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上場に向けた社内規程の整備2 各論

Q
上場に向けて整備すべき社内規程の種類は理解したのですが、社内規程に関して上場審査との関係でとくに留意すべき点はありますでしょうか。

A
上場審査との関係では、①社内規程の実際の運用状況および②ビジネスモデルとの適合性という二点に留意して社内規程を整備する必要があります(下記1)。

また、特に上場審査との関係で重要となる定款および株式事務に関する規程については次の点にご留意ください。
定款に関しては、①株主名簿管理人の設置・②株式の譲渡制限の廃止・③1単元を100株とする単元株式数の定め・④株券を発行する旨の規定の廃止を定める必要があります(下記2(1))。
株式事務に関する規程に関しては、株式事務を担当することになる株主名簿管理人を選任したうえで、同人と相談しながら会社の実情に合致した株式取扱規程を定めることになります(下記2(2))。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「上場に向けた社内規程の整備2 各論」
について、詳しくご解説します。

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上場審査との関係で留意すべき点

上場に向けて整備すべき社内規程の種類については「上場に向けた社内規定の整備1 総論」で説明しておりますので、ここでは上場審査との関係で留意すべき点を解説することからはじめたいと思います。
社内規程の整備にあたって、上場審査との関係で留意すべき点としては、①社内規程の実際の運用状況および②ビジネスモデルとの適合性という二点があげられます。

まず、①社内規程の実際の運用状況について説明します。
社内規程は、業務を遂行するにあたっての会社の基本ルールを定めたものです。
つまり、実際の業務に際しては、社内規程に従うことが求められています。
そこで、上場審査では規程に定められたとおりに業務が遂行されているかという運用状況がチェックされます。
たとえば、職務権限規程に定められた権限者の承認なしに業務が行われたり、あるいは、権限のない他の者が承認していたりした場合は、規程どおりの運用がなされていないと評価されることになりますので、そのような運用がなされていないかを確認し、必要に応じて是正する必要があります。
従いまして、社内規程が実際の業務において適切に運用されているかを確認しておくことが肝要です。

次に、②ビジネスモデルとの適合性は、自社のビジネスモデルにおいて重要となる規程がきちんと整備されているかという観点です。
この観点が重要となるのは、社内規程の内容が自社のビジネスモデルに適合していなければ適切な業務遂行が期待できないからです。
そのため、たとえば、外注先が多数存在する会社であれば外注管理規程が、大口の顧客に売上を計上している会社であれば与信管理規程が実効性のある形で整備・運用されていなければならないことになります。
ほかにも、知的財産に関するビジネスを行っているのであれば知的財産権の権利確保に関する規程を整備しなければならず、個人情報を取り扱っている会社であれば個人情報の保護に関する規程を整備する必要があります。
このように、自社のビジネスモデルに適合する社内規程の整備・運用が求められるため、当該規程の整備・運用が上場審査においてもチェックされている点にご留意ください。
なお、コンプライアンスという観点から、反社会的勢力対策の規程や公益通報制度に関する規程の整備も求められます。

以上から、上場審査との関係では、①社内規程の実際の運用状況および②ビジネスモデルとの適合性という二点に注意して社内規程を整備することが重要になります。
なお、職務権限規程と業務分掌規程には注意を要するとされていますので、これらの規程について一言しておきます。

すなわち、これらの規程は業務フローと密接にリンクしているところ、業務フローも上場審査の確認事項となっており、これらの規程との間に不整合がある場合には上場審査を通らない可能性が出てきます。
そのため、これらの規程の整備は慎重になされる必要があります。

定款および株式事務に関する規程で留意すべき点

上述した上場審査との関係で留意すべき点を踏まえながら、必要な社内規程を整備していくことになります。
ここでは、特に重要な定款および株式事務に関する規程を整備するにあたって留意すべき点について説明していきたいと思います。
定款はいわば会社の基本法ともいうべきものであり、株式事務に関する規程も上場によって入ってくる将来の株主のために整備する必要があることから、これらの規程の整備が重要となります。

定款を作成するにあたっての留意点

上場審査の形式基準等では定款の記載に関して下記の①から④の対応が求められていますので、定款で下記の事項を定める必要があります。

①株主名簿管理人の設置
②株式の譲渡制限の廃止
③1単元を100株とする単元株式数の定め
④株券を発行する旨の規定の廃止

また、上場すれば会社に多くの新たな株主が入ってくることになりますので、実務的な観点から下記の事項についても定款で定めておく必要があります。

㋐公告方法:全国版日刊紙による広告か電子公告かのいずれかを選択
㋑中間配当・剰余金配当の取締役会授権の導入
㋒定時株主総会における議決権の基準日:上場企業では株主が多数であるため、出席者全員に議決権の行使を認めるのは現実的ではないため

ほかにも、多くの株主が新たに入ってくることや資金調達目的での株式の発行も行う機会も増えてくること、発行可能株式総数・取締役会への自己株式の取得に関する授権・単元未満株式の株主の権利制限等についても検討しておく必要があります。
なお、株主が増加することから代表訴訟等といった株主からの責任追及の可能性も高くなるため、社外取締役や社外監査役との責任限定契約の締結を検討されるかもしれません。
その際には上場審査において保身目的ではない旨の説明が求められる点に留意してください。
また、上場審査では業務監査も求められていることから、監査役の権限を会計に限定している場合には当該限定を外しておく必要がある点にもご注意ください。

株式事務に関する規程を作成するにあたっての留意点

上述しましたように、上場審査にあたっては株主名簿管理人を設置しなければなりません。
株主名簿管理人とは「株式会社に代わって株主名簿の作成及び備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者」(会社法123条)を言い、一般には信託銀行等の専門機関に株主名簿の管理等といった株式事務をお願いすることになります。
そして、当該機関に株主名簿管理人をお願いした場合、事前に株式事務に関して指導を受けることが望ましいですから、早めに株主名簿管理人を選任することが必要になってきます。
また、株主名簿管理人に株式事務を移管するにあたっては、設立から現在に至るまでの株式の移動状況を把握してスムーズに移管できるようにしなければなりません。
加えて、株式取扱規程の整備も求められます。
株式取扱規程とは、株式事務の機動性を確保するために制定されるもので、取締役会の決議でもって改訂を行うこととされています。
株式取扱規程は実際の株式の取り扱いに関するルールですので、会社の実情に合うように株主名簿管理人と相談しながら内容を決めておくことが肝要です。

まとめ

以上を踏まえて、社内規程に関して上場審査との関係で留意すべき点をまとめます。

上場審査との関係では、①社内規程の実際の運用状況および②ビジネスモデルとの適合性という二点に留意して社内規程を整備する必要があります(上記1)。

また、特に上場審査との関係で重要となる定款および株式事務に関する規程については次の点にご留意ください。
定款に関しては、①株主名簿管理人の設置・②株式の譲渡制限の廃止・③1単元を100株とする単元株式数の定め・④株券を発行する旨の規定の廃止を定める必要があります(上記2(1))。
株式事務に関する規程に関しては、株式事務を担当することになる株主名簿管理人を選任したうえで、同人と相談しながら会社の実情に合致した株式取扱規程を定めることになります(上記2(2))。

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