澤田直彦
監修弁護士 : 澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、「契約書レビューの総論|企業法務が押さえるべきリスク管理・交渉戦略・法的整合性の基本と実践」について、詳しくご説明します。
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はじめに
企業の法務実務において「契約書」は、中核的な存在です。企業間で行われるあらゆる取引は、必ず何らかの合意を前提としています。
そして、その合意の内容が文書化されたものが「契約書」にほかなりません。
近年は電子契約の普及も進み、紙の契約書に限らず、電子ファイルで締結される契約も増加していますが、それらも含めて「契約書」は、企業の権利義務の根拠となる法的文書として極めて重要な位置づけにあります。
特に法務部門においては、契約書のレビュー業務が日常的なものとして位置付けられている一方で、その内容如何が企業の法的リスクや損益に大きな影響を及ぼすこともあります。
したがって、契約書のレビューは、単なる形式確認ではなく、「企業の命運を左右しうる業務」であるという認識のもとに取り組むべきものです。
契約書レビューの重要性とリスク
契約書は、取引に関する「ルールブック」として機能します。取引における当事者間の役割、責任、条件、万が一のトラブルが生じた場合の対応など、あらゆるルールを事前に定めることで、後の誤解や紛争を未然に防ぐことができます。
これが、契約書が持つ「紛争予防機能」です。
しかし一方で、たった一言の記載ミス、あるいは条項の読み落としが、致命的な損害を引き起こすこともあります。
たとえば、年商50億円の企業が、取引基本契約書の中の損害賠償条項を見落とした結果、契約相手から10億円の損害賠償請求を受け、裁判所で認容された場合、これは単純計算で年商の5分の1に相当する大損害です。「一言条項に加えていれば…」という後悔は、現実のものとなり得るのです。
契約書レビューには、形式的な作業以上に、背景となる事業実態の理解、契約当事者間の力関係の把握、リスクの想定と対応策の検討など、実質的な観察と判断が不可欠です。
契約書は万能ではなく、背景となる事案に応じたカスタマイズが必要である以上、「雛形を埋めるだけ」のレビューでは不十分であり、現場の状況を反映した条項設計が求められます。
実務上の失敗例から学ぶ必要性
契約書に起因する法的トラブルは、実務の現場で日常的に発生しています。
契約書の記載が不明確だったために当事者間で認識の相違が生じて紛争に至ったり、想定されていなかった事象が起きた際に契約書に何の手当てもなかったため対応に苦慮したりする事例は後を絶ちません。
契約書レビューは、難解で慎重を要する作業です。
経験豊富な弁護士であっても、微妙な表現や条文の組み合わせで判断に迷うことは珍しくなく、後になって他の専門家や裁判所の判断により自らのレビューの見落としに気づくことすらあります。
そのため、契約書レビューにあたっては、実際に起こった紛争事例や過去の失敗例を積極的に学び、それを反映した条項設計・文言調整を行う姿勢が欠かせません。
形式的なチェックリストにとどまらず、「なぜその条項が必要か」「どうすれば不測の事態に備えられるか」といった想像力と先回りの視点が、リスクを回避しうる契約書を生み出すカギとなります。
企業法務のプロフェッショナルとして、リスクを未然に排除し、自社の利益を守る契約書を設計・検討することは、単なる法的作業ではなく、企業戦略の一端を担う極めて重要な役割であるといえるでしょう。
契約書レビューとは何か
契約書の意義と機能 (紛争予防 ・ 紛争解決)
契約書は、単なる文書ではありません。企業間で交わされる取引において、当事者の「合意内容」を明文化し、将来にわたってその内容を確認できるようにする法的な証憑(しょうひょう)です。
契約が成立するために契約書が必須というわけではありませんが、合意内容を文書化しておくことで、将来的なトラブルの予防や、万一の紛争時の解決に大きく寄与します。
契約書の最も重要な機能は、「紛争予防機能」と「紛争解決機能」の2つです。
まず、「紛争予防機能」とは、契約書の作成を通じて当事者間の合意を明確化し、誤解や認識の食い違いを未然に防ぐことです。
契約書のドラフトをやり取りする過程で、交渉や議論を重ねることにより、曖昧な点が整理され、認識のギャップが埋められていきます。
次に、「紛争解決機能」とは、仮に契約締結後にトラブルが生じた場合でも、契約書に定められた条項が証拠として機能し、交渉や訴訟において事実認定や責任判断の基礎になるという点です。
契約書が明確であれば、交渉による早期解決が見込めますし、訴訟になった場合にも裁判所の心証形成に大きく影響します。
書面化することで得られる明確性 ・ 証明力
契約内容は、たとえ口頭でも法的には有効ですが、時間の経過とともに当事者の記憶は曖昧になり、担当者の異動などで当初の合意内容がわからなくなることもあります。
また、当初は合意していたはずの事項について、後になって「そんなことは言っていない」と一方が主張を翻す場面も珍しくありません。
