澤田直彦
監修弁護士 : 澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、「民事裁判における証人尋問の流れ・準備・手続きについて弁護士がわかりやすく解説【直法律事務所】」について、詳しくご説明します。
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民事裁判における証人尋問とは
民事裁判における証人尋問とは、訴訟の当事者や関係者が法廷で証言を行い、その供述内容を証拠とする手続きを指します。
裁判の公正な判断のためには正確な情報が不可欠であり、事件に関する情報を持つ証人を裁判所に呼び出し、証言を得ることで事実を明らかにする目的で行われます。
この証人尋問は、民事訴訟における「証拠調べ」の最終段階と位置づけられ、紛争の原因や経緯、当事者や証人の心情、考えなどが重要な証拠として記録されるため、事前の準備が結果に大きく影響します。
厳密には当事者が対象となる場合は当事者尋問と呼ばれますが、証人尋問と同様の手続きで進行するため、本記事ではこれらを総称して解説しています。
証人尋問が行われないケース
証人尋問は、民事裁判において原告と被告の間で争点があり、事実確認のために必要とされる場合に実施されます。
したがって、被告が原告の主張を認め、事実関係に争いがない裁判では、証人尋問が行われないことがあります。
被告が裁判に出廷しない場合にも、尋問手続きは実施されないことがあります。
事実関係にほとんど争いがなく、事実関係の評価や法的な解釈のみが実質的な争点となるような場合も、証人尋問なしで判決に至ることも少なくありません。
証人尋問は、書証(契約書やメッセージ履歴などの物的証拠)だけでは事実認定が困難な場合に、必要性に基づいて行われる手続きであり、すべての民事裁判で必須となるわけではありません。
証人尋問と当事者尋問の違い
民事裁判における尋問手続きには、主に証人尋問と当事者尋問の二種類が存在します。
証人尋問は、訴訟の当事者ではない第三者(事件の目撃者や関係者など)が法廷で証言を行うものです。
証人には原則として出頭および証言の義務があり、正当な理由なく出頭しなかったり、虚偽の証言をしたりした場合には、法律上の制裁(10万円以下の罰金や過料、偽証罪に問われた場合は3カ月以上10年以下の懲役など)を受ける可能性があります。
一方、当事者尋問は、訴訟の当事者である原告や被告が法廷で証言を行うものです。
当事者尋問も証人尋問と同様に、事実関係を明らかにするために重要な役割を果たします。
当事者には証人のように偽証罪は適用されませんが、宣誓後に虚偽の供述をした場合には過料(10万円以下)の制裁を受ける可能性があります。
また、正当な理由なく出頭しない場合や宣誓・陳述を拒否した場合には、裁判所が相手方の主張を真実と認める可能性があります。
当事者尋問は、当事者からの申し出がなくても裁判所の判断で行うことができるとされています(民事訴訟法207条1項)。
尋問は、客観的な証拠(書証)だけでは分からない事実を明らかにするために重要であり、裁判官の心証形成に影響を与えることもあります。
証人尋問の事前準備と手続き
民事裁判における証人尋問は、事前の準備が結果を大きく左右するため、非常に重要です。
適切な準備と手続きを踏むことで、尋問当日に冷静かつ的確な証言を行うことが可能になります。
具体的には、誰を証人として選定するか、その証人をどのように申請するか、そして尋問のシミュレーションをどのように行うか、といった点が準備の核となります。
証人の選定と申請
証人尋問を行うにあたり、まず重要となるのは、誰を証人として選定するかという点です。
事件の争点について最もよく知る人物、つまり事件の事実関係を正確に把握している人物が証人候補となります。
例えば、企業間の紛争であれば、問題の取引を担当した社員やその上席者が考えられます。
また、証人は法廷で証言するという、非日常的で精神的な負担の大きい役割を担うため、証人尋問に協力してくれる人物であるかどうかも重要なポイントです。
証人には、当日の出廷だけでなく、陳述書の作成やリハーサルなど、様々な負担が生じます。
証人の選定後、裁判所へ証人申請の手続きを行います。
証拠申出書を裁判所に提出し、誰を証人として申請するのか、尋問予定時間、尋問事項などを具体的に記載します。
この際、証人の陳述書(証言する予定の事実を書面にまとめたもの)の提出も求められることが多く、この陳述書は尋問の前提となる事実や証言を記載するため、非常に重要な書類となります。
