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内部管理体制 コンプライアンスについて

世間では、『コンプラ』とよく耳にするようになったけれど、具体的には何をしていれば大丈夫なの?
と疑問に思う人は少なくなるかと思います。

“コンプライアンス”(COMPLIANCE)とは、企業などが、法令や規則を遵守することを指します。
 コンプライアンスという概念は、アメリカにおいて「法令遵守」として始まり、会社法や金融商品取引法によって企業の守るべき内部管理体制が制度化されたことで、企業のコンプライアンスへの取り組みが加速しました。

 では、具体的に内部管理体制としてのコンプライアンスとは、どのような事項を、どのように決めるのでしょうか。詳しく説明します。
ご自身の会社がどのような機関設計をしているか(例えば、取締役会があるかないか、監査役がいるかいないか)を念頭に、社内の内部管理体制(内部統制システム)について見ていきましょう。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「内部管理体制 コンプライアンスについて」
について、詳しくご解説します。

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内部統制システム

まず前提として、内部統制システムとは、会社の業務執行が適正かつ効率的に行われることを確保するため、会社が営む事業の規模や特性等に応じて構成するリスク管理体制をいいます。

大会社には、この内部統制システムの整備を決定する義務が定められており、主に企業統治の観点から中小企業に比べて厳格な規律が定められています。
但し、中小企業であっても、取締役会費設置会社では、内部統制システムの整備をあえて決定する場合には、取締役の過半数をもって、その内容を決定することになります。

金融庁は、内部統制を、
①業務の有効性及び効率性
②財務報告の信頼性
③事業活動に関わる法令等の遵守
④資産の保全の達成

の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスであり、 ❶統制環境、❷リスクの評価と対応、❸統制活動、❹情報と伝達、❺モニタリング(監視活動)、❻ITへの対応(情報技術)
の6つの基本的要素から構成されると定義しています。

また、内部統制は、経営者が行う統制環境やリスク評価、情報と伝達、監視活動といった全社統制と業務管理者が行うプロセス統制のほか、それを支えるIT統制で構成されます。

経営者は、内部統制の基本的要素が組み込まれたプロセスを構築し、それを適切に機能させていくことを求められています。そのため、単に内部統制を整備するだけではなく、それを意図したように機能させていくことが重要です。

会社法で規定される内部統制への対応と金融商品取引法で求められる内部統制報告制度とは違いがあります。前者は「株式会社の業務の適正性を確保する体制」として法務省令で体制が記載されています。後者は、内部統制の評価について公認会計士・監査法人による監査が必要となります。会社法の内部統制の目的が業務全般であるのに対して金融商品取引法の内部統制は財務報告目的が中心です。

これらが十分に行われており、法令・規則に従い適切な整備・管理がなされていることが内部統制のコンプライアンス遵守と言われます。

法務省令で定める体制の内容

それでは、具体的に内部統制として、あるべき体制について詳しく説明していきます。
取締役会設置会社の場合(監査等委員会設置会社および氏名委員会等設置会社以外)において、法務省令(施行規則100条1項)定める体制について説明します。

監査役設置会社、監査役非設置会社の共通の内容

①当該会社の取締役の職務の執行に係る情報の保存および管理に対する体制(同項1号)

…関係書類や記録媒体の保存期間、保存方法、アクセス方法等について、文書管理規程や情報管理規程を作成や、これらを管轄する情報管理担当部署を設置することをいいます。

Ex)「取締役および職務の執行に係る情報について、文書保存規程に基づき適切に保存および管理を行う」
「文書保存および管理に関する事務に関しては、総務部長の所管とする」
等を定め体制を整えることを指します。

②当該会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制(同2号)

…リスク管理体制の整備に関するものであり、会社が直面する様々なリスクの予防や防止、いったん損失が生じた場合の措置等について、規程や体制の整備を図ること等をいいます。

Ex)「事業に関する内外の様々なリスクを適切に管理し、事業の遂行とリスク管理のバランスを図りながら持続的成長による企業価値の向上を目指してリスクマネジメント方針を制定し、取締役により構成されるリスクマネジメント委員会を設置する」
「内部監査部門は、内部監査規程に基づき定期的に業務監査を行い、リスク管理状況と併せて取締役会及び監査役会へ報告する」
等の体制を図ることをいいます。