そのような事態を防ぐ手段が、「契約書による書面化」です。
契約書が存在すれば、口頭のやり取りと違い、合意した内容を誰が見ても明確に確認することができます。
たとえば、契約書に記された文言や表現は、裁判所での判断材料としても重視される傾向にありますし、場合によっては契約交渉時のメールや修正履歴も含めて、交渉の経緯自体が判断材料となることもあります。
さらに、公正証書化された契約書などは、より高い証明力を持つため、強制執行の根拠としても利用可能です。
このように、契約の内容を明文化し、それを相互に確認し合うプロセスは、法務実務においてきわめて重要な工程といえます。
契約書が果たす「ルールブック」としての役割
契約書には、単に「当事者間の約束事」が書かれているだけではありません。取引の全体像に即した、包括的なルールを定める「業務遂行の指針」としての側面もあります。
これは、契約書がしばしば「業務運用上のルールブック」として機能することを意味します。
たとえば、BtoCのような定型的な契約とは異なり、BtoBの個別契約においては、それぞれの取引の背景や商流、想定されるリスクや責任範囲に応じて、オーダーメイドで契約書が作成されるべきです。
契約書が画一的な雛形のまま使い回されていると、実態に即さない内容で運用上の混乱を招いたり、後に紛争の火種になったりするおそれがあります。
そのため、契約書には「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「どのように」行うかといった具体性や、トラブル時の解決手順、責任分担、契約終了後の対応までを網羅的に記載しなければなりません。
取引開始から終了までの一連の過程に沿って設計された契約書は、当事者の行動を規律する「実務指針」としての役割も担うのです。
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以上のように、契約書レビューの第一歩として、その「存在意義」と「役割」を正確に理解することが不可欠です。
レビュー担当者は、条項の表面的な整合性だけでなく、契約書全体が果たすべき機能を俯瞰的に捉える視座を持つことが求められます。
レビューに先立ち意識すべき前提事項
レビューの目的 : 自社のリスクコントロール
契約書レビューは、単に誤字脱字や体裁のチェックをする作業ではありません。
最大の目的は、自社に不利益となる法的リスクを見つけ出し、必要に応じて是正措置を講じること、すなわち「リスクコントロール」です。
契約の内容次第で、企業は重大な債務や損害賠償責任を負う可能性があります。逆にいえば、契約書によってそうした責任を制限・排除することも可能です。
契約書は、発生し得るリスクを洗い出し、リスクに見合った分担や回避策を盛り込むための「戦略的文書」としての性質も持っています。
したがって、レビューにおいては、条文の意味を理解するだけでなく、「この契約をこのまま締結して、万が一の事態が起きたときに、会社がどうなるのか?」という最悪のシナリオを想像し、そこに対処できる契約内容となっているかを点検する視点が欠かせません。
契約の背景 ・ 目的 ・ 重要性の把握
レビューを行うにあたって、まず確認すべきは「この契約は何のために締結されるのか」という点です。契約の背景や目的を把握していなければ、条文が適切かどうかの判断もできません。
たとえば、金額が大きく、企業にとって重要な製品の供給契約であれば、納期遅延や品質不良といったトラブルが生じた際の対応について、詳細かつ明確な規定が必要です。一方、ルーチン的な少額の契約であれば、そこまで細かな取り決めが不要なケースもあるでしょう。
契約の重要性は、金額の大小だけでなく、万一の契約不履行が企業活動に与える影響の大きさや、関係が長期に及ぶか否かといった要素も加味して判断されるべきです。
そのうえで、重要な契約には、時間やコストをかけてでも慎重なレビューを行う体制が必要です。
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レビュー担当者としては、契約の目的・背景・重要性を明らかにし、
「この契約の失敗が企業にどの程度の損害をもたらす可能性があるのか」
を評価した上で、どの程度の労力をレビューに投じるかを見極めなければなりません。
契約の当事者構造と自社の立ち位置 (売手・買手 、 出し手・受け手)
契約書をレビューする際、条文の適否を判断するには、自社がどの立場にあるかの把握が極めて重要です。立場が変われば、重視すべき条項やチェックすべきポイントも大きく変わるからです。
たとえば、売買契約において自社が「買手」であれば、納品された商品に欠陥があった場合の責任追及条項や、代金支払いの条件・期限の管理が重要になります。
逆に「売手」であれば、代金回収の確実性や、損害賠償責任を限定する条項が主眼となるでしょう。
また、秘密保持契約では、自社が機密情報の「提供者」か「受領者」かによって、契約条項の重みが変わってきます。
「情報を提供する立場」であれば、漏洩時の損害賠償や秘密の範囲を厳格に定義すべきですが、「受領者の立場」であれば、過度な責任を負わないように注意する必要があります。
