澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、「賃料増額請求における調停前置主義の意味や根拠・実際の注意点」について、詳しくご説明します。
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近年の土地価格上昇に伴い、賃料を増額したいと感じている不動産オーナーもおられると思います。
しかし、ただでさえ物価が上昇している今、家賃を増額するとなると入居者から不満の声が出て争いになるケースもあります。
この記事では、賃料増額請求における調停前置主義の概要と、調停申立ての流れについて解説します。
実務上の注意点や対応策についても紹介しますので、賃料増額請求を考えている人はぜひ参考にしてください。
民事調停と民事訴訟の違い

まず、民事調停と民事訴訟の基本的な違いを理解しておきましょう。
民事訴訟とは、裁判所の公開された法廷で、当事者同士が互いに自分の権利を主張し、必要に応じて証拠を提出し、最終的に裁判官がどちらの主張が正しいかの判断を示す手続きです。
裁判官が下す判断を「判決」といいます。
それに対し、民事調停とは、裁判所内の非公開の部屋(調停室)で、調停主任裁判官と民間人から選出された調停委員によって構成される調停委員会が、当事者それぞれの言い分を聞き、当事者同士が互いに譲歩しながら解決策を生み出していく手続きです。
調停委員は2名以上とされていますが、通常は2名で構成されます。
民事調停にもさまざまな種類があり、賃料増額請求は民事調停事件の中でも「宅地建物調停事件」に該当します。また、民事調停法第24条の2において、賃料増額請求について訴えを起こそうとする人は、まず調停の申立てを行わなければならないとしています。
借地借家法(平成三年法律第九十号)第十一条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第三十二条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。
2 前項の事件について調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、受訴裁判所は、その事件を調停に付さなければならない。ただし、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
賃料増額請求の基礎となる賃貸借関係は、当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約であるため、円満な関係を維持するため、できるかぎり当事者の合意による解決をするのが望ましいことから、まず調停をするものとされています。
なお、調停の場合、訴訟よりも手続きが簡易なため、迅速に解決まで進める点もメリットです。
民事調停の特色と解決方法
民事調停は、民事訴訟と異なり、非公開で行われます。そのため、内容を当事者以外に知られることはありません。調停主任裁判官と民間人から選ばれた調停委員(2名以上)による調停委員会が構成され、当事者双方の言い分を聞き取り、互いに譲歩できる点はないかを探りながら解決策を図っていく仕組みです。
なお、調停では当事者双方が顔を合わせる必要はありません。調停委員がいる部屋に当事者は交互に入室して調停委員と話をします。一方の当事者が調停室に入っている間、もう一方の当事者は待合室で待ちます。そして待合室も申立人と相手方で別の部屋が割り当てられているので、同じ部屋にいる必要はありません。
民事訴訟の特徴と手続きの流れ
民事訴訟では裁判所の公開の法廷にて当事者同士が権利を主張し、事実関係についての証拠を提出して、最終的に裁判官がどちらの主張が正しいかの判決を下します。
訴状提出から判決までの基本的な流れは以下のとおりです。
- 訴状の提出(原告側)
- 裁判所が訴状を審査し、被告側に訴状を送る
- 口頭弁論 : 裁判所で原告と被告がそれぞれの権利を主張する
- 証拠調べ : 必要に応じて裁判官が証人尋問や当事者尋問を行う
- 判決 : 裁判官が最終的な判決を下す(判決前に和解が成立することもある)
原則として、賃料増額請求が訴訟に至るのは、調停が不成立になったケースです。争い・対立が激しい状態であるケースが多い賃料増額請求の訴訟において、増額された賃料額が妥当かどうかを判断するための鑑定評価が重要なポイントになります。
調停による解決のメリットとは
調停では非公開の場で調停委員会を通した話し合いが行われるため、柔軟で具体的な解決策が見つかりやすいといったメリットがあります。また、手続きも簡易なため、解決までの時間が短い点もメリットでしょう。
