澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談を承っております。
本記事では、
「薬機法とは?2021年改正法についても弁護士が解説!」
について、詳しく解説します。
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薬機法とは
概要と目的
薬機法とは、簡単に言うと、医薬品や医療機器の製造・販売・広告・表示に関する規制を定める法律です。正式には『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』といいます。
薬機法は、国民の健康と安全を守るために、医薬品や医療機器の品質・有効性・安全性を確保し、適切な情報提供を行うことを目的としています。
薬事法との関係
薬事法(やくじほう)とは、簡単に言うと改正前の薬機法(やっきほう)です。
薬機法は『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』の略称です。
薬機法は、もともと薬事法という名称の法律でした。しかし、平成25年に名称変更を伴う改正がされ、平成26年11月に施行されました。なお、薬機法は略称ですが、薬事法は略称ではありません。
薬事法の「薬事」には、一般に、医薬品等のほか、麻薬等の薬物、毒物・薬物、薬剤師に関する事項も含まれていますが、麻薬等の薬物、毒物・薬物、薬剤師に関する事項は、薬事法による規制対象外でした。
他方で、医療機器は「薬事」の概念に含まれていないものの、薬事法による規制対象となっていました。
そのような事情から、法律の名称から内容を誤解させないよう、名称変更されたのです。
規制の対象と内容
薬機法は、
①医薬品等の品質・有効性および安全性の確保
②希少疾病用医薬品・医療機器・再生医療等製品への規制
③指定薬物制度
を定めています。
特に重要な①医薬品の品質・有効性および安全性の確保に関する規制の対象は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の5つです。
これらの各製品について、製品そのものの規制、製造者に対する規制、製品の販売者に対する規制、製品の販売後の安全対策が定められています。その他、製品の安全性の確保のため、製品の表示や添付文書、広告等も規制されています。具体的な規制内容としては、医薬品や医療機器等の製造過程の品質管理や製造許可の取得、販売業者の登録、広告や表示に関する規制、副作用の報告などがあります。
薬機法の対象となる者は、医薬品、医薬部外品、化粧品や医療機器等の製造業者・販売業者・広告業者などです。
改正薬機法について
薬機法は、前述のとおり2014年11月に薬事法から名称とともに改正されたものですが、その後も多くの改正がなされています。そのため、改正の動向を確認することがとても重要です。
2021年8月1日施行の改正薬機法
2021年8月1日施行の改正薬機法による主な変更点は次の3つです。
・変更計画に沿った医薬品等の製造方法等の変更を承認制から届出制に見直し
・医療用医薬品等の添付文書の電子化
(バーコード表示の義務化は2022年12月1日から)
②薬剤師・薬局の見直し
・薬剤師に、必要に応じた患者の薬剤使用状況の把握と服薬指導の義務化
・機能別の薬局の知事認定制度(名称独占)の開始
③信頼確保のための制度改善
・薬局開設者及び医薬品の販売業者等の法令遵守体制の整備の義務付け
・虚偽又は誇大広告等の禁止等違反に対する課徴金制度の創設
特に重要な改正点としては、課徴金制度の創設があげられます。
具体的には、薬機法66条(虚偽又は誇大広告等の禁止)に違反した者に対して、誇大広告・虚偽広告をしていた期間の医薬品等の売上金額の4.5%の課徴金納付命令をできるようになりました。
また、薬機法66条(虚偽又は誇大広告等の禁止)又は68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)に違反した者に対する厚生労働大臣又は都道府県知事による措置命令も改正薬機法で追加されました。
2022年5月20日施行の改正薬機法
2022年5月20日施行の改正薬機法は、緊急時に、安全性の確認を前提に、医薬品等の有効性が推定されたときに、条件や期限付の承認を与える迅速な薬事承認の仕組みを整備するものです。
薬機法の広告規制(第66条、67条、68条)
医薬品等の広告について、薬機法66条、67条、68条によって規制されています。前述のとおり2021年8月1日の改正により、違反した者には、措置命令や課徴金納付命令がでることもありますので、注意が必要です。
広告規制の対象は、「何人も」とされ、広告を掲載するメディア、広告代理店、アフィリエーター、インフルエンサー、ライターなども広く罰則を含む規制の対象となります。
また、薬機法で規制される商品は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の5種であり、健康食品などは、本来、規制対象ではありません。
しかし、健康食品であっても、医薬品のような効能を表示した場合、薬機法の規制対象となります。そのため、医薬品や医療機器、コスメ、シャンプーなどの化粧品のみならず、結果的に、サプリメントなどの健康食品の表示にも規制が及びます。