とりわけ注意すべきは、「立場の混在」です。情報の提供者かつ受領者である場合や、役務の委託者であると同時に成果物の利用者でもあるようなケースでは、それぞれの立場に応じたバランスの取れた条項設計が求められます。
加えて、相手との交渉力の差、すなわち「パワーバランス」もレビューの方向性に影響します。強い立場にある契約当事者であれば、より有利な条項を主張することも可能ですが、相手が圧倒的に優位な場合には、譲歩すべき条項と譲れない条項をあらかじめ整理しておく必要があります。
契約書のレビューは、単なる法令適合性や文言精査だけでなく、「自社の取引リスクにどう向き合い、どうコントロールするか」を実務として担う作業です。その出発点として、契約の背景と目的を見据え、自社の立ち位置と交渉力を的確に把握することが、すべての判断の土台となります。
契約書レビューの視点① : 紛争予防の視点からのレビュー項目
契約書レビューの最も重要な目的の一つは、将来の紛争を未然に防ぐこと、すなわち「紛争予防」
です。法務部門が担う契約書チェックの役割は、目の前の取引を成立させるだけではなく、数か月後、あるいは数年後に生じるかもしれないトラブルを想定し、それに備えることにあります。
この章では、特に紛争予防の観点から契約書レビューで意識すべき3つの視点である「明確性」「詳細性」「網羅性」について解説します。
合意内容の明確性 (曖昧な表現の排除)
契約書において、曖昧な表現は紛争の温床です。「適切に対応する」「できる限り協議する」「合理的な範囲で対応する」などの表現は一見柔軟に見えますが、当事者間でその意味するところに違いがあると、後に「言った・言わない」「そんなつもりではなかった」といったトラブルにつながります。
例えば、「納品物は品質を確保した上で納入するものとする」という条項では、「品質を確保する」とは何を意味するのかが明確ではありません。
業界標準か、別紙の仕様書に基づくのか、ISOなどの認証水準か。判断の根拠がなければ、紛争時に契約解釈をめぐって激しく争う事態になります。
したがって、契約書では複数の解釈が可能な文言はできる限り排除し、「誰が見ても一義的に意味が取れる表現」に修正していくことが、レビュー担当者に求められます。
必要であれば、具体的な例示、定義条項の挿入、別紙資料とのリンク付けも有効です。
合意内容の詳細性 (4W1Hの意識)
契約書は、当事者の合意内容をただ記録するだけでなく、どのようにその合意が実行されるのかを指示する「運用マニュアル」でもあります。
したがって、レビューにおいては「合意内容が具体的か、詳細に記載されているか」を常にチェックする必要があります。
その際に役立つのが「4W1H」の視点です。
When (いつ) : 期限 ・ 期間 ・ タイミングは明示されているか
Where (どこで) : 場所 ・ 範囲 ・ 管轄はどうか
What (何を) : 対象物 ・ 成果物の内容や仕様は明確か
How (どのように) : 手続き ・ 方法 ・ 手段が具体化されているか
たとえば、納品の条項において「納品物を受領後〇日以内に検査し、不備があれば通知すること」と規定されていた場合、この「不備」はどの程度のものを指すのか、通知方法は書面かメールか、黙示による承認が成立するかなどを明確にする必要があります。
契約書において抽象的な言葉だけで運用を任せると、当事者の解釈が分かれ、結果的にトラブルの引き金となりかねません。
逆に、4W1Hが明確になっている契約書は、合意内容が現場レベルでもスムーズに運用されやすくなります。
合意内容の網羅性(想定されるリスクの全体的な整理)
契約書における「網羅性」とは、取引の始まりから終わりまでの一連の流れを想定し、そこに潜むリスクを洗い出して適切に契約条項として落とし込むことを意味します。
契約書の条項が不足していると、未規定部分がトラブルの火種となり、後の交渉や裁判で不利な立場に立たされることがあります。
たとえば、以下のような点は見落とされやすい事項です。
- 契約終了時の処理方法(解除、返却、清算など)
- 不可抗力事由の扱い
- 第三者への再委託や譲渡の可否
- 債務不履行時のペナルティや解除条件
- 知的財産の帰属や利用条件
- 準拠法および裁判管轄
また、契約書に記載されているのが効力規定(法的効果を変更するもの)なのか、確認規定(道義的・補足的なもの)なのかを峻別する意識も必要です。
確認規定ばかりが並び、肝心の責任範囲や救済条項が欠けていては、紛争時に何も使えない契約書になってしまう恐れもあります。
契約書のレビューでは、「もしもこの契約で問題が起きたら、誰が、どこまで、どう責任を負うのか」を逆算的に考えることが、リスクを事前に条項化するための有効なアプローチです。
まとめ
契約書は、後から紛争にならないための予防薬としての役割を担います。
その効果を最大限に発揮させるためには、以下の3つのポイントを意識したレビューが欠かせません。
- 曖昧さを残さない明確性
- 現場で運用可能な具体性(詳細性)
- 将来トラブルを見据えたリスク対応の網羅性