ちなみに、調停による合意は判決と同等の効力を持ちます。
調停の最大のメリットは、話し合いにより解決を求めるという性質上、訴訟と比べ、オーナーと入居者の関係を悪化させることなく解決へ導けることです。
賃料増額請求と宅地建物調停の関係

なぜ、賃料増額請求には調停前置主義が採られているのでしょうか。
建物の賃貸借や建物所有目的の賃貸借は、契約関係が長期間継続することが多く、オーナーと賃借人との信頼関係を重視する必要があります。そのため、賃料増額請求については可能な限り当事者間で話し合いによって解決することが求められるのです。
したがって、「賃料の増減額の請求に関する事件」を民事調停法では調停前置となる案件の対象としています。
賃料増額調停が該当する調停の種類
調停事件は以下のように8つの区分に分かれています。
- 民事一般調停事件
- 宅地建物調停事件
- 農事調停事件
- 商事調停事件
- 鉱害調停事件
- 交通調停事件
- 公害等調停事件
- 特定調停事件
そして、賃料増額調停が該当する調停は「宅地建物調停事件」です。宅地建物調停事件とは、宅地又は建物の貸借等の利用関係の紛争に関する調停事件をいいます。調停は管轄の簡易裁判所に対し、申立てを行うことにより始まります。
宅地建物調停事件における法定の管轄裁判所は、紛争の目的である宅地又は建物の所在地を管轄する簡易裁判所ですが、合意がある場合は紛争の目的である宅地又は建物の所在地を管轄する地方裁判所も管轄とすることができます(民事調停法24条)。
そして、賃料増減請求事件の調停については、調停の前置を原則とする旨が民事調停法24条の2で定められています。
賃料請求権の法的根拠
賃料増額請求の法的根拠となるものは、地代等増減請求権(借地借家法第11条(土地))および借賃増減請求権(借地借家法第32条(建物))です。
土地および建物を賃貸している場合、その賃料が不相当となった時には契約の条件にかかわらず、将来に向けて賃料の増減を請求することができるというものです。
地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
賃料増額請求の意思表示は口頭でも構わないと言われています。しかし、後になって揉めることのないように書面で残すことが一般的です。例えば、オーナーから入居者に対し、「賃料増額のお知らせ」といった通知を送るなどです。
ただし、条文にもあるように、賃料増額請求は、現在の賃料が租税公課や土地建物の価格上昇その他の経済事情の変動や近隣の同程度の建物の賃料の上昇など「客観的かつ経済的な変動」により従来の賃料が不相当となった場合に認められるものです。そのため、賃料が不相当となった根拠を示さなければなりません。
また、賃料増額請求の対象となる「相当な額」については、訴訟で解決する場合には、不動産鑑定士による評価を基に判断されることが多いです。そのため、話し合いの段階や調停の段階でも、不動産鑑定士が用いる基準を用いて相当な額の賃料を算出することで相手方の納得が得やすくなります。
不動産鑑定士は、国土交通省が定めた以下の基準に従って評価を行います。
- 差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例法を用いながら、それぞれを関連付けて算定すること
- 直近の契約合意時点からみた客観的な経済的な事情に加え、これまでの賃貸契約書の内容や賃料改定の経緯なども総合して判断すること
宅地建物調停における手続きの特徴
民事調停法は、第1章で民事一般調停事件の通則を定めたうえで、第2章にて特記として「宅地建物調停事件」や「農事調停事件」などを定めています。
そして、宅地建物調停事件の場合はまず調停の申立てを行わなければならないとし、申立てを行わずに訴訟を行った場合にはそれを受けた裁判所は、それを調停に付さなければならないとしています。
どのような調停委員が担当するかについては、裁判所が判断する事項ですが、賃料増額請求の場合、弁護士や不動産鑑定士等が選任されることが多いです。これは弁護士が持つ法的な専門性に加え、賃料の評価についての考えを不動産鑑定士であれば判断できるためです。
また、申立人と相手方の双方が、調停の申立ての後、合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合、調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意をした場合、調停委員会は、申立てにより、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができます。
