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職場におけるハラスメントとは?【適切な人事・労務管理のために】

上場審査において人事・労務管理は、重要な審査項目の一つとされています。
労働に係る法令を遵守していない会社は、継続性や健全性が安定しておらず、上場する会社としてはふさわしくないと判断されるからです。

そのため、上場準備の過程において、人事・労務管理制度を整えることは非常に大切です。
その中で、今回は、「ハラスメント」について詳しく説明していきます。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。

本記事では、
「職場におけるハラスメントとは?【適切な人事・労務管理のために】】」
と題して、詳しく解説します。

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ハラスメントとは

セクハラ

正式には、セクシャルハラスメントといいます。

これは、「相手方の意に反する性的言動」(菅野和夫『労働法〔12版〕』(弘文堂、2020年)261頁)をいいます。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「男女雇用機会均等法」といいます。)では、職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、

  1. それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること( 対価型セクシャルハラスメント
  2. 職場の環境が不快なものとなったため、労働者が就業する上で見過ごすことができない程度の支障が生じること(環境型セクシャルハラスメント

を「職場におけるセクシャルハラスメント」といいます。

その例は以下の通りです。

対価型セクシャルハラスメント
● 出張中の車内で、上司が女性の部下の腰や胸に触ったが、抵抗されたため、その部下に不利益な配置転換をした。
● 事務所内で、社長が日頃から社員の性的な話題を公然と発言していたが、抗議されたため、その社員を解雇した。

環境型セクシャルハラスメント
● 勤務先内ですれ違う際、上司が女性の部下の腰などに度々さわるので、部下が苦痛に感じて、就業意欲が低下している。
● 同僚が社内や取引先等に対して性的な内容の噂を流したため、仕事が手につかない。

事業主は、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(同法11条1項)と規定しています。

事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者、学校における生徒などもセクシャルハラスメントの行為者になり得るものであり、男性も女性も行為者にも被害者にもなり得るほか、異性に対するものだけではなく、同性に対するものも該当します。

また、会社がセクシャルハラスメントを防止するために講じなければならない雇用管理上必要な措置の内容については、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下「セクハラ指針」といいます)に定められています。

パワハラ

正式には、パワーハラスメントといいます。

これは、職場において行われる

  • ①優越的な関係を背景とした言動であって、
  • ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • ③労働者の就業環境が害されるもの

であり、①~③までの要素を全て満たすものを指します。

客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。

職場におけるパワハラの3要素と具体的な内容

①優越的な関係を背景とした行動
● 当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの

②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
● 社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要がない、又はその態様が相当でないもの

③労働者の就業環境が害される
● 当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること
● この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当

厚労省は、職場におけるパワーハラスメントについて、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づき、次の6つの類型を典型例として整理しています。

なお、これらは職場のパワーハラスメントに当たりうる行為のすべてについて、網羅するものではないことに留意する必要があります。

1)身体的な攻撃
 暴行・傷害
2)精神的な攻撃
 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
3)人間関係からの切り離し
 隔離・仲間外し・無視
4)過大な要求
 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
5)過小な要求
 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
6)個の侵害
 私的なことに過度に立ち入ること

2020年6月1日施行の労働施策の総合的な推進並びに従業員の雇用の安定および職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」といいます)において、以下のとおり規定されています。

「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(同法30条の2第1項)。

また、会社がパワーハラスメントを防止するために講じなければならない雇用管理上必要な措置の内容については、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下「パワハラ指針」といいます)において規定されています。

中小企業にも2022年(令和4年)4月1日から施行されていますので、企業の皆様におかれましては、上記の雇用管理上必要な措置を講じているか、今一度ご確認を頂ければと思います。

直法律事務所では、上記の措置を講ずるための説明資料、書式ひな型をご用意しており、顧問先企業様には無料で提供の上、コンプライアンスの徹底をサポートしております。
初回30分は無料
でご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

マタハラ・パタハラ・ケアハラ

職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント
・上司に妊娠を報告したら辞めるように促された
・妊婦検診のために休暇を申請したのに上司に休みの日に行けと言われて休暇をもらえなかった
・育児短時間勤務をしていたら同僚から迷惑だと言われ精神的に苦痛を感じている

このような状況も一種のハラスメントといえ、マタニティーハラスメントパタニティ(父性)ハラスメント介護ハラスメントと言われます。

具体的には下記の

制度等の利用への嫌がらせ型
状態への嫌がらせ型

として現れることが多いです。

制度等の利用への嫌がらせ型
● 制度等の利用を理由に解雇や不利益取扱いを示唆する言動
● 制度等の利用を阻害する言動
● 制度等の利用を理由に嫌がらせ等をする言動

