澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「【今話題!】NFTとビジネス ~NFTは「所有」できるのか?~」
について、詳しく解説します。
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NFTとは
NFTとは、Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略語であり、仮想通貨の一種であるイーサリアムの規格等に準拠したブロックチェーン技術を利用して、特定のデジタルデータに対してユニークな(=唯一の)トークンIDを割り当て、特定可能なものにする技術をいう、とされています。
アナログな「実物」と結びつかないデジタルデータであっても、1点しかない(=代替性が無い)デジタル資産として、取引の対象とすることが可能になっているものです。
NFTは所有できない
ブロックチェーンゲームにおいては、アイテムやキャラククー等がNFTとして取り扱われることがあります。
これらのアイテムやキャラクターのNFTについて、第三者を介して取引ができるため、「もの」と同様に、ユーザーが所有できるのではないかという問題があります。
しかし、NFTに「所有権」は発生しないと考えられます。
なぜなら、民法では「所有権」とは物に対する権利であり、有体物(動産、不動産)についてのみ認められる権利であるとされているところ(民法第206条、同法第85条)、オンラインゲームにおけるアイテムはゲーム上の情報にすぎず、有体物ではないからです。
なお、同様にブロックチェーンに関しても、 ビットコインに関する裁判で暗号資産(仮想通貨)は所有権の対象にはならないという判決も出ていますので(東京地裁平成27年8月5日判決)、暗号資産やNFTを取り扱う事業者においては、まず、所有権の対象にならないということを理解することからビジネスを考える必要があるでしょう。
そのため、NFTについては「誰のものか」という議論ではなく、NFTに関して「誰に何の権利が発生するか」という議論がなされます。
デジタルデータというNFTの性質上、NFTを購入することによりいかなる権利を取得することができるかは、個々のNFTにより異なります。
そのため、NFTを購入するにあたっては、 発行者や販売プラットフォームの利用規約等を事前に確認して、当該NFTをどのように利用できるか把握しておくことが大切です。
勧誘や広告の方法
事業者がゲーム(サービス)の提供を終了するときに、ゲーム内で利用ができたアイテムについて、事業者が責任を負うべきか否かという問題があります。
原則としては、事業者は、ゲーム(サービス)の提供を終了させるときには、十分な予告期間を設けて事前告知を行ってサービスを終了すると思います。
このような場合には、前述したとおり、NFTが所有権の対象にもならないことから、特に補償等を行うことなく、そのゲーム内で利用できたアイテム等の利用権を消滅させることができると考えられています(経済産業省「電子商取引及び情報材取引に関する準則(令和2年8月改訂)Ⅲ―12-4」)。
そのため、設問の場合でも、ブロックチェーンゲームを終了させる場合には、当然にそのゲーム内で使用できたNFTについても利用できなくしてもよいと考えられる事業者もいるかもしれません。
しかし、同一事業者内の別のゲームによって利用できるようにしている場合で、あるゲームAのアイテム等が、別のゲームBでも利用ができるという広告宣伝や勧誘を行っているときは、その旨が消費者と事業者間の契約内容になるとも考えられることから、別のゲームBでアイテムを利用できるようにすることが求められます。
このようにゲーム(サービス)の提供に当たって、事業者が行う勧誘・広告の内容は十分に配慮する必要があるでしょう。
利用規約
事業者としては、ゲーム(サービス)の提供を終了した後も、そのゲームで利用できたNFTに対する補償をしなくてはいけない事態を避けたいと考えることが多いと思います。
その場合には、事業者がゲーム(サービス)の提供を終了する前に、十分な予告期間を置いた事前告知等を行うことを前提に、利用規約等に打ち消し表示をすることによって、責任範囲を限定することが考えられるでしょう。
例えば、
- ある特定のゲームで使えるアイテム等であることを前提として明記する。また、この特定のゲームが終了する場合には、ゲーム内で使えたアイテムの利用もできなくなることを記載する。
- この際に他のゲーム(※具体的に特定しましょう)でも使えるが、その内容等について責任を負うものではないと書いておく。
等が考えられます。
トラブルを避けるには、弁護士にご相談を
利用規約は、事業者の権利を守る重要な役目をもつ道具です。
もっとも、記載内容や消費者に説明をしていたNFTの内容によっては、消費者契約法に違反して無効とされる等のリスクもあります。
たとえば、ブロックチェーンゲームの場合、ゲームが終了しても、アイテム等のNFTは、他の取引市場で使用等をできることが想定されている場合があり、このような場合には、ゲーム(サービス)の提供終了時において、事業者に故意重過失があってもアイテム等の補償を一切行わないというのは消費者契約法の観点からも認められないでしょう。
そのため、NFTを組み込むサービスを検討される際には、利用規約を適切に設けることが重要です。
利用規約のご相談、NFTに関するお悩みやトラブルは、当事務所までお問い合わせください。
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