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薬機法の広告規制に違反するとどうなるの?行政処分・措置命令・課徴金・刑事罰についても解説!

Q
薬機法の広告規制に違反した場合、何か不利益があるのでしょうか。行政処分や刑事罰はありますか。

A
薬機法(正式には『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』といいます。)は、国民の健康と安全を守るために、医薬品や医療機器の品質・有効性・安全性を確保し、適切な情報提供を行うことを目的に、医薬品や医療機器等の製造過程の品質管理や製造許可の取得、販売業者の登録、広告や表示に関する規制、副作用の報告などを定めています。

このように、薬機法は国民の健康と安全を守るために重要な規制をしているため、広告や表示に関する規制に違反する行為に対しては、行政処分のみならず刑事罰も定められています。

では、薬機法に違反した場合にどうなるのか、以下で詳しく見ていきましょう。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談を承っております。

本記事では、
「薬機法の広告規制に違反するとどうなるの?行政処分・措置命令・課徴金・刑事罰についても解説!」
について、詳しく解説します。

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薬機法と薬機法の広告規制とは

薬機法とは

薬機法とは、正式には医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律といいます。医薬品や医療機器の製造・販売・広告・表示に関する規制を定める法律で、国民の健康と安全を守るために、医薬品や医療機器の品質・有効性・安全性を確保し、適切な情報提供を行うことを目的としています。

医薬品等の安全性確保のために、薬機法は、医薬品等の製造販売等に必要な手順、表示・広告などを規制しています。

広告規制

医薬品等の広告について、薬機法66条、67条、68条が規制しています。そこで、具体的に、どのような広告を規制しているのか、確認していきましょう。


どのような製品の広告が薬機法の規制対象ですか?

薬機法で規制される商品は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」といいます。)の5種です。医薬品や医療機器、コスメ、シャンプーなどの化粧品などは、当然に規制対象です。
しかし、健康食品も、医薬品のような効能を表示した場合、薬機法の規制対象となります。そのため、サプリメントなどの健康食品の表示にも規制が及びます。



薬機法の規制対象となる広告はどのようなものですか。

薬機法の規制対象となる医薬品等の広告は、次の①~③の要件を満たすものです(抄、平10・9・29医薬監148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知)。

① 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
② 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
③ 一般人が認知できる状態であること

このような広告のうち、禁止される表現は次のとおりです。

ⅰ 虚偽又は誇大な広告などの禁止(薬機法66条)
名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽または誇大な広告が禁止されます(薬機法66条1項)。
また、効能、効果または性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告等することも禁止されます(同条2項)。
さらに、堕胎を暗示したり、わいせつな文書や図画を使った広告も禁止されています(同条3項)。

ⅱ 特定疾病用として薬機法施行令が定める、がん、肉腫及び白血病に用いる医薬品及び再生医療等製品の一般人に向けた広告の禁止(薬機法67条)

ⅲ 承認前の医薬品等の広告の禁止(薬機法68条)



薬機法の規制対象となる人は誰ですか?広告を掲載するメディアも規制対象となりますか?

広告規制の対象は、「何人も」とされています。そのため、広告を掲載するメディア、広告代理店、アフィリエーター、インフルエンサー、ライターなども広く罰則を含む規制の対象となります。


これらの規制に違反する行為は、行政処分や罰則の対象となります。
では、具体的にどのような処分や罰則があるのか、具体的に見ていきましょう。

行政処分

薬機法の広告規制に違反した場合、行政処分などを受けることがあります。具体的にどのような行政処分があるのか、また、どのような流れで行政処分が行われるのか見ていきましょう。

措置命令(薬機法第72条の5第1項)

薬機法66条1項(虚偽又は誇大広告等の禁止)又は68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)に違反した者に対して、厚生労働大臣又は都道府県知事は措置命令をすることができます。この措置命令は2021年8月に施行された改正薬機法で追加されました。

措置命令とは行政処分の一つで、法令に違反した者に対して、違反行為の中止や再発防止に足りる措置を命じるもので、その内容は次の通りです。

  1. 違反広告の中止
  2. 違法行為の再発防止に必要な事項又はこれらの実施に関連する公示
  3. その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置

具体的な命令の内容例は、次のようなものがあります。

  • 違反したことを医薬関係者及び消費者に周知徹底すること
  • 再発防止策を講ずること
  • その違反行為を将来繰り返さないこと 等

特に、違約関係者や消費者に違反したことを周知させることは、製品や企業の信頼や評価に与える影響は多大で、違反広告を抑止する効果も高いと考えられます。

また、薬機法66条1項(虚偽又は誇大広告等の禁止)又は68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)に違反する広告としてウェブページや電子掲示板等の不特定の者に受信されることを目的とするような電気通信(特定電気通信)による情報の送信がある場合、特定電気通信サービスを提供した者に対して、厚生労働大臣又は都道府県知事は送信を防止する措置を要請することができます(薬機法72条の5第2項)。

