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サブリース契約の賃料増額請求|法的根拠と交渉術をわかりやすく解説

賃貸借トラブル
投稿日:2025年06月03日 | 
最終更新日:2026年07月08日

Q
老後資金確保のために、サブリース契約で不動産投資を始めました。しかし、サブリース契約中のアパートの家賃収入が固定されたままで、周辺の家賃相場が上昇しているにもかかわらず、恩恵を受けられません。

サブリース会社に対して賃料増額の交渉をしたいのですが、どのような法的根拠をもとに、どのように交渉すればよいのでしょうか?もし、サブリース会社が交渉に応じない場合には対処法がありますか?
Answer
サブリース契約においても、賃料が不相当に低い場合は増額請求が可能です。

周辺家賃相場や固定資産税評価額など、賃料改定の根拠となる資料を集め、サブリース業者に対して内容証明郵便等で賃料増額請求をするのが効果的です。サブリース業者が賃料増額請求に応じない場合は、調停や訴訟も検討しましょう。

なお、サブリース契約書に賃料改定に関する特約等がないかも確認しておく必要があります。特約の有無や契約内容、契約時の事情等によって交渉の進め方が変わるため、専門家のサポートを受けながら慎重に対応するのがおすすめです。


この記事では、サブリース契約において賃料増額請求ができるのか、その法的根拠や具体的な交渉方法、サブリース会社が応じない場合の対処法について説明します。

監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦

2009年 弁護士登録
2018年 弁護士法人直法律事務所 開業

不動産法務・企業法務・相続を中心に取り扱い、不動産オーナー様や企業から寄せらせる不動産トラブルに関する相談を多数対応。
賃貸借・不動産売買・立退き交渉・建築紛争・共有不動産など幅広い不動産トラブルの解決に取り組んでいます。

解説動画 : 不動産オーナーがサブリース契約で損しないための法律知識を弁護士が解説!

サブリース契約の基本構造と特徴

サブリース契約は、不動産オーナーが管理や空室リスクを軽減する手段として広く利用されています。しかし、その仕組みや特徴を正しく理解していないと、思わぬトラブルに発展することもあります。

この章では、サブリース契約の基本構造と特徴について整理します。

サブリース契約とは何か

サブリース契約とは、不動産のオーナーが所有する物件を不動産会社(サブリース業者)に貸し出し、サブリース業者がさらにその物件を入居者に転貸する形の契約です。

サブリース契約には、主に以下のような特徴があります。

  • 直接の賃貸借契約は、オーナーとサブリース業者との間で締結される
    • オーナーが賃貸借契約を締結する相手はサブリース業者であり、入居者と直接契約を結ぶわけではありません。入居者と賃貸借契約を締結するのは、サブリース業者です。
  • 入居者は転借人であり、オーナーの直接の契約相手ではない
    • サブリース業者は、オーナーから賃借した物件を入居者に転貸します。そのため、転借人である入居者は、オーナーの直接の契約相手ではありません。
  • 賃料のやりとりは、原則としてオーナーとサブリース業者との間で行われる
    • オーナーはサブリース業者から賃料を受け取り、個々の入居者から直接賃料を受け取ることはありません。

サブリース契約には様々な形態がありますが、サブリース業者が用地の確保や建物の建築から関与し、賃貸管理まで一括して請け負うケースが多くみられます。サブリース業者は、オーナーへ支払う賃料よりも高い賃料で物件を転貸し、その差額を収益とする仕組みです。

サブリース契約のメリットとデメリット

サブリース契約には、オーナーとサブリース業者の双方にメリットがある一方、それぞれにデメリットもあります。

オーナー側のメリット・デメリット

オーナーにとってのメリットは、空室リスクを軽減し、賃料収入を安定的に確保できる点です。管理業務もサブリース業者に任せられるため、運営の負担も軽減できます。

一方、デメリットとしては、物件運用の自由度が下がることです。また、賃料が免除される期間や、賃貸状況に応じて賃料を改定できる旨が定められている場合もあるなど、契約内容が複雑でトラブルにつながるリスクがあります。さらに、入居者の退去時に発生する修繕費や補修費をオーナーが負担する場合がある点にも注意が必要です。

サブリース業者側のメリット・デメリット

サブリース業者にとってのメリットは、用地や建物を取得することなく収益を上げられる点です。

一方で、デメリットとしては、空室が続くとオーナーへの賃料支払いが負担となり、収益が圧迫されるリスクがあります。

サブリース契約における賃料増減額請求権の法的根拠

サブリース契約でも、借地借家法第32条にもとづく賃料増減額請求権が認められています。ただし、通常の建物賃貸借契約とは異なり、サブリース契約特有の事情も考慮して相当賃料額が判断されます。

