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ショッピングモールの運営上の留意点2~出店者との関係~

Q
 当社は、ショッピングモールサイトを運営したいと考えていますが、出店者との関係で気を付けるべきことはありますか。

A
 公正取引委員会が「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書」において、プラットフォーマーがプラットフォームの利用事業者に対して優越的地位に立つ場合には、一定の行為が独占禁止法上問題になり得るという考え方を示しました。

 また同様に、プラットフォーマーと利用事業者の関係で独占禁止法上問題となり得るその他の行為類型も示されています。

 モールを運営する際には、出店者との関係で独占禁止法の規制対象となる可能性があるため、その点に留意が必要でしょう。

はじめに デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書

 ショッピングモールサイト(以下、単に「モール」といいます。)をはじめとするデジタル・プラットフォーム(以下、単に「プラットフォーム」といいます。)は、その規模が大きくなれば顧客やデータが集中し、更なるサービスの拡充をもたらします。

 そうすると、プラットフォームの参加者には、別のプラットフォームに乗り換えたくても乗り換える際に大きなコスト(スイッチングコスト)が生じ、そのコストを回避するために同じプラットフォームを利用し続けることになります(ロックイン効果といいます)。

 そして結果として、プラットフォーマーは取引先に対して優越した地位に立つことになり、プラットフォーマーはその立場を利用して、取引先に不当な条件を提示するおそれが生じてきます。

 このような懸念から、公正取引委員会は、令和元年10月に「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書」を公表し、その中で、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となり得る行為類型をいくつか挙げています。

 また、その他にも、「競合事業者を排除し得る行為」や「取引先の事業活動を制限する行為」、「公平性・透明性に欠けるおそれのある行為」として独占禁止法上問題となり得る行為類型も挙げています。

 以下では、モールを運営する際に、モール運営者と出店者の関係で留意しておくべきものを説明していきます。

規約変更による取引条件の変更

 モール運営者と出店者は出店契約を締結し、出店者は出店規約に従うこととされますが、契約締結後に、モール運営者が出店者に通知をするのみで一方的に規約を変更することがあります。

 このような規約変更により、自己の取引上の地位が出店者に優越している運営者が、正常な商慣習に照らして不当に出店者に不利益を及ぼす場合には、独占禁止法上問題(優越的地位の濫用)となる可能性があるので、注意が必要です。

 どのような場合が優越的地位の濫用となるかは、次の事項を考慮して判断されます。

  1. 規約変更によって出店者が被る不利益の内容
  2. 規約を変更する合理的な理由の有無
  3. 規約変更によって取引条件を改定する通知から実施までの期間
  4. 新規システム等を導入する利益がないにもかかわらず、 モールの利用を継続するためにその導入等に伴う不利益を受け入れざるを得ない出店者の数

 規約を変更するにあたっては、モール運営者自身の事情だけではなく、出店者全体に及ぼす影響を十分に加味して合理的なものとしなければいけません。

 また、出店者が多数いると、個別に規約変更の交渉をするコストがかかりすぎることから、通知による一方的な変更となってしまうことも仕方がないといえますが、その際には、次のことが求められます。

  1. 出店者に変更内容を事前に通知して十分に説明する
  2. 規約変更について出店者から合理的な意見が寄せられた場合には当該意見をできる限り考慮する
  3. 規約変更の通知から適用されるまでの期間を十分に設ける

 一方的に規約を変更するにしても、できる限り出店者にも関与の機会を設けることが大切です。

手数料の算定方法・根拠

 モール運営者は、出店者からモールを利用する手数料を徴収し、これによってモールの運営費用を賄っていますが、当該手数料の徴収に当たり、従前に決めた条件よりも不利な内容を出店者に押し付けたり、取扱いを明確に決めていなかった手数料の徴収について、運営者と出店者という力関係を利用して自己に有利な運用をするなどにより、自己の取引上の地位が出店者に優越している運営者が、正常な商慣習に照らして不当に出店者に不利益を及ぼす場合には、独占禁止法上問題(優越的地位の濫用)となる可能性があるので、注意が必要です。
 どのような場合が優越的地位の濫用となるかは、次の事項を考慮して判断されます。

