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株式上場(IPO)とは~市場について~


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「株式上場(IPO)とは~市場について~」
について、詳しくご解説します。

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IPO(株式の上場)とは

IPOとは、Initial Public Offeringの略であり、「新たに株式を公開し、公募・売り出しをする」という意味です。
証券取引所が開設する株式市場において、不特定多数の投資家を相手に、自社の株式を自由に売買できるようにすることをいいます。

小口の資金を集約して大きな投資を可能にするという株式制度は1600年頃からありましたが、2000年頃には金融ビッグバンを背景に、かつてないほど多くの企業が上場するようになり、それに伴って様々な不祥事があったため、株式市場の信頼性が求められるようになりました。
そこで、市場の整備が行われ、2011年頃からは新興企業を対象とした株式上場基準の緩和も進んだため、近年はこれまで上場を念頭に置いてこなかった中堅・ベンチャー企業が積極的に参入し、既に上場を意識して起業をする経営者が増加していることもあり、IPOという言葉自体は馴染みの深いものとなっているかと思います。

もっとも、上場をするとなれば、多くの費用や時間を費やすだけでなく、メディアへの露出が増えることで企業情報が世間にも広く知られること、また、証券取引所で自由に株式が売買されいてる状況になるため、上場を簡単に取り消すことはできず、IPOは企業の運命をも左右する非常に重大なものとなります。

ここでは、IPOについて基本的なことから解説していきたいと思います。
まず、どのような場合に企業はIPOをすべきなのでしょうか。

どのような場合にIPOすべきか

IPOはあくまで企業を発展させていく上での手段の一つであり、上場して終わりというものではありません。
上場をするための時間やコストは決して少ないとは言えず、各企業の規模や最終的な目的によっては、他の手段の方が有効な場合も存在します。

したがって、自社における上場のメリット・デメリットを検討し、享受するメリットの方が大きいと言える場合にはIPOをするべきか判断した方がよいでしょう。では、一般的にどのような場合にIPOが行われているのか、ケース分けしたいと思います。(IPOのメリット・デメリットについては、株式上場(IPO)のメリット・デメリットの記事で解説しております。ご参照下さい。)

競争戦略としてのIPO

事業範囲が同じ競合他社が存在する場合で、IPOが有効とされるケースです。

上場すると、マスメディアにも取り上げられる機会は未上場会社の段階と比べて格段に多くなるだけでなく、金融商品取引法に基づく義務や株式取引所の要請によって、企業内容の開示をしなければなりません。
その結果、企業の知名度は投資家の間だけでなく、一般社会でも飛躍的に上がり、自社製品の販売促進、サービス内容の周知といった効果があると言えます。
また、IPOには厳格な基準が設けられているため、上場企業はこの基準をクリアしている健全な企業として世間の信頼を獲得することができ、優秀な人材の確保が容易となる、自社製品の品質保証が確約されるといった効果も見込めます。

成長戦略としてのIPO 

企業を成長させようとする場合で、IPOが有効とされるケースです。

IPOによって株式に市場価値が生まれることから、多様な資金調達が可能となるため自己資本が強化されます。豊かな自己資本を元手に、異なる業種の企業を買収したり、新商材を開発したりすることで多角的な事業展開をすることができ、新たな市場をも開拓することができます。

財政戦略としてのIPO

中長期的な資金調達を行おうとする場合で、IPOが有効とされるケースです。

IPOは経営計画と整合性が採れているため、特に事業を拡大しようとしている企業においては、有効な手段として考えられます。
まずは、内部留保されている資金と銀行借入の範囲内での投資によって事業を拡大し、IPOのための事業計画を前提とした増資、事業拡大投資によって事業が拡大したところで、IPOによって公募増資による資金調達が可能となったり、銀行借入額が拡大されたりするため、財務バランスが大幅に改善されます。
この流れによって、事業拡大に必要な資金を調達することが可能になります。
もっとも、資金調達の手段は、シンジケートローン、劣後ローン、ストラクチャードファイナンス、クラウドファンディング等と多様なものがあるため、これらと比較してもなお、IPOによる資金調達の方が企業の体制と合致しているといえる必要があります。

