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インターネットオークションサイトビジネス開設に伴う法規制

Q
 当社は、インターネットオークションのビジネスを始めたいのですが、法律上、どのような規制があるのか教えてください。

A
 インターネットオークションサイトを運営するオークション事業者は「古物競りあっせん業者」(古物営業法2条5項)に該当します。そのため、営業開始の日から2週間以内に公安委員会に所定の届出をする必要があり、一定の遵守事項が課せられます。
 また、原則として営業開始後の利用者間のトラブルに関するオークション事業者の義務・責任は、利用者との利用規約に基づく利用契約によって定まります。もっとも、いくつかの例外が考えられるため、注意が必要になります。
 さらに、オークション事業者はオークションサイトに権利侵害品が出品されたことを認識した場合には速やかに調査をして削除等の対応をする必要があります。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「インターネットオークションサイトビジネス開設に伴う法規制」
について、詳しくご解説します。

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インターネットオークションサイト開設に向けての法規制

古物競りあっせん業者とは~該当性~

古物営業法によると、インターネットオークション事業者は「古物競りあっせん業」を営む者、すなわち「古物競りあっせん業者」(古物営業法2条5項)に該当します。

「古物競りあっせん業」とは、「古物の売買をしようとする者のあっせんを競り(政令で定める電子情報処理組織を使用する競りの方法その他政令で定めるものに限る。)により行う営業」のうち、「古物商」(古物営業法2条3項)と「古物市場主」(同法2条4項)による営業を除いたもの(古物営業法2条2項3号)をいいます。

「古物商」とは、古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業をいいます(例えば、リサイクル業者、中古チケット転売をする金券ショップ、中古車や車パーツの買取りや販売をしている業者、宝石・絵画などの転売ビジネスなど)ので、インターネットオークション事業者自身が「古物(一度使用された物品若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの)」(古物営業法2条1項)の販売等をしない限り、「古物商」の許可は不要になります。(出品者が「古物商」に該当する場合はあります。)

また、「古物市場主」は「古物市場(古物商間の売買又は交換のための市場)」を経営する営業主のことをいうので、古物商以外も対象としたオークションサイトであれば、インターネットオークション事業者は「古物市場主」としての許可も不要となります。


つまり、インターネットオークションサイトを開設して、自らが古物販売をすることなくサイト利用者に対して広く古物売買の「場」を提供する典型的なインターネットオークション事業者は「古物競りあっせん業者」になります。(有名なサイトとして例えば、ヤフオクやモバオク、海外の会社だと世界最大級のアメリカのインターネットオークションサイトeBay(英語)など)

メルカリや楽天のラクマなどのフリマアプリのプラットフォーム事業者のように、オークション(競り)ではなく、出品者により商品の売買金額が設定されている場合には古物競りあっせん業者には該当しません。
また、インターネットオークション検索サービスなど複数のインターネットオークションサイトの出品物を比較できる検索サイトも古物売買の「場」を提供しているわけではないので、古物競りあっせん業者には該当しません。

そこで、以下では「古物競りあっせん業者」の規制について解説します。

届出手続(古物営業法10条の2)

インターネットオークション事業者は、営業開始の日から2週間以内に、営業の本拠となる事務所(事務所がない場合は、住所又は居所)の所在地を管轄とする公安委員会(所轄の警察署長)に届出をしなければなりません。
届出には営業開始届出書(施行規則別記様式第11号の2)と添付書類が必要となります。
添付書類は、事業者が個人の場合は、住民票の写し及びホームページのURLを使用する権限のあることを疎明する資料です。法人の場合は定款、登記事項証明書及びホームページのURLを使用する権限のあることを疎明する資料です。

営業開始届出書や添付書類を提出しない場合や、届出書や添付書類に虚偽の記載をした場合には、20万円以下の罰金に処せられます(古物営業法34条4号)。

遵守事項

「古物競りあっせん業者」は、
①古物の売却をしようとする者の真偽を確認する措置をとる努力義務(古物営業法21条の2)

②あっせんの相手方が売却しようとする古物について、盗品等の疑いがある場合における警察官に対する申告義務(古物営業法21条の3)

