澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談を承っております。
本記事では、
「食品表示法における表示ルールとは?食品添加物の無添加・不使用の表示はできる?」
について、詳しく解説します。
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食品表示基準の基本的なルール
食品表示法は、食品の表示に関する法律で、主に表示すべき事項をまとめた法律です。食品表示法により定められた「食品表示基準」では、具体的な表示すべき内容や禁止される表示を定めています(食品表示基準9条)。
その食品表示基準で示されている基本的なルールを確認していきましょう。
表示をする者
商品の製造者や加工者、輸入者、販売者など(食品関連事業者等といいます)は、食品表示基準に従い、食品の表示をする義務があります(食品表示法5条)。生産者や製造者から最終消費者へ直接販売する小売業者までの流通過程の全ての者が該当します。海外から農産物等を輸入する輸入者も表示義務があります。
なお、バザー等で販売する者のように、販売を業としていない者であっても、食品を販売したり、不特定又は多数の人に無償で譲渡したりする場合には規制対象となります。
ただし、設備を設けて飲食させる場合、容器包装に入れずに生産地で販売する場合又は容器包装に入れずに不特定若しくは多数の者に対して譲渡する場合(無償譲渡)には、表示義務はありません。
適用範囲
食品表示法は、食品関連事業者等が、加工食品、生鮮食品又は添加物を販売する場合に適用されます。ただし、一部の場合には表示が免除されています。
食品表示基準では、「加工食品」、「生鮮食品」、「添加物」に食品を分類し、それぞれ表示すべき事項を定めています。
加工食品は一般用加工食品と業務用加工食品、生鮮食品は一般用生鮮食品と業務用生鮮食品に分けて表示すべき事項が設けられています。業務用というのは、消費者に販売される形態となっているもの以外をいい、業務用に当てはまらないものが一般用となります。
表示が必要な事項
食品表示基準では前述のように食品の種類に応じて、また、食品関連事業者等の区分に応じて、次のような表示すべき事項が定められています。
【表示すべき内容】
- 品質事項:食品の品質に関する事項(原材料名や原産地など)
- 衛生事項:健康の保護に必要な事項(添加物や賞味・消費期限、アレルゲンなど)
- 保健事項:健康増進を図るために必要な事項(栄養成分表示、機能性表示食品など)
例えば、農産物の場合、次のような表示事項が定められています。
・消費者向けに販売する際に表示が必要になる事項(18条1項等)
名称:内容を表す一般的な名称を表示。
原産地:国産品については都道府県名。
ただし、市町村名その他一般に知られている地名も可。
輸入品については原産国名。
ただし、一般に知られている地名でも可。
・一定の要件に該当する場合に表示が必要になる事項(18条2項等)
放射線を照射した食品:放射線を照射した旨と照射した年月日
特定保健用食品:後述
機能性表示食品:後述
遺伝子組換え農産物:遺伝子組換え農産物につき基準に基づく表示等
乳児用規格適用食品:乳児用規格適用食品の文字
またはその旨を的確に示す文言
ただし、省略可能な場合もあり
密封された特定商品の販売に係る計量に関する政令に規定する特定商品:内容量及び食品関連事業者の氏名又は名称及び住所
・食品の特性に応じて表示が必要な事項(別表第24)
例)
消費者に販売するために容器包装に入れられた玄米及び精米:名称・原料玄米、内容量、精米時期、販売者等
しいたけ:栽培方法
また、特定保健用食品について、次のような事項が表示事項として定められています。
・特定保健用食品である旨
・許可等を受けた表示の内容
・一日当たりの摂取目安量、等
また、機能性表示食品の場合は、次のような事項が表示事項として定められています。
・機能性表示食品である旨
・科学的根拠を基にした機能性について、消費者庁長官に届け出た内容
・届出番号
・一日当たりの摂取目安量当たりの機能性関与成分の含有量
・機能性及び安全性について国による評価を受けたものではない旨
・疾病の診断、治療、予防を目的としたものではない旨、等
なお、保健事項に関する表示のうち、栄養成分表示や機能性・特別の用途の表示(保健機能食品の栄養機能食品・特定保健用食品(トクホ)・機能性表示食品や特別用途食品)については、別記事「食品表示法とは?健康増進法・食品衛生法等との関係についても弁護士が解説!」にも記載していますのでご参照ください。
表示が禁止される事項
食品表示基準で定められている禁止される表示の概要は次のとおりです(食品表示基準9条)。
【禁止される表示の概要】
- 実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語
- 産地名を示す表示であって、産地名の意味を誤認させるような用語
- 機能性表示食品、栄養機能食品注等の食品に関する特定の用語
表示の方法
食品表示基準では、どのように表示をすればよいのかについても具体的に定められています(食品表示基準8条、13条、22条等)。 例えば、邦文であることや、その食品を購入する者が読みやすく、理解しやすいような用語により正確に行うことなどが定められています。
最近の変更事項
食品表示基準については、多くの改正がされ、表示すべき事項などが追加されたり、変更されたりしています。それまでのルールから変更がある点については、特に注意が必要です。ここでは、最近の変更事項の主なものを見ていきましょう。
特定原材料として「くるみ」を追加
アレルギー表示の対象品目である特定原材料に、「くるみ」が追加されました。なお、2025(令和7)年3月31日までの経過措置期間が設けられています。
遺伝子組換えに関する任意表示制度の改正
遺伝子組み換えに関する義務表示制度について変更がありませんが、2023(令和5)年4月1日施行の改正法により、任意表示制度について変更があり、「適切に分別生産流通管理をしている」旨の表示や「遺伝子組換えでない」旨の表示が可能となりました。
全ての加工食品(輸入品を除く。)に原材料の産地を表示
輸入品を除く全ての加工食品について、1番多く用いられている原材料の産地を表示することとされました。
その表示方法は、「国別重量順表示」、「製造地表示」、「又は表示」、「大括り表示」、「大括り表示+又は表示」があります。
経過措置期間は満了しており、2022(令和4)年4月1日から義務表示となっています。
「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」公表
食品表示基準上、食品添加物について、食品添加物が不使用である旨の表示に関する規定がなく、任意で「無添加」、「不使用」等の表示が行われてきました。
