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デジタルプラットフォームに関する法律が制定?DPF法とは?

Q
 デジタルプラットフォームに関する法律が制定されたと聞きました。
プラットフォームビジネスを展開する当社において、把握しておくべき点を教えてください。

A
 2021年4月28日に「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(令和3年法律第32号。以下「取引DPF法」といいます。)が成立しました。
以下、取引デジタルプラットフォーム提供者の立場から、この度の改正点で重要点を解説していきます。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「デジタルプラットフォームに関する法律が制定?DPF法とは?」
について、詳しくご解説します。

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目的(第1条)

取引DPF法1条は、その目的を取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売について、取引の適正化と紛争の解決の促進に関して、取引デジタルプラットフォーム提供者の協力を確保し、ひいては、消費者の利益を保護することを目的として定めています。

定義(第2条)

取引DPF法の定義規定では、取引DPF法の対象となるデジタルプラットフォーム事業者とは何か、理解することが大事です。

取引DPF法では、その適用対象となる事業者プラットフォーマーを「取引デジタルプラットフォーム提供者」として定めており、「事業として、取引デジタルプラットフォームを単独で又は共同して提供する者をいう」と定義されています(取引DPF法2条2項)。

そして、「取引デジタルプラットフォーム」は、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(令和2年法律第38号。以下「取引透明化法」といいます。)2条1項に規定するDPF(①多面市場性、②インターネット提供及び③ネットワーク効果を要件とする。)のうち、
オンラインモール(取引DPF法2条2項1号)か、ネットオークション(同2号)に該当するもの(販売業者等と消費者において売買契約等の申込が行われる機能を有するもの)を対象としています。

例えば、オンラインモールでいうとAmazon.co.jp、楽天市場、ネットオークションでいうと、Yahoo!ショッピング、ネットオークションですね。

つまり、売買契約等の申込機能がないデジタルプラットフォームには、取引DPF法の適用対象になりません。

次に、取引DPF法の適用対象となる「販売業者」には、自らが提供する取引デジタルプラットフォームを利用して商品の販売等を行う場合は除外されている点が重要です(第2条4項)。

つまり、オンラインモールにおいて、例えば、Amazon.co.jpは、取引DPF提供者自身も通信販売を行っていますが、運営者であるアマゾンジャパン合同会社はマーケットプレイス部分では取引デジタルプラットフォーム提供者に該当しますが、同社が自ら通信販売を行っている部分には販売業者としての取引DPF法の適用はありません。

取引デジタルプラットフォーム提供者の努力義務(3条)

取引デジタルプラットフォーム提供者は、以下の3つの措置を講じる努力を行う必要があります。

① 消費者が販売業者等と円滑に連絡することができるようにするための措置を講ずること(1号)。

② 販売業者等による商品の販売条件などの表示に関し消費者からの苦情の申し出を受けた場合において、当該苦情に係る事情の調査その他の当該表示の適正を確保するために必要と認める措置を講ずること(2号)

③ 販売業者等に対し、必要に応じて、その所在に関する情報その他の販売業者等の特定に資する情報の提供を求めること。

上記措置義務は、第3条2項で消費者に対して、取引デジタルプラットフォーム提供者が講じた措置の概要及び実施の状況等を開示する必要がありますので、例えば、利用規約として以下のように定めることが考えられます。

  1. 販売店は、ユーザーとの間で円滑に連絡を取れるよう、販売店への連絡方法、連絡可能時間等を販売店ページにおいて表示しなければなりません。
  2. 当社が、ユーザーから、販売店の販売する商品の販売条件等について、苦情その他の申し出を受けた場合、当社は、当該ユーザーの申し出について、販売店に対する調査その他の措置を講じることができるものとし、販売店は当該調査に対して協力をしなければなりません。
  3. 販売店は、当社が求める場合、販売店の本店所在地その他の販売店の特定に資する情報を提供しなければなりません。

取引デジタルプラットフォームの利用の停止等に関する要請(4条)