これらの視点をもとに、契約書を単なる「書面」ではなく、自社を守る「防衛ツール」として活用していく姿勢が、法務担当者にとって重要な資質となるのです。
契約書レビューの視点② : リスクマネジメントとしての契約書
契約書レビューの本質的な目的の一つは、「リスクマネジメント」です。すなわち、契約書を通じて、取引上の不確実性に備え、想定し得るリスクを洗い出して制御することが求められます。
契約条項の一つひとつには、「何か起きたときに、どちらが、どこまで責任を負うのか」を決める機能があり、それによって企業の損失を最小限に抑えることができるのです。
この章では、契約書をリスク管理ツールとして活用するための3つの視点「リスクの分解」「リスクへの対処」そして「契約書レビューと経営判断の接続」について解説します。
発現可能性と影響度によるリスク分解
リスクマネジメントの基本は、「どんなリスクがあり得るのか」を洗い出し、「そのリスクがどれくらいの確率で起きうるか(発現可能性)」と、「起きたときにどれほどの損害をもたらすか(影響度)」を評価することにあります。
たとえば、外注業者との業務委託契約において、「納期遅延」は発生しやすいリスクですが、取引金額が小さければ影響は限定的です。
一方、「個人情報の漏洩」は発現可能性が低くても、発生すれば社会的信用や金銭的損失が極めて大きい重大リスクになります。
このように、契約書レビューでは、発現可能性と影響度の2軸でリスクをマッピングし、そのリスクに応じた条項設計が求められます。
特に影響度の高いリスクについては、「万が一」の際の救済手段(解除、損害賠償、通知義務、制限条項など)が十分に備わっているかを入念に確認する必要があります。
マネジメント手法の契約反映 (解除条項 ・ 責任限定条項等)
リスクの存在を認識したら、次にそれにどう対処するかを契約に落とし込む段階に入ります。これが「契約条項へのマネジメント手法の反映」です。
代表的なものを以下に挙げます。
■ 解除条項 (Exit Clause)
契約相手が義務を履行しない、または倒産したような場合に、こちらから契約を一方的に終了できる条項です。事前に解除条件を明記しておくことで、リスク顕在化時に素早く契約関係を整理できます。
■ 損害賠償条項 (Damages Clause)
相手の債務不履行等によって自社が損害を受けた場合の、損害賠償請求の範囲や内容を定める条項です。証明が困難な場合もあるため、違約金や遅延損害金を予め設定しておくと、請求の実効性が高まります。
■ 責任限定条項 (Limitation of Liability)
自社が損害賠償責任を負う場合でも、その金額を契約金額の範囲内に限定するなどして、損失の拡大を防ぐ条項です。取引先とのパワーバランスによっては交渉が難しいこともありますが、最低限交渉を試みる価値はあります。
■ 表明保証条項 ・ 遵守義務条項
相手方が特定の事実を保証し、または一定の法令を遵守することを約束する条項です。不履行があった場合の解除権や損害賠償請求の根拠となるため、リスク回避・コントロールに有用です。
これらの条項は、事案ごとに「どのリスクに対応しているのか」を明確にした上で設計・修正する必要があります。ひな形の流用ではなく、自社の事業・体制・影響範囲に即したカスタマイズが必須です。
契約書レビューと経営判断の接点
契約書レビューを実務担当者だけの作業と捉えてしまうと、本質を見誤ります。契約内容の調整は、しばしば「リスクを取るか、取らないか」という意思決定を含んでおり、それは経営判断そのものでもあるからです。
たとえば、相手から提示された契約条項において、自社に不利な責任条項がある場合、それを受け入れるかどうかは、単なる法務判断では済みません。事業上のメリット(売上、取引拡大など)と、法的リスク(損害賠償、信用失墜)を天秤にかけた経営判断が求められます。
このような場面では、レビュー担当者が経営層や事業部門と連携し、「リスクをとるべきか」「その場合の備えは十分か」「事前に何を条項に落とし込んでおくべきか」などを共有しておくことが非常に重要です。
法務部門が単に「契約条件を守る番人」としてではなく、経営と連動したリスクマネジメントのパートナーとして機能することが、企業全体の健全な意思決定を支える基盤になります。
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契約書は、事後のトラブル対応ではなく、事前のリスクマネジメントを実現するための重要なツールです。
そのためには、
1. リスクを発現可能性 × 影響度で評価し、
2. 対応策を契約条項に落とし込み、
3. 経営判断と連携してレビューを行うことが必要です。
このような視点で契約書に向き合うことで、単なる文書チェックを超えた、実効性のあるレビューが実現できるのです。
契約書レビューの視点③ : 相手とのパワーバランスと交渉戦略
契約書レビューでは、条文の正確性やリスクの洗い出しだけでなく、「そもそも、この契約条件は交渉可能なのか?」「どこまで自社の要望を通すべきか?」という視点が極めて重要になります。
法的正当性があったとしても、相手の同意が得られなければ契約は成立しません。そのため、契約書レビューは交渉戦略と不可分の関係にあるといえます。
