澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「徹底解説!内容証明郵便の書き方・出し方・注意点」
と題して、詳しくご説明します。
内容証明郵便の書き方・出し方について弁護士が動画で解説
内容証明郵便まるわかりガイド 書き方のルール編
内容証明郵便まるわかりガイド 出し方編
「内容証明」とは?
正式名称は「内容証明郵便」
普段耳にする「内容証明」の正式名称は「内容証明郵便」です。
「内容証明郵便」は、郵便局より配達されます。
「内容証明郵便」の性質・法的効力
内容証明郵便自体には、特別な法的効力はありません。
内容証明郵便というのは、
- どんな内容の手紙を
- いつ相手に出したか
ということを郵便局で証明してくれるものです。
全部で3部同じものを用意し(後で詳しくお伝えします)、
そのうちの1枚は郵便局で保管されます。
そのためどういう内容の手紙をいつ出したか、という事を簡単に証明できるのです。
もちろん内容証明郵便でなくても、手紙をコピーしておけば、手元に文面は残ります。
しかし、その手紙が間違いなく相手に届いたかどうかは、分からないのです。
大事な手紙や、その手紙を出したことの証明が後に必要となる場合は内容証明郵便が適切といえます。
「内容証明郵便」の特徴
- 書留郵便※で配達される
- 封筒に「内容証明」のハンが押されている
- 文書の末尾に郵便事業株式会社による証明のハンが押されている
- 決まった形式や、文字数である事
※郵便物の引き受け及び配達を記録し、万が一郵便物が壊れたり、届かなかった場合に一定の損害要償額の範囲内で、実損額を賠償するサービスの郵便
普通の郵便物と比べると、かなり格式ばったものになりますので見分けるのは簡単です。
「内容証明郵便」書き方のルール
「用紙」のルール
まずは用紙ですが、「特にきまりはない」です。
便せん、原稿用紙、コピー用紙、メモ用紙等どんなものでも大丈夫です。
大きさの制約もありません。
ただし、内容証明書が2枚以上にわたるときは、その枚数の綴じ目に契印・割印が必要となります。
ちなみに、内容証明は手書きでもパソコン(ワード等)でも構いません。
「文字数」のルール
文字数には、明確なルールがあります。
「1行20字以内・1枚26行以内」です。
このルールは内国郵便約款で決まっています(同約款第123条、以下「約款」といいます)。
文字数を数えるのが面倒だという人は、市販の内容証明郵便の用紙や、400字詰め原稿用紙を使用するのがオススメです。上記の制限以内であれば、少ない文字数、行数でも問題ありません。
また、横書きの内容証明郵便の場合は「1行13字以内・1枚40行以内」や「1行26字以内・1枚20行以内」の方式でも問題ありません。
従来の内容証明郵便は縦書きが多かったようですが、現在では縦書き・横書きのどちらで作成しても大丈夫です。
「使用できる文字」のルール
内容証明郵便に使用できる文字も決まっています(約款第121条)。
かな(ひらがな、カタカナ)、漢字及び数字です。
英字は固有名詞(氏名や会社名、地名)にのみ使用できます。
つまり、英語や中国語などの外国語による内容証明郵便は認められません。
(外国の方も日本語で作成しなければなりません。)
その他、かっこや句読点、一般に記号として使用されているものは使用出来ます。
かっこは、「」、『』、()、等それぞれ1セットを1文字として数えます。
かっこつきの数字でも文中の序列を示す記号と認められる場合は1文字として数えます。
では、具体的に見てみましょう。
一文字と数える場合
上記(1)のように⇒8字
詳細は(4)へ⇒6字
文中の序列を示す記号と認められる場合
(1)郵便物⇒4字
(2)書式⇒3字
郵便局のホームページ「内容証明 ご利用の条件等」に【謄本の字数の計算方法】が掲載されているのでご参照ください。
「訂正する時」のルール
内容証明郵便は、普通の手紙と違い、文書を訂正する時のルールもあります。
順序は、以下の通りです。
- 間違えた箇所を二重線で消す
- 欄外に「何字削除、何字加入」と記載する
- 差出人のハンを押す(実印では無く三文判でも可能です)
例えば、郵便局に3通分出す際に、それぞれの文書で内容が違う箇所があることを指摘された場合はこの方法で対応できます。