【内部監査】ここで、内部監査について詳しく説明します。
(意義)会社は、財産の保全及び経営の能率の向上のため、各種規程やマニュアルを整備しますが、実際に業務がこれらに基づいて適切に遂行されているか否かについて、社長直属の部署又は担当者が検証する仕組みを指します。会社の内部統制の有効性を担保するうえで欠くことのできない要素といえます。

(目的)会社業務の適切な運営、財産の保全、不正・誤謬の防止・発見、業務の改善・効率化等の実現を目的とします。

(役割)内部監査は、内部統制システムを補完するものであり、内部統制報告制度におけるモニタリング機能としても重要な役割を果たしています。

(対象)社内のすべての部門
(実施体制)担当者は、その業務の特性上、監査の対象となる部門からの独立性が求められ、監査の実施に際して強い権限を持たせることが必要です。そのため、社長直属の部門を設置し、これに属する専従者が監査を実施することが望ましいです。

【業務監査と会計監査】
監査には2種類あります。
ⅰ.業務監査
…日常業務が法令や社内の各種規程・マニュアル等に従って適切に実施されているかい合仲、また、経営上の決定事項が関連する部署や担当者に正しく伝達され、実行されているか否かについての監査

ⅱ.会計監査
…会計処理が一般に構成妥当と認められる会計処理の原則、経理規程・マニュアル等に従って行われて、取り引き等の実態が適切に反映されているか否かについての監査

上場準備中の会社の内部監査は、上記業務監査を中心として実施し、業務の効率性や有効性、社内各種規程等の遵守状況についてのチェックに重点が置かれます。
上場後は、上記に加え、財務報告に係る内部統制制度においても内部監査が重要な役割を担うことになります。内部監査人は、内部統制の基本的要素の一つであるモニタリングの一環として、内部統制の整備・運用状況をチェックし、その有効性を評価します。

内部監査は、
❶監査計画の立案
❷内部監査の実施
❸報告会の実施
❹社長への報告
❺改善勧告
❻改善状況の確認
という流れで実施されます。

内部監査制度は、上場直前期1年間、上場後と同じレベルで実施されていることが望まれます。したがって、通常は、それ以前の早い時機から組織化し、仕組みを整備しておくことが必要です。
なお、上場準備の過程において留意すべき主な事項は以下のとおりです。

⑴内部監査部門の独立性
…前述のとおり、原則独立した部門であることが必要です。規模の小さい会社では独立した部門を設置していないケースもあります。このようなケースにおいても、被監査部門に対して強い権限と業務の独立性を確保する必要があります。

⑵内部監査専従者の配置
…内部監査部門には原則配置することが必要で、その人数が少ない場合には、他部門の従業員を臨時的に追加して実施する方法もあります。特に内部監査において必要となる会計やITに関する知識を有する従業員は、会計やITの専門部署に優先的に配置されるケースが多く、内部監査に際して、これらの従業員が支援できる体制を整えておくことが重要です。また、内部監査専従者を配置できないケースであっても、委員会を設置し、被監査部門から独立した者が相互にチェックする体制を適切に整備することで実効性のある内部監査を実現できる場合には、上場審査場、これが認められる可能性もあります。

⑶内部監査に対する社内の理解
…内部監査は、不正・誤謬を発見することも目的の1つではあるが、発見された問題点に対するフォローアップを通じて業務の効率化や合理化に資するケースもあります。実効性のある内部監査を実現するためには、内部監査を単に上場のために必要となる形式的な活動と捉えるのではなく、社長自らがその重要性や効果を認識し、積極的にこれを車内に発進することが重要です。内部監査を受ける側は、日常業務に加えてこれに対応しなくてはならず、非協力的になるケースも少なくありません。社長あるいは被監査部門の担当役員等が従業員にその重要性を伝達し、十分な協力の下、内部監査を実施できる環境を整備することが必要です。

