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資産調査について具体的に解説 ~債権回収のために~

Q
取引先からの売買代金の支払いが滞っています。取引先は、支払う意思はあると言うのですが、電話や書面などで何度も支払いを催促しても、一向に支払いがされず困っています。

取引先は、資産として他社の株式を保有している可能性があるのですが、取引先が保有する他社の株式を仮差押えすることはできますか。
また、取引先に赴いた時に自動車が何台かありました。その自動車についても、一応ナンバープレートは控えておいたのですが、債権回収に役立つでしょうか。

株式・自動車について、具体的な調査方法や債権回収までの手続きなどを教えてください。

A
まず、株式については、取引先が保有している株式が上場株式か非上場株式かで扱いが異なります。取引先が保有している株式が上場株式で、かつ、債権者が判決や執行証書等の債務名義(※1)を有している場合には、口座を開設していると思われる証券会社に対して、第三者からの情報取得手続(民事執行法204条乃至211条)または債権者の代理人弁護士を通じて弁護士会照会(弁護士法23条の2)を行うことが考えられます。

この弁護士会照会は、弁護士が所属弁護士会に対して照会の申出を行う→その申出を受けた弁護士会がその申出を適切と判断する→弁護士会が証券会社に対して照会を行うという流れで進行します。保有株式の有無や内容などを照会することにより、必要な情報を把握することができます。

非上場株式は、取引先が取引先の子会社又は関連会社の株式として保有していることが多いです。そのため、取引先の子会社や関連会社の調査をすることが有用です。

次に、自動車については、ナンバープレートと車体番号の情報にもとづき、運輸支局や自動車検査登録事務所から自動車登録ファイルの登録事項等証明書を取得して、所有者を特定できます。ナンバープレートしか情報がない場合、弁護士会照会を利用して当該自動車の矯正執行に必要な情報を収集することが可能です。また、例外的に、ナンバープレートの情報のみで、登録事項等証明書の交付請求ができる場合もあります。なお、自動車の種類によって、執行方法や根拠法規が異なりますので注意が必要です。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。

本記事では、
「資産調査について具体的に解説 ~債権回収のために~」
について、詳しくご解説します。

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保有株式の調査

調査方法

取引先(債務者)が株式を保有しているかどうかは、債務者から任意に情報収集するのが基本となります。

しかし、債務者の資産状況が悪化している場合、債務者が情報を出し渋ることも考えられます。

そこで、 独自に情報収集する方法として、上場株式・非上場株式の場合に分けて解説いたします。

上場株式である場合

債権者が、判決や執行証書等の債務名義を有している場合には、第三者からの情報取得手続(民事執行法204条乃至211条)または債権者の代理人弁護士を通じて証券会社に対する弁護士会照会(弁護士法23条の2)をして、仮差押や差押に必要な情報を収集することが考えられます。
弁護士会照会をした場合、口座のある支店などの情報について回答に応じる証券会社もあります。

ただ、上記のような情報収集は、証券会社ごとに手続きが必要となりますので、予め、債務者がどの証券会社に口座を開設しているかについて情報がなければ困難です。そのため、債権者は、平時から、取引先に出向いた際に、証券会社が顧客に配布している会社名入りのメモ帳やカレンダー、ボールペンなどをさりげなくチェックするなど、証券会社が絞り込むことができるよう、情報収集しておくことが大切です。

証券会社についての情報があれば、当該証券会社に対して電話などで問い合わせをしてから、第三者からの情報取得手続きや弁護士会照会をするのが現実的です。

非上場株式である場合

非上場株式の保有目的としては、上場株式のように有価証券売却益を確保するというよりは、事業上の必要性から、子会社株式等として保有していることが多いです。

そのため、取引先の子会社がどこなのかを調査することが有益でしょう。
例えば、以下のような資料が考えられます。

  • 取引先の有価証券報告書
  • ホームページ上のグループ会社紹介、組織図など
  • 会社案内のパンフレット(ホームページ上に掲載されている場合もあります)
  • 人材派遣会社における取引先グループ企業の紹介
  • 信用調査会社の調査書
  • 取引先の法人税確定申告書(子会社株式・投資・有価証券といった勘定明細の中に子会社法人が記載されている場合があります)

非上場株式の場合、上場株式のように証券会社が関与するわけではないので、第三者に照会することはできず、存在の有無や正確な情報を把握するのが困難です。そのため、上記のような方法を使い、情報を少しずつ積み重ねていくことが重要です。

他にも、取引先の本店・支店や代表者個人の居住地と同じ場所に、関連会社の本店がある場合も多いので、同じ名称や類似名称で商業登記を検索したり、商業登記の閉鎖謄本もしくは閉鎖事項証明書または代表者の戸籍の附票もしくは住民票除票を申請することも有用でしょう。

また、取引先の事業所の看板や郵便受けに子会社の名称が記載されている場合もあるので、普段から、訪問の際にはチェックしておくようにしましょう。なお、看板や郵便受けに記載されているような外部的な表記と商業登記の記載は、英字・漢字・カタカナなどの点で微妙に異なることもあり、表記の幅があることを心に留めておきましょう。