本章では、契約交渉を視野に入れたレビューの観点から、「力関係の把握」「交渉ポイントの明確化」「条項ごとの優先順位づけ」について解説します。
自社と相手の力関係を踏まえた交渉可否の判断
契約交渉において、まず意識すべきは「自社と相手のパワーバランス」です。企業規模、業界内での立場、当該取引の重要性、競合の有無などによって、契約条件の交渉余地は大きく変わります。
たとえば、相手が大手企業で、かつ自社がその取引に強く依存しているような状況では、強気に交渉することが逆効果となり、関係悪化や契約破談につながる可能性もあります。
他方、自社の技術やサービスに独自性があり、相手にとっても代替手段が乏しい場合は、より積極的に自社の希望を反映させることができるでしょう。
「強気に出てよい相手なのか」「慎重に距離を取るべき相手なのか」を見極めることは、交渉の前提条件です。契約書レビューを進める際には、相手企業の事業内容、財務状況、交渉スタイルなども含めた全体的な「相手分析」を意識することが、実務上非常に有用です。
レビュー時に「譲れる点」と「譲れない点」を明確にする
すべての希望を契約書に盛り込むことは、現実には困難です。特にパワーバランスが不利な場面では、自社の要望のうち、どこまでが「譲れないライン」なのかを明確にすることが不可欠です。
たとえば、以下のように整理しておくと、交渉時に迷いが生じにくくなります。
・ 損害賠償責任の上限設定
・ 知的財産権の帰属
・ 情報漏洩時の通知義務と補償責任
▸ 交渉に応じる余地がある点 (Should Have)
・ 支払サイトの短縮
・ 準拠法・管轄条項
・ 解除要件の明確化
▸ 柔軟に対応可能な点 (Nice to Have)
・ 遅延損害金の利率
・ 検収期間の短縮
・ 通知義務の期限
これらの分類は、契約条項ごとのリスク影響や事業部門からの要望を踏まえて行う必要があります。
法務としては、各条項が「どのようなリスクを予防しているのか」「どれほどのコストインパクトがあるのか」を評価しながら、交渉の優先順位をつける準備を整えておくことが重要です。
条項ごとの優先順位づけの発想法
契約交渉の現場では、すべての条項を完璧に整備するのは難しいものです。
そこで必要になるのが、「どの条項から交渉に入るか、どこで折り合うか」という優先順位づけの戦略的発想です。
以下の観点が、優先順位を判断する際に有効です。
➡ その条項が不利なまま残ることで、どの程度の金銭的損失やオペレーションリスクがあるか。
2.相手の受け入れ可能性
➡ 条文をどのように修正すれば相手にとっても妥当と感じられるか。
3.代替案の有無
➡ 自社としてリスクヘッジできる社内措置や保険、代替手段があるか。
たとえば、「損害賠償の無制限責任」がある条項に対して、「契約金額の〇倍まで」などと上限を設ける案を提示する、「損害が発生した場合はまず協議する」旨の条文を入れるなどのソフトランディングの工夫が効果的です。
また、条項を削る場合でも、「それが効力規定なのか、確認規定なのか」を意識することが大切です。前者は実質的な権利義務に直結するため削除には慎重になるべきですが、後者は交渉の中で柔軟に対応可能な場合も多くあります。
まとめ
契約書レビューは、文言の精査にとどまらず、交渉戦略の設計図を描く作業でもあります。
そのためには、以下のような視点が欠かせません。
- 自社と相手の力関係を正確に把握し、
- 譲れないポイントを明確にし、
- 条項ごとの優先順位を整理して、交渉に備える
澤田直彦
契約交渉は「戦う」場ではなく、「合意を形成する」場です。リスクを認識したうえで、どのように落とし所を設計していくか。そこに、法務部門の知恵と工夫が試されます。
契約書と法令の関係
契約書をレビューする際、重要なのはその文言の読みやすさや整合性だけではありません。
契約書に定められた内容が、法令とどのように関係し、どこまで自由に決めることができるのかという視点を持つことが、法務担当者にとって不可欠です。
法令との関係を誤ると、せっかく作成・締結した契約条項が無効とされたり、想定外の義務を負うことになったりするおそれがあります。
本章では、契約書を読み解くうえで押さえておきたい法令の構造とその応用的なポイントについて、具体的に解説します。
民法 ・ 商法等の 「デフォルト ・ ルール」 の理解
契約書を作成する際、民法や商法などの基本法(いわゆる「一般法」)が契約当事者に適用されるのが原則です。これらは「特に契約で定めがない場合に適用されるルール」 = デフォルト ・ ルールとして機能します。
たとえば、商人間の売買契約では、買主が納品物を受領した際に遅滞なく検査し、契約不適合を発見したら直ちに通知しなければ、その責任追及ができなくなる(商法526条)という規定があります。
これは契約で別のルールを定めていない限り自動的に適用されるものです。
このような一般法の規定を正しく理解しておかないと、「契約で特に書いていないから大丈夫」と思っていた条項が、実は民法や商法の規律によって厳しい責任を課されることになるというケースも少なくありません。