しかし、差出人が請求したい金額の間違いなどはそもそも知り得ませんから指摘されません。
郵便局に出しに行く前にもう一度誤字・脱字が無いかチェックをしましょう。
「封筒」のルール
封筒は、普通の手紙と同様です。
表側に受取人の住所氏名を、裏側に差出人の住所氏名を書きます。
ただし、封筒に封はしないでください。
郵便局にてチェックを受けた後、手紙を入れて封をします。
また、資料や写真等の同封は出来ません。
参考資料となるものの存在を受取人に伝えたい場合は、
「ご希望される場合は、いつでも資料のコピーを差し上げる用意があります」
などと文書に一言添えるといいでしょう。
文書に必ず記載すること
内容証明郵便には、必ず記載する必要がある事項、どちらでもいい事項があります。
以下、6つについて説明していきます。
①差出人と受取人の住所
内容証明郵便では、手紙の冒頭か最後に差出人の住所氏名、受取人の住所氏名を記載することが義務づけられています。
しかし、差出人の横に捺印することは法律上、義務づけられていません。捺印が無くても有効です。もっとも、間違いなく本人の意思で作成された事を示されたい場合には、はんこを押します。
②文書のタイトル
タイトルをつけることは、義務ではありません。
タイトルをつけるか、つけないかは作成者の好みですし、内容に合っていれば、どのようなものでも構いません。
何にしたら良いか分からない場合は「通知書」という文書のタイトルが無難です。
③時候のあいさつ
手紙には時候のあいさつがつきもの、という印象があるかもしれません。 しかし内容証明郵便では、特に書く必要はありません。
④差出人が2人以上の時
複数人で内容証明郵便を出したいとき、差出人の住所氏名欄は全員分記載する必要があります。
封筒の裏側も同じく全員分を記載します。
但し、差出人用の提出文書は1通で問題ありません。(差出人用+郵便局用+受取人用の計3通です。)
⑤受取人が2人以上の時
全員に全く同じ文書を送る「完全同文内容証明郵便」と、受取人別に同じ文書を送る「不完全同文内容証明郵便」があります。
「完全同文内容証明郵便」は、文書に受取人全員分を記載し、増えた受取人分だけ提出する文書を増やします。
例えば受取人が3名なら、郵便局に持って行く文書は全部で5通です。
(差出人用+郵便局用+受取人用3通の計5通)
差出人が複数の場合とは違い、封筒は受取人の人数分だけ用意しなければなりませんので、封筒の宛名(受取人)は1人ずつの記載です。
「不完全同文内容証明郵便」は、文書冒頭(若しくは最後)の受取人の氏名住所を全員分記載せず、各個の氏名住所を記載します。
(文書の内容は全く同じです。)
郵便局に持って行く文書の数は「完全同文内容証明郵便」と同じ考え方で問題ありません。
しかし受取人用の文書は、各個の氏名住所のみが記載されているものになります。
「完全同文内容証明郵便」は1回の内容証明郵便で済みますし、費用も「不完全同文内容証明」に比べて安いです。
「不完全同文内容証明郵便」は費用こそかかってしまいますが、複数人に送っていることを知られたくないとき(本人と保証人)などに有効です。 どういった経緯で、何のために複数人に送るのか、目的がはっきりしていると、どちらを利用するか選びやすいかと思います。
⑥代理人が出す時
内容証明郵便は、弁護士でなくても出せますし、他の人に代理で出してもらうことも出来ます。
内容証明郵便を他の人に書いてもらい、自分で受取人へ送り、その後の交渉なども本人が行う場合は、本人の氏名住所で出します。
また、代理人に全てを依頼する場合は、誰の代理人なのか明記の必要があります。
直法律事務所「内容証明郵便」の出し方
郵便局にもっていくもの(必要なもの)
内容証明の文書が作成できたら、いよいよ郵便局で提出です。
提出予定の文書が複数枚の場合、ホッチキス留めをし、ページとページのつなぎ目に差出人のハン(契印)を押します。
全てのページのつなぎ目に押します。
郵便局にもっていくものは以下の4つです
- 内容証明郵便にする文書(同じもの3通)
- 封筒1通(受け取り人の人数分)
- 差出人の印鑑(三文判でも可)
- 郵便料金
郵便局に提出してから文字数の間違いを指摘されたりすることもありますので、印鑑は必ず持って行きましょう。
郵便局はどこでもいいのか?
