるサービスを提供するようなビジネスを始めようと思っています。この場合の法律上の問題点を教えてください。

A
 このようなビジネスを始める際には、どのようなビジネスモデルとするのかに注意が必要です。ビジネスの形態によっては、職業安定法上の「職業紹介」事業となり、厚生労働大臣の許可が必要となる場合があります。
 また、ウェブサイトを運営するプラットフォーマーとして、個人情報の取扱いにも注意が必要となります。

「職業紹介」と「募集情報等提供」

 求人者と求職者をマッチングするビジネスといっても、具体的にどのようなサービスを提供するのかによって、職業安定法上、「職業紹介」と「募集情報等提供」に分かれます。そして、それによって法律の規制も変わってきます。
 ですので、まずは、それぞれの概要から見ていきたいと思います。

「職業紹介」とは

 「職業紹介」とは、職業安定法4条1項において、「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすること」と定義されています。
 また、判例においては、「職業紹介」とは「求人および求職の申込を受けて求人者と求職者の間に介在し、両者間における雇用関係成立のための便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為一般を指称し、必ずしも、雇用関係の現場にあって直接これに関与介入するの要はない」と解されています(最高裁昭和30年10月4日第三小法廷決定・刑集9巻11号2150頁)。
 つまり、
①求人者や求職者からの申込みを受けて、
②両者の間に立ち、
③雇用関係成立に向けて
④何かしらの助力を加えるサービス(雇用関係が円滑に成立するように世話をするサービス)
を提供する場合には、「職業紹介」に該当することになります。

「募集情報等提供」とは

 「募集情報等提供」とは、職業安定法4条6項において、「労働者の募集を行う者若しくは募集受託者の依頼を受け、当該募集に関する情報を労働者となろうとする者に提供すること又は労働者となろうとする者の依頼を受け、当該者に関する情報を労働者の募集を行う者若しくは募集受託者に提供すること」と定義されています。
 つまり、ウェブサイト上で、求人情報や求職者情報の検索サービスを提供するのみで、サイト運営者自身が求人・求職の申込みを受けるものではない場合には、「募集情報等提供」となります。

職業紹介と募集情報等提供の区別基準

 職業紹介と募集情報等提供は、上記のとおり、それぞれ法律上に定義があります。
 しかし、昨今、インターネットによる求人情報・求職者情報の提供が広まる中で、ウェブサイト上で求人情報又は求職者情報を閲覧可能にするだけでなく、併せて求人者と求職者との間の双方向的な意思疎通を中継したり、求職条件又は求人条件に適合する求人情報又は求職者情報を自動的に送信する仕組みを設けるなど、従来の情報提供の態様とは大きく異なるものが出てきています。
 これらの中には職業紹介と募集情報等提供のどちらに該当するのか容易に判断しがたい事例もあります。
 このような状況から、厚生労働省は、インターネットによる求人情報・求職者情報提供がどのような場合に職業紹介に該当するのかということに関して、「民間企業が行うインターネットによる求人情報・求職者情報提供と職業紹介との区分に関する基準について」というガイドラインを示しました。

 同ガイドラインによると、インターネットによる求人情報・求職者情報提供は、以下のいずれかの場合には、職業紹介に該当することになります。

① 提供される情報の内容又は提供相手について、あらかじめ明示的に設定された客観的な検索条件に基づくことなく情報提供事業者の判断により選別・加工を行うこと。

② 情報提供事業者から求職者に対する求人情報に係る連絡又は求人者に対する求職者情報に係る連絡を行うこと。

③ 求職者と求人者との間の意思疎通を情報提供事業者のホームページを介して中継する場合に、当該意思疎通のための通信の内容に加工を行うこと。

④ ①~③のほか、情報提供事業者による宣伝広告の内容、情報提供事業者と求職者又は求人者との間の契約内容等から判断して、情報提供事業者が求職者又は求人者に求人又は求職者をあっせんするものであり、インターネットによる求人情報・求職者情報提供はその一部として行われているものである場合には、全体として職業紹介に該当する。

