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【反社会的勢力排除の整備について】上場申請のための体制づくりとは?


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「【反社会的勢力排除の整備について】上場申請のための体制づくり」
について、詳しくご解説します。

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反社会的勢力とは?

政府が反社会的勢力の定義について困難であると閣議決定した事は記憶に新しく、反社会的勢力とは何かについて、困惑されている企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。

反社会的勢力とは、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」をいう、とされています(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(2007年6月19日犯罪対策閣僚会議幹部会申合せ))。
政府系の独立行政法人中小企業基盤整備機構は、より詳細に条文の形で整理しています。
それによれば、暴力団のほか、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団、反ぐれ集団などがこれに当たります。

上場申請時の確認はどこまで行われるか?

上場申請時に提出する書類の中に「反社会的勢力との関係が無いことを示す確認書」があります。

<「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」における確認の範囲>
対象者 確認項目
上場申請日における役員、役員に準ずる者、重要な子会社の役員 ・氏名
・生年月日
・最近5年間に経歴(職歴)としてかかわった全ての会社・団体など及び兼職している会社・団体などの名称及び本店所在地
上場申請日における株主上位50名 ・法人株主:名称、本店所在地
・個人株主:氏名、生年月日、住所
・投資ファンド:ファンド名、所在地、運営者(ファンド出資者のうち、上場申請会社の発行済株式の5%以上の出資持分を持つ大口投資者が存在する場合、その名称)
仕入先及び販売先(直前事業年度の連結ベースで上位10位) ・個人:氏名、生年月日、住所
・法人:名称、本店所在地

上場申請の受付前の事前確認の段階で、主幹事証券会社と日本取引所自主規制法人の審査担当者との間で、上場申請会社作成の「反社会的勢力との関係が無いことを示す確認書」のドラフトに基づいて、反社会的勢力との関係が無い事について実施した調査の内容及び調査した上場申請者の関係者の範囲について確認が行われます。
上場申請会社から提出された会社関係者のリストに基づいて、東証においても、反社会的勢力との関係について独自調査が行われます。

<反社会的勢力との関係に係る東証への報告事項>
確認書の記載内容 上場申請会社グループ、役員、役員に準ずる者、主な株主、主な取引先(以下「当社グループ等」)と反社会的勢力とは一切関係がないこと、具体的には以下の事実等がない事を確認する旨の表明
・当社グループ等が反社会的勢力である事実
・反社会的勢力が当社グループの経営活動に関与している事実
・当社グループ等が資金提供等を通じて反社会的勢力の維持・運営に協力若しくは関与している事実
・当社グループ等が意図して反社会的勢力と交流を持っている事実
新たな情報を得た場合の取引所への報告の誓約
重大な違反事実が判明した場合に、それに関して取引所が行う一切の措置について異議を述べない旨の表明
確認を求められる範囲(東証本則市場、マザーズ) 役員、役員に準ずる者(執行役員、相談役、顧問等)、重要な子会社の役員
大株主上位50名(当社が既に上場会社の場合は上位10名)
主な仕入先および販売先(連結ベースで上位10社)

確認書の内容に加えて、上場審査の過程では、上場申請会社において反社会的勢力を排除する為に必要な体制整備が図られているかという点も審査の対象となります。

東京証券取引所では、上場審査等に関するガイドラインとして
「その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項」の中で、
「反社会的勢力による経営活動への関与を防止するための社内体制を整備し、当該関与の防止に努めていること及びその実態が公益又は投資者保護の観点から適当と認められること」が設けられています。
ここで、「関与」とは、上場申請会社の企業グループ、役員等、主な株主や取引先が、反社会的勢力である直接的な場合だけでなく、これら関係者が資金提供その他の行為を行うことを通じて反社会的勢力の維持、運営に協力若しくは関与している場合等、実態として反社会的勢力が上場申請会社の企業グループの経営活動に関与している場合を含むとされています。

では、具体的にどのような体制を整備すればよいのでしょうか。

反社会的勢力との関係を遮断するためには

反社会的勢力との関係は完全に遮断する必要があります。そして、反市場的勢力との関係を遮断するための体制整備は、政府指針を踏まえて検討する事が求められます。
例えば、代表的な措置として、以下のものが挙げられます。

  1. 代表者による基本方針の社内外への宣言
  2. 契約書への暴力団排除条項の導入
  3. 取引相手の情報収集
  4. 担当部署の決定、設置顧問弁護士の選定
  5. 内部規程の見直しと業務フロー確立
  6. 外部専門機関との関係構築


上記の6つの措置について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.について、これは、会社全体の意識を統一し、会社としてスムーズに体制を整備していくにあたって有効ですし、社外からの評価向上にも繋がります。

2.について、暴力団排除条項とは、文言に多少の差異はあれ、おおよそ以下のような内容の条項をいいます。

第〇条 ⑴各契約当事者は、次の各号の事項を確約する。
①自ら又は自らの役員(業務執行社員、取締役、執行役又はこれに準ずる者をいう)が、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という)でないこと。
②反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものではないこと。
➂本契約が終了するまでの間に、自ら又は第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと。
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
⑵ 契約当事者の一方について、前項の確約に反した事が判明した場合、その相手方は、何らの催告を要せずして、本契約を直ちに解除することができる。
⑶ 前項により本契約が解除された場合、解除された者は、その相手方に対し、違約金(損害賠償額の予定)として金〇〇円を支払うものとする。
⑷ 第2項により本契約が解除された場合、解除された者は、解除により生じる損害について、その相手方に対し一切の請求を行わない。

