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公正競争規約とは?違反するとどうなる?景品表示法との関係についても弁護士がわかりやすく解説!

Q
事業者が行う広告などの表示について、業界によっては、一般に適用される景品表示法とは異なる業界独自のルールがあると聞いたことがあります。どのような業界において、どのようなルールがあるのでしょうか、また、景品表示法との関係を教えてください。

A
景品表示法(正式名称を不当景品類及び不当表示防止法といいます。)は、基本的には事業者一般を規制していますが、商慣習の異なる各業界に適した規制を定めるべき場合もあります。そのため、景品表示法は、事業者又は事業者団体が、消費者庁長官及び公正取引委員会の認定を受けて、表示又は景品類に関する事項について自主的に業界のルール(公正競争規約)を定めることを認めています(景品表示法31条1項)。
公正競争規約は、公正競争規約に参加する事業者を法的に拘束します。

他方、当該規約に参加しない者に対しては法的拘束力がありません。そのため、規約に参加していない者が公正競争規約に違反した場合でも、直ちに景品表示法違反の対象にはなりません。しかし、公正競争規約の定めるルールが一般化した場合、ルールに反する表示については優良誤認や有利誤認が生じやすくなり景品表示法違反となりかねません。そのため、規約に参加していない事業者も、業界の公正競争規約を知っておく必要があります。
以下で詳しく説明します。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談を承っております。

本記事では、
「公正競争規約とは?違反するとどうなる?景品表示法との関係についても弁護士がわかりやすく解説!」
について、詳しく解説します。

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公正競争規約とは

役割

公正競争規約とは、景品表示法第31条の規定により、公正取引委員会及び消費者庁長官の認定を受けて、事業者又は事業者団体が表示又は景品類に関する事項について自主的に定める業界のルールのことをいいます。

【景品表示法31条1項】
事業者又は事業者団体は、内閣府令で定めるところにより、景品類又は表示に関する事項について、内閣総理大臣及び公正取引委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保するための協定又は規約を締結し、又は設定することができる。これを変更しようとするときも、同様とする。

景品表示法で規制されているのに、どうしてわざわざ業界独自のルールが必要なのでしょうか。
それは公正競争規約には次のような役割があるからです。

公正競争規約の重要な役割は、その業界の商品特性や取引の実態に即して、広告などに必ず表示すべきことや、特定の表現を表示する場合の基準、景品類の提供制限などを定めることで、一般消費者がより良い商品・サービスを安心して選ぶことができるようにすることにあります。
例えば、不動産賃貸や販売において、よくみかける駅からの所要時間の表示は、「不動産の表示に関する公正競争規約」により徒歩の場合は1分間80mとして算出するとされています。

また、業界大多数の良識を規約化し、その規約を守れば他の事業者も守るという保証をすることで、過熱しがちな不当表示や過大な景品類の提供を未然に防止することも、公正競争規約の重要な役割です。

事業者は、公正取引委員会及び消費者庁長官が当該業界における公正な競争の確保のために適切なものであると認定した公正競争規約に参加し、そのルールを守ることにより、消費者の信頼を高めることができ、さらに、業界全体に対する消費者の信頼を高めることができます。
また、規約の参加事業者は、規約を遵守していれば、景品表示法上の問題がないため、安心して販売活動を行うことができるというメリットがあります。この点で、単なる業界の自主基準とは異なっています。

認定要件

公正競争規約を定めるためには、規約の内容が次の4つの要件を満たす必要があります。

  1. 不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保するために適切なものであること。
  2. 一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。
  3. 不当に差別的でないこと。
  4. 公正競争規約に参加し、又は公正競争規約から脱退することを不当に制限しないこと。

公正取引委員会及び消費者庁長官は、公正競争規約の設定又は変更の認定についての申請を受けた場合、必要に応じ、パブリックコメントを募集などして消費者、関係事業者、学識経験者等の意見を聴いた上で、上記要件に適合すると認められる場合、公正競争規約を認定することができます。

公正競争規約のある業界

では、どのような業界に公正競争規約があるのでしょうか。

公正取引協議会・公正競争規約一覧

公正競争規約を運用する団体である公正取引協議会の連合体である一般社団法人全国公正取引協議会連合会(以下「連合会」といいます。)の2023年8月16日時点のホームページ「公正取引協議会・公正競争規約一覧」によれば、次の業界カテゴリーに属する業界に公正競争規約があります。

なお、公正競争規約には、景品に関する公正競争規約(景品規約)と 表示に関する公正競争規約(表示規約)があり、連合会ホームページによれば、66の表示規約37の景品規約が存在しています。同一業界に表示規約と景品規約があるなど、複数の規約がある場合もあります。
詳しくは、同ホームページをご確認ください。

乳製品等(マーガリン類、飲用乳、ナチュラルチーズ・プロセスチーズ及びチーズフード、アイスクリーム類及び氷菓業、発酵乳・乳酸菌飲料)

飲料(トマト加工品、果実飲料等、コーヒー飲料等、豆乳類、レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒー、もろみ酢)