また、同ガイドラインは、上記の基準についての具体例として、以下のような例を挙げています。

【職業紹介に該当する具体例】
(情報提供事業者が自ら応募又は採用の勧奨等を行う例ー②の場合)
 情報提供事業者が、自ら積極的に求職者又は求人者に連絡を行い、応募又は採用の勧奨、採用面接日時の調整、情報の追加的提供等を行うことは、雇用関係成立のための便宜を図るものといえ、職業紹介に該当する。
 なお、これらを全てオンライン上で行うとしても、情報提供事業者と求職者又は求人者との連絡手段として従来の面談、電話、ファックス、郵便等の代わりに電子メールを用いるに過ぎず、職業紹介に該当するか否かの判断に影響を与えるものではない。

(求職者及び求人者に対し職業紹介事業としての宣伝広告を行う例ー④の場合)  情報提供事業者が、「貴方にふさわしい仕事を面倒見る」、「貴社に最適の人材を紹介する」等とうたって求職者又は求人者を募り、当該求職者又は求人者に対し、あっせんしようとする求人又は求職者の事業所名、氏名、電話番号等をインターネットを通じて提供することは、全体として職業紹介に当たる。


【職業紹介に該当しない具体例】
(求職者又は求人者が情報提供事業者のホームページを経由して電子メールで応募又は勧誘を行うことを可能とする例ー③の場合)
 情報提供事業者のホームページ上にある求人の求人者又は求職者に対し、求職者又は求人者が当該ホームページを経由して電子メールを送信することにより直接オンライン上で応募又は勧誘できる仕組みを設ける場合には、情報提供事業者が通信内容に加工を行うものではなく、求職者又は求人者に対して必要なメールアドレスを提供しているに過ぎず、このことによって職業紹介に該当するものではない。
 なお、当該電子メールについて情報提供事業者がフォームを定め、求職者又は求人者が当該フォームに必要事項を順次入力して作成する方式による場合も同様である。

職業紹介事業の種類と規制

 職業紹介事業には、「有料職業紹介事業」と「無料職業紹介事業」の2種類があります。

有料職業紹介事業の規制

 有料職業紹介事業とは、営利を目的とするか否かにかかわらず、職業紹介に関して手数料または報酬などの対価を受けて行う職業紹介事業をいいます。

 有料職業紹介事業を行うためには、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります(職業安定法30条1項)。これに違反し、無許可で有料職業紹介事業を行った場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(職業安定法64条1号)。

 また、職業紹介の対価として受領する手数料に関して規制が設けられていることにも注意が必要です。
 手数料の上限が法律で定められており、求人の申込みを受理した場合には「受付手数料」として、1件につき710円、職業紹介の結果、雇用契約が成立した場合には「紹介手数料」として、支払われた賃金額の11%に相当する額が手数料の最高額となります(上限制手数料、職業安定法32条の3第1項1号、同法施行規則20条1項別表)。もっとも、手数料の種類や額などの手数料に関する事項を定めた「手数料表」を厚生労働大臣に届け出た場合には、前述した上限を超えて手数料を徴収することができます(届出制手数料、職業安定法32条の3第1項2号、同条3項、同法施行規則20条3項)。
 なお、手数料は原則として求人者側から徴収するものであり、求職者から手数料を徴収することはできません。しかし、例外的に、職業が芸能家やモデルなどの場合には求職者から手数料を徴収することができます(職業安定法32条の3第2項、同法施行規則20条2項)。
 これらの手数料に関する規制に違反した場合にも罰則があり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性があります(職業安定法65条2号)。

 さらに、有料職業紹介事業においては、後述の無料職業紹介事業と異なり、取扱職業の範囲が定められていることにも注意が必要です。具体的には、港湾運送業務に就く職業と建設業務に就く職業については、これらを求職者に紹介することはできません(職業安定法32条の11第1項)。この規制に違反した場合にも罰則があり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(職業安定法64条4号)。

無料職業紹介事業の規制

 無料職業紹介事業とは、営利を目的とするか否かにかかわらず、職業紹介に関して、いかなる名義でも手数料または報酬などの対価を受けないで行う職業紹介事業をいいます。

 無料職業紹介事業を行うためにも、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります(職業安定法33条1項)。これに違反した場合にも、有料職業紹介事業の場合と同様に、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(職業安定法64条5号)。
 なお、学校や特別の法律により設立された法人が無料職業紹介事業を行う場合には、厚生労働大臣の許可を受ける必要はなく、厚生労働大臣に対する届出により行うことができます(職業安定法33条の2、33条の3)。