③古物の売買をしようとする者のあっせんを行ったときは、記録の作成・保存の努力義務(古物営業法21条の4)
が課せられます。

【遵守事項の具体的内容】
1 古物の売却をしようとする者の真偽を確認する措置をとる努力義務 出品者から、本人の住所、氏名及び年齢等人物の特定ができる事項の申し出を受けるとともに、口座振替による認証や通常のクレジットカード認証等の措置をとる場合や、上記の措置をとった者に対して発行したID・パスワードを入力させる措置をとっている場合も努力義務を満たしていると認められます。
2 あっせんの相手方が売却しようとする古物について、盗品等の疑いがある場合における警察官に対する申告義務 盗品等の疑いがあると認められる場合とは、
① 出品物が被害品であると疑うべきことについて合理的理由がある場合
② 出品物が、被害に遭わなければ出品されることは通常考えにくいものである場合
③ 出品物を特定するためのものが削除されている場合
④ 通常使用する場合に必要な書類がない場合
⑤ 出品者が盗品であることを示唆している場合
です。
3 古物の売買をしようとする者のあっせんを行ったときは、記録の作成・保存の努力義務 書面又は電磁的方法により記録すべき事項(古物営業法施行規則19条の3第1項)は、
1 古物の出品日
2 古物の出品情報及出品者・落札者のユーザID等でサイトに掲載されたもの
3 出品者・落札者がユーザ登録等の際に登録した人定事項(記録することに同意したもの)
です。
作成された記録は、作成の日から1年間の保存に努めなければなりません(同規則19条の3第2項)。

警察からの中止命令

警察本部長等は、盗品等であると疑うに足りる相当な理由がある場合には、競りの中止を命じることができます(古物営業法21条の7)。
この命令に従わない場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられることになります(古物営業法33条)。

公安委員会の認定

インターネットオークション事業者は、その業務の実施の方法が、国家公安委員会が定める盗品等の売買の防止及び速やかな発見に資する方法の基準に適合することについて、公安委員会の認定を受けることができ(古物営業法21条の5第1項、同条の6)、認定を受けている旨を表示することができます(同条の5第2項。)
このような取引の安全に資する認定を受けることで、利用者は安心してネットオークションを利用して売る、買うなどの取引をすることができるため、取引の活性化につながります。

【公安委員会の認定の基準及び手続】
国家公安委員会が定める盗品等の売買の防止及び速やかな発見に資する方法の基準(古物営業法施行規則第19条の6) 1 古物の出品を受け付ける際に、口座振替による認証や特別のクレジットカード認証(通常のクレジットカード認証に加えて生年月日、セキュリティコードなど、クレジットカードの発行者があらかじめ登録している情報と出品者が入力した情報に誤りがないか確かめること)、その他これらと同程度に、他人になりすまして古物の売却をすることを防止する措置をとること

2 出品者が入力したメールアドレスあてに電子メールを送信し、その到達を確かめること

3 出品者に対し、シリアルナンバー等がついている古物を出品する場合には、そのシリアルナンバー等をサイトに掲載することを勧奨すること

4 盗品等である古物が出品されていることなどについて、利用者から通報を受けるための専用フォーム・電子メール・電話番号等の連絡先を設け、その連絡先に関する事項を利用者が閲覧しやすいようサイトに記載すること

5 利用者から通報を受けた業者は、それに対してとった措置等を、通報者に通知すること

6 営業時間外において警察から連絡があった場合に、当該連絡があったことを15時間以内に了知するための措置を講じていること

7 盗品等である古物の出品を禁止すること

8 盗品等を買い受けた場合には被害者等からその返還請求を受けることがあること、盗品等については刑事訴訟法の規定により押収されることがあることを入札者等が閲覧しやすいようにサイトに記載すること

9 古物競りあっせん業を外国で営む者は、日本国内に住所等を有する者のうちから警察との連絡担当者を1名選任すること
手続 古物競りあっせん業者は、認定申請書(古物営業法施行規則第19条の4第1項)を営業の本拠となる事務所の所在地を管轄する公安委員会に添付書類と共に提出しなければなりません。

申請手数料は17,000円です。
添付書類 個人の場合は、
1 最近5年間の略歴を記載した書面
2 欠格事由(古物営業法施行規則第19条の5)に該当しない旨を記載した書面
3 業務の実地の方法が基準に適合することを説明した書面
です。

法人の場合は、
1 業務を行う役員に係る住民票の写し
2 業務を行う役員に係る最近5年間の略歴を記載した書面
3 業務を行う役員に係る欠格事由に該当しない旨を記載した誓約書
4 業務の実施の方法が基準に適法することを説明した書面
です。
認定マーク 下記サイト認定マーク参照
インターネット・オークション事業者のみなさんへ~認定制度について~