候補対象の法人が発見された場合、同法人の商業登記簿の役員欄を確認することで、取引先とのつながりが推測できます。取引先の役員と見比べ、ほぼ重複している場合には、関連会社である可能性が高いです。

しかし、関連会社であることが判明したとしても、その株式を保有しているということまでは確定できません。取引先代表個人が保有している場合や、他のグループ企業を通じた間接保有である場合が考えられるからです。

株主の把握には、株主名簿を確認することが一番確実ですが、株主名簿の閲覧謄写ができるのは、当該会社の株主・債権者等に限られています(会社法125条2項・4項)。合併・会社分割等の株主総会が、みなし総会決議で行われている場合(会社法319条)には、当該会社の全株主の同意意思表示書面は謄写でき、これによって株主を把握することができますが、これも、当該会社の債権者のみとなっています(同条3項)。

他方で、法人登記の登記申請の際に、株主名簿や株主リストが登記申請書の添付書類として必要とされる場合があります。登記申請書や添付書類を閲覧することについて利害関係があれば、法務局で株主名簿や議決権割合が3分の2に達するまでの株主が記載された株主リストを閲覧することが可能です(商業登記法11条の2)。謄写は認められていませんが、閲覧時に写真撮影することにより、記載内容の保存が可能です。

仮押え又は差押えの方法

上場株式である場合

上場株式の場合は、株券(株主としての地位を証明する有価証券のことです)の電子化により、実際に株券は手元にはなく、証券会社の振替口座で株式を保有する場合が多いと考えられます。

この場合、「その他の財産権」(株主たる地位に基づく諸権利の総体)として、債権執行の例によって仮差押え又は差押えをします(民事執行法167条、民事保全法50条5項)。当事者は、債権者、債務者及び振替機関等(債務者が口座の開設を受けている振替機関又は口座管理機関)となります。

このような株式の仮差押えの執行は、当該株式に関し、保全執行裁判所が振替機関等に対し振替及び抹消を禁止する命令を発する方法により行われます(民事保全法規則42条)。

また、振替株式の強制執行は、執行裁判所による差押命令によって開始され、債務者は株式の処分を禁止され、振替機関等は振替及び抹消が禁止されます(民事執行規則150条の2以下)。

非上場株式である場合

株券が発行されているか否か、株券の占有者は誰か、によって手続きが異なるため、これらの事実を正確に把握しておく必要があります。

株券が発行されている場合で、株券が取引先(債務者)にある場合には、動産(有価証券)の仮差押え又は差押えの方法をとります。第三者が占有しているときは、株券引渡請求権の仮差押え又は差押え(第三者から任意の株券提供を期待できる場合は、動産の仮差押え又は差押え)の方法によって行います。差押え後は、株式の価値を評価後、売却されることになります。

一方で、株券発行会社であるのに、株券が発行されていない(株券不所持の)場合には、株式を「その他の財産権」(株主たる地位に基づく諸権利の総体)として差押えることになります(民事執行法167条1項)。

以下の表に、執行方法・換価の流れ・譲渡制限株式の場合をまとめましたのでご参照ください。

(株券発行会社の場合) 株券所持   株券不所持
執行方法 動産執行(民執行方法事執行法122条) 株式を「その他の財産権」として差し押さえる債権執行(民事執行法167条1項)。換価は動産執行の方法による。
換価の流れ 動産執行による差押え

競売により売却代金を得る
債権者が有する取立権に基づき、株主の有する株券発行請求権を行使。 株券を発行して執行官に引き渡すことを株券発行会社に請求。※①

引き渡された当該株券を動産執行の方法により競売して売却代金を得る。
譲渡制限株式の場合   買受人が発行会社に譲渡承認請求(会社法137条)。発行会社が譲渡承認を拒否する場合には、会社が自ら買い取るか又は指定買取人を指定(会社法140条1項・4項)。 債権者は当該買取代金を債権回収に充てる。

※①会社が株券発行に任意に応じない場合又はそもそも株券不発行会社である場合には、譲渡命令(※➁)又は売却命令(※➂)を裁判所に求めることができます(民事執行法161条1項)。譲渡命令により、債権者が株式を取得した場合にも、当該株式が譲渡制限株式の場合には、会社に対して譲渡承認請求をする必要があります(上記「譲渡制限株式の場合」参照)。

※➁ 「譲渡命令」とは、執行裁判所が、支払いに代えて債権者に株式を譲渡することを、債務者に命じることをいいます。債権者は、株主としての権利を行使することで債権回収を図ります。債権者が債務者の有する債権者発行株式を自己株式の取得として差し押さえることもできます。