⑷関連諸規程の整備
…内部監査では、被監査部門が規程やマニュアルに従って業務を遂行しているか否かについてチェックされます。したがって、内部監査実施前の時点で、各部門が従うべき規程やマニュアルが整備・運用されている必要があります。また、内部監査自体についても、内部監査規程やこれを具体化したマニュアル、手続書等を整備し、内部監査担当者の能力等に過度に依存せず、客観的に必要十分な手続が実施されるように準備することが必要です。

⑸関係会社に対する内部監査
…上場準備会社に子会社・間®年会社がある場合、それぞれの会社において内部監査制度を設けることは事実上不可能、又は非効率となるケースが考えられます。各関係会社の重要性やリスクについて十分に検討し、親会社の内部監査担当者がこれらの会社に対して監査を実施するか否かについて事前に検討することが必要です。

③当該会社の取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制(同3号)

…会社経営の効率性に関するものであり、経営の基本計画(年度計画、中期計画等)を策定したり、取締役間の職務分掌に関する規程を整備したりすること等をいう。

Ex)「経営理念、経営方針に基づき事業遂行をするため、年度計画及び中期計画を策定する」
「取締役、各本部長ならびに常勤監査役により構成される経営会議において、経営方針、経営戦略および業務執行に関する重要な課題について検討し、その審議を経て速やかな業務執行を行うものとする」
※内部統制システムというと、会社の不祥事防止のためのシステムとして、適正性を確保するための体制ばかりが強調されるが、このように会社経営の効率性を高めるための体制も予定されている点には注意を要します。

④当該会社の使用人の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制(同4号)

…使用人の職務執行に関してコンプライアンス体制を整備するものであり、内部通報制度の整備やコンプライアンス規程の作成をいいます。社内諸規程は、大別すると、基本規程、組織規程、人事労務規程、総務庶務規程、業務規程となります。諸規程の作成にあたっては、会社のすべての業務を過不足なく網羅していることが必要です。ただし、業務規程に関連する詳細な規程は、機動的な改廃の観点からマニュアル等として整備することが望ましいです。
 昨今、雇用形態の多様化や流動化を背景に個別労使トラブルが急増していることや、行政の対応が厳しくなり摘発が多くなってきていることから、労務管理体制についても、上場審査では厳しくチェックされています。規程類(就業規則、賃金規程、育児・介護休業規則等)、労使協定類(三六協定)の整備、時間外労働及び時間外労働手当の管理、管理監督者の範囲、社会保険への加入状況、労働安全衛生法の規定についてもチェックが必要です。

Ex)「社長を委員長とするコンプライアンス推進委員会を設置し、コンプライアンス・マニュアルを作成するとともに、行動規範、行動原則を制定する」
「内部監査部門は、コンプライアンス・マニュアルおよびコンプライアンス推進委員会の実施状況を監査し、他の業務監査を含め定期的に取締役会および監査役会に報告する」

⑤当該会社ならびにその親会社および子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制(同5号イ~二)

…企業集団の業務の適正さを確保するものであり、グループ全体の経営方針の策定さ子会社業務について定期的に報告を受ける体制の整備等をいう。

Ex)「当社および子会社は、共通の経営理念の下でグループ各社相互の強調および発展を目指す」
「グループ各社の代表取締役等で構成されるグループ経営会議において情報交換を行い、グループ連結経営の円滑な運営と堅実な発展を目指す」

監査役非設置会社における内容

監査役非設置会社である取締役会設置会社においては、362条4項6号の法務省令で定める体制に、上記1で記載した事項(施行規則100条1項)に加え、取締役が株主に報告すべき事項の報告をするための体制を含みます(同条2項)。
(趣旨)監査役非設置会社において、株主への情報提供を図り、株主が違法行為差止め請求権(360条1項)等の権利を適切に行使できるようにした点にあります。

Ex)取締役が会社の重要事項等について、株主に文書による報告を行う際の当該文書送付のための手続等をいいます。

監査役設置会社における内容

※監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社を含む。
取締役会設置会社であり、かつ、監査役設置会社である会社においては、362条4項6号の法務省令で定める体制に、上記1で記載した事項に加え、以下の①~⑦が定められている。