  1. 手数料の根拠となるサービスの使用によって出店者が得る直接の利益と手数料の額の関係
  2. モールの運営やシステム変更に要するコスト等、手数料を算出・請求する合理的な理由の有無
  3. モールを継続して利用するために手数料の徴収を受け入れざるを得ない利用事業者の数

 手数料は出店契約における根幹部分でもあるので、その額や算出根拠、内訳、使途等については、十分に説明した上で内容を書面に定めておくことが必要でしょう。

消費者に対する返品・返金の際の対応

 モール運営者は、悪質な返品であっても、それの受け入れを出店者に事実上強制し、返品に伴う損失の負担を出店者に求める場合があります。

 これによって自己の取引上の地位が出店者に優越している運営者が、正常な商慣習に照らして不当に出店者に不利益を及ぼす場合には、独占禁止法上問題(優越的地位の濫用)となる可能性があるので、注意が必要です。

 どのような場合が優越的地位の濫用となるかは、次の事項を考慮して判断されます。

  1. 返品・返金の受入れにより出店者が負担する損失の内容
  2. 出店者に瑕疵がないにもかかわらず、運営者が返品・返金を受け入れ、それに伴う損失を出店者に一方的に負担させていないかなど、返品・ 返金の受入れに係る基準の合理性の有無
  3. モールの利用を継続するために返品・返金に伴う損失を受け入れざるを得ない出店者の数

 モール運営者はどのような場合にどのような条件で返品・返金を行うのかについて書面に定めておくことが必要です。

 また、その基準が悪用されるおそれがあるなどの理由から詳細な条件の明文化が難しい場合には、公正かつ独立して当事者間の紛争解決を図る第三者(調停者)を定めることも検討する必要があります。

取引データを利用した運営事業者の直接販売

 モール運営者の中には、自身も直接商品やサービスの販売を行う者もいます。

 そのような運営者と出店者は、同種の商品等を販売する場合には競合することになりますが、運営者は、モールを運営・管理するという立場上、競合する出店者がモール上で行った取引に係る販売情報や顧客情報等の取引データも技術的には入手が可能です。

 この場合に、運営者としての立場を利用して得た競合する出店者の販売情報や顧客情報等の取引データを自ら又はその関連会社による販売活動を有利に行うために利用し、競合する出店者と消費者との取引を不当に妨害すれば、 独占禁止法上問題(競争者に対する取引妨害等)となる可能性があるので、注意が必要です。

 このような情報の流用を疑われてトラブルとならないように、モール運営者としては、モールの運営・管理を通じて得られる取引データについて、自ら又はその関連会社による利用の有無や仮に利用する場合には、その目的や範囲、当該データにアクセスする条件等について、出店者や消費者に明示することが必要です。

最恵国待遇条項(MFN条項)

 モール運営者の中には、出店契約に、出店者が当該運営者のモール上で販売する商品やサービスの価格や品揃え等について、他の販売方法によるそれと同等以上の取扱いを義務付ける条項(最恵国待遇条項、MFN条項といいます)を設ける者もいます。

 具体的には、モールAとモールBの2つのモールに出店している事業者に対して、モールAの運営者が、モールBと同等またはそれよりも安い価格設定を要求したり、モールBと同等またはそれよりも豊富な品揃えを要求する場合などです。

 このような条項を設定すると、モールを利用する事業者間やプラットフォーム間の競争が阻害され、価格や品揃えの充実を巡る競争による利益を消費者が享受できなくなるおそれが生じます。

 特に、市場における有力なプラットフォーム事業者(以下、「A」とします。)がMFN条項を設けると、そこでの出店者は、他のプラットフォーム上でAより安い出品ができず、A以外のプラットフォーム事業者としては、出店者からAより安価な供給を受けることができなくなり、価格競争が機能しにくくなるおそれが生じます。