この調停条項を調書に記載したときは、調停が成立したものとみなされ、裁判上の和解と同一の効力を持ちます。
調停は基本的に当事者の合意がなければ成立しませんが、この調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意をした場合、賃料増額について当事者で合意できなくても、申立てることにより調停の中で紛争を解決することも可能です(調停条項の裁定)。
訴訟手続の費用、時間、労力が不要となる点でメリットがありますが、訴訟を視野に入れて調停をしているケースも多く、当事者でこのような合意が成立することは稀なため、ほとんど利用されていないようです。
調停条項の裁定は賃料増減額請求に関する調停の特徴的な制度ですが、調停一般の制度として、調停に代わる決定(17条決定ともいいます)という制度も利用できます。
これは、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合に、裁判所が相当と認める場合、調停委員の意見を聴き、当事者双方の衡平に考慮し、一切の事情を見た上で、職権で、当事者双方の申立ての主旨に反しない限度で事件解決のために必要な決定をすることができます。
ただ、当事者が2週間以内に適法に異議を申立てれば決定の効力が失われます。そのため、大筋で合意しているが細かな点で争いがある場合や、合意はできないが裁判所の決定なら従うという当事者がいるような場合に利用されることが多いです。
調停前置主義の意義と適用範囲

民事調停法第24条の2によると、「借地借家法32条の建物の賃料額の増減額請求に関する事件について訴えを起こそうとする場合は、まず調停の申立てをしなければならない」としています。
つまり、借地借家法によって賃貸借契約を行っている対象の土地や建物の賃料増減額請求については、いきなり訴訟を起こすのではなく、調停にて合意的に解決することが望ましいとされているのです。
これは借地借家法による賃貸借契約が長期に及ぶことが多いという特徴から、貸主と借主との円満な関係性を重視するためです。
調停前置主義の法的根拠と目的
賃料増額請求の調停前置主義は民事調停法24条の2第1項によって定められています。
ただ、この調停前置主義は平成4年の法改正によって導入されたものです。実際には導入前からもいきなり訴訟を起こすのではなく、調停を先に行うことが多かったことから、同じ時期に改正された借地借家法と合わせた形です。
改正前は家事事件だけが調停前置の対象でしたが、調査委員に不動産鑑定士が存在することや、借地借家法による人間関係の継続的な維持の必要性から、調停による円満な合意が求められることになりました。
賃貸借関係における信頼関係の重要性
賃貸借契約では、貸主であるオーナーと借主である入居者の信頼関係が重要です。賃料は、居住という生活に欠かせないスペースの提供に対する対価の支払いであり、金額の妥当性は互いの信頼関係の基礎となるものです。
仮に入居者が現時点での賃料は妥当でないと判断し、賃料の減額を求めても、貸主であるオーナーが応じなかった場合、契約を解除し、退去する可能性も否定できません。
そうなると、賃料収入が減少し、賃貸経営状況も悪化してしまうでしょう。経営状況の悪化により必要な修繕が行えなくなると、他の入居者の生活に支障が出る可能性があります。
当事者合意による解決の優先
賃料増額請求においては、できるだけ当事者の合意による解決が望ましいとされています。また、通常、金額が少額であることや、迅速な解決が求められる点も調停前置主義が採用される理由です。
調停により合意が得られれば、訴訟で争う場合と比べて、今後の人間関係の悪化を小さくとどめることができ、良好な関係性を継続できる可能性も高まります。この良好な関係性の構築こそが、賃貸借契約の安定につながる大きなポイントであり、調停を前置する意味なのです。
調停前置が必要となるケース
民事調停法24条の2第1項では、「借地借家法第11条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第32条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない」としています。
つまり、賃貸借契約によって賃料が定められている場合の賃料の増減額の請求に関する事件については、調停前置が必要で、具体的な請求の内容については以下が挙げられます。
- (賃料増額請求の効果が生じた時点の)賃料の額の確認
- (増額請求後の増額賃料に不足する分)賃料の給付請求
