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食品表示法に違反するとどうなる?事例をもとに解説!

Q
食品表示法に違反するとどうなるのでしょうか、教えてください。

A
食品表示法は、食品の表示について食品表示基準という具体的なルールを定めています。
この食品表示基準や、食品表示法に違反した場合、消費者庁などからの指示・命令や罰則の適用があります。

通常の食品表示法違反については、行政庁からの命令に従わない場合に罰則が適用されます。しかし、原産地(原材料の原産地を含む)の虚偽表示をした場合や安全性に重要な影響を及ぼす事項について食品表示基準に従った表示をしない場合には、直ちに罰則が適用されることもあります。
重いものでは、行為者に対して3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科に加え、法人に3億円以下の罰金が科されることがあります。

そのため、食品を扱う場合には、消費者に対し正しい表示を行うという意識をもち、食品表示制度の認識を深め、内容を確認し、管理体制を整えていくことが大切です。その前提として、食品表示法の規制内容を知り、どのような場合に行政庁からの指示や命令を受けるのか、また、罰則をどのような場合に受けるのか理解しておく必要があります。
以下、具体的に説明していきます。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談を承っております。

本記事では、
「食品表示法に違反するとどうなる?事例をもとに解説!」
について、詳しく解説します。

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食品表示法は何を規制しているか?

食品表示法は、食品の表示に関する法律で、主に表示すべき事項をまとめた法律です。食品表示法により定められた「食品表示基準」では、具体的に表示すべき内容や禁止される表示を定めています(食品表示基準9条)。

規制の対象となる食品は、加工食品(酒類を含む。)、生鮮食品又は添加物です。これらを販売する場合及び不特定又は多数の者に対して無償で譲渡する場合に規制の適用を受けます。

規制の対象となる者は、商品の製造者や加工者、輸入者、販売者など(食品関連事業者等といいます)です。食品関連事業者等は、食品表示基準に従い、食品の表示をする義務があります(食品表示法5条)。なお、バザー等で販売する者のように、販売を業としていない者であっても、食品を販売したり、不特定又は多数の人に無償で譲渡したりする場合には規制対象となります。

食品表示基準では、表示すべき内容として、食品及び食品関連事業者等の区分毎に次のような事項が定められています。

【表示すべき内容】

  1. 品質事項:原材料名や原産地などの食品の品質に関する事項
  2. 衛生事項:添加物や賞味・消費期限、アレルゲンなどの健康の保護に必要な事項
  3. 保健事項:健康増進を図るために必要な事項(栄養成分表示機能性表示食品など)

また、禁止される表示については、次のような定めがあります(食品表示基準9条)。

【禁止される表示】

  1. 実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語
  2. 産地名を示す表示であって、産地名の意味を誤認させるような用語
  3. 機能性表示食品、栄養機能食品注等の食品に関する特定の用語

これらの表示について、消費者庁のウェブサイトにQ&Aやガイドラインが掲載されていますので、規制対象となる食品を取り扱う場合には、確認するようにしましょう。

食品表示法に違反するとどうなるか?

食品表示法に違反した場合、①~④のどの違反をしたかによって、処分の流れが異なっています。

① 表示事項を表示せず又は遵守事項を遵守しなかった場合
② 食品の原産地や原料原産地について虚偽の表示がされた場合
③ 表示違反が、食品の安全な摂取に重大な影響を及ぼす場合
④ 立入検査等を拒んだ場合・自主回収の届出をしない又は虚偽の届出をした場合

そこで、①~④の違反の種類毎に、処分の流れを確認していきましょう。

表示事項を表示せず又は遵守事項を遵守しなかった場合

食品表示基準に定められた事項を表示していない食品を販売したり、食品表示基準に定めた遵守事項を遵守しない食品関連事業者に対して、消費者庁長官等は、表示事項を表示し、遵守事項を遵守すべき旨の指示をすることができます(食品表示法6条1項及び同条3項)。

この点、消費者庁、国税庁及び農林水産省の「食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針」(以下「指示及び指導並びに公表の指針」といいます)によれば、次の場合には、指示の前に指導を行うとしています。

【指導を行う場合】
次の項目のすべてに該当する場合
・食品表示基準違反が、常習性がなく、過失による一時的なものであること。
・違反事業者が直ちに表示の是正(表示の修正・商品の撤去)を行っていること。
・事実と異なる表示があった旨を、社告、ウェブサイトの掲示、店舗等内の告知等の方法を的確に選択し、速やかに情報提供しているなどの改善方策を講じていること。

指導を受けたにもかかわらず、指導に従わない場合には指示が行われるため、指導を受けた場合には、しっかりと指導を遵守するようにしましょう。

そして、指示を受けた者が正当な理由なく指示に従わないときは、消費者庁長官は、その指示に係る措置をとるべきことを命令することができます(食品表示法6条5項)。

このような指示や命令をした場合、消費者庁長官等はその旨を公表しなければならないとされています(食品表示法7条)。前述の指示及び指導並びに公表の指針によれば、指示を行った場合には次の事項を公表するとしています。