そのため、契約書レビューでは、「契約で何を定めているか」だけでなく、「定めていないことについて何が適用されるか」を意識し、必要な条項が欠けていないかを見極める力が求められます。
強行法規 ・ 任意法規 ・ 公序良俗の判別
契約当事者は原則として、契約内容を自由に定めることができます(契約自由の原則)。
しかし、その自由には限界があり、法令に違反する条項は無効とされることがあります。
そこで重要になるのが、強行法規と任意法規、公序良俗との違いの理解です。
■ 任意法規
当事者間で別途合意があれば排除可能なルール。典型例は民法の多くの契約規定(売買、請負など)です。これらは、契約書で明確に定めれば上書き可能です。
■ 強行法規
当事者の合意であっても排除できない、絶対的なルールです。たとえば、以下のような内容が該当します。
▸ 労働基準法に定める最低労働条件 (最低賃金、割増賃金など)
▸ 借地借家法における賃借人保護規定 (更新拒絶の要件など)
▸ 消費者契約法による責任免除 ・ 損害賠償予定の制限
強行法規に反する契約条項は無効となり、内容によっては企業に対して行政処分や損害賠償責任が生じることもあります。
■ 公序良俗 (民法90条)
法令には明示的に違反していないものの、社会的に許容されない契約内容は無効になります。
たとえば、過度な競業避止義務、著しく廉価な不動産売買、弁護士法違反の非弁契約などが裁判例で無効とされた事例です。
したがって、契約書の内容が一見問題ないように見えても、社会通念や判例に照らして妥当かどうかを検討する視点が必要です。
消費者契約法 ・ 労基 ・ 借地借家法等の注意点
特定の法律については、強行規定が多く含まれ、契約書作成時に特に注意すべき分野です。
■ 消費者契約法
事業者が消費者に対して結ぶ契約について、以下のような条項は無効とされます。
▸ 解除権を一方的に制限
▸ 不当に高額な違約金の設定
これは、BtoC契約の定型約款や利用規約などにも適用され、企業にとっては想定外のリスクとなることがあります。
■ 労働基準法
雇用契約や就業規則において、法定基準に満たない内容はすべて無効です(例 : 最低賃金未満の給与、違法な解雇条項など)。
書面に記載されていたとしても、そのままでは通用しません。
■ 借地借家法
賃貸借契約では、賃借人保護のためのルールが多数存在します。
たとえば、「正当事由なく一方的に契約を解除できる」といった条項は無効となる可能性が高く、特に事業用不動産の契約では注意が必要です。
判例との関係、倒産法との接点も視野に
契約書レビューにおいては、判例法の理解も不可欠です。契約条項が形式的には問題ないように見えても、過去の判例で類似の内容が否定された例がある場合、それを踏まえて修正や留保を検討すべきです。
また、倒産法との関係も重要です。特に以下のような条項については、平時には有効でも、相手方が破産や再生手続に入った場合には効力を失うことがあります。
▸ 「相殺の自由」 : 破産手続中には制限される (破産法59条等)
そのため、信用不安時のリスクコントロールとして条項を設ける際には、倒産手続の制約も想定した設計が必要です。
まとめ
契約書をレビューする際は、条文そのものだけでなく、その背景にある法制度と整合しているかどうかを見極める視点が欠かせません。
特に以下の点を常に意識しましょう。
- 民法 ・ 商法のデフォルト ・ ルールに頼りすぎず、必要な条項は明記する
- 強行法規 ・ 公序良俗に反する条項が含まれていないか確認する
- 特別法 (消費者契約法・労基法・借地借家法等) の適用対象かどうかを判断する
- 判例や倒産法の制約など、将来的な無効リスクも想定する
法令との適合性を確保することで、契約書ははじめて、紛争予防 ・ リスク管理 ・ 信頼構築のための有効なツールとして機能します。
確認条項 ・ 紳士条項 ・ 努力義務条項の使い分け
契約書の文面には、当事者の間で明確な義務や権利を定める「効力条項」だけでなく、道義的・象徴的な意味合いを持つ条項も多く含まれます。中でも頻出するのが、「確認条項」「紳士条項」「努力義務条項」といったいわゆる準効力条項です。
これらの条項は、一見すると契約書の中で軽視されがちですが、内容や文言によっては紛争の火種になる可能性もあれば、逆に重要な交渉カードにもなり得るため、正確な理解と使い分けが求められます。
各条項の法的効力と実務的意義
■ 確認条項 (確認文言)
確認条項とは、ある事実や状況を両当事者が「確認した」と明記するもので、たとえば以下のような条文です。
「甲および乙は、本契約締結時において、対象製品が既に完成していることを確認する。」
このような記載は、一見すると単なる叙述に見えますが、裁判実務上は「表明」としての意味を持ち、事実の認識に関する証拠として取り扱われることがあります。
特に不実表示や瑕疵担保責任との関係で、当事者の認識を問われた際には、確認条項の存在が裁判所の判断に大きな影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。
■ 紳士条項 (Gentlemen’s Clause)