①当該会社の監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項(同条3項1号)

…監査役を補助する使用人(補助使用人)を置くことを前置とした体制の整備等をいいます。

Ex)「監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合は、監査役会と協議の上、当社の使用人の中から監査役補助者を1名以上配置することとする」

②上記①の使用人の当該会社の取締役からの独立性に関する事項(同2号)

…監査役の補助使用人が業務執行体制から独立しているか、誰がその指揮命令権を有するかに関する規程の整備等をいいます。

Ex)「監査役の職務を補助すべき使用人の人事異動・人事評価については、監査役会の同意を必要とし、取締役からの独立を確保するものとする」

③当該会社の監査役の上記①の使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項(同3号)

…㋐補助使用人を監査役専属とするのか他の部署との兼務とするのか、
 ㋑補助使用人の異動についての監査役の同意の要否、
 ㋒取締役の補助使用人に対する指揮命令権の有無、
 ㋓補助使用人の懲戒についての監査役の関与等を決定すること等をいいます。

Ex)「監査役の職務を補助すべき使用人は、監査役から命ぜられた職務に関しては、取締役および当該使用人の属する組織の上長等の指揮命令を受けないものとし、もっぱら監査役の指揮命令に従わなければならない」

④当該会社の監査役への報告に関する体制(同4号)

…監査役設置会社の監査役の職務の執行に資する情報を直接または(社内外の適切な窓口を介して)間接に監査役に報告するための体制の整備等をいいます。

Ex)「当社の取締役および使用人は、職務執行に関して重大な法令・定款違反または不正行為の事実、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事項、ならびに会社の業務または業績に影響を与える重要な事項について発見した場合、遅滞なく監査役に報告する」

⑤上記④の報告をした者が当該報告をしたことを理由として不利な取り扱いを受けないことを確保するための体制(同5号)

…監査役への報告を理由とする解雇等の不利益な処分を禁止すること、当該監査役設置会社またはその子会社の役職員から当該監査役への報告が、直接に、または当該役職員の人事権を有していない仲介者を介して、当該監査役に対してなされる体制を整備すること等をいいます。

Ex)「当社の監査役へ報告したグループ各社の役職員に対し、当該報告をしたことを理由として不利な取り扱いを行うことを禁止し、その旨を当社コンプライアンス・マニュアルに明記するとともに、グループ各社の役職員に周知徹底する」

⑥当該会社の監査役の職務の執行について生ずる費用の前払いまたは償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる日用または債務の処理に係る方針に関する事項(同6号)

…監査役の職務の執行について生ずる費用の前払いまたは償還の手続について決定すること等をいいます。

Ex)「当社は、監査役がその職務に執行について、当社に対し、費用の前払い等の請求をしたときは、経理部において審議の上、当該請求に係る費用または債務が当該監査役の職務の執行に必要でないと認められた場合を除き、速やかに当該費用または債務を処理する」

⑦その他当該会社の監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制(同7号)を含む(施行規則100条3項各号)

…上記①から⑥の事項以外に、監査役の監査が実効的に行われることを確保するために必要となる体制の整備をすることをいいます。

Ex)「当社の代表取締役は、監査役と定期的に会合を持ち、業務報告とは別に、会社運営に関する意見交換や意思疎通を図るものとする」

どんな内容の内部統制システムを構成すべきか?

会社がいかなる内容の内部統制システムを構成すべきかは、当該会社が営む事業の規模や特性等に応じて考えるべき問題であり、経営判断にゆだねられると解されます(大阪地判平成12年9月20日)。
また、取締役会の決定を要するのは内部統制システムの構築の基本方針であり、当該決定に基づいて代表取締役等の業務執行権限を有する取締役は、内部統制システムを構築して運用する義務を負い、その他の取締役は、代表取締役等が適切な内部統制システムを構築して運用する義務を履行しているか否かを監視する義務を負います。

また、労務管理方法は非常に幅広くかつ専門的なため、社会保険労務士や弁護士のアドバイスを受けておきたいところです。


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