取引デジタルプラットフォームを利用し、優良誤認表示を行うなど、違法な商品の販売等を行う販売業者等の所在が不明な場合には、消費者被害の迅速な防止を図る観点から、行政庁が取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、販売業者等商品の販売停止などを要請することができるとしました。

ここでいう違法な行為とは、

① 商品の性能等に関する重要事項について、著しい虚偽、誤認表示であると認められること、及び

② 表示をした販売業者等が特定できないこと等の事由により、販売業者等による当該表示の是正を期待することができないこと

とされました。

すなわち、景品表示法に違反するような虚偽表示、優良誤認表示がされていた場合で、かつ、販売業者に是正を指示できない場合と理解しておいて下さい。

そして、重要なこととしては、上記のような場合には、行政庁が上記の要請をした旨を内閣総理大臣が公表できるとされている点です(4条2項) なお、取引デジタルプラットフォーム提供者は、上記要請に対する措置を取った場合、販売業者などに対する損害について賠償責任を負わないこととされました(4条3項)。

販売業者等情報の開示請求(5条)

さて、この規定は取引デジタルプラットフォーム提供者にとって理解するべき大事な点です。

取引デジタルプラットフォームを利用した消費者は、自己の債権の行使を目的とし、当該債権の行使に必要な販売業者等情報に限り、取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、その保有する販売業者等情報の開示を請求することができるようになりました。

取引デジタルプラットフォームで販売業者等が消費者トラブルを起こした場合、販売業者等が特商法上の表示義務を守っていなければ、消費者は訴訟を起こすこともできないからです(訴状の必要的記載事項が満たされません)。

ただし、販売業者等の信用棄損等の不正の目的で、あるいは、債権の額が内閣府令で定める額よりも低い場合には、消費者は情報開示請求をできません。

取引デジタルプラットフォーム提供者としては、上記請求があった場合には、消費者に不正の目的があるか否か、必ずしも分からない場合が多いでしょうから、債権の額によって、開示に対応するか検討が必要となる場面が多くなるでしょう。

なお、この債権の額は、消費者が訴訟等に要する費用、取引デジタルプラットフォーム提供者の事務処理の負担、被害実態と取引金額の分布、他の消費者関連法における設定金額を踏まえて定めると説明されています(2021年11月23日時点では、公表されていません)。

なお、この開示請求の対象については、消費者が取引DPF法の施行の日以後に販売業者等との間で締結する売買契約等とされています。

~請求があった場合の取引デジタルプラットフォーム提供者としての対応~

1 消費者の手続に関する確認
消費者は、取引デジタルプラットフォーム提供者に対して、本開示請求に当たっては、書面等で以下の3点を記載して、提出する必要があります(5条2項)。

① 販売業者等情報の確認を必要とする理由
② 販売業者等情報の項目
③ 販売業者等情報を不正の目的の為に利用しないことを誓約する旨

そのため、口頭で本開示請求があったとしても、まずは、上記事項を書面等に記載して、提出するよう案内する必要があるでしょう。

2 販売業者などに関する意見聴取
次に、取引デジタルプラットフォーム提供者は、消費者による上記1の手続きの結果、本開示請求の要件が一応は備わっていると考える場合には、販売業者などへの連絡を取ることができない場合を除き、開示について当該販売業者などの意見を聴取する必要があります(5条3項)。

この理由は販売業者等の開示手続に係る反論の機会を保証することと、取引デジタルプラットフォーム提供者において、開示可否の判断を行うための材料とする点にあります。

以上の手続きを経て、取引デジタルプラットフォーム提供者は、消費者に対して、情報を開示するか判断することになるでしょう。

さて、取引DPF法の施行は公布の日である2021年5月10日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

また、施行後3年を目途として見直しがされる予定ですので、取引デジタルプラットフォーム提供者としては、この度、施行された取引DPF法を引き続き、確認・理解の上、対応をしていく必要があるでしょう。


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