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弁護士コラム
借地借家法に更新料の規定はある?地主が請求できる条件と相場・計算方法
- 賃貸借トラブル
- 投稿日:2026年11月04日 |
最終更新日:2026年11月04日

- Q
- 所有する土地を先代の頃から建物所有目的で貸しており、まもなく契約更新を迎えます。契約書に更新料の定めはありませんが、これまでの更新時には借地人から更新料を支払ってもらってきました。今回も更新料を請求できるのでしょうか。
- Answer
-
借地借家法や民法には更新料に関する明確な規定がなく、基本的には借地契約の内容(更新料の特約の有無)に従って判断します。ご質問のケースでは、契約書に更新料の定めがないため、更新料の請求はできないと考えられます。
ただし、先代と借地人の間で更新の度に更新料を支払う口頭の約束があったと立証できれば、請求できる可能性があります。もっとも、将来の更新時にも支払う約束をしたことまで立証するのは難しいと考えられます。
この記事でわかること
▸ 借地借家法に規定のない更新料を、地主が請求できる条件(法定更新・過去の授受がある場合を含む)
▸ 借地の更新料の相場(借地権価格の3~5%程度)と具体的な計算方法
▸ 借地人が更新料の支払いを拒否した場合の対応と、契約解除が認められる基準
監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦
2009年 弁護士登録
2018年 弁護士法人直法律事務所 開業
不動産・相続・企業法務を中心に取り扱い、不動産に関する相談を年間100件以上対応。
賃貸借・不動産売買・立ち退き交渉・建築紛争・共有不動産など、幅広い不動産問題の解決に取り組んでいます。
目次
借地借家法における更新料の基本知識
借地借家法や民法には更新料の規定がなく、更新料は契約上の特約があって初めて請求できるものです。
ここでは、契約書を見ても更新料について明確な決まりがなかった地主の方に向けて、基本知識を解説します。
借地借家法に更新料の規定はない|請求には特約が必要
更新料とは、期間が満了し契約を更新する際に、賃借人が賃貸人に支払う一時金で、賃貸人が返還を要しないものといわれています。
民法および借地借家法には更新料に関する規定がなく、更新料は法律上当然に発生する義務ではありません。特約(更新料支払特約)に基づいて発生するものであり、更新料支払の合意をしていない場合は支払義務がありません。そのため、更新料を請求したい場合は、契約に特約を盛り込む必要があります。
特約には、更新料の額や算定方法を明確に定めることをおすすめします。裁判例の判断は、次のように分かれています。
- 明確な算定方法等の定めがなくても、更新料の請求を認めた裁判例がある
- 「更新料を支払うことによって、更新できるものとする」という条項は、明確な更新料の請求に関する特約であるとはいえないとして否定された裁判例もある(東京地判平成21年2月23日等)
裁判で請求が認められる場合があるとしても、算定方法や金額が明示されていないと争いになりやすいため、契約書でしっかりと明示しておくべきです。
更新料の役割は「賃料の補充」と「契約継続の対価」
借地契約における更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと理解されています(最判平成23年7月15日)。
- 地主(賃貸人)にとっては、賃料と同じく大事な収入源
- 借地人にとっては、更新料を支払うことで地主と円満な関係を保てるため、借地を維持しやすくなる
法定更新でも更新料を請求できる?条項の書き方に注意
法定更新でも更新料を請求できるのは、法定更新の場合も含めて更新料を支払う旨と解される特約がある場合と考えられます。もっとも、更新料を支払う特約があっても、契約の文言によって結論は次のように分かれます。
- 合意更新の場合だけ更新料を支払うと解釈できる場合:法定更新では更新料は発生しない
- 法定更新の場合も含むと解釈できる場合:更新料の支払義務が生じる
一般的に用いられるのは「更新の場合に更新料を支払う」という記載ですが、単に「更新」と言った場合、法定更新と合意更新の両方が含まれていると解するのが通例です。東京地判昭和57年10月20日も、「賃借人が更新の協議に応じない間に期間が満了して法定更新された場合には更新料の支払いを免れるとすれば、かえつて公平を害する恐れがある」という判断を示しています。
しかし、できる限り解釈で争いが生じないよう、次のように記載したほうがよいでしょう。
| 【条項例】 賃借人は、賃貸人に対し合意更新または法定更新にかかわらず、更新料〇〇円を支払わなければならない。 |
このような特約であれば、法定更新の場合でも更新料を支払う必要があることが明確です。
地主が更新料を請求する際の実務ポイント
更新料の請求は、地主にとっては有利な一方、借地人にとっては不利になる話のため、上手に進めないとトラブルが起きることに注意が必要です。特に、特約が無効とならないか、過去の授受を根拠に請求できるかの2点を押さえておきましょう。
更新料特約が無効となるケース|消費者契約法10条
更新料に関する特約の定めが消費者契約法10条違反となる場合、無効となる可能性があります。