この章では、その法的根拠と最高裁判例について解説します。

借地借家法と賃料増減額請求権

建物の賃貸借契約は長期間継続することが多く、家賃相場の変動などによって、当初定めた賃料が不相当となることがあります。

そのため、借地借家法第32条第1項では、建物の賃貸借契約の当事者は、一方的な意思表示によって賃料の増額または減額を請求できると定めています。

第三十二条 (借賃増減請求権)
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
引用:e-GOV法令検索|借地借家法(借賃増減請求権)

借地借家法第32条第1項は強行規定とされており、当事者間で賃料増減額請求権を放棄する合意をしても無効とされます。これは、適正な賃料水準を維持し、当事者の利益や公正な取引秩序を守るためです。

もっとも、貸主による賃料増額請求については例外があり、一定期間賃料を増額しない旨の特約がある場合は、その期間中は賃料増額請求をすることができません。

サブリース契約の賃貸借該当性

サブリース契約にも借地借家法第32条は適用されます。

サブリース契約では、借主であるサブリース業者が不動産事業に精通し、収益予測・建物建築・資金調達・賃貸管理などを行う一方、貸主であるオーナーは不動産事業に慣れていない個人であることも少なくありません。そのため、通常の賃貸借契約とは事情が異なり、借主保護を前提とする借地借家法をそのまま適用するべきかが問題となっていました。

この点について、最高裁平成15年判決は、サブリース契約も建物賃貸借契約に該当すると判断し、借地借家法第32条による賃料増減額請求が認められるとしました。

もっとも、賃料増減額請求の当否や相当賃料額を判断する際には、通常の賃貸借契約とは異なり、賃料額の決定要素となった事情などを総合的に考慮する必要があります。例えば、サブリース契約における賃料額や賃料保証特約は、オーナーが多額の資本を投下する前提となる重要な判断要素であり、十分に考慮されます。

そのため、サブリース契約では、賃料の鑑定額だけで直ちに相当賃料額が決まるわけではありません。オーナーが当初予測した収益や建築資金の返済計画なども踏まえて、相当賃料額が認定されます。

賃料増額請求の具体的要件と手続き

サブリース契約は借地借家法が適用される建物賃貸借契約に該当するため、一定の要件を満たせば、貸主は賃料増額請求をすることができます。

この章では、賃料増額請求が認められる条件や手続きの流れを解説します。

賃料増額が認められる3つの条件

借地借家法第32条第1項にもとづく賃料増額請求が認められるためには、以下のいずれかの事情が、現行賃料額が合意された時点(直近合意時点)以降に発生している必要があります。

  • 租税等の負担増加
    • 物件にかかる税金や保険料などが増加した場合です。固定資産税や都市計画税の負担が増えた場合は、賃料増額が認められる可能性があります。
  • 経済事情の変動
    • 経済事情や社会情勢の変化があった場合です。インフレによる物価上昇や金利上昇による借入金利息の増加など該当します。
  • 近隣同種建物の賃料との比較
    • 現在の賃料が周辺相場より低くなっている場合です。大型商業施設の開店や再開発により、周辺の賃料相場が上昇したようなケースが考えられます。

賃料増額請求の実務的な手順

賃料増額請求は、一般的に「協議」「調停」「訴訟」の順で進みます。

① 当事者間の協議

まずは、賃料増額の意思表示を行い、その理由を相手方へ説明します。

賃料増減額請求権は、一方的な意思表示が相手方に到達した時点で効力が生じます。しかし、相手方が直ちに賃料増減に応じるとは限らないため、周辺の賃料相場の上昇や経済事情の変動、オーナーの負担増加などの増額の根拠を具体的な資料とともに示し、理解を得ることが重要です。

② 調停申立て

協議で合意に至らない場合は、裁判所へ調停を申し立てます。

調停申立書には、増額請求の理由・請求金額・交渉経緯などを記載し、証拠資料を提出します。調停では、調停委員が双方の意見を聴き、解決策を提示します。

③ 訴訟提起

調停でも解決しない場合は、訴訟を提起します。

訴状に賃料増額の理由や証拠を添えて裁判所へ提出し、判決で賃料増額が判決で認められた場合は、賃料増額の意思表示が相手方に到達した時点にさかのぼって改定後の賃料が適用されます。

