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食品表示法とは?健康増進法・食品衛生法等との関係についても弁護士が解説!

Q
食品表示法とはどのようなことを規制する法律でしょうか。また、健康増進法・食品衛生法等との関係についても教えてください。

A
食品衛生法、JAS法、健康増進法に分かれて規定されていた食品の表示すべき事項に関する規定をまとめて制定されたのが食品表示法です。食品の表示について具体的なルールを定めています。

この具体的な表示のルールを食品表示基準といいます。例えば、
①原材料名や原産地などの食品の品質に関する事項(品質事項)
②添加物や賞味・消費期限、アレルゲンなどの健康の保護に必要な事項(衛生事項)
③栄養成分表示や機能性表示食品などの健康増進を図るために必要な事項(保健事項)
などがあります。

この食品表示基準を、商品の製造者・加工者・輸入者や販売者(食品関連事業者等)は、遵守しなければなりません。違反等を行った場合には、罰則も設けられています。
例えば、行為者に対して3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科に加え、法人に3億円以下の罰金が科されることがあります。

このような罰則を科されることのないよう、食品表示法の規制内容を知っておくことはとても大切です。
以下、具体的に説明していきます。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談を承っております。

本記事では、
「食品表示法とは?健康増進法・食品衛生法等との関係についても弁護士が解説!」
について、詳しく解説します。

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食品表示法とは

食品表示法の施行経緯

食品の表示に関して、かつて、食品衛生法JAS法健康増進法に分かれて規定がありました。しかし、食の安全に対する問題意識の高まりを受け、この3つの法に規定されていた表示すべき事項に関する規定をまとめて制定されたのが食品表示法です。食品表示法は、平成25年6月に成立し、平成27年4月1日から施行されました。

食品表示法により、原則として、一般用加工食品及び一般用の添加物には栄養成分表示が義務付けられました。栄養成分表示により、消費者自身が、健康で栄養バランスがとれた食生活を営むことの重要性を意識し、商品選択に役立てることで適切な食生活を送るきっかけとなることが期待されています。

食品の表示に関する法律

食品の表示に関する法律には、健康増進法、薬機法、景表法等のように、表示してはいけない内容を定める法律もありますが、食品表示法は、表示してはいけない内容とともに、表示しなければいけない内容を定めている法律です。

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食品表示基準

食品表示法は、内閣総理大臣に対して、食品の表示について具体的なルールを定めることを義務づけており(食品表示法4条)、これにより定められたのが「食品表示基準」です。

「食品表示基準」では、表示すべき内容を定めるとともに、禁止する表示についても規定しています(食品表示基準9条)。

規制の対象となる食品は、加工食品(酒類を含む。)、生鮮食品又は添加物です。これらを販売する場合及び不特定又は多数の者に対して無償で譲渡する場合に規制の適用を受けます。

規制の対象となる者は、商品の製造者や加工者、輸入者、販売者など(食品関連事業者等といいます)です。食品関連事業者等は、食品表示基準に従い、食品の表示をする義務があります(食品表示法5条)。なお、バザー等で販売する者のように、販売を業としていない者であっても、食品を販売したり、不特定又は多数の人に無償で譲渡したりする場合には規制対象となります。

食品表示基準では、表示すべき内容として、食品及び食品関連事業者等の区分毎に次のような事項が定められています。

【表示すべき内容】

  1. 品質事項:原材料名や原産地などの食品の品質に関する事項
  2. 衛生事項:添加物や賞味・消費期限、アレルゲンなどの健康の保護に必要な事項
  3. 保健事項:健康増進を図るために必要な事項(栄養成分表示機能性表示食品など)

また、禁止される表示については、次のような定めがあります(食品表示基準9条)。

【禁止される表示】

  1. 実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語
  2. 産地名を示す表示であって、産地名の意味を誤認させるような用語
  3. 機能性表示食品、栄養機能食品注等の食品に関する特定の用語

これらの表示について、消費者庁のウェブサイトにQ&Aやガイドラインが掲載されていますので、規制対象となる食品を取り扱う場合には、確認するようにしましょう。

栄養成分表示

2015(平成27)年に施行された食品表示法の栄養成分表示義務の猶予期間が経過し、2020(令和2)年4月1日から完全施行となり、栄養成分表示が義務化されました(ただし、2020年3月31日までに製造された食品については従前の表示がなされているものもあります。)。
では、栄養成分表示とはどのようなものでしょうか。

容器包装に入れられた一般用加工食品及び添加物は、栄養成分の量及び熱量の表示(栄養成分表示)をしなければなりません。表示が義務付けられている栄養成分は、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量で表示)です。