最判平成23年7月15日は、「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう『民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの』には当たらないと解するのが相当である。」としています。
つまり、次の条件を満たす更新料特約は、消費者契約法10条に反しないと解されます。
- 更新料条項が一義的かつ具体的に記載されていること
- 更新料の額が高額過ぎるなどの特段の事情がないこと(賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等を考慮)
どの程度であれば高額過ぎるのかについては裁判例の判断が分かれており、具体的な事案でどの程度の更新料が無効とされるのか不明確な状況です。ただ、更新料の相場といわれる範囲内であれば、無効とされることはないと解されます。
「相当の更新料」とだけ定めた特約は見直しを
「相当の更新料」を支払うとだけ定めた特約では、「更新料条項が一義的かつ具体的に記載されている」とはいえず、更新料の請求が認められない可能性があります。
東京高判令和2年7月20日は、更新料の支払請求権が具体的権利性を有するためには、更新料の額を算出できる程度の具体的基準が定められていることが必要であるとしました。そして、「相当の更新料」という文言は抽象的で、裁判所において客観的に更新料の額を算出することができる程度の具体的基準ではないとして、更新料の請求を認めませんでした。
このような契約書はかなり多くあると考えられます。最高裁判所ではなく高等裁判所の判断のため、今後も同様の判断がされるのかは明らかではありません。しかし、消費者契約法に鑑みれば、借地人にとっていくら支払うのか明確ではない特約です。
地主としては、次の対応をとったほうがよいでしょう。
- できる限り金額が具体的となるような特約を定める
- すでに「相当の更新料」とする特約がある場合は、改定を検討する
過去に更新料を受け取っていれば次回も請求できる?
過去に更新料の授受があった場合でも、新たな更新料を請求できるか否かは他の事情も含めて考慮されるため、ケースバイケースです。
前提として、更新時に更新料の支払義務が生じるという商慣習や事実たる慣習があるとはいえない(最判昭和51年10月1日)ため、更新料の合意がない場合には請求する根拠がありません。過去に更新料が支払われてきた場合でも、裁判所の判断は認められたものと認められなかったものに分かれます。
更新料の請求が認められた事例
- 東京地判平成28年3月29日
契約書面に記載はないものの、借地人は他の賃貸人に対しても同様に更新料を支払ってきていること、その時点での経済情勢や使用状況等に鑑みて契約更新の合意と個別密着して更新料の合意がなされた経緯があることなどに加え、過去2回にわたり更新料が支払われてきたことを重視して、支払義務を認めた。 - 東京地判平成24年5月17日
契約書面に記載はないものの、地主と借地人間に更新時の更新料の支払が明示又は黙示に合意されていた事実を推認でき、土地のある東京都葛飾区付近では更新時に更新料の支払が合意されている事例があり、借地人はそれが一般的であると認識していた事実が認められるとして、支払義務を認めた。
更新料の請求が認められなかった事例
- 東京地判平成20年12月25日
前回の更新料の合意はあくまで前回の更新についての合意であり、今回の契約更新について更新料を支払うかどうかは合意されておらず、前回の更新契約で更新料が支払われたからといって、直ちに今後の更新の際に更新料を支払う慣行が成立したと認めることはできないとした。
借地の更新料の相場と計算方法
更新料の相場は、東京、横浜地区などでは一般に借地権価格の3~5%程度といわれています。
金額の設定は重要です。借地人と地主が更新料を支払う前提で協議しており、借地人から〇〇円なら支払うという提案を受けていたものの、地主が納得しないまま協議が終了した事案では、相当額の更新料を支払うという合意の成立も否定され、地主の請求は認められませんでした(東京地判平成25年10月30日)。
金額の折り合いがつかなければ更新料を支払ってもらえなくなる可能性を意識し、合意に至れる適切な金額を設定することが大切です。
相場は借地権価格の3~5%|計算式と具体例
更新料の計算方法として広く用いられるのは、借地権価格を基準として算定する方法です。計算式は次のとおりです。
| 更新料=更地価格×借地権割合×3~5% |
現実的にも、この水準にしておけば大きなトラブルは起きにくいでしょう。借地権割合は国税庁のWebサイトで確認することができます。
なお、借家契約(家などの建物を借りている契約)の場合、更新料の額が賃料の1~2か月分程度であれば更新料の特約が有効とされ、借家人に更新料の支払義務が認められる傾向にあるようです。
地域の慣習がある場合は金額設定の参考に
更新に際して借地人に更新料の支払義務を負わせる慣習法や事実たる慣習は存在しないとされていますが、更新料の支払いを求める慣習がある地域が散見されるのも事実です。
土地のある場所にそのような慣習があれば、更新料の金額を決める際に参考にしましょう。慣習の有無は、地域密着型の不動産会社や弁護士など、専門家に相談して確かめることをおすすめします。
金額で決裂しないよう算定方法を明確にする
借地人が更新料を支払う方向で動いていても、金額で折り合いがつかなければ結局支払われないことになりかねません。過去には、地主の提示額2,510万円、借地人の提示額1,400万円と大きな隔たりがあった事例で、更新料支払の合意が成立しておらず、借地人に支払義務がないと判断されたこともありました。