以下は、薬機法の広告規制の概要です。詳しくは別記事をご参照ください。
誇大広告等の規制
薬機法66条は、名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると 暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な広告などを禁止しています。
1 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告規制
薬機法67条は、薬機法施行令に定めるがん、肉腫及び白血病に用いる医薬品について、一般人に向けた広告を制限しています。
1 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
承認前の医薬品等の広告規制
薬機法68条は、承認前の医薬品等の広告を禁止しています。
何人も、第14条第1項、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
薬機法に違反した場合
法令上の不利益
薬機法は、医薬品等の安全性確保のために、医薬品等の製造販売等に必要な手順、表示・広告などを規制しています。これらの規制に違反する行為については、様々な行政処分や罰則の対象となります。薬機法が設けている罰則の一例をあげてみましょう。
基準適合性認証の業務に関する贈収賄
厚生労働大臣が基準を定めて指定する高度管理医療機器、管理医療機器又は体外診断用医薬品については、登録認証機関が審査をし、製造販売の認証をします(基準適合性認証)。
この基準適合性認証の業務に関する贈収賄は、最長7年間の懲役という罰則が定められています(薬機法第83条の6以下)。収受した賄賂は没収又はその価額を追徴されます。
無許可製造・販売
業として医薬品、医薬部外品又は化粧品を製造販売することは、厚生労働大臣の許可がない限り禁止されています(薬機法第12条、第13条)。また、医療機器又は体外診断用医薬品の製造業については、製造所ごとの登録制とされています(薬機法23条の2の3)。
しかし、これに反した場合、次のような罰則があります。
またはその両方(薬機法第84条第2号)
無許可で医薬品等の製造業 ➡ 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金
またはその両方(薬機法第86条第1項第2号)
無登録で医療機器等の製造業 ➡ 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金
またはその両方(薬機法第86条第1項第5号)
指定薬物規定の違反
指定薬物(薬機法第2条第15項)は、正規の用途以外の用途に供するための製造、輸入、販売、所持などが禁止されており(薬機法第76条の4以下)、禁止規定に違反する行為に対しては罰則があります。具体的には次のとおりです。
またはその両方(薬機法第83条の9)
業としての行為ではない場合 ➡ 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金
またはその両方(薬機法第84条第28号)
医薬品等の取り扱いに関する違反
処方箋医薬品の販売規制違反や販売した場合の帳簿への記載義務違反、違反医薬品の販売等についても、罰則が設けられています。
虚偽表示や誇大表示
医薬品等について虚偽又は誇大広告等をした場合や、承認前の医薬品等の広告をした場合には2年以下の懲役または200万円以下の罰金のどちらかまたは両方が科されます。
また、広告を行った法人についても、200万円以下の罰金刑が科される可能性があります。
なお、薬機法66条(虚偽又は誇大広告等の禁止)又は68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)に違反した場合には措置命令、薬機法66条(虚偽又は誇大広告等の禁止)に違反した場合には課徴金納付命令等の行政処分を受けることもあります。これらの処分の前には、事前に調査や行政指導があり、弁明の機会も設けられます。調査や行政指導があった場合には、専門家とともに対策することが重要です。
事実上の不利益
消費者の信頼低下
薬機法違反があった場合、消費者の信頼を損なう要因となります。誤解や失望を招くことで、企業やブランドの評判に悪影響を及ぼす可能性があります。消費者は信頼できる企業や商品を選ぶ傾向があり、薬機法違反は企業の信頼性を低下させる結果となることがあります。
損害賠償請求・返金請求や訴訟
薬機法違反によって個人や企業が損害を受けた場合、損害賠償請求をすることが考えられ、訴訟に至ることもあります。
例えば、違法な医薬品を摂取したことによる健康被害や、薬事業者の不正行為によって生じた損害に対して補償を求めることができます。また、契約の無効や取消しを主張して返金を求めることもあります。
薬機法における違反行為は、健康に関する分野であるだけに、深刻な経済的および法的な後果をもたらす可能性がありますので、法の遵守は重要です。
ただし、具体的な結果は、法的な評価や状況によって異なる場合があり、個別のケースでは法的なアドバイスを専門家に求めることが重要です。
【サービス紹介】
景品表示法・薬機法その他広告法務
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