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上場審査について〔IPOと上場審査基準1〕

Q
弊社のIPO準備も、順調に進んでおり、先日、主幹事証券会社による引受審査が通過して、証券取引所への推薦書が提出されました。あとは株式市場への上場申請を残すのみです。
上場申請は、いつ頃行えば良いのでしょうか。また、株式市場における上場審査のスケジュールも教えていただきたいです。

A
上場申請日の決定直前事業年度の定時株主総会で直前期の決算が確定したあと、上場申請することができます。
いつ上場申請するかは、会社と主幹事証券会社が相談して決めることになります。
上場審査を通過し上場承認日を迎えると、証券取引所から報道機関に対し上場承認の対外公表が行われ、その約5週間後に上場日を迎えることとなります。細かなスケジュールを、よく確認することが必要です。
上場審査基準は、証券取引所ごとに異なっています。それぞれの特徴を掴むため、まずは証券取引所の種類について見ていきましょう。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「上場審査について〔IPOと上場審査基準1〕」
について、詳しくご解説します。

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上場審査について

上場申請日の決定直前事業年度の定時株主総会で直前期の決算が確定したあと、上場申請することができます。

いつ上場申請するかは、会社と主幹事証券会社が相談して決めることになります。
申請の日程は、主幹事証券会社の引受審査にかかる期間や、証券取引所の標準的な審査期間、ファイナンスの日程などを考慮する必要があります。

標準的な審査期間は、証券取引所の規則で決められています。
東京証券取引所では、本則市場は申請日から3ヵ月、マザーズとJASDAQは2ヵ月とされています。

上場審査には、取引所による上場審査と、主幹事証券会社の行う上場審査があります。
取引所による審査は「有価証券上場規程」に定める実質審査基準に基づき、上場適格性を満たしていることを判断する審査で、主幹事証券による審査は、日本証券業協会が定める「有価証券の引き受け等に関する規則」に基づき行われる審査です。

上場審査を通過し上場承認日を迎えると、証券取引所から報道機関に対し上場承認の対外公表が行われ、その約5週間後に上場日を迎えることとなります。

主幹事証券会社の上場審査については、下記の記事をご覧ください。
主幹事証券会社による審査について〔IPOにおける外部専門家2〕

ここでは、取引所による上場審査について、詳しいスケジュールをみてみましょう。

上場審査のスケジュール

①上場申請のエントリー・主幹事証券会社による事前確認(約2週間程度)

まずは、申請書類として主幹事証券が取引所に提出する「推薦書」を準備し、上場申請のエントリーをします。

主幹事証券会社による事前確認では、上場企業が反社会的勢力との関係がないことや審査日程についての確認が行われます。
また、主幹事証券会社が上場申請に至るまでに実施した公開指導・引受審査の過程で、特に留意した事項・重点的に確認した事項について、東証自主規制法人審査担当者が「公開指導・引受審査の内容に関する報告書」の記載内容に基づき確認することになります。

② 上場申請

新規上場申請に係る提出書類等の受理がされます。
申請理由、事業内容、経営環境、役員および株主の状況に関するヒアリングが行われます。

③書面質問・ヒアリング

書面質問および書面質問の回答に関するヒアリングが行われます。通常3回ほど行われます。数百問の質問事項について、数週間程度の回答期限内に正確に回答することが求められます。

審査は、回答内容およびインタビューを通じて上場申請会社の把握と上場会社としての適格性や株式の引き受けを判断するものです。

情報が不十分な場合、正確ではない場合、追加確認が発生するため、上場スケジュールに影響を与える可能性があります。

なお、マザーズでは原則として書面による質問への回答は求められていませんが、必要に応じて書面による回答を求められる場合があります。

④実地調査

本社、工場、事業所等の視察、会計伝票や帳票等の書面閲覧およびヒアリングがされ、事業内容の実態の正確な把握や会計手続の確認がなされます。

通常、②③④につき
本則市場;10週間程度
ジャズダック;6週間程度
マザーズ;6週間程度 となります。

書面質問、実地調査等終了後、⑤

⑤社長・監査役・独立役員・会計士からのヒアリング

経営者に対してのヒアリング内容は、以下の通りです。
●会社や業界について、経営者としてどのようなビジョンをもって経営にあたっているか

●上場会社となった際の投資者(株主)への対応(IR活動の取り組み方針等)