内容証明郵便は、全ての郵便局が対応しているわけではありません。
内容証明郵便が扱っているのは、集配郵便局と郵便事業会社が定める無集配郵便局(内容証明取扱店)に限られています。
どこの郵便局が内容証明郵便を扱っているのか分からない場合は、最寄りの郵便局で尋ねるか、電話で教えてもらうことをオススメします。
また、近くに内容証明郵便を扱える郵便局がない人への救済措置があります。(4、「電子内容証明」)
郵便局でチェックが終わると「書留・配達記録郵便物等受領証」を貰えます。
こちらは、再度証明の際に必要になるので必ず大切に保管して下さい。
また、郵便局へは差出人本人ではなく他の人が持って行っても問題ありません。
(印鑑は差出人のものでないといけません。)
「配達証明」とは?
郵便局で一通りのチェックが終わると郵便局の人に
「配達証明に350円かかりますが、お付けしますか?」と聞かれます。
350円をケチってはいけません。
これこそが、内容証明の肝といっても過言ではありません。
「配達証明」とは、内容証明郵便がいつ受取人に配達されたのかの証拠になるものです。
通常、1週間ほどで差出人の元に「〇月〇日に配達したことを証明します」と記載されたハガキが届きます。
この証拠が無ければ、いつ受取人に配達されたのか分かりません。
せっかく内容証明郵便にした意味が無くなってしまいます。
たまに配達証明が必要か聞かない郵便局もありますので、忘れずにこちらから伝えましょう。
また万が一配達証明付ける事を忘れてしまっても1年以内であれば再度配達証明を出して貰えます。
ただし、配達証明料は480円となるので、やはり出すときに忘れずに伝える事が大事です。
いくらかかる?「内容証明郵便」の費用(令和4年8月現在)
内容証明郵便の費用ですが、以下のような計算式です。
内容証明料+一般書留料+通常郵便料金+配達証明料
順番に説明していきます。
料金 | 内容 |
---|---|
内容証明料 | 手紙が1枚の時は480円、2枚目以降は1枚につき290円プラスになります。 |
一般書留料 | 内容証明郵便は書留になりますので、一般書留料の480円がかかります。 |
通常郵便 料金 |
普通の手紙を出す場合の切手と同じ料金がかかります。 50gまでは110円です。 |
配達証明料 | (3)でご説明したとおり、配達証明が必要な場合は350円かかります。 (差し出し後1年以内は480円で再度証明出来ます。) 3枚の文書を内容証明郵便(配達証明付き)で出す場合・・・ 480円+290+290+480円+110円+350円=2,000円 |
再度証明について
郵便局では、差出人が内容証明郵便を紛失した場合でも5年以内であれば、閲覧と再度証明が出来ます。
閲覧し、全く同じものを作成し、郵便局に提出することで、その郵便物が内容証明郵便物として差し出されたことを証明してくれます。
ただし、閲覧・再度証明の際は以前提出した際に受け取った「書留・配達記録郵便物等受領証」を提示しなければなりませんので注意が必要です。
令和6年10月1日末現在、閲覧は480円、再度証明は内容証明料と同じで1枚480円、2枚目からは1枚につき290円プラスになります。
電子内容証明とは?