- 相手側(賃借人)からの債務不存在の確認請求
たとえば、オーナーから入居者に対して賃料の値上げが通知されたものの、入居者側がその金額に同意できないなどです。同意できないとまではいわなくても、その金額が妥当なのか疑問に感じる場合も同じです。
賃料増減額に関連しそうであっても調停前置が不要なケースの例として以下のものが挙げられます。
- 土地や建物の明け渡し請求(賃料増額や減額に関連する賃料不払いなどを理由とする場合であっても調停を経ずに訴訟可能)
- 合意により増額や減額をした賃料額の確認をする場合や合意した賃料の給付請求をする場合
- 賃料の自動改定特約の有効性について判断を求める場合
協議の余地がない場合の対応

仮に貸主であるオーナーと借主である入居者の間で賃料増額請求を巡り大きな対立があり、調停を申立てても入居者側が協議に応じないことが明らかな場合でも調停の申立てを行わなければならないのでしょうか。
民事調停法第24条の2第2項によると、「調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、受訴裁判所は、その事件を調停に付さなければならない。」とされています。つまり、調停前置が原則です。
しかし、例外もあります。
民事調停法第24条の2第2項によると、「ただし、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。」とされています。つまり、訴訟の申立てを受ける裁判所が、調停が適当でないと判断した場合には調停にまわさず、そのまま訴訟を進めることができます。ただ、判断は裁判所に委ねられています。
では、具体的にどのような場合に調停に付することが適当でないと認められるのでしょうか。
まず、当事者間の対立が激しく、調停での合意の見込みがない場合が考えられます。しかし、実際には、対立が激しいというだけの理由では、なかなか「調停に付することが適当でない」と判断されることは少なく、調停に付されるケースが多くみられます。
そのため、調停に付することが適当でないと判断されるのは、過去に複数回の賃料額について対立があり、話し合いや調停で解決できずに訴訟に至っているような場合などと考えられます。
調停措置の実務上の注意点と対応策

賃料増額請求は調停前置主義ではあるものの、実務上では以下の点に注意が必要です。
調停を申し立てても相手が応じない場合
調停前置主義を採用していても、相手方が行方不明などで調停期日に参加する見込みがない場合は、調停では解決することができません。調停は、相手方との合意がなければ成立しないためです。
相手方が調停に出席しない場合は、調停は不成立となり、訴訟を起こすことができます。
また、相手方が調停期日に参加する見込みがない場合、調停前置主義の例外的なケースとして、調停申立をせずに、訴訟を提起することが考えられます。相手方が参加する見込みの程度などにもよると考えられますが、受訴裁判所が調停に付することが適当でないと判断すれば、そのまま訴訟を進めることができます。
調停前置を経ずに訴訟を提起した場合の取扱い
相手方と絶縁状態にあるなど、対立が激しく、調停での解決が不可能と考えられる場合、調停を経ずに訴訟を申立てることが考えられます。
しかし、前述のとおり、対立が激しいからと調停を経ずに訴訟を起こしても、調停に付されるケースが多くみられます。対立が激しいというだけの理由では、なかなか「調停に付することが適当でない」と判断されることが少ないのです。
ただ、過去に何度も賃料額について対立があり、話し合いや調停での解決が困難で訴訟に至ったようなケースであれば、調停に回さず、訴訟を進めるという判断になる可能性もあります。また、前述のとおり、相手方が調停期日に参加する見込が全くないようなケースでは、調停に付さず、訴訟を進めるという判断になる可能性が高いです。
さらに、家賃を集団的かつ画一的に決定すべきようなケース(都市再生機構の賃貸住宅など)場合には、やはり「調停に付することが適当でない」と判断される可能性があります。
効果的な賃料増額請求の進め方
賃料増額請求を効果的に進めるためには、できるだけ当事者の合意が得られるよう、事前に話をしながら進めていくことが大切です。もちろん相互の信頼関係を維持する努力も不可欠です。
しかし、相手が複数の場合、どうしても賃料増額請求に合意してくれない人が出てくる可能性があります。
その場合、調停に進むことが考えられます。調停を申立てる際には、申立書や添付書類の作成準備に加え、相手方を説得できるよう調査や資料の収集、主張を説明する書類の作成もしておくべきです。