また、「○○含有」、「低○○」など、栄養成分の量及び熱量について強調する表示をする場合、含有量が一定の基準を満たすことが必要とされています。

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消費者庁HP「栄養成分表示について」の栄養成分表示のPDFより引用



なお、小規模の事業者が販売した食品や、水や香辛料などのように栄養の供給源としての寄与が小さい食品などは、栄養成分表示が省略されていることもあります。

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消費者庁ウェブサイト「栄養や保健機能に関する表示制度とは」の「栄養や保健機能に関する食品表示制度とは」のPDFを引用

機能性・特別の用途の表示

保健機能食品や特別用途食品については、機能性の表示や特別の用途を表示することが可能です。

保健機能食品

国が定めた安全性や有効性に関する基準などに従って食品の機能が表示されている食品を保健機能食品といいます。
保健機能食品は、機能性を表示することができ、栄養機能食品特定保健用食品機能性表示食品の3種類が認められています。特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品以外の食品は、食品の持つ効果や機能を表示することができません(食品表示基準9条)。

栄養機能食品

栄養機能食品とは、1日に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合、その補給・補完のために利用できる食品をいいます。 対象となる食品は、消費者に販売される容器包装に入れられた一般用加工食品及び一般用生鮮食品です。

栄養機能食品として販売するためには、1日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が、定められた上・下限値の範囲内にある必要があるほか、基準で定められた当該栄養成分の機能だけでなく注意喚起表示等も表示する必要があります(食品表示基準7条及び21条)。

この栄養機能食品は、許可申請を行う必要がない自己認証制度です。既に科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品については、特に届出などをしなくても、国が定めた表現によって機能性を表示することが可能です。

特定保健用食品(トクホ)

特定保健用食品(トクホ)とは、からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品のことをいいます。

簡単に言うと、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「コレステロールの吸収を抑える」などの表示が許可されている食品のことをいいます(健康増進法43条1項、食品表示基準2条1項9号、3条2項、18条2項)。なお、特定保健用食品は、保健機能食品であるとともに、後述する特別用途食品の一つとして位置付けられます。

表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。

機能性表示食品制度

機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠を基に、商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品です(ただし、特別用途食品、栄養機能食品、アルコール飲料、脂質・ナトリウム等の過剰摂取につながる食品を除きます。)。

この機能性表示食品に関する制度は、2015(平成27)年4月に始まりました。

それまで、機能性を表示できる食品(保健機能食品)は、国が個別に許可した特定保健用食品(「トクホ」)と国の規格基準に適合した栄養機能食品だけでした。そのため、機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やすことで、消費者が商品の正しい情報を得て選択できるよう、機能性表示食品制度が設けられたのです(食品表示基準2条1項10号、3条2項、18条2項)。

事業者は、機能性表示食品を販売する場合、国が定めた一定のルールに基づき安全性や機能性に関する評価を行うとともに、生産・製造、品質の管理の体制、健康被害の情報収集体制を整え、販売日の60日前までに、次のような事項を、消費者庁長官に届け出る必要があります。

  • 安全性及び機能性の根拠に関する情報
  • 健康被害の情報収集体制

届け出られた情報は、消費者庁のウェブサイトでも公開されています。
ただし、機能性表示食品は、特定保健用食品とは異なり、国が安全性や機能性の審査を行った者ではなく、許可を受けたものではない点、注意が必要です。

科学的根拠として届け出られた内容に疑義がある場合、景品表示法に基づく措置命令が下されることもあります。実際に、令和5年6月30日に不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づく措置命令が下された商品について、機能性表示食品の撤回届出が提出されました。また、同じ科学的根拠を届け出ていた複数の機能性表示食品についても、撤回届出がされています。

特別用途食品

乳児の発育や、妊産婦、授乳婦、えん下困難者、病者などの健康の保持・回復などに適するという特別の用途を表示する食品を特別用途食品といいます。例えば、低タンパク質食品、経口補水液、乳児用調整粉乳、とろみ調整用食品などがあります。

特別用途食品として食品を販売するためには、その表示について消費者庁長官の許可を受ける必要があります(健康増進法第43条第1項)。 この表示の許可に際して、規格又は要件への適合性について、国の審査も受けなければなりません。

健康増進法・食品衛生法等との関係

食品の表示・広告を対象とする規定をもつ法律には、食品表示法のほかに、健康増進法、食品衛生法、日本農林規格等に関する法律(JAS法)、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)、特定商取引に関する法律(特商法)等があります。