※➂「売却命令」とは、執行裁判所が、債権の取り立てに代えて、差し押さえられた債権を裁判所の定める方法により売却することを債務者に命じることをいいます。

保有自動車の調査

はじめに

取引先の保有する自動車としては、営業車が一般的に挙げられるでしょう。
しかし営業車は換価価値が低い場合も多いです。

一方で、トラックやユンボなど業務で使用する建設機械は中古であっても需要が高く、換価価値が高いといえるでしょう。

そのため、建設機械などがある場合には、優先的にナンバープレートなどの情報を収集するようにしましょう。 なお、建設機械は非常に高価なものですから、リースやレンタルと言った場合も多いことに注意が必要です。

調査方法

自動車のナンバープレートに表記されている文字・数字全て車台番号下7桁の数字がわかれば、運輸支局・自動車検査登録事務所に、自動車登録ファイルの登録事項等証明書を交付請求して、所有者を特定できます。

しかし、車体番号は車に書いているわけでもないので、把握していない場合も多いでしょう。

以下の方法はナンバープレートの情報しかなく、車体番号が分からない場合に有用です。

弁護士による照会

普通自動車及び小型自動車については、国土交通省の運輸局運輸支局または自動車検査登録事務所を照会先として、照会をします(弁護士法23条の2)。

照会事項としては、仮差押えを見越して、車体番号だけではなく、所有者の氏名なども加えたほうが良いでしょう。

「登録事項等証明書の詳細証明の写しをもって回答されたい」旨を付言しておくと、仮差押えに必要な情報一式が得られやすいです。 照会先は、自動車の種類によって異なるので注意しましょう。

自動車の種類 照会先
普通自動車・小型自動車  国土交通省の運輸局運輸支局
又は 自動車検査登録事務所
軽自動車 軽自動車検査協会
小型二輪・軽二輪 運輸支局 又は 自動車検査登録事務所
原付 市区町村

登録事項等証明書の交付請求

登録事項等証明書の交付請求にあたっては、前述のとおり、自動車登録番号の他に車体番号の下7桁を明示するのが原則です。

しかし、例外的に以下の場合には、自動車登録番号又は車体番号の全桁のいずれかを明示することによって、登録事項等証明書を請求できます

①私有地における放置車両の所有者・使用者を確認する場合
当該車両の放置状況がわかる図面、車両の写真及び放置日数等を記載した
 書面を提出します。

➁裁判手続の書類として登録事項等証明書が必要な場合
当該車両が裁判手続に関係していることを証する書類として、債務名義等の
 公的書類の提出又は提示をします。
公的書類がない場合は、国土交通省自動車局宛の申立書の提出します。

➂抹消登録されているため自動車登録番号がない場合
車体番号の全桁の明示によります。

債権回収の観点からは、判決・執行証書等の債務名義(民事執行法22条各号)を有するときは、➁の債務名義を活用した交付請求が有効です。

債権回収のための金銭執行の方法

上記の調査方法により、取引先が当該自動車の所有者であることが登録事項等証明書により裏付けられれば、登録自動車に対する金銭執行が可能になります。

金銭執行についても、自動車の種類により方法が異なるため、以下の表を参照してください。

自動車の種類 執行方法 根拠法規
建設機械 建設機械執行(※2) 民事執行規則86条
自動車抵当法2条但書
建設機械抵当法2条
道路運送車両法13条、97条4項
自動車 自動車執行(※3) 道路運送車両法13条、97条1~3項
民事執行規則86条
未登録自動車
軽自動車
小型特殊自動車
二輪の小型自動車
原付
動産執行(※4) 民事執行法122条

※1 「債務名義」とは、強制執行をするための請求権の存在及び範囲を証明する公正証書のことで、法律が強制執行によりその内容を実現するための執行力を与えたものです。 債務名義は、民事執行法22条において列挙されており、確定判決(1号)や仮執行宣言付判決(2号)などがあります。

※2 「建設機械」とは、建設業法2条1項に規定する建設工事の用に供される機械類をいいます(建設機械抵当法2条1項)。建設機械執行は、建設機械に対する強制執行の方法で行われます。

※3 「自動車」とは、道路運送車両法による登録を受けた自動車をいいます(自動車抵当法2条)。ナンバーの付いている自動車は、当該登録を受けていると考えられるため、自動車執行の対象となります。そして、自動車執行は、強制競売の方法で行われます(民事執行規則86条)。

※4 動産執行は、執行官の目的物に対する差押えにより行われます(民事執行法122条)。執行官が債務者の会社や自宅に出向き、差押禁止財産(生活に欠くことのできない衣服や家具など。民事執行法131条)を除く動産を回収し、その動産を換価することによって得られた金銭が債務の弁済に充てられます。

まとめ

債務名義を取得して、強制執行が可能になっても、取引先(債務者)に換価できる財産がなければ、債権回収という目的は達成できません。

そのため、資産調査は取引前の段階から常に頭に入れておき、情報収集を続けましょう。

また、取引先から任意の情報収集ができない場合、上記で述べたように弁護士会照会という方法も利用できます。
訴訟を考えていなくても、情報収集の段階で、弁護士にできることも多いので、お気軽にご相談ください。


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