澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談を承っております。
本記事では、
「健康食品と化粧品の薬機法における広告規制について」
について、詳しく解説します。
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薬機法における化粧品の広告規制
化粧品とは
薬機法における「化粧品」は、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚や毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布等する方法で使用するものをいい、医薬品や医薬部外品は除きます。
そのため、身体を清潔・美化等するものであっても、医薬品的な効能効果を表示したような場合、医薬品又は医薬部外品等と判断されます。
例えば、「肌荒れ・荒れ性」、「にきびを防ぐ」、「皮膚の殺菌」などの効能・効果が表示されている場合、「医薬部外品」であり「化粧品」ではありません。このような品は、医薬部外品の中でも、いわゆる薬用化粧品として規制対象となります。
また、「化粧品」の使用方法が、身体に塗擦、散布等とされているため、内服するものは、美容目的であっても医薬品、医薬部外品又は食品に分類されます。
さらに、「化粧品」の製造や製造販売を行う為には許可が必要ですが、小売販売について許可は必要ありません。そのため、化粧品の販売は、一般の店舗でも可能です。
なお、「医薬部外品」は、人体に対する作用が緩和な、口臭スプレー、発毛剤や殺虫剤などに加え、医薬品のように治療・予防を目的とするものも含まれます。医薬部外品に対する規制は、医薬品に比べて緩やかで、薬局や店舗販売業等の許可を受けなくても販売することが可能です。
化粧品の広告規制
では、化粧品の広告は、薬機法上、どのように規制されているのでしょうか。
この点、基本的には医薬品と同様です。
化粧品の場合も、医薬品と同じく、名称、製造方法、効能、効果、性能に関し、明示的、暗示的問わず虚偽誇大な広告は禁止されています(薬機66条1項)。
そして、「広告」に該当するか否かは、医薬品と同じく、広告3要件を満たすか否かで判断されます(平10・9・29医薬監148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」)。
【広告3要件】
- 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確にあること(誘引性)
- 特定食品の商品名等が明らかにされていること(特定性)
- 一般人が認知できる状態であること(認知性)
また、医薬品等の広告についての監督指導は、厚生労働省が公表している「医薬品等適正広告基準」に基づいて行われており、「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」では、これらの基準の具体的な解釈が示されています。ここまでの点については別記事「薬機法で禁止される医薬品等の広告表示を押さえよう」で詳しく説明していますので、ご参照ください。
しかし、この医薬品等適正広告基準等において、化粧品の規制について、医薬品と一部異なる基準が示されています。どのような点が異なるのでしょうか。
化粧品の広告に関しての特徴の概要は以下のとおりです。
① 愛称の使用
医薬品及び再生医療等製品については、愛称の使用が禁止されています。しかし、化粧品の場合、広告の前後の関係等から総合的にみて、同一性を誤認させるおそれがない場合、愛称を用いることができます。
但し、販売名に使用することが認められないものを愛称とすることはできないとされています。
② 効能効果の表現の範囲
承認を要しない化粧品の効能効果の表現は、「化粧品の効能の範囲の改正について」(平23・7・21薬食発0721第1号厚生労働省医薬食品局通知)に定められた範囲を超えることはできません。なお、数種の化粧品を同一の広告文で広告する場合は、それぞれの化粧品の効能効果の範囲を逸脱しないように注意することが必要です。
・頭皮、毛髪を清浄にする。
・香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
・頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
・毛髪にはり、こしを与える。
・頭皮、毛髪にうるおいを与える。
・頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
・毛髪をしなやかにする。
・クシどおりをよくする。
・毛髪のつやを保つ。
・毛髪につやを与える。
・フケ、カユミがとれる。
・フケ、カユミを抑える。
・毛髪の水分、油分を補い保つ。
・裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
・髪型を整え、保持する。
・毛髪の帯電を防止する。
この他、メーキャップ効果や使用感を表示することは、事実に反しない限り、認められます。基礎化粧品等の場合も同様です。
「化粧くずれを防ぐ」
「小じわを目立たなく見せる」
「みずみずしい肌に見せる」 等
・使用感の例
「清涼感を与える」
「爽快にする」 等
③ 指定成分・香料
指定成分・香料というのは、旧厚生省が「使う人の体質によってごくまれにアレルギー等の肌トラブルを起こす恐れのある成分」として定めたもので、医薬部外品(薬用化粧品を含む)において表示が義務づけられています。
化粧品の場合は成分をすべて表示することが求められていますが、「肌のトラブルの原因になりがちな指定成分・香料を含有していない」等の表現をすると、不正確で、それらの成分を含有する製品の誹謗につながるおそれもあります。そのため、「指定成分、香料を含有していない」旨の広告にとどめ、「100%無添加」、「100%ピュア」等のごとく必要以上に強調しないものとされています。
④ 特定成分の表示
化粧品については、成分をすべて表示することが求められています。