課徴金納付命令(薬機法第75条の5の2)

ア 概要

薬機法66条1項(虚偽又は誇大広告等の禁止)に違反する行為をした者に対して、厚生労働大臣は、課徴金納付を命じなければならないとされています(薬機法75条の5の2)。

課徴金の金額は、課徴金対象行為をした期間の医薬品等の売上金額の4.5%に相当する額です。この課徴金対象行為をした期間というのは、次の①または②の期間です。

  1. 課徴金対象行為(虚偽・誇大広告等)をした期間 
  2. 課徴金対象行為をやめた日から、(a)又は(b)の日のうち早い日までの間に、その課徴金対象行為にかかる医薬品等の取引をした場合は、①の期間(課徴金対象行為をした期間)に、最後に取引をした日までの期間を加えた期間(最長3年間)
    (a)6か月を経過する日
    (b)当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置をとった日
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(厚生労働省 医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課「課徴金制度の導入について」14頁より引用)

イ 例外

この課徴金納付命令の規定には例外があります。

まず、業務改善命令等をする場合であって、保健衛生上の危害の発生または拡大に与える影響が軽微な場合課徴金の納付を命じないこともできます(薬機法75条の5の2第3項)。

また、課徴金対象行為に係る商品又は役務の売上額が5000万円未満の場合(課徴金額が225万円未満の場合)課徴金納付を命じることができません(薬機法75条の5の2第4項)。

ウ 課徴金の減額

薬機法の課徴金が減額される場合もあります。

まず、薬機法66条1項(虚偽又は誇大広告等の禁止)に違反する広告を行った者が、虚偽・誇大広告を行った事実を厚生労働省令で定めるところにより自発的に厚生労働大臣に報告した場合課徴金額の50%が減額されることとなっています(薬機法75条の5の4)。

次に、薬機法66条1項(虚偽又は誇大広告等の禁止)に違反する広告は、同時に不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます。)にも違反することもありますが、この場合、景表法でも課徴金納付命令の定めがあることから、薬機法上の課徴金と重複して納付を命じられるのか問題となります。

この点、薬機法75条の5の3は、虚偽・誇大広告について景表法上の課徴金納付命令がある場合景表法上の課徴金額である医薬品等の対価の額の3%を控除するものとしています。

行政処分の流れ

では、行政指導や行政処分、課徴金納付命令はどのような流れで行われるのでしょうか。厚生労働省の公表しているこちらの図を見ながら、流れを追っていきましょう。

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(厚生労働省 医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課「課徴金制度の導入について」18頁より引用)


厚生労働省や都道府県は、薬機法66条1項(虚偽又は誇大広告等の禁止)又は68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)に違反すると疑われる行為を探知すると、調査を開始します。

厚生労働省等の調査により必要があれば行政指導をします。
具体的には違法状態になっている内容を改めて正しくするように命じ、報告書の提出を求めるなどの指導があります。

また、業務改善命令や措置命令、業務停止命令、許可・登録の取り消しなどの行政処分の必要があれば、違反を疑われる広告をした者に弁明の機会が与えた上で、行政処分をします。

さらに、薬機法66条1項(虚偽又は誇大広告等の禁止)違反については、売上げ額について報告を求めたり、立ち入り検査などを行い、課徴金納付命令の除外理由がなければ弁明の機会を付えた上で課徴金納付命令をします。

このように、違反が発覚した場合、突然、課徴金納付命令がくるわけではありません。事前に調査や行政指導があり、弁明の機会も設けられますので、調査や行政指導があった場合には、専門家とともに対策することが重要です。

刑事罰

医薬品等についての広告規制として、刑事罰も設けられています。
次の①~③の違反をした者に対して、2年以下の懲役または200万円以下の罰金のどちらかまたは両方が科されます(薬機法85条)。
また、法人の業務に関して法人の代表者や従業者などが違反行為をした場合、その法人についても、200万円以下の罰金刑が科されます(薬機法90条2号)。

  1. 医薬品等について虚偽又は誇大広告等(薬機法66条1項)
  2. 医薬品等について堕胎を暗示したり、わいせつな文書や図画を使った広告等(薬機法66条3項)
  3. 承認前の医薬品等の広告(薬機法68条)