創業経営者の個人的な目的によるIPO

創業経営者(オーナー)の個人的な目的を達成しようとする場合で、IPOが有効とされるケースです。

確かに、IPOによってオーナーの持株比率は低下しますが、時価総額の拡大によって、保有資産額である株式が増加するため、売出しをした場合は、売出しによる創業者利潤を得ることができます。
また、その後さらにオーナーの持株比率が低下したとしても、増資資金を活用して、企業価値を拡大させることによって時価総額が拡大し、保有資産額がさらに拡大することができます。
もっとも、IPOによらずとも、M&Aによれば、IPOよりも手間がかからず、シナジー効果によってはより高い株価となる可能性のあるため、IPOを行うか否かは、これと比較する必要があります。

他にも、IPOによって、株式が市場において換金性を持つことになるため、オーナーの相続税の納税資金を確保できるといったことも考えられます。

大きく分けて以上のようなケースの場合に、IPOをすることが考えられますが、IPOによって得られるメリットは多くあるため、様々な視点から考えてみて下さい。

どの株式市場を選択すべきか

IPOをすると決めた場合、次に問題となってくるのは、どの株式市場にするかという問題です。
現在、日本では東京、名古屋、福岡、札幌の計4か所に証券取引所があり、中でも東京証券取引所が圧倒的な取引量を有しています。

では、上場にあたってどの市場が最も適しているといえるのでしょうか。
各市場の特色や、新規上場状況株式売買状況既上場企業の財務特性株価推移といった市場の状況について焦点を置きつつ自社の規模や特性成長性財務規模、新興市場を選択した場合は次のステップへのアプローチ等とマッチするかどうか総合的に考慮して適切に選択する必要があります。
そして、選択の際は、主幹事証券会社や監査法人といった専門家に相談すべきですが、まずは自らが株式市場について正確に理解しておく必要があります。
そこで、株式市場について詳しく解説していきたいと思います。

国内の証券取引所には、本則市場と呼ばれる市場と新興市場と呼ばれる市場があり、東京と名古屋の各証券取引所の本則市場は、さらに第一部と第二部に区分されています。

本則市場

まず、本則市場は、大企業・中堅企業が上場する中心的な株式市場です。
したがって、対象は比較的業歴が長めの、一定規模以上成長した企業となり、上場する際に必要となってくる数値要件は他の市場よりも厳しくなっています。
そして、市場第一部と市場第二部は、主に株式数と売買高の違いによって分けられますが、市場第一部は株式を上場する会社の多くが最終的に目指す終着点という立ち位置になるため、
市場第一部銘柄の会社は信用力が非常に高いというイメージを持たれています。

新興市場

次に、新興市場について説明します。
新興市場は、その名の通り、成長が著しいあまり業歴のない新興企業が上場する株式市場です。
したがって、本則市場よりも上場基準が緩和されている上、審査も短期間で済むようになっています。
一般的には、本則市場へいくためのステップアップ市場とされていますが、成長性がある企業というイメージをつける目的から、あえて新興市場に留まるといった企業も存在します。

新興市場は、
東京証券取引所が開設している「マザーズ」「JASDAQスタンダード」「JASDAQグロース」、
名古屋証券取引所が開設している「セントレックス」、
札幌証券取引所が開設している「アンビシャス」、
福岡証券取引所が「Q-Board」があります。

この中でどの新興市場を選択すればいいか迷うかと思いますが、企業の所在と取引所の所在にはあまり相関関係はなく、企業にとって最も適している市場を選択すればいいとされています。
もっとも、
「セントレックス」「アンビシャス」「Q-Board」は、地元周辺企業育成の観点を有するファーストステージという意味合いを持っており、
「アンビシャス」は北海道とのつながりを有するという点、
「Q-Board」は九州周辺に本店を有する企業または九州周辺における事業実績・計画を有する企業という点が、市場の特色として挙げられています。