●申請会社のコーポレート・ガバナンス及びコンプライアンスに対する方針・現状の体制及び運用状況、適時開示に関する体制及び内部情報管理に関する体制

監査役に対してのヒアリング内容は、以下の通りです。
●実施している監査の状況や申請会社の抱える課題

独立役員に対してのヒアリング内容は、以下の通りです。
●申請会社のコーポレート・ガバナンスに対する方針・現状の体制及び運用状況、経営者のコンプライアンスに対する意識、独立役員の職務遂行のための環境整備の状況(情報提供、十分な検討時間の確保など)

●経営者が関与する取引の有無や当該取引への牽制状況等についてどのように評価しているのか

●上場後に独立役員として果たすことが期待される役割・機能等についてどのように認識しているのか

申請会社の監査を行っている公認会計士に対してのヒアリング内容は、以下の通りです。
●監査契約締結の経緯、経営者・監査役等とのコミュニケーションの状況、内部管理体制の状況、経理及び開示体制等について
※ヒアリングは公認会計士と二者間で行い、実施時期については申請会社及び主幹事証券会社に対して通知がない点に注意が必要です。

実務上、会計士の面談以後に、社長・監査役・独立役員への面談が行われています。

⑥社長説明会(各種ヒアリング終了後7〜8営業日前後)

社長が、証券取引所自主規制法人役員に対して、会社の沿革や事業内容、事業計画等の説明をします。

⑦承認公表(3営業日程度)

証券取引所ホームページにて、株式の上場を承認した旨を公表します。

なお、このスケジュールでは、審査が順調に進むことを前提としています。
審査の過程で、これまで把握していなかった問題点が発見された場合は、内容の確認や改善策の策定、改善状況の説明が必要になるため、審査期間が延長されることがあります。

上場審査基準

各証券取引所は、証券取引所の有価証券上場規程にのっとって、上場審査を行います。
これを、上場審査基準といいます。

上場審査基準には、上場する株式数や株主数、利益の額といった数値などで形式的に定められた形式基準と企業内容などの情報を適切に発信することができる状況にあるかどうか、事業を公正かつ忠実に遂行しているかどうかといった実質審査基準があります。

詳しい内容は、次の記事上場審査基準について 形式基準と実質基準とは〔IPOと上場審査基準2〕で説明いたします。
上場審査基準は、証券取引所ごとに異なっています。
それぞれの特徴を掴むため、まずは証券取引所の種類について見ていきましょう。

上場市場の種類

上場市場には東京、名古屋、福岡、札幌の証券取引所本則市場に加えて、各証券取引所が市場開設する成長企業向け市場(マザーズ、JASDAQ等)があります。

各上場市場の概要および特徴は以下のとおりです。

証券取引所・本則市場

東京、名古屋、福岡、札幌の各証券取引所に本則市場があります。
本則市場とは、金融商品取引所(証券取引所)が開場している市場のうち、メインとなる市場のことです。

上場企業の約9割が、東京証券取引所に上場しています。

また、東京、名古屋の2証券取引所の本則市場は、第一部と第二部に区分されています。
特に、東証第一部は、多くの海外投資家が売買に参加しており、国際的な市場となっています。

東証第一部の上場会社数は、2190社
東証第二部の上場会社数は、474社 (どちらも2021年6月30日現在)
となっています。

上場企業の具体例
⭐︎東証第一部
トヨタ自動車、三菱商事、ソニーグループ、セブン&アイ・ホールディングス

⭐︎東証第二部
日本精機、ブルボン、ヨネックス、エスビー食品

東証第一部と第二部の違いは、上場審査基準の違いです。
第一部の方が、より厳しい上場審査基準が設定されているのです。
上場審査基準の詳しい内容は、上場審査基準について 形式基準と実質基準とは〔IPOと上場審査基準2〕をご覧ください。

