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【債権譲渡について】改正民法でどう変わった?

Q 
当社は売掛債権を有していた債務者から、売買代金の代わりに債権を譲り受けることになりました。
この度の債権譲渡についての民法改正における変更点などを教えてください。


A 
今回、改正がなされた主な点は、
①債権譲渡禁止特約の効力が相対的なものとされたこと、
②将来債権譲渡の効力について規定が置かれたこと、
③債権譲渡について異議をとどめない承諾の規定が廃止されたこと
です。

本記事でわかりやすくご説明します。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「改正民法~債権譲渡~」
について、詳しくご説明します。

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債権譲渡禁止特約の効力について

譲渡禁止特約があっても、債権譲渡ができるか

取引契約書には、よく契約上の権利義務について、第三者に譲渡してはならないといった規定が置かれることがあります。

(典型例)
第◯条(権利義務の譲渡禁止)
甲及び乙は、互いに相手方の事前の書面による同意なくして、本契約上の地位を第三者に譲渡してはならない。

取引をする際には、相手方の資力や能力等を考慮して契約を締結するのが通常です。
しかし、取引に基づいて発生する権利や義務について、勝手に第三者に譲渡されてしまえば、契約をした意義が失われてしまうことから、上記のような条項が設けられることが多いです。

上記条項は、債権譲渡の禁止特約の典型例です。

旧民法では、、債権譲渡禁止特約をした場合、その特約に違反した債権譲渡は無効となりました。債務者、第三者との関係でも、債権は債権譲受人に移転しないと考えられていました。

しかし、2020年の改正民法では、債権譲渡禁止特約をした場合でも、債権譲渡は有効にできるとされました(改正民法466条2項)。

それでは、上記債権譲渡禁止特約を締結した債務者の保護は、どのように図られるのでしょうか?
それは、以下の2つの措置によって、図られるものとされています。

  • ①債権は債権譲受人に移転しますが、債務者は、譲渡制限特約について悪意又は重過失ある譲受人に対しては、債権譲受人への弁済を拒むことができ、譲渡人に対する弁済その他の債務消滅させる事由をもって譲受人に対抗できる(改正民法466条3項)。

  • ② 譲渡された譲渡制限特約付債権が金銭の支払を目的とする債権だった場合、債務者は、債権譲受人が譲渡制限特約の存在を知っていたか否か等に関係なく、債務全額を債務の履行地(履行地が債権者の住所地の場合、債権譲渡人の住所地も含みます。)の供託所に供託できる(改正民法466条の2第1項)。
    ※供託した場合、債務者は債権譲受人及び債権譲渡人に通知しなければならず(同条2項)、供託金は譲受人に限り還付を請求できる(同条3項)

このように、債権譲渡禁止特約に違反する債権譲渡について、債務者の不利益(見ず知らずの者が自身の債権者になってしまうという不利益)は概ね回避できるので、債務者に損害が発生する場合も少ないといわれています。

債務者が債権譲渡人に弁済をした場合

債権譲渡禁止特約があることから、債務者が債権譲渡人に債務の弁済をした場合は、譲受人は譲渡人に、履行された金銭、物の引渡しを請求できます。

差押えについて

譲渡制限特約付債権が差し押さえられた場合は、債務者は、差押債権者に譲渡禁止特約があることを理由として履行を拒絶することはできません(改正民法466条の4第1項)。

譲渡禁止特約付債権が債権譲受人に譲渡され、第三者対抗要件が具備された後は、特約があっても債権譲渡は有効なので譲渡人の債権者は差押えができません。

譲渡禁止特約について、悪意又は重過失ある譲受人の債権者が譲受債権を差し押さえた場合、債務者は差押債権者の履行請求を拒み、譲渡人に対する弁済その他の債務消滅行為をもって対抗し、あるいは供託することができます(改正民法466条の4第2項)。

将来債権の譲渡について

未だ、債権が発生していない、今後発生する債権について、債権譲渡をすること(将来債権の譲渡)が改正民法では認められると規定されました(改正民法466条の6)。

将来債権譲渡の対抗要件は、既発生債権の譲渡の対抗要件と同じく

  • 債務者への通知
  • 債務者の承諾(改正民法467条)又は債権譲渡登記

となります。

そうして、債務者対抗要件を備えるまでに対象となる債権について譲渡人と債務者間で譲渡禁止特約がなされた場合は、譲受人は譲渡制限特約について悪意又は重過失あるものとみなされます(改正民法466条の6第3項、動産・債権譲渡特例法4条2項、3項)。

債務者が債権譲渡人に対して有していた抗弁について

旧民法では、債務者が債権譲渡人に対して対抗できる事由があったとしても、債権譲渡について、異議をとどめずして承諾した場合には、債権譲受人に対して、当該対抗事由を主張できないとする規定がありました。

改正民法では、上記異議をとどめない承諾の規定を廃止し、債務者は、債権譲渡について債務者対抗要件が具備されるまでに、譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができると明記されました(改正民法468条1項)。

2020年の改正民法468条2項は、譲渡禁止特約付債権が譲渡された場合における、譲受人に対抗可能な抗弁の基準時について特則を定めています。

具体的には、譲受人が特約について悪意又は重過失がある場合は、債務者対抗要件が具備されたときではなく、債務者が弁済期に履行せず譲受人が相当の期間を定めて譲渡人への履行を催告し、その相当の期間が経過するまでに生じた抗弁をもって債務者は譲受人に対抗できます。

それでは、具体的に債務者が債権譲渡人に対して譲渡禁止特約という抗弁を有していた場合と相殺できる債権を有していたという抗弁を有していた場合を見ていきましょう。

抗弁①(譲渡禁止特約について)

譲渡禁止特約付債権について債権譲渡後に譲渡人に破産手続開始決定があった場合は、

  • ア 譲受人が特約について善意かつ無重過失の場合は、原則に従って債務者は債務者対抗要件具備時までに生じた抗弁をもって譲受人に対抗でき、
  • イ 譲受人が悪意又は重過失の場合は、譲受人から供託の請求を受けたときまでに生じた抗弁をもって対抗できます(改正民法468条2項)。

    なお、この場合でも、債権譲受人は、債務者に供託を求めることができ、供託された場合に、供託金の還付請求ができるのは、債権譲受人だけとなります(改正民法466条の3)。

抗弁②(相殺について)

相殺に関しては、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができます(改正民法469条1 項)。

債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても対抗要件具 備時より前の原因に基づいて生じた債権、又は、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができます。

ただし、債務者が 対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、相殺することができませんのでご留意ください(同条2項)。


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