ここでは、東京証券取引所が開設し、新興市場の中でも大きな割合を占めている
「マザーズ」「JASDAQスタンダード」「JASDAQグロース」
ついて解説していきます。

「マザーズ」 は、市場コンセプトが「市場第一部へのステップアップのための成長市場向けの市場」となっており、過渡市場という位置づけとなります。
したがって、マザーズ市場は対象企業を“高い成長性を有している企業”としており、上場後10年を経過した会社は、マザーズへの上場を継続するか、市場第二部に上場市場を変更するか選択して申請書を提出しなければなりません。
また、市場第一部、第二部と異なり、社歴が浅く、小規模なベンチャー企業が上場する傾向があるため、リスク情報の開示の適切性や事業計画の合理性が重点的に審査される点が特色として挙げられます。
そして、新規上場前から係属して財務諸表に虚偽記載を行っていた企業が複数発覚した不祥事によってマザーズの信頼性が低下した過去を踏まえ、新規上場申請者に対して新規上場申請のための有価証券報告書に記載される財務諸表等について上場会社監査事務所の監査を義務付けることとなっています。

「JASDAQ」は、新しい産業や中堅・中小企業に幅広く資金を供給し、成長を支援することを基本理念としている市場で、信頼性・革新性・地域国際性という三つのコンセプトを掲げています。
そして、さらに「JASDAQスタンダード」「JASDAQグロース」に分けられます。
「スタンダード」 は、一定の事業規模と実績を有し事業の拡大が見込まれる企業を対象としており、
「グロース」特色ある技術やビジネスモデルを有し将来の成長可能性により富んだ企業を対象としています。
それぞれの市場の上場審査基準については別記事(株式上場(IPO)の近時の傾向について)で詳しく記しますが、
「スタンダード」の審査内容は市場第一部、第二部とほぼ同様と考えてよく、
「グロース」の審査内容はマザーズと類似していると考えてよいです。

Tokyo PRO Market

東京証券取引所には、成長力のある企業が資金調達できるプロ向けの市場として、「Tokyo PRO Market」という市場があります。
Tokyo PRO Marketは上記の市場とは異なり、直接投資ができる投資家がプロ投資家に限定されるところに最大の特色があります。
ここでいうプロ投資家とは、金融商品取引法上の特定投資家(適格機関投資家、国、日本銀行(金融商品取引法2条31項))と非居住者(日本に住所または居住を持たない個人・法人)をいいます。
市場で買い付けができる投資家をプロ投資家に限定しているため、他の新興市場よりも上場基準や開示制度が自由になっています。
他の市場では、上場適格性の評価は証券取引所が行いますが、Tokyo PRO Market ではJ-Adviserと呼ばれる東京証券取引所から認証を受けて上場審査等をサポートする機関が行うため、上場承認の期間は最短上場申請から10営業日と短くなっています。
また、上場した後の適時開示の助言・指導、上場維持要件の適合状況の調査についてもJ-Adviserに委託されています。
他にも、上場基準の数値基準が設けられていない、内部統制報告書の提出と四半期開示は強制ではなく任意による、監査証明は直近1年間で足りるといった点で、上場準備の負担が軽減されているといえます。

また、開示言語を英語でも行うことができ、会計基準も日本の基準だけに限定されないことから、国内にとどまることなく資金調達を広くすることができます。

2020年には10社が上場したことから、2021年1月時点では42社が上場している状態であり、勢いがあると言えます。(銘柄一覧 | 日本取引所グループ

Tokyo PRO Marketに上場することで、成長に意欲的かつ、経営管理体制の強化を積極的に進めている企業といった信頼を得ることができ、企業ブランドについての周知性の高まり、取引先の拡大や優秀な人材の確保といった効果が期待できるでしょう。

