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プラットフォームとキャッシュレス決済1~クレジットカード決済~

Q
 当社はECサイトを運営していますがクレジットカード決済を導入しようと考えています。クレジットカード決済の仕組みと法的問題点を教えてください。

A
 クレジットカードによる決済は、カード保有者(会員)から加盟店(ECサイト運営会社)への資金移動をカード会社が介在し、取引後の一定の期日に決済を行う仕組みとなっています。クレジットカード決済には、事業者が多く登場し、紛争が生じた場合には、加盟店(ECサイト運営会社)に支払い義務が生じることもあります。そのため、加盟店は、規約に従い、適切な利用環境を整える必要があります。

はじめに

 インターネットを利用してサイト上の店舗からモノやサービスを購入する場合、クレジットカードを用いることが一般的となっています。
 そこで、以下ではクレジットカード決済について、ご説明いたします。

クレジットカード決済の基本的な仕組み

 クレジットカードによる決済は、カード保有者(会員)から加盟店への資金移動をカード会社が介在し、取引後の一定の期日に決済を行う仕組みとなっています。

 図に示すと、以下のような流れとなっています。

宮本キャッシュレス1

①カード提示・売上表にサイン/暗証番号の入力
②商品・サービスの提供
③売上代金支払
④売上表の送付
⑤利用代金明細書の送付
⑥利用代金の支払(金融機関の決済口座からの引き落とし)

 クレジットカードによる支払を構成する契約関係は、カード会社とカード保有者との間の会員規約と、発行会社と加盟店間の加盟店契約の2つで成り立っています。

クレジットカード決済の法的構成

クレジットカード決済における契約と事業者

 クレジットカードを使った支払についての法的構成については、わが国では、2つの契約方式が用いられています。
①債権譲渡方式
債権譲渡方式とは、カード会社が加盟店から代金債権を譲り受け、カード保有者から期日に弁済を受ける構成です。

②立替払方式
立替払方式とは、カード会社が加盟店に対して第三者弁済を行い、カード保有者に対して期日に求償するという構成です。

 どちらの構成であっても、カード会社と加盟店およびカード保有者の間の決済は、銀行預金の振替によって行われます。そのため、クレジットカードの決済手段は、銀行振込などと同じ『預金債権』ということになります。預金債権は、金銭その他の物を消費し、 後日それと同種、同等、同量の物を返還することを内容とする契約で「消費寄託契約」(民法666条)の一種です。
 なお、預金契約に係る消費寄託については、 消費貸借の規定を準用されるので(民法666条 3 項)、借主の返還時期について返還時期の定めの有無にかかわらずいつでも返還できます。
 以上より、クレジットカード決済そのものは単純な仕組みで構成されているともいえます。
 しかし、実際にはカード会社の役割は分化しており、複数の事業者により担われているのです。

  • イシュアー
    イシュアーとは、カードをカード保有者に発行し、弁済受領や求償を行うカード会社をいいます。

  • アクワイアラー
    アクワイアラーとは、加盟店を開拓して加盟店からの債権買取りまたは立替払いを行う加盟店管理会社をいいます。

  • 国際ブランドカード会社
    国際ブランドカード会社とは、イシュアーとアクワイアラーを媒介して決済ネットワークを運営する会社となります(Visa、Master 等)。

 最近では、顧客獲得のために、クレジットカードビジネスを業務の一部として展開する業者も増えています。
 例えば、航空会社やデパートなどが、カード保有者(会員)の獲得を行い、カードの発行と弁済受領・求償業務をイシュアーに委託する「提携カード」があります。

 また、イシュアーとアクワイアラーとの間の決済の方法は、取引形態によって異なります。
 クレジットカードが国内で利用された場合には、イシュアーからアクワイアラーに対して、国内の銀行間決済システムを通じて、資金移動が行われ、決済が完了します。
 カードが海外で利用されたケースでは、国際間における資金移動(外国為替決済)が必要になります。この場合、国際ブランドカード会社が運営しているデータセンターがデータ処理をし、一定の期日にネッティングを行い、差額のみ各国の金融機関相互間で決済することになります。

クレジットカード決済の特徴

 クレジットカードを用いた決済の最大の特徴は加盟店への支払(立替払いまたは債権譲渡)とカード保有者の銀行口座の引落時期との間に時間的な間隔があることです。

 クレジットカード決済は、支払義務者であるカード保有者に対する与信をともなった支払手段です。
 カード保有者の破産などで、引落しができなくなっても、カード会社は加盟店から代わりに支払った代金を取り戻すことはありません。つまり、カード保有者に対する与信リスクはカード会社が負担することになっているのです。その場合、カード保有者に対して過剰な与信が行われると、カード発行者にとって事業上のリスクになることに加え、多重債務の発生でカード保有者の生活基盤が破壊されるという問題が生じます。

 そこで、割賦販売法では、以下の定めがあります。
 カード発行者は、カードの新規発行や極度額(利用限度額)の増加に際しては、カード会社は年収証明書等の提出を求め、包括支払可能額(=返済見込額)を調査しなければならないことになっています(割賦販売法30条の2)。

この調査のため、業界内で指定信用情報機関が設立され、信用情報の収集やカード会社に対する信用情報の提供を行うことになっています。(割賦販売法35条の3の36以下)。