【公表する事項】
・違反した食品関連事業者の氏名又は名称及び住所
・違反事実(ただし、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に照らして不開示情報に該当すると判断されるような例外的な事実があれば、当該事実については公表しない。)
・指示の内容

公表された場合には、消費者や取引先への影響も大きくなります。そのため、できる限り指示や命令を受けるような事態にならないよう、注意する必要があります。

さらに、この命令に違反した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(食品表示法20条)。そして、法人の代表者や管理人、代理人、使用人その他の従業員が、その法人の業務に関して、命令に違反した場合には、法人に対しても、1億円以下の罰金刑が科されます(食品表示法22条1項)。

食品の原産地や原料原産地

食品表示基準で表示されるべきとされている原産地について、虚偽の表示をした食品を販売した者は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます(食品表示法19条)。原材料の原産地について虚偽の表示をした場合も含みます。そして、法人の代表者や管理人、代理人、使用人その他の従業員が、その法人の業務に関して、命令に違反した場合には、法人に対しても、1億円以下の罰金刑が科されます(食品表示法22条1項)。

指示や命令を経ずに罰則の適用を受けるとされているのは、原産地や原料の原産地の表示が、消費者が食品選択をする際の重要な要素であり、また、公正な競争を守るためにも重要であるためであると考えられます。

安全性に重要な影響を及ぼす事項

アレルゲンや消費期限、加熱の要否などのように食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項について、食品表示基準に従った表示がされていない場合には生命や身体に危害が発生する危険があります。そのため、厳しい罰則や行政処分が定められています。

食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項について食品表示基準に従った表示をしていない食品を販売した者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又は併科に処せられます(食品表示法18条)。そして、法人の代表者や管理人、代理人、使用人その他の従業員が、その法人の業務に関して、命令に違反した場合には、法人に対しても、1億円以下の罰金刑が科されます(食品表示法22条1項)。
この罰則も、指示や命令を前提とするものではなりません。それは、食の安全性への影響が重大であるためであると考えられます。

また、食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項について、食品表示基準に従った表示がされていない食品を販売したり、販売しようとしている場合で、生命又は身体に対する危害の発生又は拡大の防止のために緊急の必要性がある場合、消費者庁長官は、食品の回収その他必要な措置をとるよう命令をしたり、一定期間の業務の全部又は一部停止を命じることができます(食品表示法6条8項)。

なお、消費者庁の「食品表示法第6条第8項の規定に基づく命令等の指針」によれば、回収命令を検討する場合で、消費者の安全を迅速に確保する観点から、直ちに命令を行うよりも行政指導を行うことが有効であるときは、行政指導を行うものとされています。命令を受けた場合には、食品表示法7条により公表されてしまいますが、行政指導の場合は公表されません。行政指導があった場合には、命令を受けないで済むよう、しっかりと対処しましょう。

また、業務停止命令が検討される場合であっても、食品関連事業者等が自主的に問題のある食品の販売を停止しているときは、業務停止命令を行う必要はないものとされています。業務停止命令を受けることのないよう早期の対処が大切です。

前述のとおり命令があった場合、消費者庁長官等はその旨を公表しなければならないとされています(食品表示法7条)。消費者庁の「食品表示法第6条第8項の規定に基づく命令等の指針」によれば、指示を行った場合には次の事項を公表するとしています。

【公表する事項】
・ 違反した食品関連事業者等の氏名又は名称及び住所
・ 違反事実(ただし、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の規定に照らして不開示情報に該当すると判断されるような例外的な事実があれば、当該事実については公表しない。)
・ 命令の内容

ただし、同指針によれば、食品表示基準違反に常習性がなく過失による一時的なものであり、また、命令又は行政指導に伴って表示の是正が行われ、かつ、自主回収若しくは全購入者への連絡又は店舗、ウェブサイト等における違反事実の掲示等の自主的な情報提供が行われている場合には、食品表示法7条の規定に基づく公表を行う必要はないとしています。

この命令に違反した場合には、前述の罰則より重い、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科に処せられます(食品表示法17条)。そして、法人の代表者や管理人、代理人、使用人その他の従業員が、その法人の業務に関して、命令に違反した場合には、法人に対しても、3億円以下の罰金刑が科されます(食品表示法22条1項)。

立入検査等拒否等

消費者庁長官等は、食品の表示の適正を確保するために必要があれば、必要な報告や帳簿、書類等の提出を求めることができます。 また、食品関連事業者等の事務所や事業所などに立ち入って、表示の状況を確認したり、食品自体や原材料、帳簿、書類等を検査することなどができます(食品表示法8条1項)。

この立入検査等を拒んだり、虚偽の答弁をした者は、50万円以下の罰金に処せられます。そして、法人の代表者や管理人、代理人、使用人その他の従業員が、その法人の業務に関して、命令に違反した場合には、法人に対しても、50万円以下の罰金刑が科されます(食品表示法22条1項)。