 無料職業紹介事業においては、有料職業紹介事業と異なり、取扱職業の範囲に制限がありません。そのため、有料職業紹介事業では紹介することのできない港湾運送業務に就く職業や建設業務に就く職業についても、これらを求職者に紹介することができます。

改正職業安定法のポイント

 2017(平成29)年に職業紹介事業に関係する職業安定法の改正がなされ、2018(平成30)年1月1日に施行されました。
 そこで、以下では、職業紹介事業者が押さえておくべき改正職業安定法のポイントを説明していきます。

職業紹介の実績等を情報提供する義務

 職業紹介事業者は、厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」(※)において、 職業紹介の実績に関する次の①~⑥の情報提供を行うことが義務付けられるようになりました(職業安定法32条の16第3項、33条4項、同法施行規則24条の8第3項)。

① 各年度(各年の4月1日~翌年の3月31日)に就職した者の数
② ①のうち、期間の定めのない労働契約を締結した者(無期雇用就職者)の数
③ ②のうち、就職から6か月以内に解雇以外の理由で離職した者の数
④ ②のうち、就職から6か月以内に解雇以外の理由で離職したかどうか判明しなかった者の数
⑤ 手数料に関する事項(手数料表の内容)
⑥ 返戻金制度の導入の有無及び導入している場合はその内容

(※)労働者派遣事業および職業紹介事業の許可を得た、または届出を行った事業所すべての情報を掲載しているサイト 人材サービス総合サイト - トップページ

求職者等へ明示する必要のある労働条件等

 求職者等へ明示する必要のある労働条件等として、職業安定法施行規則において、次の①~③の事項の明示が義務付けられました(職業安定法施行規則4条の2第3項)。

① 試用期間の有無及び期間、試用期間中の労働条件(2号の2)
② 労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称(7号)
③ 派遣労働者として雇用しようとする場合は、その旨(8号)

また、次の①②の事項についても、明示すべきであることが指針(※)に明記されました。

① 裁量労働制を採用する場合には、その旨 (第3の1(3)ロ)
② 固定残業代制を採用する場合には、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業時間、固定残業時間を超えた場合は追加で給与を支払う旨(第3の1(3)ハ)

(※)職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示、労働者の募集を行う者等の責務、労働者供給事業者の責務等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号)

求人・求職管理簿、事業報告への記載事項

求人・求職管理簿について、2018(平成30)年度に就職した者についての情報から、 これまでの記載事項に加えて、新たに次の①~③の事項を記載することが必要となりました(職業安定法32条の15、33条4項、同法施行規則24条の7、25条)。

① 期間の定めのない労働契約を締結した場合は、その旨
② 転職勧奨が禁止される期間(採用年月日から2年間)
③ 無期雇用就職者については、就職から6か月以内に離職したか否か

 また、労働局に提出する事業報告についても、これまでの報告事項に加えて、新たに次の①~④の事項の報告が必要となりました(職業安定法32条の16第1項、同法施行規則24条の8第2項)。

① 各年度の無期雇用就職者数
② ①のうち、就職から6か月以内に解雇以外の理由で離職した者の数及び離職したかどうか判明しなかった者の数
③ 返戻金制度の有無及び導入している場合はその内容
④ 職業紹介に従事する従業員の人数及び従業員に対する教育の内容

紹介した求職者への対応に関する留意点

 職業紹介事業者は、紹介した求職者が早期に離職することの無いよう、次の①~④の事項を遵守することが必要となりました(職業安定法33条の5、指針第5の5)。

① 自らの紹介により就職した者(無期雇用契約に限る。)に対して、就職した日から2年間は、転職の勧奨を行ってはいけないこと
② 手数料に関して、返戻金制度を設けることが望ましいこと
③ 求職者・求人者双方に、それぞれから受理する手数料を明示すること
④ 求職者等を勧誘するに当たっては、お祝い金等の金銭を支給することは望ましくない

職業紹介責任者の遵守事項

 職業紹介責任者は、次の①②の内容を遵守することが必要となりました。

① 職業紹介責任者は、職業紹介の従業者に対し、事業運営の改善向上のための教育を行わなければならないこと
② 職業紹介責任者は、「厚労省人事労務マガジン」に登録して、労働関係法令の最新の情報を把握しなければならないこと

