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社外役員・取締役【IPOとコーポレートガバナンス3】

Q
上場を行うにあたり、社外取締役や社外監査役などの社外役員を導入しなければならないと伺いました。社外役員には選定の要件などがあるのでしょうか。その他、気をつけるべき点があれば教えていただきたいです。

A
社外役員(社外取締役・社外監査役)は、経営全般の監督機能や、会社と経営者との間の利益相反を監督する機能を持ちます。それぞれの選任の要件は、会社法に定められています。
また、会社法とは別に、上場する取引所で規定される独立役員に関する規定にも注意が必要です。コーポレート・ガバナンスコードも別途確認する必要があります。
IPOにあたっては、会社創業時からのメンバーやその親族のみで、役員を構成することは難しくなるので、信頼できる社外役員候補・独立役員候補を、早めに確保して置くことが重要です。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
社外役員・取締役【IPOとコーポレートガバナンス3】
について、詳しくご解説します。

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はじめに

社外役員は、経営全般の監督機能や、会社と経営者との間の利益相反を監督する機能が期待されており、コーポレートガバナンス強化のために重要な役割を担っています。
上場会社は、監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社のうち、いずれかの機関設計としなければなりません。
(詳しくはコーポレートガバナンスとは?機関設計の基本について【IPOとコーポレートガバナンス1】
監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の特徴と違い【IPOとコーポレートガバナンス2】の記事をご覧ください。)

会社法上、それぞれに要求される社外役員の数は以下の通りです。

監査役会設置会社 3名以上の監査役のうち、社外監査役が半数以上でなければなりません(会社法335条3項) また、令和元年会社法改正(令和3年6月11日までの政令で定める日から施行)により、監査役会設置会社であっても、
①公開会社かつ大会社
②金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社
は、社外取締役の設置が義務づけられました(会社327条の2)
指名委員会等設置会社 指名・報酬・監督の各委員会は3名以上の取締役で構成し、各委員会の委員はその過半数は社外取締役でなければなりません(会社法400条3項)
監査等委員会設置会社 監査等委員会における委員の、過半数は社外取締役でなければなりません(会社法327条4項)

会社法における社外役員の要件

社外取締役の要件

社外取締役とは、取締役としての身分を持ちながら、業務執行を担わないために経営組織の指揮命令系統に組み込まれず、また過去一定期間においても組み込まれたことのない者を指します。
会社法2条15号に、要件が規定されています。まとめると、表のようになります。

現在における要件 当該株式会社の業務執行取締役等でない 当該株式会社の子会社の業務執行取締役等でない 親会社等の取締役・執行役・支配人その他の使用人でない 兄弟会社の業務執行取締役でない 当該株式会社の取締役・執行役・支配人その他の重要な使用人の配偶者または2親等内の親族でない
過去の時点における要件 就任の前10年間、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役等であったことがない
就任の前10年間に非業務執行取締役、監査役、会計参与になったことがある場合は、その就任前10年間、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役等であったことがない

なお、 社外取締役には、取引の公正さを担保するために交渉を行うなど対外的な活動を行うことも期待されていますが、令和元年の会社法改正前は、そのような行為が「業務執行」にあたり、社外取締役が行うことは出来ませんでした。

もっとも、令和元年会社法改正により、会社と取締役の利益が相反する状況にある時や、その他、取締役の業務執行により株主の利益を損なうおそれがあるときには、取締役会決議によって社外取締役に業務の執行を委託することができるようになりました(会社法348条の2)。

社外監査役の要件

社外監査役についても、社外取締役と同様、自社・親会社・子会社・兄弟会社において、指定された役職に現在または過去一定の時期に就いた者については、社外監査役になることはできないとされています(会社法2条16号)。まとめると、表のようになります。

現在における要件 当該株式会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがない 当該株式会社の子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがない 親会社等の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがない 兄弟会社の業務執行取締役等でない 当該株式会社の取締役・執行役・支配人その他の重要な使用人の配偶者または2親等内の親族でない
過去の時点における要件 就任の前10年間、当該株式会社またはその子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがない
就任の前10年間に監査役になったことがある場合は、その就任前10年間、当該株式会社またはその子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがない

