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主幹事証券会社による審査について〔IPOにおける外部専門家2〕

Q
 上場準備において、主幹事証券が行う審査の内容について教えてください。

A
  株式上場までのプロセスにおいて行われる審査には、取引所審査のほかに、主幹事証券の審査部門によって行われる審査があります。
主幹事証券による審査の主目的は、申請予定会社が上場申請を行うにあたり、主幹事証券が取引所に提出する「推薦書」を作成するための妥当性判断を行うことです。
取引所審査の前段階としての位置付けから、確認が行われる範囲・深度が大きくなる傾向があり、審査にかかる作業負荷や期間が取引所審査に比べて大きくなるケースもあります。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「主幹事証券会社による審査について〔IPOにおける外部専門家2〕」
について、詳しくご解説します。

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主幹事証券会社とは、主幹事証券会社の役割・選び方については主幹事証券会社とは?役割、選び方も解説〔IPOにおける外部専門家 1〕をご覧ください。

主幹事証券会社による審査について

“上場審査”といえば取引所の上場審査部門による審査のことを指すのが一般的と考えられますが、実際に株式上場までのプロセスにおいて行われる審査には、取引所審査のほかに、主幹事証券の審査部門によって行われる審査があります。

審査の内容とは

主幹事証券による審査の主目的は、申請予定会社が上場申請を行うにあたり、申請書類として主幹事証券が取引所に提出する「推薦書」を作成するうえでの妥当性判断を行うことです。

さらに、上場後に法令違反等の不祥事が発覚したり、経営状態が急激に悪化するようなことがあれば、投資家や流通市場にも大きな影響を及ぼすことになるため、「申請予定会社の上場適格性にかかる確認を行う」ということも、重要となっています。

主幹事証券会社による審査は、上場申請の直前のいわば「総仕上げ」として、申請事業年度に行われることが一般的です。

なお、審査の進め方については証券会社によって若干の違いがあり、取引所審査と同様に上場申請前の一定期間において集中的に審査が行われるケースや、上場準備作業の過程から段階的に審査を進めていく場合等があります。
具体的には、次のとおりです。

(ア) 書面審査

まず取引所審査と同様に、上場申請時に提出する申請書類等に準じた資料の提出を受け、この内容についての審査が行われます。

確認されるポイントは、取締役会や監査役会の議事録等の確認により経営手続の妥当性(会社法及び関連諸規則に沿った手続が採られているか)、会社法及び関連諸規則に沿った経営手続や会計・税務手続といった事項の確認(正しい処理が行われているか)のほか、申請予定会社がかかわるすべての法令に対するコンプライアンスの対応状況、コーポレート・ガバナンス体制、および反社会的勢力との関与の有無や関与排除のための取組状況、といった部分です。

これらは、各証券取引所の「上場審査基準」の形式要件と共通しています。
書面の事項は、詳細な点まで確認が必要な場合が数多くあります。そのため、会社の各部署における綿密な準備が必要となります。


(イ) ヒアリング審査

ヒアリング審査は、提出資料の内容に関して審査部門より提示された確認事項(質問状)に対して書面での回答書を作成・提出したうえで、この内容についてヒアリングが行われており、実質的に審査対応における中核的な作業となっています。

なお、会社の規模や整備の状況によっても異なりますが、通常の場合、質問状の出される回数や質問事項の量は、取引所審査の場合よりも多くなる傾向にあります。実際に、質問状の出される回数としては5〜6回程度が多く、また1回の質問状に記載される確認事項はおおむね100〜200項目に及んでいることから、場合によっては1回の質問状に対するヒアリングが数日にわたることもあります。作成にあたっては、他の確認事項との整合や数値根拠に留意して作業を進めることが重要です。


(ウ) 実地調査(実査)

本社をはじめ主要な営業所、工場及び物流倉庫等の主要な事業拠点について実査が行われます。多店舗展開等で各地に多くの店舗や事業拠点が存在するような場合には、“都心部と郊外”といったようにいくつかの複数の拠点に対して実査が行われる場合もみられています。

過去の帳票等の保管状況やシステム管理データのバックアップ体制等、極めて詳細な部分にまで時間をかけた確認が行われる傾向にあることから、特に経営上重要とされる拠点については、本社と同等の管理水準が維持されていることを、日頃より内部監査等を通じて確認しておくことが重要です。また、このほかに取引先(仕入先・販売先等)に対するヒアリングや、支配株主が存在するような場合には、当該大株主に対するヒアリングが行われるケースもあります。

留意点

IPO時のファイナンスでは、主幹事証券は申請予定会社の募集・売出株式を自らがいったん引き受けたうえで、これを最終投資家に販売する立場にあることから、申請予定会社の適正性を審査するという行為は、本来証券会社が行う販売行為との間でコンフリクトを抱えることとなることに特徴があります。

このため、証券会社の審査部門は、組織上でも独立され、あくまでも中立かつ客観的な見地から適格性判断を行うこととされています。

加えて、主幹事証券による審査は実質的に取引所審査の前段階としての意味合いも兼ねていることから、基本的に取引所審査よりも確認が行われる範囲・深度が大きくなる傾向があります。また、会社の状況によっても異なるものの、審査にかかる作業負荷や期間が取引所審査に比べて大きくなるケースも多いです。

主幹事証券の審査部門は、その後の取引所審査における主幹事証券ヒアリングや、引受審査に関する対応を一手に請け負うこととなりますので、万全の協力体制を構築していくことが重要です。


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