電子内容証明(e内容証明)
電子内容証明とは、インターネット上で内容証明郵便を出す仕組みです。
また24時間受け付けているので、好きなときに出すことが出来ます。
受取人への送付は通常と同様に郵便局員が配達をします。
作成方法とルール
電子内容証明にもいくつかのルールがあります。
項目 | 内容 |
---|---|
文字のサイズ | 10.5ポイント以上450ポイント以下です。 |
用紙サイズ・枚数 | A4判縦置き・横書きorA4判横置き縦書きのどちらかです。 枚数は、最大5枚までです。 |
余白 | A4判縦置き:上左右にそれぞれ1.5cm以上、下に7cm以上 A4判横置き:上下右にそれぞれ1.5cm以上、左に7cm以上 の余白が必要です。 |
その他 | 文字の種類はJIS 第 1、2水準範囲の文字のみ使用可。外字は使用不可。 文字の装飾は太字、斜体のみ使用可。傍線、枠、アンダーラインなどは不可。 ①②、⑴⑵などは使用不可。 ※ただし全角の数字を全角の括弧で囲んだ(1)(2)は使用可。 図表は使用不可。 押印は不要です。 |
送り方
専用Webサイトに登録します(無料で登録できます)。
作成した文書をアップロードし、差出人・受取人の住所を入力します。
(通常の内容証明郵便と同様に完全・不完全同文内容証明郵便も可能です)
文書が完成した後、送信ボタンを押すと、仮の受領証が発行されます。これで差し出し完了です。
料金
通常の内容証明郵便に比べ、電子内容証明は安い料金で利用できます。
内容証明料+通常郵便料金+電子郵便料金+謄本送付料+一般書留料+(配達証明料)
となります。
金額については以下の表の通りです。
料金 | 内容 |
---|---|
内容証明料 | 手紙が1枚の時は382円、2枚目以降は1枚につき360円プラスになります。 また、2通目以降の同文内容証明1枚目は210円、 同文内容証明2通目以降2枚目以降1枚ごとに210円プラスになります。 |
通常郵便料金 | 110円かかります。 |
電子郵便料金 | 手紙が1枚のときは19円、2枚目以降は1枚につき6円プラスになります。 |
謄本送付料金 | 通常送付の場合には304円、一括送付(同時に複数の内容証明を出す場合に 差し出した謄本をまとめて差出人に送付する方法)は503円かかります。 |
一般書留料 | 内容証明郵便は書留になりますので、一般書留料の480円がかかります。 |
配達証明料 | 4.(3)でご説明したとおり、配達証明が必要な場合は350円かかります。 (差し出し後1年以内は480円で再度証明出来ます。) 1枚(文字数で換算すると、窓口で出す場合の3枚分にあたります)の 文書を内容証明郵便(配達証明付き)で出す場合・・・ 382円+110円+19円+304円+480円+350円=1,645円謄本送付料金ですが、電子内容証明の場合、一度に100通まで同時送付が可能です。 かなり金額もお得になりますので、有効活用しましょう。 |
電子内容証明のメリット・デメリット
メリット
- 24時間受け付けているので好きな時間に差し出し可能
- 近くに内容証明郵便対応の郵便局が無い場合に便利
- 郵便局での待ち時間もなし
- 費用が安く済む
好きな時に無駄なく、そして安い値段で出せるというのが、通常の内容証明郵便との一番大きい違いですね。
デメリット
- パソコンなどに不慣れだと手続が難しい(アプリダウンロードなど)
- 1通の文書に付き最大5枚までの制限
- 押印不要のため、信用度が低い印象を与える
大きなデメリットはありませんが、押印が無くても差し出せるということは、相手に「あまり重要では無い」という印象を与えてしまう可能性があります。
日本の文化では、重要な文書には必ずといっていいほどハンコがつきものです。
「自分の意思を相手にしっかり伝えたい」というのであれば、通常の内容証明郵便をオススメします。
内容証明郵便自動作成サービス(現在メンテナンス中)
弁護士法人直法律事務所では、弁護士に頼まなくても必要事項を記入することで内容証明郵便のテンプレート・雛形(ひな形)を自動作成できるサービス「債権回収のみかた」の運営も行っています。
※現在サイトメンテナンス中のため、ご利用いただけない状態となっております。今しばらくお待ちくださいませ。
なお、こちらはあくまで一般的なものに限ります。複雑な内容証明を作成予定の方は、下記お問い合わせボタンよりご相談下さい。
内容証明郵便を出した後は?