インターネットオークション事業者と利用者との法律関係

利用規約に基づく利用契約

インターネットオークション事業者はサイト開設に際して利用規約を定めます。そして、オークション利用者はかかる利用規約に同意してオークションを利用するという仕組みになっているのが通常です。そのため、インターネットオークション事業者と利用者との間には、利用規約に定める内容で利用契約が成立し、両者の法律関係も利用規約に定めるところに従うことになります。利用者の手数料無料となっている場合も同様です。
そこで、利用規約においてインターネットオークション事業者は利用者に対してオークションシステムや売買システムを提供するのみで、個々の取引に直接関与しないとしている場合には、事業者は利用者間売買契約の当事者とはならないため、売買契約におけるトラブルについて責任を負わないのが原則となります。

欠陥のないシステムを構築してサービスを提供するべき義務

利用者はインターネットオークション事業者の提供するサービスのシステム利用を当然の前提としています。そこでCtoCオークション裁判(名古屋地判平20・3・28、名古屋高判平20・11・11)は利用規約に明記されていない場合であっても、インターネットオークション事業者が利用者に対して、利用契約における信義則上、欠陥のないシステムを構築してサービスを提供する義務があることを認めています。
そして、裁判所は、かかる義務の具体的内容について「そのサービスの提供当時におけるインターネットオークションを巡る社会情勢、関連法規、システムの技術水準、システムの構築及び維持管理に要する費用、システム導入による効果、システム利用者の利便性等を総合考慮して判断される」としています。
この判示からもわかるように、欠陥のないシステムを構築してサービスを提供するべき義務の具体的内容は一義的に定めるものではありません。その時期や状況、法改正に応じた対応が必要になりますので一定期間毎の見直しが必要不可欠となりますが、かかる義務を果たしている場合には、店舗・出品者の違法行為によって落札者が損害を被った場合にも、インターネットオークション事業者は原則として、損害賠償責任を負うことはありません。

利用規約による免責

インターネットオークション事業者と利用者との法律関係は、原則として利用規約に従うため、利用規約に利用者間のトラブルについてインターネットオークション事業者は一切責任を負わない旨明記していれば、インターネットオークション事業者は利用者間のトラブルについて責任を負わないのが原則と解されます。
もっとも、利用者が消費者である場合に、インターネットオークション事業者を全面的に免責するような条項(消費者契約法8条1項1号)や、自己の故意又は重大な過失による債務不履行責任の一部免責を定める条項(同項2号)等は無効になります。また、トラブルの原因がインターネットオークション事業者の故意又は重過失にある場合にも免責とする条項は公序良俗違反として無効となる可能性があります(民法90条)。

ただ、上記事項について利用規約に明示することで、無用なトラブルを防止することができますので、利用規約の作成は必要です。なお、利用規約の作成にあたっては、事業者側が一方的に有利となるような規約を置いた場合に事業者の評価や、運営サイトの人気が落ちてしまう恐れもありますので、あまり一方的な規約とならないよう、注意しましょう。

オークションに権利侵害品が出品された場合の義務及び責任

インターネットショッピングモール(いわゆる「楽天市場」)に権利侵害品(知的財産権侵害の物品等)が出品された事例において、一定の要件の下にインターネットショッピングモール事業者も権利侵害の責任を負う場合があると判示した裁判例(知財高判平24・2・14判時2161号86頁)があります。

同裁判例は「ウェブページの運営者が単に出店者によるウェブページの開設のための環境等を整備するにとどまらず、運営システムの提供・出店者からの出店申し込みの許否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い、出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている者であって、その者が出店者による商標権侵害があることを知ったときまたは知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは、その合理的期間内に侵害内容のウェブページの運営者に対し、商標権侵害を理由に出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。」と判示しました。

また、同裁判例は「ウェブページの運営者は、商標権者等から商標法違反の指摘を受けたときは、出店者に対しその意見を聴くなどして、その侵害の有無を速やかに調査すべきであり、これを履行している限りは、商標権侵害を理由として差止めや損害賠償の責任を負うことはないが、これを怠ったときは、出店者と同様、これらの責任を負うものと解される。」判示して、権利侵害の被害者等からの指摘を受けた場合には調査義務があること及びかかる義務に違反した場合には、出店者と同様の責任を負うことを示しました。

同裁判例の判断は、インターネットオークションサイトでも妥当すると解されます。

したがって、インターネットオークション事業者は権利者等からの指摘によって権利侵害が疑われる出品者に対する意見聴取などの権利侵害の事実の調査義務が生じ、かかる事実を認識し又は認識することができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは、その後の合理的期間内に侵害状態の是正措置をする必要があり、合理的期間内に是正措置を取らない場合には権利侵害品の出品者と同様の責任を負うことが考えられます。
具体的には、商標権侵害であれば、権利侵害品の出品停止、オークションのウェブサイト上からの権利侵害品の削除、損害賠償などの責任を負うと考えられます。


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