証人の採用
証人申請の手続きが完了すると、裁判所は申請された証人の中から実際に証人として採用するかどうかを決定します。
この採用のタイミングは、提出された陳述書の内容や、事件の争点、証言の必要性などを総合的に考慮して判断されます。
陳述書は、裁判所が証人として呼ぶ価値があるかを判断する上で重要な資料となるだけでなく、尋問を効率的に進めるため、また相手方が反対尋問の準備をするためにも活用されます。
裁判所は、陳述書の記載内容から証人がどのような証言をするかを想定した上で、証人尋問を実施するか否かを決定します。
尋問のシミュレーション
証人尋問に臨むにあたり、本番前の尋問のシミュレーションは極めて重要です。
リハーサルでは、実際の証人尋問と同様に、主尋問と反対尋問の両方を経験します。
弁護士は尋問事項メモに基づいて質問を行い、証人は何も見ずに回答する練習を重ねます。
この練習を通じて、証人の受け答えや所要時間を確認し、尋問事項メモの内容や質問の仕方を適宜修正していきます。
特に、相手方の弁護士から予想される反対尋問の内容についても、どのように回答するかを事前に練習しておくことで、本番で落ち着いて対応できるようになります。
シミュレーションを徹底することで、尋問当日の緊張を和らげ、より説得力のある証言を行うことが可能になりますが、あまりにも練習しすぎると、かえって不自然な印象を与えてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
証人尋問当日の流れ
証人尋問は、民事裁判の中でも特に重要な局面であり、当日は独特の緊張感があります。
しかし、全体の流れを事前に把握しておくことで、落ち着いて臨むことができます。
証人尋問は、一般的に人定質問と宣誓から始まり、主尋問、反対尋問、そして必要に応じて介入尋問や補充尋問が行われる順番で進行します。
人定質問と宣誓
証人尋問当日は、まず裁判官が証人に対して、氏名、住所、生年月日などの人定事項を確認します。
これは「人定質問」と呼ばれ、証人の本人確認を行うためのものです。
人定質問が終わると、次に「宣誓」が行われます。
宣誓とは、裁判所が用意した宣誓書を証人が読み上げ、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓う手続きです。
この宣誓を行った上で虚偽の供述をした場合、証人には偽証罪が適用される可能性があるため、非常に重要な意味を持ちます。
当事者の場合には過料の制裁が科されることがあります。
宣誓書には署名・押印が必要となるため、当日は認印を持参することが推奨されます。
実印である必要はありませんが、印鑑がない場合は指印を求められることもあるので注意が必要です。
主尋問
宣誓が終了すると、まず証人の申請を行った当事者の弁護士が尋問を行います。
これが「主尋問」です。
主尋問の目的は、立証しようとする事項に関する証人の供述を引き出すことにあります。
例えば、原告側の証人であれば、原告の主張を裏付ける事実について、原告側の弁護士が質問をします。
主尋問は、事前に作成された陳述書の内容に沿って行われることが多く、尋問事項メモに基づいて質問がなされます。
主尋問においては、原則として「誘導尋問」は禁止されています。
誘導尋問とは、「〜だったのですね?」のように、はい・いいえで答えられる質問や、回答を誘導するような質問のことです。
しかし、争いのない事実に関する質問や、証人が記憶を失っている場合でその記憶を喚起するため必要がある場合など、例外的に誘導尋問が許されることもあります。
主尋問は、証人の真実を直接裁判官に伝える貴重な機会であり、供述内容の信用性を判断する上で重要な役割を果たします。
反対尋問
主尋問が終わると、次に相手方当事者の弁護士が尋問を行います。
これが「反対尋問」です。
反対尋問の目的は、主尋問で証言された内容の信憑性を問い、その証言が不自然な点や矛盾点を含んでいないかを明らかにすることです。
相手方弁護士は、主尋問での証言内容や事前に提出された陳述書の内容、その他の証拠に基づいて、矛盾する点や疑問点を鋭く質問してきます。
反対尋問では、主尋問とは異なり、誘導尋問が許されています。
これは、証言の真偽を確かめるために、相手方の弁護士が積極的に質問を誘導することが認められているためです。
反対尋問は、証言の信用性を揺るがすことを目的として行われるため、証人にとっては特に緊張する場面となります。