紳士条項とは、当事者間での信義誠実な関係を前提とした、道義的な約束を記載するものです。
例 : 「本条項は法的拘束力を有するものではなく、両当事者は誠実に協議することを期待される。」
このような条項は、当事者の信頼関係を示すものでありながら、あえて法的拘束力を持たせないことを明記することで、あらかじめ訴訟リスクを排除する目的があります。よって、実務上は「姿勢」を示す役割にとどまり、法的な責任を問う根拠にはなりません。
しかし、紳士条項であっても、継続的契約や共同事業契約等において信義則上の行為義務が導かれることはあるため、完全に無視できるものでもないという点には注意が必要です。
■ 努力義務条項 (Best Efforts Clause)
努力義務条項
は、当事者に対して一定の目標達成に向けた努力を求めるもので、以下のような形で用いられます。
例 : 「乙は、製品の品質向上に向けて最大限の努力を行うものとする。」
努力義務は、結果を約束するものではなく、プロセスに対する義務であるため、実際に成果が出なかった場合でも即座に債務不履行とはなりません。
しかし、「どの程度の努力が求められるか」は常に問題となりやすく、あまりに漠然とした表現では争いの種になり得ます。
紳士条項 ・ 努力義務条項の拘束力と限界
紳士条項や努力義務条項は、その性質上、通常の履行義務条項に比べて拘束力が相対的に弱いとされています。
しかし、以下の点には注意が必要です。
▸ 紳士条項でも、信義則違反として不法行為責任が生じることがある
▸ 努力義務でも、全く行動しない場合には債務不履行と評価される余地がある
特に近年の裁判例では、「最大限の努力を行う」などの文言が具体的な行動義務として解釈されることもあり、「できる限り」「誠実に」などの抽象語がどのような法的効果を持つかが、事案に応じて変化する傾向にあります。
つまり、「どうせ法的拘束力はないから問題ない」と軽視するのではなく、その文言が交渉上のメッセージであると同時に、実際の紛争時には評価の対象となり得ることを念頭に置くべきです。
表現の工夫で生まれる誤解の回避
確認条項や努力義務条項が紛争の原因になるのは、多くの場合、「意図していない誤解を生む表現」があるためです。
そこで、レビュー段階では以下のような文言上の工夫を意識しましょう。
・ 「確認する」内容には、どのような調査または認識を前提としたかを明記する
・ 紳士条項については、「法的拘束力を有しない」との文言を必ず明示する
・ 「○○に努める」などの努力義務には、「最低限の措置内容」または「具体的な手続き条件」をあわせて記載する
これにより、後の解釈の揺れ幅を最小限に抑えることができ、実務の安心感を確保するレビューにつながります。
判例との関係、倒産法との接点も視野に
努力義務条項や紳士条項に関する判例は多く、実務でも次のような点が争点になっています。
◆ 「最大限の努力」条項に基づき、相手方の怠慢を理由に損害賠償が認められた例
◆ 紳士条項があるにもかかわらず、協議に応じない姿勢が信義則違反とされた例
また、倒産法との接点としては、債務者側が倒産した場合に、努力義務の履行が事実上不能となる、協議義務が履行されないといった事態にどう対処するかも検討課題です。
たとえば、倒産を契機にした協議条項の発動や、確認条項に基づく債権の優先認定などは、法的整理の場面でも実効性を持ち得ます。
まとめ
契約書における「確認条項」「紳士条項」「努力義務条項」は、法的拘束力の程度に差があるものの、いずれも交渉戦略や信頼形成、ひいては紛争時の評価材料として重要な役割を果たします。
- 確認条項 : 事実の認識や表明として実質的な証拠効果
- 紳士条項 : 信頼関係構築の象徴でありつつ、信義則の補助線
- 努力義務条項 : 結果責任は負わずとも、行為義務の証明対象
レビュー担当者は、文言の一語一句が誤解や過信を招かないように、目的に応じた使い分けと明確な表現の工夫を徹底する必要があります。
レビューの効率化と品質担保
契約書レビューは、企業法務の中でも特に負荷の高い業務の一つです。1件あたりの分量が多く、関係者とのすり合わせも多岐にわたるうえ、ミスがあれば重大なリスクにつながります。そのため、効率を高めつつも品質を確保するための工夫が、継続的な業務改善の鍵となります。
本章では、契約書レビューを日常業務として遂行していくうえで重要な3つの視点である「テンプレートの活用とカスタマイズのバランス」「テクノロジーの活用」「チェック体制の整備」について解説します。
テンプレートとカスタマイズのバランス
企業内で契約書レビューを効率化するうえで、まず導入したいのが契約書テンプレートの整備と運用です。特に以下のような契約類型では、標準化による効果が大きく現れます。
- 秘密保持契約 (NDA)
- 業務委託契約
- 売買契約
- 雇用契約
- 定期的なサブスクリプション利用契約
テンプレートは、過去の経験や自社のリスク管理方針に基づいて、一通りのリスク想定と管理策が盛り込まれている点で、極めて有用です。
また、事業部門や外部とのやり取りもスムーズになり、レビュー作業を大幅に効率化できます。