募集情報等提供事業者の責務

 募集情報等提供事業を行うにあたっては、法による許可等の手続は必要ありません。
 もっとも、募集情報等提供事業者も職業安定法の規律に服する者として、労働者の適切な職業選択に資するための、業務の改善向上に必要な措置を講じる努力義務を負います(職業安定法42条の2)。

 「必要な措置」の具体的な内容としては、①募集内容の的確な表示等に関する事項と②業務運営に関する事項とが指針により示されています。

 まず、募集情報等提供事業者は、提供する情報が的確に表示されるように、募集主に対して必要な協力を行うことが必要となります。具体的には、指針により以下①②のような措置が求められています。

① 以下のような募集情報については、募集主に対して募集情報の変更を依頼するとともに、募集主が依頼に応じない場合は、その募集情報の掲載を控える等、適切に対応すること。
 ・公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的の募集情報
 ・内容が法令に違反する募集情報
 ・実際の労働条件等と異なる内容を含む募集情報
② 募集主から承諾を得ることなく募集情報を改変して提供してはならないこと。

 次に、募集情報等提供事業者は、求職者の適切な職業選択のため、また、業務の改善向上を図るために、必要な措置をとるよう努めなければならないとされています。具体的には、指針により以下①~④のような取組みが求められています。

① 相談窓口の明確化等、苦情を迅速、適切に処理するための体制の整備及び改善向上をはかること。
② 求職者の個人情報の収集、保管及び使用を行うに当たっては、指針を踏まえ、秘密に該当する個人情報の厳重な管理等、求職者の個人情報の適正な管理を行うこと。
③ 募集情報等提供事業者は、募集に応じた労働者から、その募集に関し、いかなる名義でも報酬を受けてはならないこと。
④ 募集情報等提供事業者は、労働争議に対する中立の立場を維持するため、同盟罷業(ストライキ)又は作業所閉鎖(ロックアウト)の行われている事業所に関する募集情報の提供を行ってはならないこと。

個人情報の取扱いに関する注意

 インターネット上のウェブサイトでサービスを提供するビジネスの場合、サイト利用者の個人情報を取得することになり、「個人情報取扱事業者」(個人情報保護法2条5項)として、個人情報保護法の規制対象となり得ることにも注意が必要です。
 なお、プラットフォーマーと個人情報保護法の規制に関しては、別の記事で詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。


プラットフォームと個人情報保護法1~個人情報保護法とは?~
プラットフォームと個人情報保護法2~個人情報漏えい等が発生した場合の法的責任~
プラットフォームと個人情報保護法3~情報漏えいの予防と対応~

おわりに

 インターネット上のウェブサイトで、求人者と求職者とがマッチングできるサービスを提供するようなビジネスを始める際には、まず、そのビジネスが「職業紹介」に該当するのか否かを確認することが大切です。「職業紹介」に該当する場合には厚生労働大臣の許可が必要となります。無許可で営業した場合には刑事罰の対象にもなるため、この点の確認はしっかりとしておく必要があります。
 また、募集情報等提供事業に関しても職業安定法上の努力義務があることから、指針等を確認しておく必要があるでしょう。
 さらに、プラットフォーマーとして個人情報保護法の規制を確認しておく必要もあります。


 なお、職業紹介事業や募集情報等提供事業に関する法律やガイドライン等としては、以下のものをチェックしておく必要があるでしょう。

〇職業安定法
〇職業安定法施行規則
〇職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示、労働者の募集を行う者等の責務、労働者供給事業者の責務等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号)
厚生労働省職業安定局「職業紹介事業の業務運営要領」(令和2年3月)
厚生労働省職業安定局「募集情報等提供事業の業務運営要領」(令和2年4月)
厚生労働省職業安定局「民間企業が行うインターネットによる求人情報・求職者情報提供と職業紹介との区分に関する基準について」


直法律事務所では、プラットフォーム、クラウド、SaaSビジネスについて、ビジネスモデルが適法なのか(法規制に抵触しないか)迅速に審査の上、アドバイスいたします。
ご面談でのアドバイスは当事務所のクライアントからのご紹介の場合には無料となっておりますが、別途レポート(有料)をご希望の場合は面談時にお見積り致します。