追跡番号を控え、配達状況を確認しましょう。
内容証明郵便は書留となりますので、配達までの過程を記録してくれています。
相手がすぐに受け取ってくれていれば通常、1週間程度で配達証明書が手元に届きます。
しかし、相手の受け取りに時間がかかってしまったり、何らかの事情により受け取ってもらえない可能性もあります。配達状況を確認できるよう「書留・配達記録郵便等受領証」(追跡番号)は控えておきましょう。
また、「書留・配達記録郵便等受領証」は再度証明の際にも必要となりますので大事に保管しておきましょう。
配達証明書が届いたら、しっかりと保管しましょう。
紛失した場合でも1年以内であれば再交付してもらえますが、再交付手数料が発生しますので、やはりしっかりと保管しておくことが一番でしょう。
内容証明が返送されてきたら、返送理由を確認し対応しましょう。
相手が必ずしも受け取るとは限りません。送ったはずの内容証明が返送されてくる可能性があります。
返送の理由によってその後の対応方法も変わるため、返送理由を確認しておきましょう。
主に以下のような理由により返送される可能性があります。
宛所に尋ね当たらず、転居先不明
〇宛所に尋ね当たらず…相手が居住していない場合に「宛所に尋ね当たらず」と記載され返送される
〇転居先不明…相手がすでに転居していて、転居届が出されていないため「転居先不明」と記載され返送される(郵便局に転居届を出している場合であっても転送期間が経過している場合は「転居先不明」と記載されます。)
これらが返送理由の場合にはそもそも郵便が届いていないため、まずは正しい住所を調べて送付しなおしましょう。
相手が法人であればインターネットで最新情報を調べたり、登記簿謄本で調査することができます。
相手が個人の場合には、法的請求をするために弁護士に依頼することで現在の住民票の住所を調査することができます。
保管期間経過、受け取り拒否
●保管期間経過…相手が不在のため不在連絡を入れたのち7日間経過したものについて、再度配達しても相手が不在であった場合、「保管期間経過のため」と記載され返送される
●受け取り拒否…受取人が受け取りを拒否した場合、「受け取り拒否」の記載がされ返送される内容証明郵便が返送される
相手が内容証明郵便による通知を受領しない場合(受け取り拒否をする場合)は、意思表示は了知可能であったと考え、意思表示は到達したと判断されます(大判昭11・2・14民集15・158内縁の妻が複数回にわたり受領を拒否した事案)。
また、内容証明郵便による通知について、保管期間が経過した場合には、差出人の表示から意思表示の内容を推認可能であるような事案では、郵便局の留置期間が満了した時点で到達したと認められる旨判示した裁判例もあります(最高裁平成10年6月11日判決)。
ただし、内容証明郵便による通知について相手が受け取りを拒否することが想定される場合には、別の方法で送付しておくことも考えるべきです。
例えば、特定記録付の普通郵便にて、内容証明郵便の控えの写しを送付する方法も有効です。なお、「到達」とは、相手が了知できる状態になることですので、相手の郵便受箱への配達や同居人が受け取った場合は到達になります。
「内容証明郵便」はいつ送る?