これらの作業については専門的な知識が必要であり、効果的に進めるためには、調停を申立てる前に、弁護士などの専門家へ相談し、アドバイスを受けることをおすすめします。
【初回30分無料】お問い合わせはこちら実務上の注意点と対応のコツ 調停前置を踏まえた戦略的対応

実際に調停を申立てる際の実務上の注意点および対応のコツについてもしっかりと理解しておきましょう。
具体的な内容には以下のものがあります。
- 早期に資料(相当な賃料額の根拠となる資料・相場データ)を整えておく
増額金額の根拠を示すためにも重要な書類です。書類をそろえ、相手を説得できる、合理的な説明ができるようにしておきましょう。 - 調停段階でも「説得力のある主張」が重要
相手側が快く納得してくれる説明を考えておきましょう。自分では交渉が難しいと感じるなら弁護士に相談することをおすすめします。 - 相手の態度に応じて訴訟を見据えた交渉も
相手によっては増額に応じない姿勢をあらわにすることも考えられます。最終的には調停が不成立に終わり、訴訟になることを見据えながら交渉することも大切です。
よくある質問(Q&A)

Q1. 借主が調停に出てこなかったらどうなりますか?
調停期日への出頭は法的義務であり、正当な事由がなく出頭しないときは5万円以下の過料に処せられることもあります(民事調停法34条)。
ただ、実際は不出頭を理由に過料に処せられることはほとんどありません。そのため、借主が調停期日に出席しないことも十分に考えられます。その際には、また日程を調整して通知しますが、欠席が続く場合は調停が不成立として打ち切られます。
この場合、訴訟を提起することになります。
Q2. 弁護士に依頼せずに調停できますか?
調停は弁護士に依頼しなくても申立てることができます。
しかし、月1回ほどのペースで開催される調停期日に毎回、自ら出席する必要があります。そのたびに相手方の主張を理解した上で当方の主張を検討し、必要があれば調査や資料の収集をし、調停委員会に提出する準備もし、さらに当日、調停委員に説明しなければなりません。
これはかなりの負担になると考えられます。また、相当な賃料額の根拠資料を示しながら説明して調停委員を通じて相手方の理解を求める必要があり、資料の収集や合理的な説明をする能力、法的な専門知識や交渉術などが求められるため、できるだけ専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。
Q3. 調停に出席すれば家賃を上げられますか?
調停が成立するか否かは、申立人と相手方が合意できるか否かで決まります。
そのため、賃貸人が賃料増額を求めて調停を申立てて出席しても相手方が出席しなければ調停を進めることもできません。また、相手方が納得しなければ調停は成立せず、家賃を上げることができません。この場合、訴訟を提起して解決を求めることになります。
ただ、申立人と相手方の双方が、調停の申立ての後、合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合、調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意をした場合、調停委員会は、申立てにより、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができます。この調停条項を調書に記載したときは調停が成立したものとみなされ、裁判上の和解と同一の効力を持ちます。
これにより家賃が上がるか否かは、調停でどれだけ調停委員会の納得を得られたかにかかってきますので、出席すれば家賃を上げられるということはありません。
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賃料増額請求を行うためには、いきなり訴訟を起こすのではなく調停を申立てる必要があります。
なぜなら、建物等の賃貸借契約は長期にわたり継続することが多く、当事者間の信頼関係をできるかぎり維持するのが望ましく、対立が激化しやすい訴訟より、話し合いを前提とする調停が適しているからです。
調停は非公開の場で行われ、調停委員会を通じて当事者がそれぞれの言い分を伝えあい、合意を目指すものです。
調停の申立ては誰でも行うことができますが、賃料増額請求を行ううえでの根拠となる資料や相当な賃料額の算定、調査など事前の準備が多く、専門的な知識が必要です。そのため、調停を申立てる前の段階で弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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