他市場 Tokyo PRO Market
上場承認までの期間 上場申請から2~4か月 原則、上場申請から10営業日
上場基準 株主数、時価総額、売上高、
利益等の数値基準あり
数値基準なし
J-Adviserによる評価
内部統制報告書 必須 任意
四半期開示 必須 任意
監査証明 直近2年間 直近1年間
開示言語 日本語 日本語または英語
会計基準 日本基準 日本基準、米国基準、
国際会計基準、その他
投資家 制限なし プロ投資家、日本非居住者

その他

これまで国内の株式市場を紹介してきましたが、海外市場という選択肢も考えられます。

海外で上場する目的として、国内での上場と同様に、資金調達の強化や知名度の向上といったことが考えられます。
例えば、企業の特質上、日本で資金調達を行うよりも海外で行った方が有効である場合や、今後海外での事業展開を考えていることから海外の市場で企業の知名度を上げる必要があるといった場合です。
他にも、人材の国際化を目指す場合や、海外企業との締結目的がある場合なども挙げられます。
もっとも、日本の市場よりも株価の状況が良いとは限らない上、外国語による開示書類の政策が必要となるなど、コストがさらにかかってしまうことも想定されます。
したがって、上場目的、海外市場の所在国と自社の事業展開の方向性の合致といったことについて十分に考慮する必要があります。

現在、海外企業の株式が上場できるアジアの主な株式市場は、
韓国取引所(KRX)、シンガポール取引所(SGX)、香港取引所(HKEx)、台湾証券取引所(TWSE)、台北取引所(TPEx)があります。

いつ上場すべきか

上場にあたって市場の選択と同程度に重要なポイントは、いつ上場するかという問題です。
これは、いつを直前期(基準決算期)とするか、直前期を設定したら翌期(申請期)決算確定までの間のいつ上場すべきか、という問題があります。

まずは、簡単に上場までの流れを説明したいと思います。
通常、IPOの準備を開始してから完了するまでに2~3年はかかると言われているところ、IPOは上場申請をすることから始まります。
上場申請は、証券取引所の上場審査部に申請会社が新規上場申請に伴う書類を直接提出することでできます。
そして、上場審査を経て、上場承認の発表があり、証券取引所審査部との面談、公募または売出状況確認がなされると、上場することができます。
そして、原則、上場は直前期と呼ばれる基準決算期の翌事業年度内にしなければなりません。
(詳しくはIPOスケジュール~上場準備開始から上場日までのスケジュール~の記事をご参照ください。)

以上が上場までの大まかな流れとなりますが、いつを直前期とすべきか、という問題については、上場準備にあたり事業計画を立てるため、それに基づく業績計画とその後の上場準備状況次第ということになってしまいます。
もっとも、上場申請において、連続する直近2期間の財務諸表等の監査が必要となるため、この2期目の決算期が最短の直前期となります。

次に、翌期決算確定までの間のいつ上場すべきか、という問題について述べたいと思います。
これは、上場申請期間中の業績をいつ頃見極めることができるか、という問題に帰着するといえます。
なぜなら、多くの場合、上場に向けた準備自体は間に合いますが、上場承認の際に開示する業績予想よりも、上場した際の株式市況が大きく下回るといったことがあってはならないにもかかわらず、多々起きる問題だからです。
上場時の株価にも影響を及ぼす業績予想は会社の経営努力によるところが大きいため、これによって上場時期を決定すべきです。
したがって、月次業績にばらつきがある会社等はその見極めが難しく、上場時期は申請期後半になることが多く、一年間にわたって受注積み上げが可能な企業は申請期中盤での上場もできることが多いです。
もっとも、忘れてはならないのは、上場時期はあくまで自社業績の見通しを投資家や証券取引所、証券会社を納得させることのできる時期でなければならいということです。