しかし、特定の成分のみを目立つように表示するようなことは、原則として認められません。その特定の成分を目立たせることで、通常の化粧品より効果や安全性が成分的に優れているような誤解を与え、また、それが主成分であるとの誤解を与えかねないからです。
ただし、特定成分に配合目的を併記するなど、誤解を与えないように表示することは認められます。
具体的には、〇の表示は可能ですが、×の表示は認められません。
〇 うるおい成分アロエエキスを配合。
× アロエエキスを配合した化粧水です。
× ビタミンA、Dが肌あれを防ぎます。
〇 ビタミンC(製品の酸化防止剤)配合のクリームです。
(昭和60年9月26日薬監第53号〔厚生省薬務局監視課長通知〕「化粧品における特定成分の特記表示について」により)
薬用化粧品の広告規制
では、医薬部外品となる薬用化粧品の広告はどのように規制されているのでしょうか。
この点、薬用化粧品は「医薬部外品」に該当し、医薬部外品として人体に対する緩和な薬理作用を期待できます。そして、品目ごとに承認を受けます。そのため、承認された範囲内の効能効果で広告することが原則です。
「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」において、品目毎の効能・効果の範囲が定められています。
例えば、シャンプーは、次の効能・効果が認められています。
・毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。
・毛髪・頭皮を清浄にする。
・毛髪・頭皮をすこやかに保つ。
・毛髪をしなやかに
では、薬用化粧品に分類されるシャンプーの表示として、化粧品であるシャンプーで表示が認められた効能の「裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。」と表示することはできるのでしょうか。この点、以下の事項に配慮すれば種別に対応する化粧品の効能効果も表現することができるとされています。
医薬部外品本来の目的が隠ぺいされて化粧品であるかのような誤解を与えないこと。
② 化粧品的な使用方法等について
化粧品的な使用目的,用法で使用された場合に保健衛生上問題となるおそれのあるもの(殺菌剤配合のシャンプー又は薬用石けんなど)ではないこと。
③ 効能効果について
当該効能効果が医薬部外品の効能効果として承認を受けたものであるかのような誤認を与えないこと
その他の広告規制
化粧品に関する広告の規制としては、薬機法以外に景品表示法、公正競争規約(化粧品公正取引協議会)、業界の自主規制などがあります。これらの規制にも注意が必要です。
薬機法による健康食品の広告規制
健康食品とは
健康食品とは何かというと、法律上の定義はありません。
法律上、飲食物は食品か医薬品等のいずれかに分けられます(食品衛生法4条)。この医薬品等に該当しない食品のうち、健康の保持増進に役立つとされる食品が一般的に健康食品と呼ばれています。
このように、健康食品は医薬品ではありません。しかし、医薬品ではないのに、医薬品的な効能効果を標ぼうした場合には、原則として、無承認の医薬品の販売・広告(薬機法14条、68条)等と判断され、薬機法違反となります。つまり、健康食品は、医薬品的な効能効果を標ぼうしない限り、薬機法の規制の対象外です。
ただし、健康増進法第 65 条第1項は、錠剤やカプセル形状の食品のみならず、野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに一般の食品と認識される物を含め、食品として販売に供する物に関し、健康保持増進効果等について虚偽誇大な表示をすることを禁止しており、薬機法以外への注意も必要です。
なお、健康食品のなかでも、保健機能食品については、食品の機能を表示することができます。保健機能食品とは、国が定めた安全性や有効性に関する基準に従って食品の機能を表示する食品をいいます。この保健機能食品には、栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品の三種類があります。
この、医薬品的な効能効果を標ぼうした健康食品の表示が、薬機法上の規制対象となる広告に該当するか否かは、広告3要件を満たすか否かで判断されます。
また、監督指導は厚生労働省が公表している「医薬品等適正広告基準」に基づいて行われ、「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」で具体的な解釈が示されている点など、化粧品と同様です。この点、別記事「薬機法で禁止される医薬品等の広告表示を押さえよう」で詳しく説明していますので、ご参照ください。
特定の成分の効果の一般論の紹介と健康食品の広告
前述のとおり、医薬品的な効能効果を標ぼうした健康食品の表示が広告と判断されるか否かは、次の観点(いわゆる広告3要件)から実質的に判断されます。
【広告3要件】
- 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確にあること(誘引性)
- 特定食品の商品名等が明らかにされていること(特定性)
- 一般人が認知できる状態であること(認知性)
では、次のようなケースは薬機法の規制対象となるのでしょうか。
【Q1 特定の成分の効果の情報紹介と健康食品の広告】
効能や効果を記載していない健康食品の広告と、特定の成分の効果などについて一般論の情報を表示する場合、全体が健康食品の広告と判断されるのでしょうか。
A
この場合に問題となるのは、広告3要件を実質的に満たすかどうかです。
厚生労働省は、景品表示法や健康増進法上の「表示」に該当するか否かの判断にについて、「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)に係る留意事項」で、「特定の食品又は成分の健康保持増進効果等に関する書籍や冊子、ホームページ等の形態をとっているが、その説明の付近に当該食品の販売業者の連絡先やホームページへのリンクを一般消費者が容易に認知できる形で記載している」ものは景品表示法及び健康増進法上の「表示」に該当するとしています。