賃料自動増額特約と定期建物賃貸借契約の関係

サブリース契約では、「賃料自動増額特約」が設けられていたり、「定期建物賃貸借契約」が採用されていたりすることがあります。これらは、賃料増額請求の可否に影響するため、契約内容を確認することが重要です。

この章では、サブリース契約における賃料自動増額特約の有効性と、定期建物賃貸借契約における賃料増額の特徴について説明します。

賃料自動増額特約の有効性と限界

賃料自動増額特約は有効ですが、借地借家法による制限を受けます。

賃料自動増額特約とは、一定期間の経過や一定の基準に従って、自動的に賃料を改定する特約です。サブリース契約でも、「賃料を3年ごとに3%ずつ増額する」といった内容が定められることがあります。

もっとも、借地借家法第32条第1項では、一定期間建物の賃料を増額しない旨の特約を除き、特約によって賃料増減額請求権の行使を妨げることはできないとされています。そのため、賃料自動増額特約があっても、市場相場や経済事情が大きく変動した場合には、賃料増減額請求が認められることもあります。

定期建物賃貸借契約における賃料増額

定期建物賃貸借契約でも、原則として賃料増額請求は可能です。ただし、賃料増減額請求権を排除する特約は有効とされています(借地借家法第38条第9項)。

建物賃貸借契約には、「普通建物賃貸借契約」「定期建物賃貸借契約」があります。普通建物賃貸借契約では、借主が希望すれば原則として契約が更新されます。

一方、定期建物賃貸借契約は契約更新がなく、期間満了によって終了する契約であり、書面による契約締結や契約終了に関する事前説明などの要件を満たす必要があります。

借地借家法第38条第9項では、定期建物賃貸借契約について、賃料増減額請求権を排除する特約が有効とされています。これは、通常の建物賃貸借契約では「一定期間賃料を増額しない旨の特約のみ」が有効とされている点とは異なります。

そのため、契約書に「契約期間中は賃料を増額しない」「契約期間中は賃料を減額しない」といった特約がある場合は、その特約が有効となり、原則として契約期間中は賃料の増減額を請求できません。

もっとも、このような特約があっても、契約締結時に予見できなかった著しい経済事情の変動などが生じた場合には、事情変更の原則や信義則など民法の一般条項にもとづき、賃料増減額請求が認められる可能性があります。

オーナー側が今後取るべき実務的アクション

サブリース契約で賃料増額を目指す場合は、契約内容を確認した上で、客観的な根拠を準備し、適切な手順で交渉を進めることが重要です。

具体的には、以下の流れで対応するとよいでしょう。

  • ① 現行契約の再確認

まずは、現在のサブリース契約の内容を確認します。契約期間・更新条件・賃料条項に加え、賃料増額の条件・その時期や方法について具体的な定めがないか、また、自動増額条項の有無などを確認しましょう。
契約期間満了が近い場合には、契約更新時に賃料改定を交渉することも検討できます。

  • ② 近隣相場の調査

近隣の類似物件の賃料相場を調査し、賃料増額を裏付ける客観的な根拠を収集します。
あわせて、物価や地価の上昇などの経済指標の変化や、固定資産税などの負担増加を示す資料も準備しておくとよいでしょう。

  • ③ 内容証明郵便などによる意思表示

サブリース業者に対して、賃料増額の意思表示を行います。
口頭だけでなく書面によって通知し、証拠を残すためにも、配達証明付き内容証明郵便を利用することをおすすめします。

  • ④ 弁護士による交渉・訴訟支援の活用

賃料増額を検討している段階から、弁護士などの専門家に相談することが重要です。
特に、サブリース業者が賃料増額請求に応じない場合、早い段階で弁護士への依頼を検討しましょう。弁護士が交渉を行うことで合意に至る可能性があり、また、調停や訴訟に発展した場合も一貫したサポートを受けられます。

サブリース契約の賃料増額交渉が上手くいかない場合の対処

サブリース業者との賃料増額交渉がまとまらない場合は、契約の解約や更新拒絶を検討することになります。ただし、契約の種類によって要件が異なるため、事前に確認が必要です。