したがって、これらの諸事情を踏まえ、上場時期は慎重に定めなければなりません

株式上場にかかるコスト

IPOをする際にかかる費用としては、主に以下のものが挙げられます。

● 監査法人に支払う短期調査報酬、内部統制コンサルティング費用、監査報酬
上場審査基準において、直近2決算期間の監査証明が必要となるため、上場申請直前々期の期初めより前のタイミングで監査法人と契約することが多いとされています。また、監査証明業務以外のコンサルティングが必要となる場合には、別途報酬費用が発生します。

● 主幹事証券会社に支払う上場コンサルティング費用、引受手数料
 監査法人と同様に、上場申請を検討してから上場申請直前々期の期初めより前のタイミングで主幹事証券会社と契約することが多いと考えられています。助言報酬や成功報酬、その他手数料を支払います。

● 信託銀行等の株式事務代行機関に支払う株式事務代行手数料
 上場審査基準において、株式事務代行機関の設置が必要となるため、上場申請までに株式事務代行機関と委託契約等を締結する必要がありますが、通常、上場前は株主の数が少ないため、多額の費用はかからないとされています。

● 印刷会社に支払う申請書類作成費用
 上場申請書類や開示書類の作成に関する専門的なアドバイスを行うディスクロージャー専門印刷会社を利用することが多く、書類作成に伴う費用がかかります。

● 弁護士に支払う報酬
個々の事情に応じて必要な場合は、有価証券報告書・目論見書等に記載するリスク情報の作成における助言や、上場審査基準充足・上場審査対応のための相談、意見書等の作成にかかる助言にかかる報酬が発生します。

● 社会保険労務士に支払う報酬
 個々の事情に応じて就業規則等の見直しといった労務人事管理に関する整備が必要と判断される場合、コンサルティング費用が発生します。

● 内部管理統制の強化、管理部門の人員補強に伴う人件費
上場審査基準を充足する内部管理体制の整備をするため、内部統制機能を働かせるために必要な人員や、経理・財務・総務・人事・法務・労務・経営企画・内務監査等の専門知識や業務経験を有する部門の責任者やスタッフを配置するため、人材育成や外部から採用するのに伴う費用が必要となります。

● 役員の人員補強に伴う人件費
 上場会社となるにあたって備えてなければならない取締役や監査役がいない場合、増員する費用が発生し、社外から新たに役員を選任する場合は役員報酬も必要となります。

● 会計システムや業務システムといった新システム構築に伴う追加費用
 上場審査基準で求められる予算統制や適示開示体制の整備に必要な会計システムや業務システムの構築のために追加費用が発生することがあります。これは、上場基準を満たすために必要とはなるものではありますが、今後業務を拡大することを視野に入れれば、業務効率化を図ったり、経営判断のために必要となる経営情報を適示集計したりするためには必要不可欠なものといえます。また、機関システムに新たに構築する場合は、汎用のパッケージソフト等を使用する場合に比べて、多額の費用が発生しやすいとされています。
・証券取引所に申請時に支払う上場審査費用、新規上場費用、公募又は売出しにかかる費用、適示開示情報伝達システム利用料
・公募増資による増加資本金額に対する登録免許税
これらは、企業規模や委託先の報酬費用の価格といった個々の事情によって異なりますが、一般的に、総額で最低でも数千万円程度はかかるとされています。

上場維持にかかるコスト

IPOを完了したからといってこれ以上コストがかからないといったことはなく、上場した後もなお、上場を維持するための費用がかかります。

● 監査法人に支払う監査報酬
 上場後に必要となる、財務諸表等の監査証明・四半期報告書の四半期レビュー・内部統制報告監査についての監査証明業務にかかる報酬が発生します。

● 証券取引所に支払う上場手数料等
 時価総額や上場株式数に応じて、各金融商品取引所の市場ごとに料金が規定されています。

● 信託銀行等の株式事務代行機関に支払う株式事務代行手数料
IPOに伴い株主が不特定多数となるため、株主を記載した株主名簿を作成しなければならないため、株主名簿の作成・管理、株主住所変更・改印の受付、決算期末の株主の確定業務、株主総会修習通知の発送、配当金の計算・支払等株主総会開催や株式事務に関する助言や委託業務に関する手数料が発生します。

