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著作物を自由に使える場合とは?侵害の責任についても解説


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「著作権と私的使用の限界」
について、詳しくご解説します。

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著作物を自由利用する際の注意点

確認の手順

著作物は、著作権法により保護されており、これを侵害する場合には以下で述べるように、民事上又は刑事上の責任を負うこととなります。
そこで、著作物を利用しようと考えた場合には、以下の手順で著作権として保護されているかを検討するべきです。



まずは、著作権法において著作物として保護されているか(著作権法6条、以下「法」といいます。)について確認するべきです。
著作物として保護されていないのであれば、著作権の侵害というものを観念できないからです。


次に、著作物に該当する場合には、保護期間について確認しましょう。保護期間を経過していれば、著作権の侵害とはならないため、私的に使用することができます(法51条2項)。

ただし、著作者人格権は永久的に保護されるため(※)、使用方法には注意をしましょう。
※著作者が個人の場合、著作者人格権については、著作者が生存中はもちろん、死後も保護されます(法60条)。他方で、著作者が法人の場合は、解散や破産手続によって法人格が消滅するまで保護されます。


著作物の保護期間が経過していない場合には、著作権法上、自由に利用できるための要件を満たすかについて確認しましょう。著作権法上、自由に利用することが認められている場合には、著作者の許諾なく利用することができます。

本記事は、著作物の私的使用の限界がテーマであるため、以下では、この点について焦点を当てて解説をしていきます。


上記①、②、③の確認を経た結果、著作権法上、私的使用が認められない著作物の場合には、著作権者からの許諾を得ることが必要となります。

著作物について

著作物は、著作権法により法的な保護が与えられています(法6条)。

著作権法で保護されている「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます(法2条1項1号)。
例えば、小説や、研究論文、絵画や曲などが著作物の典型です。

上記の要件を備えない場合、著作権法上の著作物に該当せず、その場合には、著作権法上は保護されませんので、作成した者の許可なく使用することができます(但し、不正競争防止法その他の法律上、使用が違法となる場合もあります)。

著作物の保護期間について

著作物に該当する場合であっても、その保護期間を過ぎれば、著作権は消滅しするので、著作権者の許諾なく使用したとしても、著作権侵害には該当しません。
著作権の保護期間は、著作物の創作の時に始まり(法51条1項)、原則として、著作者の生存年間及びその死後70年を経過するまでの間です(法同条2項)。

著作権法上、著作物が自由に使える場合

概要

著作権法上、保護されている期間では、原則として著作権者の許可なく使用することはできません。
もっとも、著作権法上においては、著作物を自由に利用が許されている場合があり、それに該当する場合には例外的に著作権者の許可なく著作物を使用することが認められています。

この点については、文化庁のウェブサイトにまとめられているので、ご参考にしてください。

私的使用について

以下では著作権法上、著作物が自由に使える場合のうち、「私的使用のための複製」について取り上げます。

問題となる場面

中小企業において、著作物を自由に利用しようとする場合に問題となるのが私的使用のための複製(法30条1項)に該当するかどうかという問題です。
そこで、法30条1項を取り上げて具体例的な場面を想定し、私的使用の要件の解釈について説明します。

例えば、企業における業務の過程において、業務に関連する記事等を印刷して社員間で配布する場合があるかと思います。

法30条1項の趣旨

著作権法は、私的使用に該当する場合には、著作権を害することなく複製を作成することを認めています(法30条1項柱書)。
この規定が正当化される根拠は、個人的な私的領域における活動の自由を保障する必要があること、及び、法30条で認められているような軽微な利用にとどまる場合には、たとえそれを認めたとしても著作権者への経済的な不利益が少ないことにあるとされます。

私的使用における複製として典型的なものは、家庭内で視聴するためにハードディスクレコーダーに録画する場合などが挙げられます。
自分で購入したCDを携帯端末機器にて再生できるようにする場合なども含まれます。

私的使用の該当性

そもそも、著作権法上、私的使用のための複製とは、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲において使用することを目的とする使用をいいます(法30条1項柱書)。 

ところが、社内において、業務利用するために著作物を複製する行為は、個人的又は家庭内という文言に該当しません。
裁判例においても、企業その他の団体において、内部的に業務上利用するために著作物を複製する行為は、その目的が個人的な使用に当たるとはいえず、かつ、家庭内における使用に当たるとはいえないと判示したものがあります(舞台装置事件、東京地判昭52年7月22日)。

公共財団法人著作権情報センターの回答でも、企業の業務において自分自身一人のために印刷する場合にも、この要件に該当しないとして、著作権侵害に該当するとの回答をしています。
公共財団法人著作権情報センターの回答