既になされた契約を含め、自社の全ての契約や取引約款に導入する必要があります。
また、今日まで暴力団とつながりのなかった会社が明日突然つながりを持つこともあり得る以上、取引開始後も契約相手方の属性等を定期的に確認することが大切です。

3.について、既存の取引先を含めたすべての取引先について、情報収集をしておく必要があります。
情報の入手方法として、一般には、商業登記簿謄本の確認、業界での風評、取引担当者とのやり取り、取引開始の経緯、消費者からのクレーム、過去のトラブルの原因分析、有料データベースの利用、警察などの外部専門機関への照会等があるでしょう。
情報収集した結果、契約締結前に、反社会的勢力である事が判明した場合には、契約自由の原則が妥当する事から、契約締結を拒否すれば足ります。その際には、拒否の理由を述べないのが得策であり、執拗に尋ねられた場合には「総合的判断による」点を説明しましょう。契約締結後であれば、もちろん、2.の暴力団排除条項に基づく解除権を行使すれば足ります。

4.について、収集した情報はまとめて統一的に管理する方が効率的ですし、日頃の業務に追われて反市場的勢力に関する情報収集が遅れるようなことがあってはいけません。担当部署を決定し、担当部門などが中心となって、定期的に取引先の属性を確認したり、規程類を見直したりして、反社会的勢力排除体制の確立をめざしましょう。

5.について、各部門で実施している業務の内容や、反社会的勢力との取引関係を生じさせるリスク等について情報を収集し、マニュアルや規程類は、対応方法などが具体的に定められているか、遵守・運用できる現実性を有するかという観点から見直すことが重要です。
各都道府県で制定されている暴力団排除条例を参考にしてみるのもよいでしょう。
また、長崎県弁護士会民事介入暴力被害者救済センター運営委員会編著の『Q&A企業のための反社会的勢力排除実践マニュアル』には必要な書式例も豊富に記載されており、こうした書籍を参考にするのも良いでしょう。

<見直すべき規程類について>
項目 留意点
企業倫理規程 反社会的勢力排除の基本方針宣言の趣旨が反映されているか
会社機関に関する規程 各部門の業務内容・審議事項・報告事項・担当役員等が反社会的勢力を排除する体制になっているか
業務分掌や職務権限に関する規程 担当部署等は明確になっているか
コンプライアンスに関する規程 反社会的勢力排除の対策、行動が具体的に規定されているか
リスク管理に関する規程 反社会的勢力との関係をリスクとして管理する体制になっているか
経理や資産管理に関する規程 反社会的勢力との取引に資産が悪用されないような体制になっているか
契約・取引に関する規程 暴力団排除条項の導入がなされているか
情報管理に関する規程 反社会的勢力に情報が漏洩しないような管理体制になっているか
<反社会的勢力対応マニュアルに記載すべき項目>
ⅰ反社会的勢力の基本方針
・指針の意義
・指針の位置づけ

ⅱ反社会的勢力の定義

ⅲ反社会的勢力排除のための対応体制(内部統制システムの構築・運用)
・連絡、報告、相談、対応の一連の流れ
・外部専門機関との連携の実施方法
・責任者の選出方法や研修などの受講に関する事項

ⅳ反社会的勢力から不当要求があった場合の対応方法
・不当要求の手口、事例
・心構え、現場での対応方法
・連絡、報告、相談の方法の一連の流れ
・反社会的勢力対応担当部門の対応方法

ⅴ反社会的勢力との一切の関係を遮断するための対応方法
・関係の発見方法、発見した場合の社内の連絡報告体制
・関係の遮断方法、遮断のための社内の連絡報告体制
・反社会的勢力対応部門の対応方法


6.について、反社会的勢力排除の協力者として、警察・弁護士・暴力団追放運動推進センター(暴追センター、暴追県民会議)・社団法人警視庁管内特殊暴力防止対策連合会(特防連)・各地の企業防衛対策協議会等(企防協)・弁護士会民事介入暴力被害者救済センターなどがあります。いざという時に迅速に協力して対応できるように、日頃から信頼関係を構築しておきましょう。

コラム:反市場的勢力とは?その対応は?

反市場的勢力についても、上場準備会社の資本政策上、外部株主を入れる場合には属性を慎重に確認する必要がある等、留意が必要です。

反市場的勢力とは、市場の健全性を保つ為に過去に株式売買等で事件を起こした人や、架空の増資、株価の操縦、インサイダー等の疑惑が出る等、株式市場を荒らし、健全性を毀損するような投資者等をいいます。もっとも、反市場的勢力は具体的に定義されているものではなく、個人の属性に係るものですから、具体的に反市場的勢力といえるか等については、証券会社等と十分検討する必要があります。


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