なお、この罰金刑は、課徴金の納付命令と重複することもあります。

事実上の不利益

薬機法の広告規制に違反した場合、行政処分や刑事罰だけではなく、事実上の不利益を被ることもあり、事業に大きな支障がでる可能性もあります。そこで、予想される事実上の不利益を見ていきましょう。

消費者の信頼低下

薬機法違反があった場合、消費者の信頼を損なう要因となります。誤解や失望を招くことで、企業やブランドの評判に悪影響を及ぼす可能性があります。消費者は信頼できる企業や商品を選ぶ傾向があり、薬機法違反は企業の信頼性を低下させる結果となることがあります。

損害賠償請求・返金請求や訴訟

薬機法違反によって個人や企業が損害を受けた場合、損害賠償請求をすることが考えられ、訴訟に至ることもあります。例えば、承認を受けていない医薬品等を医薬品等のような効果や効能があるという表示して販売した場合、契約無効や取消しを主張して返金を求められることや、健康被害が生じた場合には損害賠償請求を受けることがあります。

企業のとるべき対策

薬機法に違反する広告や表示をした場合、行政指導や措置命令のみならず、課徴金納付を命じられることや、罰金や、最悪の場合には逮捕される可能性もあります。このような事態にならないために、薬機法に違反しないようにしなければなりません。
では、どのように対策を立てていけばよいのでしょうか。薬機法に違反しないためのポイントは次の①~③です。

  1. 自社製品に関係する規制を把握すること
  2. 広告規制の法令・ガイドラインを遵守する組織・体制の整備
  3. 弁護士などの専門家への相談

順に確認していきましょう。

① 自社製品に関する規制を把握すること

医薬品等を販売する場合や医薬品等の広告をする場合、必ず、広告規制の内容や基準を把握し、表示が規制に違反しないか確認しましょう。

広告規制を把握する方法としては、厚生労働省ホームページの「医薬品等の広告規制について」で公表されている「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」などのガイドラインを理解しておくことが重要です。この点、別記事「薬機法で禁止される医薬品等の広告表示を押さえよう」をご参照ください。

また、自社が販売等している製品について医薬品等のような効能や効果などを表示する場合には、薬機法違反となりうることを理解しておくことも忘れてはいけません。景表法違反とならないような表現であっても、薬機法違反となる可能性もあります。人の健康や安全に関わる表示を行う際には細心の注意が必要なのです。

② 広告規制の法令・ガイドラインを遵守する組織・体制の整備

医薬品等の広告規制やガイドラインを把握できたら、広告規制を遵守できる組織・体制を整備していく必要があります。

この点、同じく広告を規制する景表法における不当表示等を未然に防止するために必要な措置について、消費者庁は「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」を公表しています。7つの指針が示され、具体的な措置の例も挙げられており、薬機法違反となる表示を防止するための組織・体制整備にも参考になります。

【「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」が列挙する7つの指針】

  1. 景品表示法の考え方の周知・啓発
  2. 法令遵守の方針等の明確化
  3. 表示等に関する情報の確認
  4. 表示等に関する情報の共有
  5. 表示等を管理するための担当者等を定めること
  6. 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
  7. 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応

具体的には、
薬機法の考え方を従業員のみならず、広告表示に関わる取引先にも周知すること
社内マニュアルを作成すること
製品の広告表示をする場合には薬機法違反とならないか確認するという過程を経るようにすること
などが考えられます。

③ 弁護士などの専門家への相談

このように企業内での対策を講じても、個々の案件について薬機法に違反しないか否かを判断することが難しい場合もあります。また、自社に適した効果的な違反防止対策を、どうやって講じたらよいのかわからない場合もあると思います。薬機法などの表示規制は多岐にわたり、また、改正が多く、正しく理解することは難しいのが現状です。

そこで、薬機法違反による不利益を被らないために、薬機法などの表示規制について多くの知識と経験のある弁護士に相談し、自社の事案に即した対応についてアドバイスを求めることをおすすめします。

まとめ

このように、薬機法に違反する広告をした場合には、措置命令や課徴金、さらには2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはそれらの併科という罰則の定めもあります。

行政処分や罰則が適用された場合、それ自体の不利益もさることながら、製品や企業に対する信頼や評価に多大な悪影響を及ぼす可能性があります。違法な広告をすることのないよう、組織体制の整備や広告表示の内容の適法性の判断に際し、専門家のアドバイスを受けるなど、十分な対策をしていきましょう。


【サービス紹介】
景品表示法・薬機法その他広告法務

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