独立役員について

東京証券取引所においては、上場会社は、一般株主保護のため、会社法上の社外役員の規定とは別に、「独立役員」を1名以上確保しなければならない旨を定めています。

「独立役員」とは、一般株主と利益相反を生じる恐れのない社外取締役または社外監査役を指します(東京証券取引所「有価証券上場規程」436条の2第1項)。
この制度は、平成22年から、上場規則の中で求められているものです。
上場会社は、独立役員に関して記載した東証所定の「独立役員届出書」を東証に提出することが義務付けられています。
特徴としては、現在の会社法の社外取締役の要件に比べて、厳格であることが挙げられます。


東京証券取引所の独立性基準

A.上場会社を主要な取引先とする者又はその業務執行者
B.上場会社の主要な取引先又はその業務執行者
C.上場会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者をいう。)
D.最近において次の(A)から(D)までのいずれかに該当していた者
(A)A、B又はCに掲げる者
(B)上場会社の親会社の業務執行者又は業務執行者でない取締役
(C)上場会社の親会社の監査役(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)(D)上場会社の兄弟会社の業務執行者
E.次の(A)から(H)までのいずれかに掲げる者(重要でない者を除く。)の近親者
(A)Aから前Dまでに掲げる者
(B)上場会社の会計参与(当該会計参与が法人である場合は、その職務を行うべき社員を含む。以下同じ。)(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
(C)上場会社の子会社の業務執行者
(D)上場会社の子会社の業務執行者でない取締役又は会計参与(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
(E)上場会社の親会社の業務執行者又は業務執行者でない取締役
(F)上場会社の親会社の監査役(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
(G)上場会社の兄弟会社の業務執行者
(H)最近において前(B)〜(D)又は上場会社の業務執行者(社外監査役を独立役員として指定する場合にあっては、業務執行者でない取締役を含む。)に該当していた者

詳しくは、東京証券取引所「上場管理等に関するガイドライン」をご覧ください。

コーポレート・ガバナンスコードとの関係

東京証券取引所は、平成27年5月、「コーポレート・ガバナンスコード」を組み入れて有価証券上場規程等を改正しています。
コーポレートガバナンス・コードは、東京証券取引所と金融庁が共同事務局を務めた有識者会議において原案が作成されたもので、これがそのまま上場規程に別添される形で採用されました。
同コードは、従来の規制手法のように「しなければならない/してはいけない」ことを指定するのではなく、コードに示される諸原則の趣旨・精神を上場会社が尊重することを求めつつ、その具体的な対応は会社自身が考えて行動すべきものとし、これを実施しない場合にはその理由の説明を要求するという手法(コンプライ・オア・エクスプレイン)を採用しています。
そして、同コードの原則に基づく開示および原則を実施しない理由の開示は「ガバナンス報告書」においてなされます(有価証券上場規程施行規則211条4項)。

コーポレート・ガバナンスコードの詳細は「コーポレート・ガバナンス」をご覧ください。

例えば、原則4ー9

取締役会は、金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となるものの独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策定開示するべきである。
また、取締役は、取締役会における率直・活発で建設的な検討への貢献が期待できる人物を独立社外取締役の候補者として選定するよう努めるべきである。

この規定は、金融商品取引所が定める独立性要件をミニマムスタンダードと位置づけた上で、さらに各社に対して、独立性の有無についての実質的な判断に資する最適な独立性判断基準の策定を求めるものです。

「主要な取引先」や「多額の金銭その他の財産」といった抽象的な基準についてより明確で具体的な基準を設けたり、それ以外の要件を付加したりする場合が見られます。
独立性判断基準の設定については、各社それぞれの考え方に委ねられているといえます。
なお、各証券取引所は、新規に上場の申請をし、承認を受けた会社に対して「コーポレートガバナンスに関する報告書」と「独立役員届出書」の提出を求めています。

コーポレート・ガバナンスに関する報告書に記載されるのは以下の内容です。

1)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報
2)経営上の意志決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況
3)株主その他の利害関係者に関する施策の実施状況
4)内部統制システム等に関する事項
5)その他


独立役員届出書に記載されるのは以下の内容です。

1)独立役員・社外役員の独立性に関する事項
2)独立役員の属性・指定理由等の説明
3)補足説明

まとめ

IPOにあたっては、会社創業時からのメンバーやその親族のみで、役員を構成することは難しくなります。
そのため、信頼できる社外役員候補・独立役員候補を、早めに確保して置くことが重要です。


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