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【就業規則】作成手順から変更手続まで詳しく解説!

ご存知のとおり、近年、人事・労務に関するコンプライアンスが注目を集めています。
特に、働き方が多種多様になり、リモートワークや在宅勤務が珍しくなくなりました。そのことから、規程類を改定する必要がでてきている会社も少なくないでしょう。

上場審査の過程においても、労働法規を遵守するための人事・労務管理体制の整備・運用に重点を置く傾向が多く見られます。

しかしながら、本来であれば、これらの対応は、上場の有無にかかわらず必要なものであり、上場審査の本質からすれば、企業が継続的に成長するための経営戦力とそれを実現するための人事戦力の有無が問われるべきものです。

今回は、このような労務に関するコンプライアンスの一つとして就業規則について詳しく説明します。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。

本記事では、
「【就業規則】作成手順から変更手続まで詳しく解説!」
について、詳しくご解説します。

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就業規則とは

就業規則は、労働時間、賃金などの労働条件や職場の服務規律などを定めて、これを書面にしたものです。

労働者が安心して働ける職場であることは、業種、事業規模を問わず、すべての会社にとって重要です。

そのために、あらかじめ就業規則で労働時間や賃金をはじめ、人事・服務規律など、労働者の労働条件や待遇の基準をはっきりと定めて、労使間でトラブルが生じないようにしておくことが重要といえます。

作成義務

労働基準法は、労働者を1人でも使用する事業場に適用される法律です。
一方で、就業規則の作成が義務づけられているのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場であり、使用者は事業場ごとに就業規則を作成しなければなりません(労働基準法、以下「労基法」89条)。

労基法89条には、「事業場」との記載はありませんが、従業員代表者の意見聴取手続きが事業場単位で定められている(労基法90条)ことなどから、就業規則作成義務は企業単位ではなく事業場単位で考えられています。
そのため、常時10人以上の労働者を使用する事業場を複数もつ企業は事業場ごとに就業規則を作成しなければなりません。

次に、「常時10人以上」かどうかは、使用者と労働契約を結んでいる労働者の数が基準となります。
つまり事業場の正社員の数で決まるものではなく、その事業場で実際に働いている人員で決まります。
たとえば、正社員が少なくても、臨時工やパートタイマーを含めて常時10人以上が働いていれば、就業規則作成義務が発生します。

これに対して、 派遣労働者は、派遣元の事業場の労働者としてカウントされるため、派遣先の企業では人数に含まれません。

また、一時的に10人未満になることがあっても、年間を通じてほとんど10人以上が働いていれば「常時10人以上」にあたります。

他方で、労働者が常時10人未満の事業場では、就業規則作成義務はありません。ただし、労働条件や職場で守るべき規律などをめぐる事業主と労働者との間のトラブルを未然に防ぎ、明るい職場づくりに寄与するという役割から考えても、就業規則は是非作成しておくことをおすすめします。

~事業場単位とは~
事業場とは、主として場所的な要素により決定されるもので、名称や経営主体にかかわらず、一定の場所において相関連する組織として継続的に行なわれる事業を意味しています。

作成手順

就業規則は、次の手順で作成することが通例です。
なお、就業規則を変更する場合にも、同じく所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないため、注意が必要です(労基法第89条)。

2.「内容」(1)で説明する「必要的記載事項」を含む就業規則を書面により作成
② 過半数組合または過半数代表者からの意見聴取をする
③ 上記②の意見書を添付して所轄の労働基準監督署長へ届出


※使用者が意見聴取の機会を与えても、労働者側代表者が意見書を出さないとき、あるいは意見書に署名または記名押印しないようなときには、使用者が意見を聴いたことを客観的に証明できれば、意見書の添付がなくとも所轄の労基署長への就業規則の届出は受理されます(昭23.5.11基発735号,昭23.10.30基発1575号)。

このため意見書が提出されない場合、使用者は書面で意見書提出を催告し、それでも提出されない場合は、その事情を記載した書面と催告書などを添付して届出をすることになります。

④ 事業場に掲示または備え付けるなどの方法による周知手続き

内容

就業規則の内容は、法令又は労働協約に反することはできません(労働基準法92条、労働契約法13条)。これらに反する就業規則は、その部分について無効となります。

例えば、就業規則において減給の制裁を定める場合には、次のとおり、労働基準法91条で、減給できる額の限度額が定められています。

① 1回の額が平均賃金の1日分の2分の1
② 総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1

そのため、上記法令に違反する程度の減給額を就業規則に定めても、無効となってしまいます。

また、実務においてよく目にする違反事例としては、個別の労働契約の内容が就業規則の内容に満たない事例です。
例えば、雇用契約や誓約書等で、就業規則で定める従業員の義務以上の義務を記載している場合、当該部分について、無効となる可能性があります(労働基準法93条、労働契約法12条)。

絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項

次に就業規則に記載する事項には、必ず記載しなければならない事項(「 絶対的必要記載事項」)と、各事業場内でルールを定める場合には記載しなければならない事項(「 相対的必要記載事項」)の2種類があります(労働基準法(以下「労基法」といいます。)89条)。

絶対的必要記載事項は次のとおりです。

A 労働時間関係   始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
B 賃金関係 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
C 退職関係 退職に関する事項(※解雇の事由を含みます。)
解雇の事由 就業規則記事

相対的必要記載事項は次のとおりです。

D 退職手当関係 適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
E 臨時の賃金・最低賃金額関係 臨時の賃金等(退職手当を除きます。)及び最低賃金額に関する事項
F 費用負担関係 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項
G 安全衛生関係 安全及び衛生に関する事項
H 職業訓練関係 職業訓練に関する事項
I 災害補償・業務外の傷病扶助関係 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
J 表彰・制裁関係 表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
K その他 事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項

なお、これら以外の事項についても、その内容が法令や労働協約に反しないものであれば任意に記載することができます(「任意記載事項」)。

注意点

就業規則の内容は、事業場の実態に即したものとしなければなりません。
なぜなら、就業規則で定めたことは、労働者と事業主の双方を拘束することになりますので、その内容は実態に即したものとしておかなければ、事業主は法令に即した労務管理ができないからです。

そのため、厚生労働省の公表している就業規則例や、他社の就業規則を参考にすることも大事ですが、安易に流用して作成することは、後々不都合が生じるおそれがあるので注意が必要です。

とりわけ上場審査においては、労働時間の把握方法は未払賃金の有無を確認するための前提として注目されるポイントです。
「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅱの部)記載要領」においても、「時間外労働及び休日労働の管理方法(労働時間の記録、管理職による証人、人事担当部署による管理の方法を含む)」や「時間外労働の状況」について記載が求められていることからも重要なことが分かります。

上場準備の過程においては、過去・現在の未払い賃金発生の有無を全社的に調査する必要があります。万が一ある場合には、早期に清算し、改善策を練らなくてはなりません。

実務においては、この未払賃金の存在が明るみになり、従業員との間で清算業務が上手くいかず、上場が延期されるという事態もしばしば目にするところです。とりわけ、賃金債権の時効は、2020年4月の民法改正を受け、残業代請求権の消滅時効が2年から3年に延長されましたので、今後はますます未払賃金の有無は上場審査に当たって、ウェイトが大きくなる事項でしょう。

このように、上場にあたって未払賃金の有無は早期に解決するべき課題となるので、上場申請予定期の2年程前から労務DD(デューデリジェンス)を受け、労務コンプライアンスを徹底遵守する取組がなされるのが通例です。

外国人について

日本国内で就労する外国人にも、原則、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働法が適用されます。

上場審査においては、外国人労働者に対する社内管理体制の整備・運用状況についての説明が求められることもありますので、規程、慣行などを確認しましょう。

作成及び変更の手続

原則

前述のとおり、就業規則の内容は、法令又は労働協約に反することができません(労基法92条、労働契約法13条)。

また、就業規則の内容は、事業場の実態に合ったものとしなければなりません。

そして、その内容は、わかりやすく明確なものが求められます。複雑でわかりにくかったり、抽象的であったりする場合は、その解釈をめぐって労使間にトラブルが生じるためです。

パートタイム労働者

就業規則は、すべての労働者に適用されるように作成することが必要です。

パートタイム労働者のように、その勤務の態様等から通常の労働者と異なった定めをする必要がある場合には、通常の労働者に適用される就業規則(仮に一般の就業規則とします)の他に、パートタイム労働者党一部の労働者のみに適用される別個の就業規則を作成することとしてもよいとされています。

ただし、この場合には、一般の就業規則に、

① 別個の就業規則の適用を受ける労働者は、一般の就業規則の適用を除外すること
② 適用除外した労働者に適用される就業規則は、別に定めることとすること

を明記しなければなりません。

例)
第○条
1 この就業規則(以下「規則」という。)は、▽▽会社に勤務する者の労働条件、
含む規律その他の就業に関することを定めるものである。
2 前項の規定にかかわらず、パートタイム労働者にはこの規則は適用しない。
3 パートタイム労働者に適用する就業規則は、別に定めるものとする。