 このようなプラットフォーム間の競争を阻害するような影響がある場合には、独占禁止法上問題(拘束条件付取引)となる可能性があるので、注意が必要です。

販売促進活動の制限

 モールのデータベースには、個別の店舗における消費者の購入履歴等の顧客情報が集積されています。

 モール運営者は出店者に対して、この顧客情報の利用に一定の制限を設けることがあります。

 その制限が個人情報保護の必要性等、正当な目的を達成するために行われるものであれば、消費者にとっても利益となるものです。

 しかし、運営者が出店者による販売によって得た顧客情報について、自ら又はその関連会社の販売を有利に進めるために出店者に提供しないことにより、出店者の販売を不当に妨害する場合には、独占禁止法上問題(競争者に対する取引妨害等)となる可能性があるので、注意が必要です。

 顧客情報の利用に関して出店者とのトラブルを未然に防ぐためには、出店者による顧客情報に対するアクセスの可否やその範囲、モール外での販売促進活動に制限を設ける範囲及びその理由等についてあらかじめ書面に定めておくことが必要です。

審査基準及び運用

 モールの運営者は独自で出店ないしは出品の審査基準を設定し、その基準を満たした者にのみ出店や出品を許可しますが、出店者としては、その基準が不透明・不明確であり、予測可能性がないという不満や、出品審査の結果が審査を受ける出店者により異なるのではいかという不公平感を持つ場合もあります。
 この点については、公正取引委員会は、具体的な独占禁止法上の問題点を指摘してはいませんが、取引の公正性・透明性を高め、公正な競争環境を確保するために、運営者は以下の対応を取ることが必要であるとしています。

  1. 商品の販売に関する審査基準を明確化し、審査の一貫性を高めること(明確化により脱法的行為が容易になる側面もあるため、審査基準に解釈の余地を残す必要性は認められるが、その場合は審査基準を巡る紛争に備え、調停者を定めることも検討すること。)
  2. 運用状況(申請件数、不承認とした件数及びその理由、審査期間等)を開示し、利用事業者の予見可能性を高めること
  3. 審査の体制を整備し、可能な限り公平な審査結果となるよう努めること

公正取引委員会が法的措置をとった事例

 これまで解説してきた独占禁止法上問題となり得る行為類型について、実際に、独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会が法的措置をとった事例があります。
 ここでは、その事例をいくつか紹介していきます。

① 「楽天市場」における一律送料無料の導入について

 楽天は、平成31年1月、自社で運営するモール「楽天市場」において、一定額以上の取引については一律に送料を無料とする「共通の送料込みライン」を導入する方針を公表し、同年12月、令和2年3月18日より、これを適用することを出店者に通知しました。

 この施策について、公正取引委員会は、「『共通の送料込みライン』の導入は、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方に不利益となるように取引の条件を変更しているものであって、独占禁止法第2条第9項第5号ハ(注:優越的地位の濫用)に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反する疑いがある」として、令和2年2月28日、独占禁止法70条の4第1項の規定に基づき、楽天に対する緊急停止命令の申立てを東京地方裁判所に対して行いました。

 緊急停止命令とは、公正取引委員会の申立てを受けて、裁判所が「緊急の必要」があると認めた場合に、独占禁止法違反の疑いがある行為を一時停止させる命令のことです。

 公正取引委員会は、独占禁止法違反の行為に対して、排除措置命令(事業者に対して独占禁止法違反行為のとりやめ等を命じる行政処分)を出すことができますが、排除措置命令の審査にはかなりの時間を必要とし、その間に違反被疑行為による競争秩序の侵害が続くおそれがあることから、緊急の必要がある場合には、裁判所の司法審査を経て、違反の疑いがある行為を一時停止させることができるとしたものです。

 公正取引委員会の緊急停止命令の申立てを受けて、楽天は、「本施策に関しましては法令上の問題はないものと考えております」とコメントし、一律送料無料の導入の姿勢を崩しませんでしたが、結局、本施策については、新型コロナウイルスの感染拡大等の影響に鑑みて出店事業者が参加するか否かを自らの判断で選択できるようにすること等を公表し、一律の導入とはしませんでした。