食卓食品(即席めん製造業・即席めん、カレー業、食品缶詰、粉わさび、削りぶし、凍り豆腐製造業・凍り豆腐、生めん類、辛子めんたいこ食品、ハム・ソーセージ類、食肉、包装食パン、鶏卵)

調味料(食酢、みそ業・みそ、ソース業、しょうゆ業・しょうゆ、ドレッシング類、食用塩、エキストラバージンオリーブオイル)

菓子類等(チョコレート業・チョコレート類・チョコレート利用食品、観光土産品、はちみつ類、チューインガム業・チューインガム、ビスケット業・ビスケット類、ローヤルゼリー、特定保健用食品)

酒類(清酒製造業・単式蒸留しようちゆう製造業・単式蒸留焼酎・泡盛、合成清酒及び連続式蒸留しょうちゅうの製造業、ビール製造業・ビール、洋酒製造業・ウイスキー、果実酒製造業、酒類輸入販売業・輸入ビール・輸入ウイスキー、酒類小売業)

家電・家庭用品等(ペットフード業・ペットフード、家庭電気製品業・家庭電気製品製造業・家庭電気製品小売業、釣竿、ピアノ・電子鍵盤楽器、眼鏡類、スポーツ用品、仏壇、帯締め及び羽織ひも)

化粧品等(防虫剤、化粧品、化粧石けん業・化粧石けん、歯みがき業・歯みがき類、家庭用合成洗剤及び家庭用石けん製造業・家庭用合成洗剤及び家庭用石けん)

出版・サービス(新聞業、出版物小売業、雑誌業、旅行業・募集型企画旅行、指定自動車教習所業・指定自動車教習所業)

自動車等(自動車業・二輪自動車業、農業機械業・農業機械、タイヤ業・タイヤ)

不動産(不動産業・不動産)

医療(医療用医薬品製造販売業、衛生検査所業、医療用医薬品卸売業、医療機器業)

金融(銀行業)

公正競争規約の効果

参加事業者に対する効果

公正競争規約は、公正競争規約に参加する事業者を拘束します。しかし、公正競争規約は、公正取引委員会及び消費者庁長官が当該業界における公正な競争の確保のために適切なものであると認定した規約であるため、規約の参加事業者は、規約の内容を遵守している限り、景品表示法や関係法令上問題とされることがありません。
では、事業者が公正競争規約に反する行為をした場合はどうなるのでしょうか。

通常、当該規約の運用団体として設置された公正取引協議会による措置(警告、違約金、除名処分等)に委ねられており、行政処分や公表などの措置は取られません。
ただし、当該違反行為が景品表示法にも違反している場合、消費者庁等が景品表示法に基づく措置をとることもあります。

非参加事業者に対する効果

公正競争規約に参加しない者に対しては法的拘束力がないため、規約に参加していない者が公正競争規約に違反する行為をしても、直ちに景品表示法違反にはなりません。しかし、公正競争規約の定めるルールが一般化した場合、ルールに反する表示については優良誤認や有利誤認が生じやすく、景品表示法違反となる場合があります。
その場合は、消費者庁等が景品表示法に基づく措置をとることもあるため、事業者が属する業界に公正競争規約がある場合は注意が必要です。

公正競争規約の効果

なお、公正競争規約は公正取引委員会及び消費者庁長官が認定したものであることから、公正競争規約及びこれに基づいてする事業者又は事業者団体の行為には、独占禁止法の手続規定は適用されません(景品表示法第31条第5項)。

公正競争規約の内容(消費者庁HPより)

公正競争規約の内容は、表示又は景品類に関する定め、規約を運用するために必要な組織や手続に関する定めです。
具体的な内容は、規約を設定する事業者又は事業者団体にゆだねられていますが、消費者庁ホームページによれば、表示に関する公正競争規約においては、通常、次のような定めがあります。

【表示に関する公正競争規約で通常よくある定め】

  1. 必要な表示事項(原材料名、内容量、賞味期限、製造業者名等の表示を義務付けることなど)
  2. 特定事項の表示の基準(不動産広告の徒歩による所要時間は、80メートルにつき1分の換算で表示することなど)
  3. 特定用語の表示の禁止(加工乳及び乳飲料には、「牛乳」の用語を使用しないことなど)

消費者庁ホームページ「公正競争規約」より

公正マーク

また、牛乳パックに表示されている公正マークのように、公正競争規約を遵守した適切な表示がなされている商品に表示できるマークを定めていることもあります。
なお、各業界の公正競争規約は、前述の連合会のホームページに掲載されているので、自社で表示や景品類に関する事項を検討する際には確認するようにしましょう。

景品表示法に関するご相談は、東京都千代田区直法律事務所の弁護士まで

直法律事務所では、多くの顧問契約先における企業法務経験をもとに広告規制への対応実績が豊富にあります。法規制を遵守しつつ、御社の長所のアピール強化ができるよう適切にサポートしていきます。 景品表示法・薬機法その他広告法務に関するご相談をご希望の事業者様におかれましては、当事務所まで、お気軽にお問い合わせください。



【サービス紹介】
景品表示法・薬機法その他広告法務

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