一方で、テンプレートをそのまま流用するだけでは、個別の案件に即した実質的リスクを見落とす危険性があります。
たとえば、「業務委託契約の定型フォーマット」を使用する場合でも、以下のような個別事情によっては修正が必要です。
▸ 海外企業との契約であれば準拠法や管轄裁判所の調整が必要
▸ 相手方に下請法が適用されるかどうか
▸ 成果物に知財や個人情報が関わる場合の規定の追加
したがって、テンプレートは「ベース」にすぎず、案件ごとにカスタマイズが不可欠です。
法務部門としては、案件特性に応じた修正ポイントや、必ずチェックすべきリスク要素を「チェックリスト」として併用することで、レビュー品質と効率を両立させることが可能となります。
AIツールや契約管理システムの活用
近年は、契約書レビューにおけるテクノロジーの活用が急速に進んでいます。特に注目されているのが、AIレビュー支援ツールや契約ライフサイクル管理(CLM)システムの導入です。
■ AIレビュー支援ツール
AIを活用することで、契約書のリスク箇所や法的矛盾点、抜け漏れなどを自動で指摘してくれる機能があり、レビュー担当者の作業負荷を軽減できます。たとえば以下のような作業に有効です。
• 他の条項との整合性チェック
• 法令や判例との照合 (特に定型契約)
• 英文契約書のレビュー補助
ただし、AIはあくまで補助ツールであり、最終判断は人間が行うべきです。とりわけ、自社の事業特性や商習慣に照らした判断や、交渉上の駆け引きはAIには対応できません。AIは「セカンドオピニオン」として活用するのが適切です。
■ 契約管理システム(CLM)
契約のレビューだけでなく、契約の締結・更新・管理全般を一元化する仕組みとして、CLM(Contract Lifecycle Management)ツールの導入も進んでいます。
CLMを活用することで、以下のような利点があります。
• 締結済み契約のリスク情報や期日管理が可能になる
• 業務フローに応じた社内承認ルートを構築できる
特に契約件数が多い企業では、レビュー業務の集中と属人化を防ぎつつ、品質を担保する土台としてCLMの活用が有効です。
ダブルチェック体制 ・ 外部弁護士の活用
どれだけシステム化やテンプレート整備をしても、最終的なリスクの見落としを防ぐには、人の目によるチェックが不可欠です。
そのため、実務では次のような複層的なレビュー体制の整備が推奨されます。
■ ダブルチェックの実践
契約書レビューにおいては、一次レビュー(担当者)に続き、上位者や別の法務担当者による二次レビュー(セカンドレビュー)をルール化することで、リスクの取りこぼしを防げます。
特に、以下のような契約では二重チェックが重要です。
• 長期にわたる契約 (例 : 5年以上)
• 重要な知財や個人情報が含まれる契約
• 条文の修正交渉が発生している契約
■ 外部弁護士の活用
社内リソースや知見だけでは対応が困難な場合や、交渉相手が強く、重大なリスクを伴う契約の場合は、外部の法律事務所にセカンドオピニオンやリーガルレビューを依頼するのも有効です。
外部弁護士に依頼する際は、事前に以下の点を整理しておくと、スムーズな対応が期待できます。
• 契約の背景と交渉経緯
• 相手の属性と業界習慣
これにより、単なる表面的な文言修正にとどまらない、実務的に意味のあるアドバイスを受けることができます。
まとめ : 契約書レビューの総論力は、組織を守る 「盾」
契約書レビューを継続的・組織的に行っていくためには、以下の3つの要素が重要です。
- テンプレートとカスタマイズのバランスをとり、属人性を抑えながらも柔軟に対応する
- AIや契約管理ツールを積極的に活用し、作業負荷を軽減する
- ダブルチェック体制や外部弁護士の活用を通じて、品質と判断の精度を高める
効率だけでなく、「見逃さない、妥協しない、時間を無駄にしない」契約書レビュー体制を確立することが、法務部門全体の信頼と価値を高めることに繋がります。
契約書レビューという業務は、外部からは地味に映ることもありますが、実は企業活動における最前線のリスク防衛線であり、法務部門の本質的な価値が発揮される場面です。営業や調達などの最前線で事業を進める部署が「矛」だとすれば、契約書レビューはまさに企業を守る「盾」の機能を果たします。
契約の内容は、締結された瞬間から企業の法的責任の枠組みを規定します。その枠組みにどのようなリスクが含まれているのか、それにどう備えているのかは、レビュー段階での「気づき」と「対応」にかかっています。
本稿で取り上げてきた通り、契約書のレビューには、文言の整合性確認や誤記の修正といったミクロな作業だけでなく、以下のような総論的な視座が不可欠です。
- 紛争予防の視点での条項設計
- リスクマネジメントの観点での責任配分の最適化
- 交渉力を踏まえた合意形成の方針設定
- 法令や判例を前提とした契約有効性の担保
契約書レビューに関するご相談は、東京都千代田区直法律事務所の弁護士まで
直法律事務所においても、ご相談は随時受けつけておりますので、お困りの際はぜひお気軽にお問い合わせください。
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