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改正民法~請負取引に影響を与える改正点~

Q
 請負関連の民法改正で変更があった点を教えてください。


A
 途中終了の場合における請負報酬請求、そして、瑕疵担保責任(改正民法下では契約不適合責任)について、実務に影響を与える改正がなされていますので、ご説明します。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「改正民法~請負取引に影響を与える改正点~」
について、詳しくご解説します。

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途中終了における請負報酬請求について

改正民法では、請負契約の途中終了事案について、判例法理を明確化した改正がなされています。

つまり、以下①、②のように請負業務が途中終了した場合には、既に仕事が終わった部分と終わっていない部分とがわけることが可能であり、仕事が終わっている部分について、注文者が利益を受けた場合を要件として、仕事が終わった部分について、仕事が完成したものとみなされました。

①「注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき」(改正民法634条1号

又は

②「請負が仕事の完成前に解除されたとき」(同条2号)

この場合、請負人は「注文者が受ける利益の割合に応じて」報酬を請求することができます。

ただし、請負人が行った仕事の内容に軽微ではない契約不適合がある場合には、「注文者が利益を受け(た)」と認めることは困難であると考えられている点には注意が必要です。

また、上記の①「注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき」(改正民法634条1号)には、 「請負人の責任により仕事が完成できなかった場合」や、
「注文者と請負人双方の責任によることができない事情により仕事が完成できなかった場合」
も含まれます。

ただし、「請負人の責任により仕事が完成できなかった場合」で、注文者に損害が生じたときは、注文者は請負人に対して債務不履行による損害賠償を請求することができます(この場合には対等額で相殺されることになるでしょう)。

他方で、注文者の責任により仕事が完成できなかった場合には、危険負担に関する改正民法536条2項が適用され、仕事が未了な部分も含めて報酬全額の請求をすることができますが、自己の残債務を免れたことによる利益の償還は必要になる点は注意してください(最判昭52・2・22民集31巻1号79頁)。

請負人の担保責任について

総論

改正民法では、請負人の担保責任は、債務不履行責任の規定によるものとして一本化されることになりました。

旧民法634条ないし640条に規定されていた請負人の担保責任は、改正民法559条によって、売買契約における売主の担保責任を定めた改正民法562条(修補請求権)、改正民法563条(代金減額請求権)、改正民法564条(解除権及び損害賠償請求権)が準用されることになり、請負契約独自の根拠規定は削除されたのです。

改正民法下においては、修理(修補)に多額(過分)の費用を要するときは、社会通念に照らして修理が不能であると扱われますので、修補請求は認められません(改正民法412条の2第1項)。

なお、この場合、旧民法634条2項が定める「修補に代わる損害賠償請求」は、「債務の履行に代わる損害賠償請求」として改正民法415条2項の適用を受けるものではなく、同条1項により処理されますので、損害賠償請求をする場合には、根拠条文を間違えないよう、ご注意ください。

契約解除について

旧民法635条本文は、仕事の目的物に瑕疵があり、契約をした目的を達成することができない場合には、請負人の責任の有無にかかわらず、注文者に解除権を認めていました。

しかし、この度の民法改正では、仕事の目的物が契約内容に適合しない場合は債務不履行解除の一般原則(改正民法541条及び542条)により一本化されることになりました。

また、旧民法635条ただし書は、仕事の目的物が土地工作物である場合、社会経済的損失や請負人に過大な負担が生じ得ることを考慮して契約の解除を認めていなかったところ、旧民法下の判例は、建替費用相当額の損害賠償を認めるなど、実質的に解除した場合と同等の効果を生じさせていました(最判平14・9・24判時1801号77頁)。

そこで、旧民法635条は削除され、仕事の目的物が土地工作物であっても、債務不履行の一般原則に従い、契約の解除が認められるようになりました。

そのため、契約の目的を達成することができない場合には無催告解除が認められることとなり(改正民法542条1項3号ないし5号)、
他方で、
催告解除の場合には、請負人が債務の不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微であることを主張立証すれば、解除権の不発生を主張できるようになります(改正民法541条)。
もっとも、催告解除における軽微性の判断は相対的であり、契約目的を達成することができるか否かが最も重要な考慮要素になると考えられています。

担保責任の追及期間

旧民法は、法律関係の早期安定を図る趣旨から、注文者の権利の存続期間を「仕事の目的物を引き渡した時から1年以内」(旧民法637条1項、目的物の引渡しを要しない場合は仕事終了時から1年以内)と定めていました。

これに対して改正民法は、売買契約における買主の権利の存続期間(改正民法566条)と同様に、注文者が「不適合を知った時から1年以内」(改正民法637条)にその旨を請負人に通知しない場合、注文者は、契約不適合を理由とした担保責任(履行追完請求権、報酬減額請求権、損害賠償請求権及び解除権)を追及することができなくなると定めました。

この場合の「知った時」とは、担保責任を追及できる程度に確実な事実関係を認識した時であると考えられており(最判平13・2・22判時1745号85頁)、「通知」は、細かな項目にわたるまでの必要はないものの、不適合の内容を把握することが可能な程度に、その種類・範囲を伝えることが想定されています。

1年の追及期間内に通知した場合の注文者の権利が、消滅時効の一般原則に従うことは旧民法下と同じです。

また、期間制限は、目的物の種類又は品質に限られ数量の不適合については適用がありません。

土地工作物に関する期間制限

旧民法では、仕事の目的物が土地工作物であった場合、担保責任の存続期間について引渡しの後5年間又は10年間の特則を設けていました。

もっとも、改正民法は、注文者の権利の存続期間は、引渡し時(仕事終了時)ではなく、注文者の認識を起算点とすることに改められ、長期の存続期間を定める必要がないため、上記規定は削除されました。

ただし、新築住宅を目的とする請負契約は別です。

すなわち、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の94条は、住宅の新築工事の請負人の担保責任について、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令(同法施行令5条)で定めるものの瑕疵について、その存続期間を注文者に引き渡した時から10年間とする特則を定めており、変わりはありません(同法97条により20年以内まで伸長可能)。

建設工事標準請負契約約款の改正

国土交通省・中央建設業審議会の建設工事標準請負契約約款改正ワーキンググループにおいて、本改正を踏まえて標準請負契約約款の見直しが検討されました。

2019年12月13日に開催された中央建設業審議会で改正案が決定され、同月20 日にその実施が勧告されています。
「民法(債権法)の改正を踏まえ、建設工事標準請負契約約款の改正を決定・実施を勧告」



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