この章では、サブリース契約の解約や更新拒絶の方法、また、2020年の法改正による影響について解説します。

サブリース契約の解約・更新拒絶

サブリース契約を終了する方法には、「解約申入れ」「更新拒絶」があります。

貸主側から契約を解除するには、借地借家法第28条により正当事由が必要です。正当事由の有無は、主に以下のような事情を総合的に考慮して判断されます。

  • 貸主・借主双方の使用目的・必要性
  • 建物の賃貸借に関するこれまでの経緯
  • 建物の利用状況および建物の現況
  • 立退料の提示

また、契約期間満了時には、更新拒絶によって契約を終了させることもできます。もっとも、普通建物賃貸借契約では、貸主から更新を拒絶する場合にも正当事由が必要です。

一方、定期建物賃貸借契約では、契約期間の満了により終了するため、再契約をするかどうかはオーナーが判断できます。そのため、サブリース契約が定期建物賃貸借であれば、契約期間満了により終了させることが可能です。

2020年賃貸住宅管理業法改正の影響

2020年の賃貸住宅管理業法の施工により、サブリース業者には契約内容の説明など、オーナー保護のための義務が課されました。

2020年6月に成立した「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理業法)では、サブリース業者に対し、以下のような義務が課されることとなりました。

  • ・誇大広告の禁止(法第28条)
  • ・不当な勧誘の禁止(法第29条)
  • ・契約締結前における契約内容の説明および書面交付(法第30条)
  • ・契約締結時における書面交付(法第31条)
  • ・書類の閲覧(法第32条)

サブリース業者は、契約締結前に、賃料設定の根拠や賃料が減額される可能性などをオーナーに説明する必要があります。この法改正により、オーナーが契約内容を十分に理解したうえで契約できる環境が整備され、サブリース業者による一方的な条件変更などのトラブル防止が図られています。

よくある質問(Q&A)

この章では、サブリース契約に関して、よくあるオーナーの疑問にお答えします。

サブリース契約の賃料は固定ですか?

サブリース契約の賃料は、必ずしも固定ではありません。主に、「賃料固定型」と「実績賃料連動型」の2種類があります。

賃料固定型は、空室の有無にかかわらず、サブリース業者がオーナーへ一定の賃料を支払う契約です。オーナーは、一般的に満室賃料の80~90%程度を受け取れます。ただし、賃料固定型であっても、固定期間が限定されており、定期的な見直しによって賃料が変動することがあります。

一方、実績賃料連動型は、実際に入居者から得られた賃料に応じて、オーナーが受け取る金額が変動する契約です。空室が多い場合は収入が減少し、満室になれば収入が増える可能性があります。

オーナーはサブリース賃料を一方的に増額できますか?

一定期間は賃料を増額しない旨の特約がなければ、法的には借地借家法32条1項にもとづき、オーナーはサブリース業者に対して賃料増額請求をすることができます。

もっとも、サブリース業者が同意しなければ、事実上、増額した賃料は支払われません。そのため、まずはサブリース業者と交渉し、交渉がまとまらない場合には調停や裁判によって解決を図ります。調停や裁判で増額が認められれば、増額通知をした時点にさかのぼって賃料が増額されます。

なお、サブリース契約書には、賃料改定条項が設けられていることが一般的です。賃料の見直し時期や増額条件などが定められている場合は、その内容に従って交渉を進める必要があります。

入居者の賃料が上がった場合、サブリース賃料も増額できますか?

サブリース業者が入居者から受け取る賃料が上がったとしても、そのことだけを理由に、オーナーがサブリース業者へ契約賃料の増額を求められるわけではありません。

もっとも、入居者の賃料上昇は、周辺の賃料相場が上昇していることを示す間接的な証拠となり得ます。そのため、近隣の賃料相場などの資料も収集した上で、現在のサブリース賃料が不相当に低いことを主張し、増額交渉を行う余地があります。

また、サブリース契約書に、周辺相場が変動を理由とする賃料見直し条項がある場合は、その条項に基づいて増額交渉を進めることも可能です。

東京都千代田区の不動産に強い弁護士なら直法律事務所

サブリース契約により不動産投資を行っているオーナーも、サブリース業者に対する賃料増額請求は可能です。賃料増額の同意が得られなければ、調停や裁判を利用して賃料増額を認めてもらえる可能性もあります。

賃料増額に際してはサブリース契約特有の事情も考慮されます。賃料増額の実現可能性を高めるためには、増額を必要とする根拠となる資料を用意するなどして臨むべきですが、どのような資料を用意すればよいのか、どのような説明をすれば納得してもらえるのかなど、物件の状態や契約内容に応じて対応する必要があります。

直法律事務所では、賃料増額請求に関する交渉や調停・訴訟対応まで、賃貸不動産に関する案件について豊富な経験を有する弁護士が丁寧にサポートいたします。賃料増額請求についてお悩みの方は、まずは一度ご相談ください。

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