状態への嫌がらせ型
● 妊娠・出産等を理由に解雇その他不利益取扱いを示唆する言動
● 妊娠・出産等を理由に嫌がらせ等をする言動

それぞれ、男女雇用機会均等法育児・介護休業法で定められています。

事業主がハラスメント防止のために講ずべき措置

セクハラ指針及びパワハラ指針

セクハラ指針およびパワハラ指針で定められている、ハラスメントを防止するために会社・事業主が講じなければならない雇用管理上必要なハラスメント(セクシャルハラスメント、妊娠・出産等ハラスメント)防止措置の概要は、以下の通りです。

① 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(ⅰ) 職場におけるハラスメントの内容・ハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること
(ⅱ) ハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(ⅰ) 相談窓口をあらかじめ定めて周知すること
(ⅱ) 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること

③ 職場におけるハラスメントに係る事業の迅速かつ適切な対応の実施
(ⅰ) 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
(ⅱ) 事実確認ができた場合には、すみやかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
(ⅲ) 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を厳正に行うこと
(ⅳ) 再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も同様)

④ ①から③までの措置とあわせて講ずべき措置
(ⅰ) 相談者・行為者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
(ⅱ) 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

安全配慮義務

会社は、上記の指針で定められる事項の他、雇用契約上、労働者が安全な環境で就労できるよう配慮することを義務づけられています安全配慮義務 労働契約法5条)。

この点については、労働契約法の制定以前より、判例によって、「使用者は労働者に対して安全配慮義務、すなわち従業員の生命・身体などを危険から保護するように配慮すべき信義則上の義務を負う」とされていました。【最三昭和50・2・25】

近年では、会社が従業員に対し、過重な長時間労働を強いた結果、当該従業員がうつ病などの精神疾患を発症したり、当該精神疾患により自殺・過労死したりというような場合について、当該従業員またはその遺族から、安全配慮義務違反が主張されることが増えています。

職場環境配慮義務

また、会社は、従業員に対して、従業員が快適に業務を遂行できる職場環境になるよう配慮する義務(職場環境配慮義務)を負っているとされています。

この義務に会社が違反した場合は、従業員から当該義務違反に基づく債務不履行責任を追及されるおそれがあります。
実際、会社内において、従業員が上司や同僚よりセクシャルハラスメント、パワーハラスメント、またはマタニティーハラスメントを受けたことによりうつ病などの精神疾患を発症したとされ、会社が従業員などに対し損害賠償金を支払うといったケースが近年増加しています。

また、2014年6月には、労働安全衛生法の改正が公布され、事業者には、労働者の心理的な負担の程度を把握するための医師等による検査の実施(ストレスチェック)を原則として行うことや、受動喫煙対策の推進に努めることが定められました。

経営者としては、メンタルへルスケアも含めて従業員の職場環境に対しても配慮することが必要です。

ハラスメントについては、社内規則等でハラスメントを禁止したとしても、会社内でハラスメントが発生することを完全に防止することは難しいといえます。
したがって、研修等による社員教育を通じてハラスメントを防止するよう継続的に努めることは重要です。加えて、ハラスメントが発生した場合に、会社として適切な措置が迅速にとることができるように、社内に専門の相談窓口を設置して、周知し、ハラスメントに関する相談がなされた場合には、事実関係を適切にヒアリングすることで把握して、被害者への配慮をしつつ行為者への適切な措置を講じることができるように会社の体制を整えることが必要となります。

会社の取るべき具体的な行動
一般的に定める規程は、セクシュアルハラスメント規程コンプライアンス規程です。

セクシュアルハラスメント規程、コンプライアンス規程に関しては、会社がしっかりとこれらに取り組んでいることを示し、従業員が適切な行動をとることができるような指針を与えるためにも、会社の文化、取組状況に合わせた規程を作成することが望ましいです。

なお、改正男女雇用機会均等法では、セクハラ行為の禁止、行為者の制裁、申告者などへの不利益な取扱いの禁止を規定する必要があるので、現在、セクシュアルハラスメント規程を作成している会社は、内容を見直す必要があります。

労働者の妊娠・出産、育児休業、介護休業等に関する制度

以下の内容は、法律で定められている制度になります。
自社の就業規則等で定められている制度や、申請方法についても確認しておく必要があります。

男女雇用機会均等法

① 保健指導または健康診査のための時間の確保
事業主は、女性労働者が妊娠中または出産後の女性労働者のための保健指導、または健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。