注意点

また、就業規則は、企業単位ではなく事業場単位で作成し、届け出なければならないというルールがあります。

つまり、1企業で2以上の営業所、店舗等がある場合、企業全体の労働者の数を合計するのではなく、それぞれの営業所、店舗等を1つの事業場として考えて、常に働く労働者が10人以上の事業場について就業規則を作成する義務が生じます。

なお、複数の営業所、店舗等の事業場を有する企業については、営業所、店舗等の就業規則が変更前、変更後ともに本社の就業規則と同一の内容のものである場合に限り、本社所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して一括して届け出ることもできます。

労働者の意見を聴かなければならない場合

就業規則を作成し、又は変更する場合、労働者が知らない間に、労働条件が不利益に変更されたり厳しい規律などが定められたりすることのないように、労働者の代表の意見を聴かなければなりません。

意見聴取とは、意見を求めてその見解を参考にするという意味です。
したがって、労基法では積極的な協議あるいは同意まで要求しているものではありません。

そのため、過半数組合や代表者の意見が就業規則に反対であっても、その旨の意見を記載した書面を就業規則届出の際に添付すれば足ります。
ただ実務上は、反対意見が出されればその理由を検討し、就業規則に反映させるか、労働者側に使用者の考え方を十分説明し理解を得るという対応が望ましいです。

●労働者の代表は、
①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合
②過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者
の意見を記し、その者の署名又は記名押印のある書面(意見書)を添付しなければなりません(労基法第90条)。

●労働者の過半数を代表する者は、
①労基法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
②就業規則の作成及び変更の際に、使用者から意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施する投票、挙手等の方法によって選出された者であること

のいずれにも該当する者でなければなりません(労働基準法施行規則(以下、「労基則」という。)第6条の2)。

●選出方法
投票(挙手)により、過半数の労働者の支持を得た者を選出する方法や、各職場ごとに職場の代表者を選出し、これらの者の過半数の支持を得た者を選出する方法などがあります。
使用者が一方的に指名することや、親睦会の代表者を自働的に代表者とすることは許されません。

なお、選出方法については、事業場の労働者の意向を反映させることのできる民主的な手続きであれば、労働者の話し合い、持ち回り決議でもよいとされています(平11.3.31基発169号)。
実務では規模の大きい事業場において職場ごとに代表者を選出し、各職場の代表者の間で過半数代表者を決定する間接選挙方式をとっている例もありますが、企業において過半数代表者の選出方法について制度化しておくことが望ましいです。

●任期
過半数代表者というのは、就業規則の意見聴取の場合だけでなく36協定などの労使協定の労働者側当事者にもなります。
労基法は過半数代表者の任期というものを予定していませんので、任期を定めていない場合には、就業規則の作成、変更のたびに過半数代表者を選任しなければならないことになります。

しかし、従業員の多い企業では、そのつど選任を行なうことは実務上、困難なことが多いので、1~2年程度の期間であれば事前に予定されている就業規則変更事項を掲げて過半数代表者を選任し、その事項に関してはその代表者を過半数代表者とする取り扱いは認められるべきと考えられています。
ただし、長すぎる任期の定めはその有効性にも争いが出る可能性があるので、注意が必要となるでしょう。

就業規則の作成又は変更に当たっては、その内容をよく吟味するとともに上記の手続等を遵守する必要がでてきます。
現在の職場の現実の労働時間、賃金等の労働条件あるいは職場規律などについての制度や慣行を整理し、それを基に検討していきます。

特に、就業規則を労働者にとって不利益に変更する場合(給与や休暇など)には、労働者の代表の意見を十分に聴くだけでなく、変更の理由及び内容が合理的といえるかを慎重に検討することが必要です。
この点は、労働契約法第9条と第10条に要請される要件が具体的に法定されていますので、是非、参考にしてみてください。 なお、就業規則の届出については電子申請でも行うことが可能です。

周知

作成した就業規則は、労働者への配付、労働者がいつでも見られる職場の見やすい場所への掲示・備付け、あるいは電子媒体に記録しそれを常時モニター画面等で確認できるようにするといった方法により、労働者に周知しなければなりません(労基法第106条第1項)。

就業規則は、ただ作成した、労働者の代表者から意見を聴取した、というだけでは効力は発生しません。
就業規則の効力発生時期は、就業規則が何らかの方法によって労働者に周知された時期以降で、就業規則に施行期日が定められているときはその日、就業規則に施行期日が定められていないときは、通常は労働者に周知された日と解されています。

したがって、周知されていない就業規則には効力がありません。そのため、従業員もその就業規則に縛られません。

チェックリスト(参照)

最後に、東京労働局が、就業規則の内容を確認する上で重要となる事項を列挙したリストを添付します。
お手元の就業規則のチェックに使いましょう。

チェックリスト1チェックリスト2

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