事前のシミュレーションで、予想される反対尋問の内容に対する回答を練習しておくことが重要です。
介入尋問
主尋問と反対尋問の最中に、裁判官が質問を挟むことがあります。
これが「介入尋問」です。
裁判官は、証言内容が不明瞭な場合や、さらに確認したい事項がある場合に、その場で質問を行います。
これは、裁判官自身が事実関係をより深く理解し、心証を形成するために行われるものであり、証人尋問の進行中にいつでも行われる可能性があります。
介入尋問は、裁判官が特に重要だと考えている点や、証言に疑問を抱いている点について行われることが多いため、証人にとっては裁判官の関心事や疑問点を直接知る機会となります。
補充尋問
当事者双方による主尋問と反対尋問、そして必要に応じて介入尋問が終わった後、最後に裁判官が証人に対して質問することがあります。
これが「補充尋問」です。
補充尋問は、証人の証言内容に不明瞭な部分があったり、裁判官として特に確認しておきたい事項がある場合に行われます。
例えば、主尋問や反対尋問では触れられなかった重要な点や、証言の核心に関わる部分について、裁判官が直接質問することで、事実関係の明確化を図ります。
この補充尋問は、裁判官が判決を下す上で重要な判断材料となるため、証人尋問の中でも特に重要な局面と言えます。
補充尋問の内容は、裁判の争点そのものともいえるため、事前の準備段階で補充尋問までを想定したシミュレーションを行うことが、より万全な対策に繋がります。
証人尋問での持参物と注意点
証人尋問当日は、平常心で臨むことが大切ですが、そのためには事前の準備が欠かせません。
持ち物の確認や服装の選定、そして尋問中の発言に関する注意点など、細かな点に気を配ることで、円滑に尋問を終えることができます。
特に、尋問中の発言は、その後の裁判の行方を左右する可能性があるため、慎重に対応する必要があります。
当日の持ち物
証人尋問の当日には、いくつかの持ち物を用意しておく必要があります。
まず、本人確認のために身分証明書を持参しましょう。
また、人定質問後の宣誓手続きで署名・押印を求められることがあるため、認印も忘れずに持っていくと良いでしょう。
もし印鑑がない場合、指印を求められることもありますので注意が必要です。
その他、尋問中に確認が必要になる可能性のある資料や、筆記用具、水分補給のための飲み物なども持参すると良いでしょう。
緊張しやすい方は、落ち着くための簡単なメモ帳などを用意するのも良いですが、尋問中に見たり使用したりすることに制限がある場合もあるので、事前に弁護士に確認しておくと安心です。
尋問時の服装
証人尋問に臨む際の服装には、特定の決まりはありません。
しかし、裁判という厳粛な場にふさわしい、清潔感のある服装を心がけることが大切です。
必ずしも正装であるスーツを着用する必要はありませんが、相手方や裁判官に与える印象も考慮し、清潔で品位のある服装を選びましょう。
具体的には、派手すぎる服装や露出の多い服装、だらしない印象を与える服装は避けるべきです。
迷った場合は、依頼している弁護士に相談してアドバイスを受けるのが最も確実です。
落ち着いた色合いの服を選ぶなど、無難な服装です。
尋問中の発言に関する注意点
尋問中の発言には、いくつかの重要な注意点があります。
まず、質問は最後までよく聞いてから答えるようにしましょう。
質問の途中で遮って答えると、記録が不明瞭になるだけでなく、証言の意図が正しく伝わらない可能性があります。
また、質問に対しては「一問一答」を意識し、聞かれたことだけを簡潔に答えるように心がけましょう。
聞かれていないことまで話すと、不必要な情報を提供してしまったり、話が複雑になってしまったりする恐れがあります。
さらに、わからないことを無理に答える必要はありません。
「わかりません」「覚えていません」と正直に答えることも重要です。
曖昧な記憶で推測を述べたり、嘘をついたりすることは絶対に避けましょう。
宣誓を行った上で虚偽の証言をすると偽証罪に問われる可能性があります。
証人尋問では、すべての証言が録音され、後に尋問調書として記録されます。
そのため、質問と回答が重ならないように注意し、聞き取りやすいように、はっきりと話すことも大切です。
廷内での録音は禁止されているため、個人的に尋問の様子を録音することもできません。
常に冷静さを保ち、感情的にならず、質問の意図を正確に理解して答えることが、証言の信用性を高める上で非常に重要となります。
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