② 医師等からの指導事項を守ることができるようにするための処置
妊娠中の通勤緩和
・・・交通機関の混雑による苦痛は、つわりの悪化や流・早産等につながるおそれがあります。
医師等から通勤緩和の指導を受けた旨妊娠中の女性労働者から申出があった場合には、事業主は、その女性労働者がラッシュアワーの混雑を避けて通勤することができるように通勤緩和の措置を講じなければなりません。

③ 妊娠中の休憩に関する措置
医師から休憩に関する措置について指導を受けた旨妊娠中の女性労働者から申出があった場合には、事業主はその女性労働者が適宜の休養や補食ができるよう、休憩時間を長くする、回数を増やす等休憩に関して必要な措置を講じなければなりません。

④ 妊娠中または出産後の症状等に対する措置
妊娠中または出産後の女性労働者が、健康診査等の結果、医師等からその症状について指導を受け、それを事業主に申し出た場合には、事業主は医師等の指導に基づき、その女性労働者が指導事項を守ることができるようにするため、作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の措置を講じなければなりません。

⑤「母性健康管理指導事項連絡カード」
妊娠中および出産後の女性労働者が上記の医師等から受けた指導内容が、事業主に的確に伝えられるようにするために定められたものです。女性労働者からこのカードが提出された場合、事業主は記載内容に応じた適切な措置を講じる必要があります。

労働基準法

①軽易業務への転換
妊娠中の女性労働者が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させなければなりません。

②危険有害業務の就業制限
妊娠中または出産後の女性労働者等を妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできません。

③時間外、休日労働、深夜業の制限、変形労働時間制の適用制限
妊娠中または出産後の女性労働者が請求した場合、これらを行わせることはできません。

なお、深夜業とは、午後10時から午前5時までの間の就業のことをいいます。
変形労働時間制がとられる場合にも、妊娠中又または出産後の女性労働者が請求した場合には、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることはできません。

④産前休業
出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、請求すれば取得できます。

⑤産後休業
出産の翌日から8週間は、就業することができません。
ただし、産後6週間を経過後に、本人が請求し、医師が認めた場合は就業できます。

⑥解雇制限
産前・産後休業の期間およびその後30日間の解雇は禁止されています。

育児・介護休業法

①育児休業
1歳に満たない子を養育する労働者は、男女を問わず、希望する期間、子を養育するために休業することができます。

※:子が1歳以降、保育所等に入れないなどの一定の要件を満たす場合は、子が最長2歳(注)に達するまでの間、育児休業を取得することができます。
注:原則1歳までである育児休業を6か月延長しても保育所に入れない場合等に限り、更に6か月(2歳まで)の再延長が可能です。

正社員だけでなく、有期契約労働者やパート労働者であっても、下記の要件を満たしていれば育児休業を取得することができます。
育児休業取得を申し出た時点において過去1年以上継続して雇用されていること
子が1歳6か月(2歳までの育児休業の場合は2歳)に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

②短時間勤務制度
事業主は、3歳未満の子を養育する男女労働者について、短時間勤務制度を設けなければなりません。

③所定外労働の制限
事業主は、3歳未満の子を養育する男女労働者から請求があった場合は、所定外労働をさせてはなりません。

④子の看護休暇
小学校入学前の子を養育する男女労働者は、会社に申し出ることにより、年次有給休暇とは別に、1年につき子が1人なら5日まで、子が2人以上なら10日まで、病気やけがをした子の看護、予防接種および健康診断のために1日または半日(所定労働時間の二分の一)単位で子の看護休暇を取得することができます。(有給か無給かは会社の規定によります)

⑤時間外労働、深夜業の制限
小学校入学前の子を養育する男女労働者から請求があった場合は、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはなりません。
また、深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはなりません。

⑥介護休業
要介護状態にある対象家族※を介護するために、通算93日まで、3回を上限に分割して休業をすることができます。
※配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫

正社員だけでなく、有期契約労働者やパート労働者であっても、下記の要件を満たしていれば介護休業を取得することができます。
介護休業取得を申し出た時点において過去1年以上継続して雇用されていること
介護休業開始予定日から93日経過する日から6か月を経過する日までに労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

⑦所定労働時間短縮等の措置
要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者について、3年以上の期間で2回以上利用可能な、所定労働時間短縮等の措置を設けなければなりません。