そのため、第二部に上場したのちに第一部銘柄の基準を満たした場合には、第一部に指定替えすることもできます。(これを「一部指定」といいます。)

一部指定のメリットは、
●厳しい上場審査基準をクリアした第一部上場企業ということで社会的信用が高まることが期待できます。
●知名度の向上により、「株式が買われやすく」なり、資金調達がよりスムーズになります。
一方で、株式数や時価総額が第一部銘柄の基準を下回る等の事情により、第一部から第二部へ指定替えがされる場合もあります。

マザーズ

マザーズは、「市場第一部へのステップアップのための成長企業向けの市場」として東京証券取引所が運営する市場であり、ベンチャー企業向けの市場です。

⭐︎マザーズ上場企業の具体例
メルカリ、ライフネット生命保険

特徴として、マザーズ上場の10年後には、マザーズに継続して上場するか、本則市場に市場を変更するか選択する制度がとられている点があげられます。
本則市場への上場市場変更のメリットは、なんといっても知名度の向上により資金調達が容易になる点でしょう。
実際に、東証第一部に上場市場変更をした銘柄も、複数見られます。

なお、上場後の年間上場料は、本則市場の方が高額となっているため、注意が必要です。詳しくは、有価証券上場規程施行規則709条をご覧ください。

さらに、2014年3月にIPO活性化策として、新規上場時の株主数基準を300人以下から200人以下に引き下げている点にも注目すべきです。
マザーズの上場会社数は、371社(2021年6月30日現在)となっています。

JASDAQ

JASDAQは、2010年10月12日、日本証券業協会によって1963年2月に開設された店頭登録(2004年12月に取引所市場に改組)を起点とする旧JASDAQ(NEOを含む)を前身とする、歴史のある市場です。

市場区分については、
従来のヘラクレス(スタンダード基準)とJASDAQを統合した「JASDAQスタンダード」と、
ヘラクレス(グロース基準)とNEOを統合した「JASDAQグロース」の2つの市場に区分されています。

●スタンダード
一定の事業規模と実績を有する成長企業を対象とした市場です。

●グローズ
より特色のある技術やビジネスモデルを有する企業を対象とした市場です。赤字であっても、成長可能性があれば上場できる可能性があります。

上場審査基準の詳しい内容は、上場審査基準について 形式基準と実質基準とは〔IPOと上場審査基準2〕をご覧ください。

※なお、2020年11月1日現在、JASDAQグロース内国株については、新規上場等を停止しているので注意が必要です。

そして2013年7月には、東京証券取引所と大阪証券取引所の経営統合に伴い、新たに「東証JASDAQ」市場が誕生しました。
東証JASDAQもマザーズと同様に、IPO活性化のため、新規上場時の株主数基準を300人から200人以下に引き下げています。

上場企業の具体例
⭐︎スタンダード
日本マクドナルドホールディングス、セリア、エンジャパン

⭐︎グロース
ラクオリア創薬、フィスコ
JASDAQスタンダードの上場会社数は、663社
JASDAQグロースの上場会社数は、37社 (どちらも2021年6月30日現在)
となっています。

Tokyo Pro Market

TOKYO PRO Marketは、国内外のプロ投資家のみが、株式売買に参加できる市場です。

2008年の改正金融商品取引法により導入された「プロ向け市場制度」に基づき、株式会社東京証券取引所グループとロンドン証券取引所の共同出資で誕生した株式会社TOKYO AIM取引所により、2009年6月、プロ投資家向け市場のTOKYO AIMが開設されました。

2021年7月から、Tokyo Pro Marketとして、TOKYO AIMのコンセプトを継承し、東京証券取引所が運営しています。
Tokyo Pro Marketは「プロ投資家」の買い付けに限定した市場であり、自由度の高い上場基準や開示制度がとられている点が特徴です。

例えば、株式数や利益に関する数値基準がなく、監査証明が1期間で足りる等、上場審査においても成長力や迅速性が重視されています。

Tokyo Pro Marketの上場会社数は、47社(2021年6月30日現在)となっています。


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