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【職業安定法】募集情報等提供事業者が負う的確表示義務について

今回は、募集情報等提供事業者が負う的確表示義務の内容について解説していきます。
募集情報等提供事業者は、求人等に関する次の➀~⑤の情報すべての的確な表示が義務付けられます。

①求人情報
②求職者情報
③求人企業に関する情報
④自社に関する情報
⑤事業の実績に関する情報

上記①~⑤の情報の詳細については、職業安定法上、令和5年9月20日現在ですが、定めはございません。
※なお、令和6年4月1日より、募集時等に明示すべき事項が追加されています。
詳しくは、【改正職業安定法施行規則】募集時等に明示すべき事項の追加について」をご確認ください。

但し、上記①~⑤の情報を表示するにあたって2つの重要なルールが設けられています。
それは、

ルールその1:虚偽の表示・誤解を生じさせる表示はしてはなりません。
ルールその2:求人情報、求職者情報を正確・最新の内容に保つ措置を講じなければなりません。

というものです。
ルールその1とルールその2について、もう少し詳しく解説していきます。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談を承っております。

本記事では、
「【職業安定法】募集情報等提供事業者が負う的確表示義務について」
について、詳しく解説します。

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ルールその1:虚偽の表示・誤解を生じさせる表示について

虚偽の表示ではなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示は、「誤解を生じさせる表示」に該当します。
例えば、募集する業務内容について、営業職中心の業務にもかかわらず、「事務職」と表示する等、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはなりません。

また、求人情報の提供の段階でも、労働条件として明示すべき項目をできる限り含めた形で提供することが望ましいものです。

虚偽の表示の具体例

  • 実際に求人を行う企業と別の企業の名前で求人を行う場合
  • 「正社員」と謳いながら、実際には「アルバイト・パート」の募集をする場合
  • 基本給○万円と表示しながら実際にはその金額よりも低額の賃金を予定している場合
  • 実際には採用予定のない求人を出す場合
  • 実際の取り扱い求人件数が 1000件程度であるにもかかわらず1万件程度ある旨を表示する場合
  • 登録求職者数が1000件程度であるにもかかわらず1万件程度ある旨を表示する場合

求人等に関する情報等が虚偽であることを募集情報等提供事業者が知り得ない場合に、ただちに当該募集情報等提供事業者が法第5条の4第1項に違反することとなるものではありません。

一方で、改変するなど積極的に実際と異なる求人等に関する情報を提供すれば、法第5条の4第1項に違反することとなります。

誤解を生じさせる表示の具体例

虚偽の表示でなくとも一般的客観的に誤解を生じさせるような表示は誤解を生じさせる表示に該当します。
具体的には次のような表示が誤解を表示させる表示になります。

  • 優れた製品開発実績を持つグループ会社の実績を大きく記載し、あたかもその求人企業の実績であるかのように表示する。
  • 請負契約の案件であることを明示せず、労働者の募集と同じ表示をする。
  • 雇用形態について派遣社員であるにもかかわらず派遣先の直接雇用かのように見える表示をする。
  • 社内で給与の高い労働者の基本給を例示し、全ての労働者の基本給であるかのように表示する。
  • 固定残業代について基礎となる労働時間数等を明示せず、基本給に含めて表示する。
  • 営業職が中心の業務について事務職と表示する。

募集情報等が誤解を生じさせる表示であることを募集情報等提供事業者が知り得ない場合に、ただちに当該募集情報等提供事業者が法第5条の4第1項に違反することとなるものではありませんが、募集情報等の提供の中止や内容の訂正の依頼があった後に対応しない等、誤解を生じさせるおそれのある表示を漫然と提供し続けた場合は、法第5条の4第1項に違反するおそれがあります。

募集情報を提供する段階でも、労働条件として明示することとされている事項に関する情報をできる限り含めることが望ましいとされています。

ルールその2:正確・最新の内容に保つ措置について

総論

募集情報等提供事業者は、労働者の募集に関する情報等を正確かつ最新な内容に保つ必要があります。
具体的には、以下のような対応が考えられます。

  • 求人情報・求職者情報の提供中止や訂正を求められたら、遅滞なく(※)対応する。
  • 求人情報・求職者情報が正確・最新の内容でないことを確認したら、遅滞なく情報提供依頼者に訂正があるかを確認するか、情報の提供を中止する。
  • 定期的に情報が最新であるか、確認を行う措置をとる。
    (注)なお、どの程度の頻度で行えばいいのか、特段の定めはありませんが、提供している求人等に関する情報の内容に変更があったにもかかわらず、更新がなされないままの状態が続くことのないよう、一定の期間を設けて確認をする必要があります。
遅滞なくの意味について
職業安定法施行則第4条の3第4項の規定は、募集情報等提供事業者等が、掲載の中止や内容の訂正の依頼に対応し、可能な限り早く募集情報等の掲載の中止又は更新をすることを求めているものです。

例えば、提供している募集情報等について、提供元から掲載中止や内容の訂正の依頼があった場合に、直近でサイトを更新する時点において対応する等、合理的な期間内に当該依頼に対応する必要があります。

募集情報等の提供の中止や内容の訂正の依頼があった後に、漫然と提供の中止や内容の訂正を怠った場合には、遅滞なく対応していないこととなります。

依頼を受けて情報を掲載した募集情報等提供事業者について

〇 求人情報の提供依頼者に、募集が終了した場合や求人情報の内容変更について速やかに通知するよう依頼(メールや文書等が望ましい)する。

〇 求職者情報の提供依頼者には、求職者情報を正確・最新の内容に保つよう依頼(メールや文書等が望ましい)するか、または、求人情報・求職者情報の時点(※)を明らかにする。

※職業安定法第4条第6項第1号に掲げる行為を行う募集情報等提供事業者が、労働者の募集を行う者等から、情報の提供の依頼があり、当該情報を受け取った日を示すことで、措置を講じたこととなります。


それ以外にも、以下のような時点を示すことも認められます。

  • 労働者の募集に関する情報の提供を開始した時点
  • 労働者の募集を行う者等から、労働者の募集に関する情報の修正、更新等の依頼があった時点
  • 労働者の募集に関する情報の修正、更新を行った時点
  • 職業紹介事業者や他の募集情報等提供事業者から労働者の募集に関する情報の提供を依頼された場合に、当該職業紹介事業者や募集情報等提供事業者が労働者の募集を行う者から依頼を受けた時点

自ら収集(クローリング)した情報を掲載する募集情報等提供事業者について

〇 求人情報・求職者情報を定期的に収集・更新し、その頻度を明らかにするか、

または、

〇 求人情報・求職者情報の時点を明らかにしましょう。

これらの措置は可能な限りいずれも講ずることが望ましいです。

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