この「無添加」等の表示は、義務表示事項よりも目立つように表示されていることが多いため、「無添加」等の表示だけを見て商品選択している消費者がいることが問題視されていました。
この「無添加」等の表示のように、一般用加工食品の任意表示は、事実に即していれば、表示をするか否か、どのように表示するかなどは食品関連事業者等の判断に委ねられています(食品表示基準7条で定められた事項を除く。)。
しかし、任意表示であっても例外的に禁止される表示があります。それは、食品表示基準9条に定められた、実際の食品より著しく優良又は有利であると誤認させる表示(同条1項1号)、義務表示事項の内容と矛盾する表示(同項2号)、内容物を誤認させるような表示(同項13 号)です。これらの表示は、消費者が、食品を選択する際の情報として不適切だからです。
前述のような「無添加」等の食品添加物の不使用表示が、消費者の商品選択に与える影響が大きいことから、消費者庁は、令和4年3月30日、この食品表示基準9条の表示禁止事項に当たるか否かのメルクマールとなる食品添加物の不使用表示に係るガイドラインを公表しました。このガイドラインは、事業者が消費者に対して正確な情報提供を行うための留意点となるものです。
ガイドラインでは、容器包装の表示を作成する際に注意すべき食品添加物の不使用表示を以下の10類型に分けています。そして現時点で食品表示基準9条の表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示と次の具体例を類型ごとにまとめています。
類型1:単なる「無添加」の表示
例)単に「無添加」とだけ記載した表示のうち、無添加となる対象が消費者にとって不明確な表示
類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
例)「人工甘味料不使用」等、無添加あるいは不使用と共に、人工、合成、化学、天然等の用語を使用した表示
類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
例1)清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」と表示(清涼飲料水へのソルビン酸の使用は使用基準違反である。)
例2)食品表示基準別表第5において名称の規定をもつ食品であり、特定の食品添加物を使用した場合に、同別表第3の定義から外れる当該食品添加物を無添加あるいは不使用と表示
類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
例1)日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示
例2)既存添加物の着色料を使用した食品に、○○着色料が不使用である旨を表示(○○着色料とは、指定添加物の着色料をいう。)
類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
例1)原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物としての調味料を使用していない旨を表示
例2)乳化作用を持つ原材料を高度に加工して使用した食品に、乳化剤を使用していない旨を表示
類型6:健康、安全と関連付ける表示
例1)体に良いことの理由として無添加あるいは不使用を表示
例2)安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示
類型7:健康、安全以外と関連付ける表示
例1)おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示
例2)「開封後」に言及せずに「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」と表示
例3)商品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示
類型8:食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
例1)同種の製品で一般的に着色料が使用されておらず、かつ、食品元来の色を呈している食品に、「着色料不使用」と表示
例2)同種の製品が一般的に当該食品添加物を使用していないことから、消費者が当該食品添加物の使用を予期していない商品に対して、当該食品添加物の不使用を表示
類型9:加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
例1)原材料の一部に保存料を使用しながら、最終製品に「保存料不使用」と表示
例2)原材料の製造工程において食品添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加あるいは不使用を表示
類型10:過度に強調された表示
例1)商品の多くの箇所に、過剰に目立つ色で、〇〇を使用していない旨を記載する
例2)保存料、着色料以外の食品添加物を使用している食品に、大きく「無添加」と表示し、その側に小さく「保存料、着色料」と表示
このガイドラインでは、食品関連事業者等に対し、包装資材の切替えに一定程度の期間が必要であること等を考慮し、2024(令和6)年3月末までに、表示の見直しを行うよう求めています。
なお、この期間に製造・販売等された加工食品が見直し前の表示で流通することはやむを得ないとしつつも、可能な限り速やかに見直しを行うことが望ましいとしています。
しいたけの原産地表示
令和4年3月末から、しいたけの原産地について、原木又は菌床培地に種菌を植え付けた場所(植菌地)を原産地として表示することとされました。
なお、経過措置期間が、生鮮しいたけは2022(令和4)年9月末まで、しいたけ加工品は2023(令和5)年3月末まで設けられていましたが、満了しているため、現在は表示義務があります。
アサリの原産地表示ルールの厳格化
令和4年3月末から、輸入したアサリの原産地について、例外を除いて、輸出国とするなど、アサリの原産地表示の適用が厳格化されました。
まとめ
食品の製造・加工・輸入・販売をする場合には、食品表示法に十分な注意が必要です。違反等を行った場合には罰則もあります。罰則を科されることのないよう、食品表示法及び食品表示基準の定める表示のルールを知っておくことはとても大切です。
食品表示基準はとても細かい定めがあり、ガイドラインやQ&Aなどでも具体的なルールが示されています。また、改正があれば、期限までにしっかりと対応する必要もあります。自身が製造等する食品に関するルールは、漏れなくしっかり把握しなければなりません。消費者庁のウェブサイトなどを確認し、また、不安があれば専門家に相談するなどして、適切な表示を行うようにしましょう。
【サービス紹介】
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