⑧所定外労働の制限
要介護状態にある対象家族を介護する労働者から請求があった場合は、所定外労働をさせてはなりません。

⑨介護休暇
要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、会社に申し出ることにより、年次有給休暇とは別に、年5日(2人以上の場合は年10日)まで、介護その他の世話を行うために1日または半日(所定労働時間の二分の一)単位での介護休暇の取得が可能です。(有給か無給かは会社の規定によります)

⑩時間外労働、深夜業の制限
要介護状態にある対象家族を介護する労働者から請求があった場合は、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはなりません。
また、深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはなりません。

多様な人材が活躍できる職場環境について

LGBT

性的指向・性自認に関する社会の関心の高まりを背景として、誰もが働きやすい職場環境を実現していくことが重要な課題となっています。
性的指向・政治、人に関する基本的な情報や社会における施策、取組を行っている企業の事例などを参考に、企業や働く人による理解を促進し、性的マイノリティの当事者を含めた多様な人材が活躍できる職場の整備を図ることが求められています。

LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、それぞれの英語の頭文字からとったセクシャルマイノリティの総称です。

会社としては、LGBT等の性的少数者へのセクシャルハラスメントについても適切に対処する必要があり、セクハラ指針にもその旨明記されています。
たとえば、他者が性的少数者であることを公表すること(いわゆる、アウンティング)はセクシャルハラスメントに該当しうるため注意が必要です。

また、企業の中には、LGBTへのセクシャルハラスメントの防止だけではなく、LGBTの従業員が働きやすい環境を整えるために積極的な取り組みを進めている会社もあります。
具体的には、体と心の性が一致しないトランスジェンダーの就活生に配慮し、エントリーシートの性別欄を廃止したり、性別に関係なく誰でも使用できるトイレを設置したりなどの取り組みがあります。

職場における取組の意義

企業における取組の目的や期待する効果としては、以下のものが挙げられます。

  • 多様な人材が活躍できる職場環境の整備
  • 当事者が働きやすい職場づくり
  • 社会的気運への対応
  • 人権尊重やコンプライアンス対応の観点
  • 事業やサービスの展開

職場における取組事例

参考までに、既に取組を行っている企業の取り組み事例を見てみましょう。

1 方針の策定・周知や推進体制づくり
● 就業規則に性的指向・性自認に関する差別禁止を明記。
● 推進体制として、人事担当部局の中で性的指向・性自認に関する担当者を決めて取り組んでいる。

2 研修・周知啓発などによる理解の増進
● 責任者会議にて、LGBTについての各回20分程度の研修会を数回にわたって実施している。
 ・LGBTに関連する用語や実態について勉強している。
 ・勉強会においては、札幌市が公開している資料を活用している。
 ・責任者は、受けた研修の内容を朝礼や昼礼で展開している。

● イントラネットでセミナーの動画をアップしている。

3 相談体制の整備
● ダイバーシティ&インクルージョン推進室を相談窓口とする他、外部の相談窓口を当事者団体に委託している。
● ハラスメント相談窓口と福利厚生制度の相談窓口を設けている。いずれも匿名での問い合わせが可能。

4 採用・雇用管理における取組
● 採用ポリシーにおいて、差別を行わないことを明記。また、自社のエントリーシートには性別欄を設けていない。
● 面接官向けのガイドラインを策定し、カミングアウトの強制の禁止やカミングアウトを受けた際の対応方法等を規定。

※労働者のアンケート調査(複数回答)では、当事者は、「性的マイノリティが働きやすい職場」として、「性的マイノリティであることを理由に人事評価や配置転換等で不利な扱いを受けない職場」を望んでいる割合が最も高い。(LGB:60.5% T:56.4%)

5 福利厚生における取組
● 婚姻同等の関係にある同性カップルや、異性間・同性間を問わず事実婚をした社員に対して、「結婚休暇」の付与、「結婚祝金」の贈呈、「出産祝金」の贈呈を認めている。
● パートナーの申告等各種人事手続きをアウトソーシングすることで、他の社員の目に触れることなく制度利用が可能。

6 トランスジェンダーの社員が働きやすい職場環境の整備
● 服装については、一般職に制服があるが、2019年からパンツスタイルを導入した。
● トイレの利用については、性自認にもとづいて希望するトイレを使ってよいことにしている。
● 通称名の使用、健康診断の対応などは、個別対応をすることにしている。

7 職場における支援ネットワークづくり
● 研修を受講するなど、性的指向・性自認に関する取組に何らかの形で関わった社員に対して、自分がアライ(性的マイノリティのことを理解し、支援しようとする人)であることを表明できるシールを配布している。

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