健康増進法、食品衛生法及びJAS法にあった食品についての表示するべき内容に関する規定は食品表示法にまとめられましたが、表示してはいけない内容については、従前のまま残っているものもあります。

誇大表示を禁止する食品表示基準9条1項の規定に違反することが疑われる表示は、前述のような他の法令の規定、例えば景品表示法5条の不当表示の禁止や健康増進法65条1項の誇大表示の禁止に違反している可能性があります。このため、食品の虚偽誇大広告等に関して、関係法令の内容を十分に理解する必要があります。

健康増進法と食品表示法

健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として平成15年に施行された法律です。

食品表示に関しては、前述のとおりトクホ(特定保健用食品)(健康増進法26条1項及び健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令)があります。

また、健康増進法は、誇大表示を規制しています(健康増進法65条1項)。

第65条(誇大表示の禁止)
第1項 何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第3項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。

このように、健康保持増進効果等を表示すること自体は禁止されていませんが、著しく事実に相違または人を誤認させるような表示(誇大表示)は禁止されています。

厚生労働省による食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)によれば、健康増進法65条1項が対象とする者は、「食品として販売に供する物に関する広告その他の表示をする」者であれば、例えば、新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者等も対象となり得ることに注意が必要です。

また、「健康保持増進効果等」とは何かも問題になりますが、前述の指針によれば、健康状態の改善又は健康状態の維持の効果であり、具体的には次のような例が該当します。

ア 疾病の治療又は予防を目的とする効果

イ 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果

ウ 特定の保健の用途に適する旨の効果
健康の維持、増進に役立つ、又は適する旨を表現するもので、例えば次に掲げるものが該当。
ⅰ容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ旨
ⅱ身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つ旨
ⅲ身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的でない体調の変化の改善に役立つ旨

エ 栄養成分の効果

そして、これらに加え、「内閣府令で定める事項」として、例えば「人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことに資する効果」等も該当します。

そして、上記ア~エの効果を、例えば名称やキャッチフレーズ、期限や由来等の説明、新聞・雑誌記事や体験談などを引用又は掲載すること等により表示して、暗示的または間接的に表現した表示も、内閣府令により、健康保持増進効果等の表示に含まれるとされていることに注意が必要です。

なお、健康保持増進効果等の表示を行う場合は、当該表示に関する合理的な根拠も必要です。

食品衛生法と食品表示法

前述のとおり、食品衛生法に規定されていた食品の表示に関するルールは、健康増進法及びJAS法の食品の表示に関するルールとともに、食品表示法に一元化されました。

しかし、現在でも、食品衛生法20条に、「食品、添加物、器具又は容器包装に関し、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしてはならない」という定めがあるので、注意が必要です。

JAS法と食品表示法

日本農林規格等に関する法律(JAS法)は、農林物資(飲食料品・農産物・林産物・畜産物・水産物)についての品質の基準と品質に関する表示の基準を内容とする全国統一の規格である日本農林規格を定めています。

前述のとおり、食品衛生法に規定されていた食品の表示に関するルールは、健康増進法及びJAS法の食品の表示に関するルールとともに、食品表示法に一元化されました。

食品表示法の改正について

食品表示法は、令和4年6月13日に成立した「刑法等の一部を改正する法律の成功に伴う関係法律の整理等に関する法律」により罰則の文言が改正され、令和7年に施行される予定です。

また、食品表示基準については、数多くの改正がされていきました。消費者庁も改正概要をまとめています(消費者庁「これまでの食品表示基準の改正概要について※」参照)。

例えば、平成29年9月1日に改正・施行され、令和4年4月1日から完全施行され食品表示基準では、加工食品の製品に占める重量割合上位1位の原料について、原産地表示が義務付けられました。
そのほか、遺伝子組み換え表示や玄米及び精米に係る表示、食物アレルギーに関する表示など、多くの改正がなされています。

公布と同時に施行されている改正も多いため、改正状況を注意深く見守る必要があります。

まとめ

食品の製造・加工・輸入・販売をする場合には、食品表示法に十分な注意が必要です。違反等を行った場合には罰則もあります。罰則を科されることのないよう、食品表示法の規制内容を知っておくことはとても大切です。

食品表示基準はとても細かく定められており、また、ガイドラインやQ&Aなども理解しておく必要があります。消費者庁のウェブサイトなどを確認し、不安があれば専門家に相談するなどして適切な表示を行うようにしましょう。


【サービス紹介】
景品表示法・薬機法その他広告法務

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