 そして、カード会社は、包括支払可能見込み額の調査に際して指定信用情報機関が保有する信用情報を利用しなくてはなりません(割賦販売法30条の2第3項)。

クレジットカード決済における瑕疵の主張

 クレジットカードを利用した支払は、電子商取引で多用される電子マネーや小切手と異なり、クレジットカードを利用した契約関係とは切り離された関係(無因=契約などが法律上無効であっても、それ自体は有効とされる行為)ではありません。

 そのため取引原因の瑕疵や抗弁による影響を受けることになるので注意が必要です。

 すなわち、加盟店に商品欠陥の給付その他債務不履行があれば、消費者は代金の支払を拒むことが出来ます。そして消費者が販売店に対して支払を拒める事由を抗弁事由といいます。

 割賦販売法において、販売業者に対して抗弁事由があれば、クレジット会社の請求に対してもこの抗弁事由により支払を拒み得るとしています。
 例えば、退去不可能な状態に追い込まれ、不必要な商品を無理やり買わされた場合、第1回目の支払期日までに、消費者契約法4条に定める取消権を行使すればカード会社からの請求を拒み、引落しも止めることが出来るのです。この消費者の権利を支払停止の抗弁権(抗弁の接続)といいます。

 支払停止の抗弁権は、割賦販売法30条の4、30条の5、30条の6に規定される権利です。

 割賦販売法では支払停止の抗弁を行使する為の要件を、以下の通り定めています。

  • 販売業者に対して抗弁事由があること。
  • 総支払額が4万円以上(リボルビング方式は38,000円)であること(割賦販売法施行令 第18条、第21条)。
  • 支払い方法が以下の条件であること
    ①ローン提携販売は、2か月以上の期間にわたっての3回以上の分割(割賦販売法 第2条第2項1号)
    ②包括信用購入あっせんは、2か月以上の期間にわたる支払い(割賦販売法 第2条第3項1号)
  • 売買契約が、割賦販売法 第35条の3の60に該当しないこと

 ただし、以下の3つの場合には抗弁の接続は認められません。

  1. 売買契約の支払総額が4万円(リボルビング方式は38,000円)に満たない場合、
  2. 割賦販売法が適用されない場合、
  3. 割賦販売法に抗弁権が制定される以前(昭和59年12月1日以前)の契約(最判平成2年2月20日判時1354号76頁)
    ※ただし、3については特段の事情がある場合は除く。

 また、カードの保有者は抗弁が主張できるだけであり、すでに支払ってしまっている場合、代金の返還請求は認められません。

 クレジットカード取引において抗弁の接続が認められる理由は、高額の商品ならびに役務の購入が可能なクレジットカード取引の場合、大きな消費者被害を生みやすく、購入者の保護する必要があるためです。

 その背景には、消費者被害を発生させるような悪質な事業者を排除するためには、カード会社が加盟店の選定に際して調査を行うコストの方が、カード保有者が取引の際に注意を払うコストよりも小さいという考え方があります。

 国際ブランドカード会社ではブランドルールとして、このような抗弁の接続がなされた場合、イシュアーからアクワイアラーに、また、アクワイアラーから加盟店に既払いの決済金額の払い戻しを請求することが可能としています。

クレジットカードの不正使用

 クレジットカードにおいては、紛失・盗難、さらにはスキミング等の手口でカード情報がとられる等、カード保有者以外の者がカードを利用して商品や役務を購入するケースが多発しています。

 この場合、商品やサービスの提供はすでに不正利用者の手に渡っていることから、発生した損害を誰がどのようにして負担するのかが問題になります。

 クレジットカード会員規約では、不正利用された金額もカード保有者が負担することを原則とした上で、紛失届・盗難届を遅滞なく警察に提出し、かつカード発行会社に紛失・盗難を通知した場合には、不正使用分の請求を免除する仕組みになっているのが一般的です。
 それによる損失てん補は、一般的にカード発行会社を被保険者とするクレジットカード盗難保険によりカバーされると説明されています。

 また、規約では、不正利用による代金をカード利用者に免除しないケースをいくつか定めていることが一般的です。
例えば、
①会員の故意や重過失によって損害が発生した場合、
②不正利用した者がカード保有者の家族である場合、
③カード発行業者に対する紛失・盗難の通知よりも61日以前に損害が発生した場合
などがこれに該当します。

 では、カード保有者の承諾のもとにカード保有者以外がそのクレジットカードを利用するいわゆる「名義貸し」のような場合はどうでしょうか。
 例えば、架空の取引を行い加盟店の資金繰りを助けるケースや、過去に不払いを起こして自己の名義ではカードが持てないために知り合いのカードを使わせてもらうようなケースがこれに該当すると考えられます。
 カード会員規約では、一般的に他人に対するカードの貸与を禁止しており、これに違反した場合、カード保有者が支払義務を負い、免除も行わないことになっています。

 このような不正利用を防ぐため、クレジットカードを利用した際の支払の場合には、売上票への署名が求められてカード上の署名と照合する作業が行われます。
 ただ最近では、署名に代わり、暗証番号の入力が求められる場合が増えてきています。実際、電子商取引においては、暗証番号の入力による本人確認が一般的です。
 この本人確認の行為については、加盟店が加盟店契約上の実施義務を負い、会員自身は、カード規約上の受忍義務を負担しているという関係となっています。

 そのため、カード保有者にとって安全な利用のための環境が提供されていないと判断されるようなずさんな運用が行われていた場合、カード保有者に対する売上額請求が認められないケースも考えられます。

加盟店は、カード会社の定める規約に従い、適切な利用環境を整える必要があるのです。

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