これは、商品名を広告等において表示しない場合であっても、広告等における説明などによって特定の商品に誘引するような事情が認められるからです。
つまり、一般消費者が容易に認知できる形で特定の成分の効果などを記載している場合には、一般人が認知できる状態であり、かつ、顧客を誘引する意図が明確であると認定される可能性があります。
従って、その健康食品の効能効果として表示していなくても、特定の成分の情報と広告が一つの紙面や画面に表示されている場合や区別がわかりにくいような場合、特定成分に関する情報を併せて一つの広告として判断される可能性があります。
そして、健康食品の広告と、その健康食品に含まれる特定の成分の効能効果の表示が一体と判断された場合には、未承認医薬品の広告を禁止する薬機法68条に違反することになります。
【Q2 効能効果を記載したリンクを貼ることの適法性】
健康食品の広告をインターネット上でしたいのですが、その広告ページに効能や効果を記載してはいけないことはわかりました。では、別のページで効能効果をうたい、広告ページからリンクできるようにした場合、薬機法上の規制対象となりますか。
A
この場合も、問題となるのは、広告3要件を実質的に満たすかどうかです。
Q1のAでも説明したとおり、厚生労働省は、景品表示法や健康増進法上の「表示」に該当するか否かの判断にについて、「特定の食品又は成分の健康保持増進効果等に関する書籍や冊子、ホームページ等の形態をとっているが、その説明の付近に当該食品の販売業者の連絡先やホームページへのリンクを一般消費者が容易に認知できる形で記載している」ものは景品表示法及び健康増進法上の「表示」に該当するとしています。これは、商品名を広告等において表示しない場合であっても、広告等における説明などによって特定の商品に誘引するような事情が認められるからです。
つまり、一般消費者が容易に認知できる形で健康食品の効能効果などを記載している場合、一般人が認知できる状態で、かつ、顧客を誘引する意図が明確であると認定される可能性があります。
この点、商品の販売ページに、検索サイトで『〇〇 △△』と検索すると体験談やモニター情報が表示される旨を記載し、検索結果として表示されたサイトで医薬品的な効能効果を表示した業者の社長らが薬機法違反で逮捕された事例もあります。
従って、健康食品の広告ページに効能効果を表示していなくても、リンク先で効能効果を標ぼうしている場合、一つの広告と判断される可能性が高いと考えられます。そして、この場合、未承認医薬品の広告を禁止する薬機法68条に違反することになります。
【Q3 効能効果と健康食品名のある新聞・雑誌等の記事の適法性】
よく新聞や雑誌等に、特定の成分の効能や効果を紹介し、その成分が含まれている商品名を紹介するような記事が掲載されていることがあります。このような記事は、薬機法上で禁止されている広告にあたらないのでしょうか。
A
この場合も、問題となるのは広告3要件を実質的に満たすかどうかです。
新聞や雑誌等で特定の商品名を記載した記事をのせる場合、②特定性と③認知性の要件は当然、充足すると考えられます。
次に①誘引性の判断が問題となりますが、裁判例には、誘引性について、その行為の体裁、内容等を客観的にみて、顧客誘引のための手段としての性質を有するものであるかという客観的側面を問題にするのが相当としているものがあります(東京地判平29年3月16、裁判所ウェブサイトより)。
このような基準で検討すると、現在の消費の傾向や消費者の動向を読者に知らせるために商品を紹介しているのであれば、誘引性が認められない可能性があると考えられます。他方で、新聞等のメディアが、当該記事を、商品の販売者などから依頼を受け、販売者などが費用負担をして掲載している場合には、誘引性が認められる可能性が高いです。
また、一商品のみを紹介しているのか、複数の商品を紹介しているのか、記事上に当該商品の販売ページへのリンクが貼られているか等によっても誘引性の判断は異なってくると考えられます。
そして、誘引性が認められる場合には、無承認医薬品の広告として規制対象となります。
インターネット上の無承認医薬品等の広告の監督
ここまでみてきたとおり、化粧品や健康食品について、医薬品的な効能効果を標ぼうした場合には、無承認医薬品の広告(薬機法68条)として規制されることになります。
では、無承認医薬品の広告がされている場合、どのように監督されるのでしょうか。
まず、厚生労働省や都道府県は、68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)に違反すると疑われる行為を探知すると調査を開始します。
厚生労働省等の調査により必要があれば行政指導をします。実際には、無承認医薬品の広告を発見した場合には、広告を中止する等の指導がされます。
それでも指導に従わない場合には、広告をした者に弁明の機会が与えられた上で、措置命令が出されます。
この措置命令とは行政処分の一つで、法令に違反した者に対して、違反行為の中止や再発防止に足りる措置を命じるもので、その内容は次の通りです。
- 違反広告の中止
- 違法行為の再発防止に必要な事項又はこれらの実施に関連する公示
- その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置
また、厚生労働大臣又は都道府県知事は、違反する広告を掲載しているウェブページや電子掲示板等のプロバイダ等のサービス提供者に対し、送信を防止する措置を要請することができます(薬機法72条の5第2項)。
このように、違反が発覚した場合、事前に調査や行政指導があり、弁明の機会も設けられますので、調査や行政指導があった場合には、専門家とともに対策することが重要です。
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景品表示法・薬機法その他広告法務
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