「内容証明郵便」は様々な場合に使える
基本的に「内容証明郵便」はいつ、どんな時に出しても良いものです。
そうはいっても、「この内容で出していいのか?」と不安になりますよね。
ここで、「内容証明郵便」の一例をご紹介したいと思います。
ケース1:貸したお金が返ってこない
もっとも多いトラブルの1つがお金の貸し借りです。
こんなケースを見てみましょう。
Aさんは昔から仲の良いBさんとしょっちゅうお金の貸し借りをしていました。
ある日、「新しく事業を始めるので100万円を貸してほしい」とBさんに言われたのです。
Aさんは、今まで貸したお金もBさんはすぐに返してくれていたので快諾し、お金を貸すことにしました。
しかし、今回は100万円と高額になるのでBさんの妻であるCさんに連帯保証人になってもらい、書面を作成しました。
ところがBさんからはいっこうにお金が返ってきません。
人のいいAさんは少しくらい遅くなっても仕方が無い、と気長に待っていました。
しかし風の噂で「Bさんの事業は失敗した」と耳にしました。
Aさんは「このまま返してもらえないのではないか」と焦りました。
急いでBさんにも電話をしましたが、連絡が取れません。
「内容証明郵便」の出番です。
「仲の良いAさんなら後回しにしても大丈夫だろう」とたかをくくっていたBさんもこれにはビックリです。
今まで見たことも無いような書面が送られてきて、「法的手続に移行する」なんて書かれていたら、たまりません。
連絡が取れないと思っていたBさんは実は亡くなっていました。
Aさんの手元にあるのは契約した紙1枚です。
Bさんの妻とはいえ、Cさんとはそこまで親しくしてこなかったことも有り、
「Bさんに貸したお金を返してほしい」と直接言うのは気が引けます。
もしかしたら、連帯保証人の欄に名前は書いたけど忘れている、なんてこともあるかもしれません。
ここでも「内容証明郵便」が有効です。
ケース2:家賃を滞納している(未払い金の督促・契約解除の通知)
こちらもトラブルになりやすいケースといえるでしょう。
Aさんは東京都内のアパート「Pハイツ」の大家です。
Pハイツに住む大学生のBさんが家賃を3ヶ月分支払ってくれず、困っています。
直接会いに行っても、居留守を使って無視され、話し合いに応じてくれません。
こういう場合は、本人に送っても良いのですが、連帯保証人に送ることも有効です。
連帯保証人が親である場合、学生であるBさん自身より金銭的な余裕が有ることが考えられますから、滞納分の賃料を支払ってくれる可能性が上がります。
「内容証明郵便」を送った事で、Bさんも家賃を支払ってくれるようになりました。
しかし、未だに何ヶ月かに一回家賃の支払いを忘れてしまうので、そのたびにAさんが内容証明郵便をBさんの親に送っています。
最近、Pハイツに住むCさんから「隣に住むBさんが毎晩騒がしいので大家さんからも何か言って欲しい」との苦情が入りました。
大学生のBさんは、友人を招いて毎晩遅くまで騒いでいるようです。
そして次の日の朝にはアパートの共用ゴミスペースに沢山のゴミを散乱させているためPハイツの他の住人も迷惑をしています。
毎度内容証明を出す費用も自己負担ですし、毎日共用スペースを汚されてしまっては困ります。
Aさんは、Bさんに現在滞納している家賃を支払うことと、契約違反(家賃滞納と用法遵守違反)を理由に賃貸契約の解除を要求することにしました。
「内容証明郵便」は具体的な金額を請求する以外に、こういった契約解除の通知にも使えます。 ポイントは、「建物の原状回復」も文書内に含めることです。
「物件の明け渡し」の文言だけですと、掃除をしないまま明け渡す等も考えられますので、忘れずに文書内に入れましょう。
ケース3:工事を依頼する(借主からの請求)
賃貸契約において、「内容証明郵便」を出すのは必ずしも貸主だけではありません。
借主からの請求例も見てみましょう。
ある日、Pハイツに住んでいるXさんは自分の部屋が雨漏りをしていることに気づきました。
慌てて応急処置をしましたが、どうやら台風で屋根の一部が損壊してしまったようです。
根本的な修繕工事が必要なため、住人全員で大家であるYさんに修繕工事を請求することにしました。
貸主は、修繕しなければ通常通り建物が使用出来なくなるような場合、これを修繕する義務を負います。(民法606条1項) 緊急性があるにも関わらず、修繕がなされない場合、自分たちで業者に依頼して修繕工事を行ったのちにその代金を請求する旨を書く事をオススメします。
ケース4:工事を完成させたのに代金を払ってもらえない
ここからは法人間でのトラブルが多いものの一例をご紹介します。
(もちろん、片方が個人という事もあります。)
「X建設はY工務店より、ビルの建設業務を1億円で請け負いました。
無事にビルは完成し、Y工務店へと引き渡しました。
しかし、完成から3ヶ月が経っても1億円は振り込まれていません。
X建設の社長は、Y工務店宛てに内容証明郵便を出すことにしました。
法人間でのトラブルの場合、受取人は法人代表者(代表取締役など)にするのが一般的です。
ケース:5依頼した内容と違う、完成しないまま放置されている
先ほど、ビルの建設をX建設に発注したY工務店ですが、代金を支払わない理由がありました。
実はX建設からビルを引き渡された後、ビルのチェックをしたところ、契約時に頼んだ素材と違うものが使われていました。
Y工務店の社長はすぐにX建設の社員にその旨を伝え、「その部分だけやり直して欲しい」と依頼をしていました。
ところが、その修正はされないまま3ヶ月が経ち、X建設から支払い請求の内容証明郵便が届いたのです。
Y工務店の社長は、「ビルが完成していないのに代金を支払うつもりはない」と怒り始めました。
しかしX建設からの内容証明郵便には「返事がない場合、法的手続をとる」と書いてあります。
こんな時はどうすれば良いのでしょうか?
