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【企業向け】リファレンスチェックで違法にならないために注意すべきこと

企業において、従業員の採用前にリファレンスチェックを行うことで、適性のチェックや経歴・職歴詐称の防止を図ることが一般的です。
しかし、この方法にはいくつかの法的規制に注意しなければならないポイントがあります。

本記事では、その対応方法や注意点について解説します。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談を承っております。

本記事では、
「【企業向け】リファレンスチェックで違法にならないために注意すべきこと」
について、詳しく解説します。

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~リファレンスチェックの重要性とその進化~

リファレンスチェックは、求職者の過去の職歴や人間性を確認するための採用選考プロセスで、特に外資系企業で長らく実施されてきました。
前職の関係者に勤務状況や性格、人間関係などを問い合わせることで、求職者が定着する可能性や面接時の話との整合性を確かめる目的があります。

近年、リファレンスチェックを取り入れる企業が増えており、特に幹部候補の採用では多く実施されています。
リファレンスチェック専門の企業も存在し、企業が直接行うか外部に委託するかで実施方法が分かれます。

過去には、リファレンスチェックを行うことを求職者に知らせずに実施する企業も多かったようですが、現在は個人情報保護法に基づいて、本人の同意を得てから実施することが一般的となっています。

リファレンスチェックの対象者は、求職者が紹介する場合もあれば、採用企業が独自に選定する場合もあります。チェック手法としては、電話が最も一般的ですが、書面でのアンケートや面談も行われることがあります。最近では、アプリを活用した手法も登場し、手間をかけずに効率的に行えるようになっています。

リファレンスチェックの導入によって、企業は適切な人材を採用しやすくなり、求職者も自分に合った企業への就職が実現しやすくなります
法令遵守や個人情報保護に配慮しながら、リファレンスチェックは今後も採用選考の重要なプロセスとして活用されるでしょう。

リファレンスチェックをする場合の法的問題

中途採用者に対して、前職場の同僚や第三者業者を通じて、例えば、以下の情報を取得することは法律上、可能でしょうか

  • 在籍歴
  • 勤務姿勢や勤務成績
  • 懲戒歴

この問題については、個人情報保護法職業安定法(職安法)の規制に適合するよう注意が必要です。

リファレンスチェックで応募者の個人情報を収集・取得する際、以下のポイントを押さえておくべきです。

  1. 必要範囲内で個人情報を収集・保管・使用する(職安5の4①)。
  2. 応募者から直接収集するか、本人の同意のもと第三者から収集する(職安指針第4 1(2))。
  3. 利用目的を特定して取得し、「要配慮個人情報」には本人の同意が必要(個人情報15①・17②)。
  4. 社会的差別の原因となる情報は原則収集禁止。具体的には、応募者に関する「人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項(要配慮個人情報を含む)」「思想及び信条」「労働組合への加入状況」がこれらの情報となる。例外的に「特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合」に限り、収集することが許される(職安指針第4 1(1))。

リファレンスチェックが上記ルールを遵守していれば、応募者の同意がある限り許容されます。
内定取り消しも、リファレンスチェックの内容次第で可能ですが、適切な理由と手続きが必要です。

上記で問題提起をした「応募者等の在籍歴」「応募者等の勤務姿勢や勤務成績」「応募者等の懲戒歴」といった情報は、個人情報に該当しますので、仮に、求人企業が応募者本人に「同意」を得ることなく、これらの情報を前職場の同僚に問い合わせて取得したり、業者を使って取得した場合は、上記②のルールに抵触することになります。

なお、「応募者等の在籍歴」「応募者等の勤務姿勢や勤務成績」「応募者等の懲戒歴」といった情報は、いずれものルールの適用対象となる情報ではありません。
したがって、リファレンスチェックにより応募者の「応募者等の在籍歴」「応募者等の勤務姿勢や勤務成績」「応募者等の懲戒歴」といった情報を取得することも、本人の同意がある限りは許容されます。

情報提供の注意点

リファレンスチェックは、求人応募者の過去の職務経歴人間性を確認するために行われるプロセスです。
そのため、他企業から、自社に以前、勤務していた社員のリファレンスチェックが入る可能性もあるでしょう。

しかし、この過程で個人情報保護法に抵触しないよう、注意が必要です。
個人情報保護法では、個人データを第三者に提供する際には、あらかじめ本人の同意が必要であると定められています(個人情報23①)。この規定は、現従業員や元従業員に関する個人データにも適用されます。

個人情報保護委員会のQ&Aでも、退職した従業員に関する情報が個人データである場合、本人の同意がない限り第三者に提供することができないとされています(個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&AのQ7-12)。

この規制は、個人情報データベース等を構成する個人情報に限定されますが、データベース化されていない従業員・元従業員の個人情報についても、プライバシー侵害を回避する観点から、本人の同意なく第三者に提供すべきではありません。

企業が従業員の個人情報をリファレンスチェック業者に提供する際には、まず本人の同意が得られているかを確認することが重要です。同意が得られていない場合、企業は本人に同意を得るか、情報提供を拒否するべきです。
在職状況や懲戒歴に関する照会に対しても、本人の同意がなければ回答しないべきです。

なお、実務上、リファレンスチェックは応募者の同意を得て行われることが一般的ですが、本人の同意があるからといって、企業が回答する義務が生じるわけではありません。この点にも注意が必要です。

以上の点を踏まえ、リファレンスチェックの際には個人情報保護法を遵守し、適切な方法で情報提供を行うことが求められます。
これにより、企業は適切な人材採用を行いつつ、法令遵守や個人情報保護にも配慮できるでしょう。

まとめますと、他社から情報提供を求められた場合、以下の点に注意しましょう。

  1. 応募者から同意を得ているか確認。
  2. 必要最低限の情報範囲で提供。
  3. 情報提供方法にセキュリティ対策を施す。
  4. 提供内容や同意取得日時を記録し、適切に保管。

最後に

適切にリファレンスチェックを実施することで、職場環境を向上させ、従業員の満足度や生産性も向上させることが期待できます。

リファレンスチェックは、企業にとって重要なプロセスであり、適切な人材採用に役立ちますが、個人情報保護や法律遵守の観点からも注意が必要です。適切な方法で情報提供を求め、応募者の権利を尊重することが大切ですね。

最後に、リファレンスチェックを実施する際は、企業としての倫理観や責任を持ち、情報を適切に管理・活用することが重要です。
これにより、企業は良好な職場環境を維持し、従業員とともに成長していくことができるでしょう。

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