算定方法を定める際のポイントは、基準となる価格の算定方法まで明確にすることです。条項の書き方による違いは、次のとおりです。
- 避けたい書き方:「更地価格の〇%」
更地価格の算定方法で解釈が一義的ではないと考えられる - おすすめの書き方:「相続税路線価により算定した更地価格の〇%」
基準となる価格の算定方法まで明確になる
更新料トラブルを防ぐ・解決するための対応策
更新料の不払いを理由とする契約解除は、信頼関係の破壊が認められる場合に限られます。トラブルを防ぐ・解決するためには、「トラブルは起こるもの」と考え、事前に対応策を考えておくことが重要です。
借地人が支払いを拒否した場合の対応
借地人が更新料自体の支払いに応じない、お互いが希望する額に隔たりがあるなどで当事者間での話し合いが難しい場合、次の手段をとることが考えられます。
- 裁判により更新料を請求する
- 借地契約の解除をし、建物収去明渡請求をする
ただし、判例では、単に賃料を払わなかった、あるいは用法違反があったというだけでは賃貸借契約の解除はできず、それにより賃貸借契約を継続しがたい事情(信頼関係の破壊・背信的行為)があったときに初めて解除が認められています。これは、更新料の不払いについても同様です。
更新料の不払いで契約解除が認められる基準
更新料の不払いで借地契約の解除が認められるかは、不払いによって「信頼関係が破壊されたか」が重要なポイントとなります。
具体的な事例は次のとおりです。
解除が認められなかった事例
- 東京高判昭和45年12月18日
土地賃貸借契約が法定更新により当然当初の約定期間を超えて存続すべき状況にあるとき、支払の約束がされた更新料は、土地賃貸借期間満了時に有する地主の異議権の放棄に対する対価にすぎないとしました。
そのため、更新料の支払を遅滞した場合、この支払契約を解除して異議権を行使することができると解する余地はあっても、更新料の不払が法定更新された賃貸借契約の債務不履行に当たるものと解することはできないとし、賃貸借契約の解除を認めませんでした。
解除が認められた事例
- 最判昭和59年4月20日
賃貸人が、賃借人の無断増改築、借地の無断転貸、賃料支払の遅滞などを不問にして、紛争予防の目的で解決金を含めた趣旨で更新料の支払いの合意をした事案です。
更新料の支払いが当事者間の信頼関係を維持する基盤をなしており、その不払いはこの基盤を失わせる著しい背信行為であるとして、賃貸借契約の解除を認めました。
このように、更新料が、これまでに借地人がしてきた長年の違反行為に対する解決金に当たるなどの事情があれば、更新料の不払いが信頼関係の破壊につながり、解除が認められることがあります。
地主からよくある更新料の相談事例
実際によくある地主からの相談事例として、以下のようなものが挙げられます。
- 借地人が「更新料を払わない」と言ってきた
- 過去に更新料を授受したことを理由に支払いを求めたが、拒否された
借地人が「更新料を払わない」と言ってきた場合は、まず契約書に更新料の支払いに関する特約があるかを確認する必要があります。特約がない場合、更新料を請求するのは困難です。
また、過去に更新料を払ってもらえたとしても、新たに請求して払ってもらえるとは限りません。曖昧な契約のまま何年も放置している場合は要注意です。過去の授受を根拠に請求できるかは裁判例でも判断が分かれています。
よくある質問(Q&A)
-
借地人が更新料の支払いを拒否した場合、解除できますか?
-
借地人がそれまでに賃料の支払いを欠かしたことがなく、単に更新料の支払いを拒否しただけであれば、解除は認められ難いでしょう。しかし、これまでに賃料の延滞・滞納が頻発していたなどトラブルが多く、これらを解決する意味で合意した更新料の支払いを拒否するような場合は、信頼関係が破壊されたとして解除できる可能性があります。
-
過去に更新料を請求していなくても、今回から請求できますか?
-
更新料を支払う特約や合意がない限り、更新料の請求はできません。借地人との間で、今回から更新料を授受する合意ができれば請求することも可能です。
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特約がない場合でも請求は可能ですか?
-
特約がない場合、更新料を払うよう求めることはできません。判例において、更新料の支払義務は慣習上認められるものではないとされているためです。例外的に、契約書面に特約がなくても、様々な事情から更新料の合意があったと認められる場合に、請求を可能とする裁判例もあります。
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民法および借地借家法には更新料の規定がないため、更新料を請求できるかどうかは、特約の有無や内容、過去の経緯などによって異なります。個別の事情を踏まえた判断が必要です。
特約がなければ交渉が難航しやすく、特約があっても内容があいまいだと解釈を巡って争いになったり、特約自体が無効と判断されたりするおそれがあります。こうしたトラブルを防ぐためにも、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
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