実は、内容証明郵便は法律上は、返事をする必要(義務)はないのです。 >内容証明郵便が届いたら、焦らずに約束違反はないか、まず確認しましょう。
今回の場合、X建設はY工務店より依頼を受けた素材とは別のものを使用しています。
そして、修正工事もされていません。つまり、ビルは完成状態とはいえません。
こちらも内容証明で対応しましょう。
タイトルを付ける必要はありませんが、
今回のような場合は「回答書」などとしておくと分かりやすいでしょう。
この「回答書」が届いたX建設の社長はビックリです。
違う素材でビル建設を行っていたこと、Y工務店より修正依頼があったこと、を「回答書」で初めて知ったのです。
この後、きちんと社長同士が話し合い、ビルの請負契約は終了しました。
内容証明郵便には、「法的手続をとる」といった文言が書かれることが多く、少々攻撃的な内容になっています。
そのため、契約内容や現状をきちんと確認せずに内容証明郵便を出してしまうと、相手を怒らせ、時に本来は起こりえなかった争いまでも発生させてしまいます。
内容証明を出す際は、どういった約束(契約)をしたのか、現在はどういう状況なのか、確認をしてから出しましょう。
内容証明郵便に関するご相談は、東京都千代田区直法律事務所の弁護士まで
内容証明郵便は、例で挙げた以外にも様々な場合に利用できます。
送りたい内容が複雑で書き方が分からない方や、内容証明郵便で送って良いのか迷っている方は、弁護士に頼るのも方法の一つです。
内容証明郵便の作成を弁護士に依頼するメリット
① 法律的に正しい内容で送付できる
弁護士は法律の専門家であり、内容証明郵便に記載すべき内容を正確に把握しています。そのため、法的に問題のない内容証明郵便を作成することができます。
② 弁護士名義なので相手にプレッシャーを与えられる
弁護士名義で送付された内容証明郵便は、相手方に強いプレッシャーを与えることができます。弁護士が関与していることがわかることで、相手方は真剣に問題に取り組むようになる可能性が高くなります。
③ 相手方との交渉を任せられる
弁護士から内容証明郵便(通常「今後のご連絡は弁護士宛てにお願いします」等と明記する)を送付した後に、相手方から連絡があった場合、弁護士に交渉を任せることができます。弁護士は、法律に基づいて相手方と交渉を進め、依頼者の利益を最大限に保護することができます。
④ 法的措置を見据えた内容証明郵便が作成できる
内容証明郵便は、裁判の証拠として使用することができます。例えば、離婚をした時の財産分与請求など、法律上、意思表示が必要とされている手続について、法律で定める期限内に意思表示をしたことを内容証明郵便によって行えば、その意思表示の内容、そして、その意思表示が到達した日が配達日として証明できる(証拠となる)効力があります。つまり、弁護士に依頼することで、将来の法的措置を見据えた内容証明郵便を作成することができます。
⑤ その他のメリット
・内容証明郵便の作成にかかる時間と労力を節約できる
・弁護士に相談することで、法的なアドバイスを受けることができる
・弁護士による送付手続きを依頼することで、郵便局に行く必要がない
弁護士に内容証明郵便の作成を依頼する場合の費用
上記のとおり、内容証明郵便の作成を弁護士に依頼することで、多くのメリットを得ることが可能です。
内容証明郵便の送付を検討している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
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