 そのため、公正取引委員会も「出店事業者が参加するか否かを自らの判断で選択できるようになるのであれば、当面は、一時停止を求める緊急性が薄れる」と判断し、令和2年3月10日、東京地方裁判所に対して行っていた緊急停止命令の申立てを取り下げることとしました。もっとも、本件違反被疑行為に対する審査については、なお継続することとしています。

・公正取引委員会「(令和2年2月28日)楽天株式会社に対する緊急停止命令の申立てについて」

・公正取引委員会「(令和2年3月10日)楽天株式会社に対する緊急停止命令の申立ての取下げについて」

② 「Amazonマーケットプレイス」におけるポイント付与の強制について

 アマゾンジャパンは、 平成31年2月20日、Amazonマーケットプレイスの出品者との間のAmazonポイントサービス利用規約を変更し、出品される全ての商品について最低1パーセントのポイントを付与し、当該ポイント分の原資を出品者に負担させる旨の内容としました。
 この規約変更について、公正取引委員会は、独占禁止法上の懸念(優越的地位の濫用)があると考え、その調査を開始しました。しかし、同年4月10日、アマゾンジャパンは、上記規約の変更を修正し、商品をポイントサービスの対象とするか否かについて、出品者の任意としたため、公正取引委員会は、翌11日、当該規約変更に係る調査を継続しないこととしました。

・公正取引委員会「(平成31年4月11日)アマゾンジャパン合同会社によるポイントサービス利用規約の変更への対応について」

③ 「楽天トラベル」におけるMFN条項について

 楽天は、自社で運営する「楽天トラベル」と称するウェブサイトに宿泊施設を掲載する宿泊施設の運営業者との間で締結する契約において、当該ウェブサイトに当該運営業者が掲載する部屋の最低数の条件を定めるとともに、宿泊料金及び部屋数については、他の販売経路と同等又は他の販売経路よりも有利なものとする条件を定めていました。
 この条件について、公正取引委員会は、独占禁止法19条(不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕)の規定に違反する疑いがあるものとして、令和元年7月23日、確約手続通知を行いました。

 確約手続とは、独占禁止法違反の疑いがある行為について、公正取引委員会と事業者との間の合意により自主的に解決を図る仕組みであり、公正取引委員会から通知を受けた事業者が、違反の疑いの理由となった行為を排除するために必要な措置等を記載した確約計画を作成し、公正取引委員会がこの計画を認定した場合、排除措置命令や課徴金納付命令を行わな いとする制度のことです。

 このような仕組みは、競争上の問題の早期是正、独占禁止法の効果的・効率的な執行に資するものとして、平成30年12月に導入されたものであり、本件が初適用の事例となりました。

 通知を受けた楽天は、本件で問題となった条件を撤廃することや今後3年間同様の条件を設けないこと、これらの措置を「楽天トラベル」に宿泊施設を掲載する事業者に通知し、かつ、「楽天トラベル」事業に係る従業員に周知徹底することなどを定めた確約計画を作成し、申請しました。
 これを受け公正取引委員会は、当該計画を審査し、これが独占禁止法に規定する認定要件に適合するものと認めたため、令和元年10月25日、当該計画を認定しました。

・公正取引委員会「(令和元年10月25日)楽天株式会社から申請があった確約計画の認定について」

おわりに

 公正取引委員会は、今回説明してきた行為類型について、まだ調査報告と考え方をまとめた段階であり、直ちに独占禁止法違反に該当するとは述べていません。

 しかし、問題意識はもっており、実際に法的措置をとった事例も存在します。

 そして、今後検討を重ねて、どのような行為がどのような要件で独占禁止法違反となるのかを明確に示すことが予想されます。その際には、今回説明した報告書の考え方が基礎となるでしょうから、今のうちにその考え方を抑えておくのも大切でしょう。

・公正取引委員会「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書」


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