● 印刷会社に支払う法定書類作成費用等
株式上場の際にも必要となった、以上の費用が継続的に必要となっていくのに加えて、新たにこのような費用もかかることが考えられます。

● IR支援会社に支払う投資家向け財務情報(IR資料)の作成等に係る費用
 不特定多数の株主に向けたIR説明会を開くことがあるため、株主判明調査、IR戦略等の策定支援、IR説明資料作成支援、IR説明会アレンジメントにかかる報酬や、IR説明会等の開催費用、株主優待制度費用などが発生します。

● 国際財務報告基準(IFRS)を導入した場合、会計制度の変更に伴う社内体制の見直しにかかる追加コスト

● 株主や投資家からの監視や要請に応えることによる費用
前述しましたが、IPOはあくまで企業発展の手段の一つでありゴールではないため、上場した後に継続的に発生し続けるこのような費用を十分に支払える資力を蓄えていることが必須となります。

IPOの留意点

IPOをすることで上場前と大きく異なる点は、多くの株主や投資家といったステイホルダーが発生するため、そうした人々に対する責任及び社会的に果たすべき責任が発生する点にあります。
そこで、上場後に企業が留意しなければならないことについて述べていきたいと思います。

一般社会全体に対する責任(CSR)

IPO後はパブリックカンパニーとなるため、その社会的な責任を問われる立場となります。
近年、どの企業もコンプライアンス遵守を強く要請される傾向にあり、これまでプライベートカンパニーとして許容されてきた取引関係、例えば、親族との取引契約などを解消するといった措置が求められます。

会社情報の開示義務の強化

IPOをした場合、金融商品取引法に基づく開示義務および証券取引所の要請によって、会社情報の開示義務を果たさなければなりません。
金融商品取引法は、有価証券報告書・四半期報告書の提出を義務付けており、取引所は、四半期ごとの決算発表・適示開示情報等の公表を要請しており、そういったディスクロージャー義務を果たさなければなりません。

また、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」により、経営者は内部統制を整備・運用する責任を有するだけでなく財務報告に係る内部統制について自ら評価し、その結果を外部報告、公認会計士等による監査を受けなければなりません(新規上場後3年以内の企業で監査免除を採用する企業は除く)。

株主への配慮

未上場企業の場合、企業による株主の選別が可能な上、その人数は限られているため、経営陣にとって都合のいい株主が積極的に経営に携わることができます。
もっとも、IPOをしてしまうと、株式は証券取引所で転々流通することから、株主は不特定多数の者となり、株主は直接経営に携わることはできなくなります。
それだけでなく、これまで排除していた経営に反対する株主も含まれることから、株主代表訴訟や取締役・監査役の解任請求といった株主の権利に基づく活動が活発になることが想定されます。
そうした多くの株主のために、企業は企業情報の開示や、株主総会の運営を適切に行っていかなければなりません。
また、投資家が判断するに足りる情報を、適示・適切に開示する必要もあります
株式会社は株主の利益を最大限に図らなければならないことを忘れてはならず、これらの対応にかかる体制を整備し、適切に運営していかなければなりません。

おわりに

昨今、株式市場の健全化や上場基準の緩和の流れを受けて、企業戦略の一環として上場を選択する企業は多いかとは思いますが、まずは自社にとって上場という方法が最良の選択といえるのかどうか慎重に検討してみて下さい。
そして、IPOを選択した場合には、

複数ある証券取引所の中でどの市場に上場するのか、
上場時期はいつ頃が最適か、

本記事を参考にしつつ、外部の専門家に相談して下さい。
上場自体にかかる費用や上場を維持するのに継続的に必要となる費用を準備でき、上場企業として果たすべき行為を行っていけると判断できる場合には、IPOが契機となって企業の健全な発展が望めると思います。


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