ただし、この点について最高裁判所の判例により確定されているものではありません。
「これに準ずる限られた範囲内」という解釈をするにあたって、現在の企業においては社内の会議用資料や研究用の参考資料として、文献を必要な程度においてコピーして配布されることが多いことや、利用者が権利者に許諾を求めることが困難なことも多いという実情を踏まえ、上述した法30条の趣旨にも鑑み、会社内において小規模で同部署の者数名が利用する場合には、「その他これに準ずる限られた範囲内」に当たるという解釈も可能と考えられなくもないのです。

もっとも、「家庭内」に準ずるものである必要があることから、構成するメンバーの相互の間には、強い個人的結合関係が前提に存在すること及びグルーブが小規模である必要があるというところに注意が必要です。

したがって、同じ部署において、数人程度であれば法30条に該当し私的利用が認められるとする考え方も全く理由がないともいえないでしょう。

ただし、仮に法30条1項の要件が充足しないと判断された場合には、後述する不法行為に基づく損害賠償請求等がなされる恐れがあります。
この点は、ご自身の判断にて行動をする必要があります。

著作権者からの許諾

「著作物の保護の有無」、「著作物の保護期間」、「著作権法上、著作物が自由に使えるか」、「著作権者の許諾」について確認した結果、著作物を自由に使える場合でなければ、著作権者から著作物の利用について許諾を得る必要があります。
もっとも、著作権者からの許諾を得ようとしても、その者が不明であるという場合もあるかと思います。
そこで、法は、著作権者が不明である場合には、裁定制度を利用し著作物を使用することができるように設計しています。

裁定制度とは、著作権者の住居が不明な場合や、そもそも著作権者が不明な場合に、文化庁長官の裁定を受け、これを著作権者の許諾に代える制度です。

裁定には、著作物の使用料に相当する額を供託する必要があります。
供託とは、法令の規定により金銭や物品等を供託所または一定の者に預ける行為を言います。

裁定制度の詳細については、文化庁のホームページをご参照ください。

著作権を侵害した場合どのような問題が生じるのか

著作権を違法に侵害した場合に、どのような法的問題が生じるのかについて、確認しましょう。

差止請求(著作権法112条1項)

著作権を侵害した場合には、著作権者からの差止請求がなされることがあります(著作権法112条1項)。

差止請求は
●現在の著作権を侵害している行為をやめるように求める請求
と、
●将来生ずるおそれのある著作権の侵害を予防するための請求
に分けられます。

この差止請求が認められると、著作権の侵害行為をすることができなくなります。差止権利者が差止請求を得た場合には、これを債務名義として、間接強制(民事執行法22条1号)を行うことができます。

債務名義とは、強制執行によって実現されるべき請求権の存在及び内容を公証する文書を言います。
つまり、これがあれば執行機関が債権者の主張する権利が存在することを前提として行動できるようになります。

間接強制とは、強制執行の一種であり、債務者に対して債務の履行がなければ一定の金額を支払うことを命じることで債務の履行を強制する制度になります。著作権が侵害されている事件で考えれば、侵害状態をやめない限り、一定の額の金銭を支払い続けなければならないということになります。

差止請求権の要件は、「著作権、著作人格権」等が「侵害または侵害されるおそれ」があることです。
債務者の故意や過失は要件とされていません。

不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)

民事上の請求としては、差止請求の他に不法行為に基づく損害賠償請求権があります。
① 「故意または過失」があり、
② 「他人の権利または法律上の保護される利益を侵害したこと」があり、
③ 損害が発生していること、
④ ②と③の間に因果関係が存在する必要
があります。

故意は結果発生の認容という意味であり、認定としては難しくありません。
他方、過失は個別具体的な事案に応じて、侵害行為者に過失が存在するかを確認しなければならないことから、過失の認定には難しさが伴います。

実際に、過失が認められた事案としては、著作物の存在を認識しながら、著作権者に確認を怠った判決があります。

刑事上の責任

著作権侵害には、刑事罰も設けられています。
著作権、出版権又は著作隣接権の侵害行為に対しては、侵害行為者に10年以下の懲役もしくは、1000万円以下の罰金または、懲役と罰金を併せて適用される場合があります(法119条1項)。

刑事責任は、特別な規定(過失犯処罰規定)が存在しない場合には、故意責任が原則となっています。
著作権法においては、著作権侵害について過失犯処罰規定を設けていないため、民事上の責任と異なり、過失が認められる場合でも故意が認められない限り刑事責任は負いません。

まとめ

著作権侵害には、民事上及び刑事上の責任が生じます。
他人の著作物を使用する場合には、本記事に記載したステップに倣い、適法に利用できるか確認することをおすすめします。


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