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消費者庁「早わかり食品表示ガイド(令和5年3月版・事業者向け)〔PDF〕」2頁より引用



違反事例

では、実際に食品表示法に違反したとして指示等を受けた事例にはどのようなケースがあるでしょうか。

指示(機能性表示食品と紛らわしい用語を表示等)

令和4年11月18日、一般社団法人が販売する5つの商品について、食品表示法4条1項の食品表示基準に違反する次のような不適正表示を行っていたとして、同法6条1項に基づき、以下の指示が行われました。

(不適正表示の内容の一部)
・機能性表示食品ではない食品であるのに、「商品名:●●糖鎖機能性食品G」、「●●糖鎖機能性食品G」及び「医療機関向け機能性食品」と、機能性表示食品と紛らわしい用語を表示
・栄養成分の量及び熱量の表示において、ナトリウム塩を添加していない食品について、食塩相当量に加えてナトリウムの量を表示しようとするときは、「食塩相当量」を「ナトリウム(食塩相当量)」等に代えて表示すべきところ、「ナトリウム〇〇㎎」と表示
・その他多数の不適正表示を指摘


(指示の内容等)
① 販売している全ての食品について、直ちに表示の点検を行い、不適正な表示の食品については、速やかに、基準に従って適正な表示に是正した上で販売すること。
② 販売した食品の一部について、基準で定められた遵守事項が遵守されていなかった主たる原因として、消費者に対し正しい表示を行うという意識及び食品表示に関する認識の欠如並びに表示内容の確認及びその管理体制の不備があると考えざるを得ないことから、これらを含めた原因の究明及び分析を徹底すること。
③ ②の結果を踏まえ、食品表示に関する責任の所在を明確にし、法人内における品質表示のチェック体制の強化、拡充等の再発防止対策を実施するとともに、当該対策によるチェック体制等が有効に機能していることを定期的に検証し、必要な改善を行うこと。これにより、今後、販売する食品について、基準に違反する表示を行わないこと。
④ 役職員に対して、食品表示制度についての啓発を行い、その遵守を徹底すること。
⑤ ①から④までに基づいて講じた措置について、令和4年12月19日までに文書をもって消費者庁長官に報告すること。

指示(原産地の表示違反)

令和5年3月27日、あさりの原産地を「中国」とすべきところを「熊本」と表示して販売したことについて、「原産地」の表示に反する(食品表示基準18条1項の表)ため、販売した会社に対して、食品表示法6条1項に基づき、以下の指示が行われました。
なお、約1年間のうちに、不適正表示をしたあさりが、卸売業者12社に、およそ65万kg販売されました。

(指示の内容)
① 販売する全ての食品について、直ちに表示の点検を行い、不適正な表示の食品については、速やかに食品表示基準の規定に従って、適正な表示に是正した上で販売すること。
② 食品表示基準に定められた遵守事項が遵守されていなかった主な原因として、消費者に対し正しい表示を行うという意識及び食品表示制度に関する認識が著しく欠如していたと考えざるを得ないことから、これらを含めた原因の究明及び分析を徹底すること。
③ ②の結果を踏まえ、食品表示に関する責任の所在を明確にするとともに、食品表示の相互チェック体制の強化、拡充その他の再発防止対策を適切に実施すること。これにより、今後、販売する食品について、食品表示基準に違反する不適正な表示を行わないこと。
④ 従業員に対して、食品表示制度についての啓発を行い、その遵守を徹底すること。
⑤ ①から④までに基づき講じた措置について、令和5年4月27日までに●●県知事宛てに提出すること。

上記2つの例では、いずれも5項目の指示がなされており、内容はほぼ同じです。そして、指示のあった日からおよそ1か月後に指示に基づいて講じた措置を提出するよう求めています。

懲役刑(原産地の表示違反)

外国産のわかめが原材料として使用されているのに、「原材料 わかめ(鳴門産)」などと国産のわかめが原材料として使われたと誤認させるような表示をして販売したことについて、販売した会社の代表取締役を、不正競争防止法違反(同法21条2項1号、2条1項20号)及び食品表示法違反(同法19条、同法4条1項、食品表示基準3項2項)として、懲役10か月、執行猶予3年に処しました(静岡地判令和4年6月14日)。

このように、不正競争防止法違反にも該当する場合、重い不正競争防止法違反の罪の刑で処断されます。
なお、この会社は、この表示について、令和4年6月1日に不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)7条1項に基づく措置命令も受けています。

まとめ

食品の安全に対する関心の高い現代においては、消費者が食品を選択する際に、食品の表示の果たす役割が大きくなっています。そのため、不適正な表示についての監視体制は強化されており、食品を製造・加工・販売する場合には、十分な注意を払う必要があります。

違反事例で挙げた指示の内容も確認し、指示等を受ける事態にならないよう、消費者に対して正しい表示を行うという意識をもち、食品表示制度の認識を深め、内容を確認し、管理体制を整えるなど、適正な表示ができる体制を作っていくことが大切です。


【サービス紹介】
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