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弁護士コラム

賃料増額請求書の書き方と内容証明郵便の活用についてわかりやすく解説

賃貸借トラブル
投稿日:2025年06月19日 | 
最終更新日:2026年07月22日

Q
不動産オーナーをしています。5年前に購入した賃貸マンションの賃料が、周辺相場より低くなっています。適正額まで増額したいと考えていますが、賃借人との関係悪化は避けたいと思っています。

裁判ではなく、まずは話し合いや書面のやり取りで穏便に解決したいと考えています。法的に有効な賃料増額請求の方法や、裁判になった場合の対応について教えてください。
Answer
賃料増額請求は、民法と借地借家法により貸主にも認められた権利です。

ただし、まずは固定資産税などの経費増加や修繕費の必要性を説明し、賃借人と協議を行うことが大切です。合意ができれば書面を作成して賃料を増額します。

協議がまとまらない場合には、配達証明付き内容証明郵便で賃料増額請求の意思表示を行います。内容証明郵便は、いつどのような請求をしたかについて、調停や裁判で証拠としやすい書類の送り方です。

監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦

2009年 弁護士登録
2018年 弁護士法人直法律事務所 開業

不動産・相続・企業法務を中心に取り扱い、不動産に関する相談を年間100件以上対応。
賃貸借・不動産売買・立ち退き交渉・建築紛争・共有不動産など、幅広い不動産問題の解決に取り組んでいます。

賃料増減額請求の法的性質と手続き方法

賃料の増減額請求については、民法第611条および借地借家法第32条に規定されています。特に借地借家法第32条では、経済状況や物価の変動・周辺相場との乖離などの事情変動がある場合に、賃料増額請求が認められています。

賃料増減額請求は、法律上認められた「形成権」であり、相手方に意思表示が到達した時点から将来に向かって効力が生じます。

そのため、最初は口頭や書面、できれば配達証明付き内容証明郵便で賃料増額請求の意思を伝えましょう。配達証明付き内容証明郵便を利用することで、「賃料増額請求をした事実」と「相手にこれが到達した年月日」を証明することができます。自分でも作成することができ、費用も比較的低額であるため、最初の対応として推奨されます。

それでも借主が賃料増額に応じない場合には、調停手続きを経て、最終的には裁判で解決を図ります。

内容証明郵便を活用する意義

内容証明郵便とは、日本郵便株式会社が提供する特殊な郵送方法です。

利用する際には、以下のようなルールがあります。

  • ・差出人と受取人の住所および氏名を文書に記載する
  • ・横書きの場合は、1行26字以内かつ1枚に20行以内などの字数や行数の制限がある
  • ・複数枚になる場合は、契印(割印)をする
  • ・封筒の差出人欄に押印する

また、同じ文書を3通用意する必要があります。1通を手書きして残り2通をコピーする方法や、パソコンで3通作成して印刷する方法でも問題ありません。

3通は、差出人・日本郵便・賃借人へそれぞれ送付されます。これにより、日本郵便が「いつ・誰から誰に・どのような内容の文書を送付したか」を証明してくれます。調停や裁判となった場合には、紛争解決に向けて適切な対応を行った証拠として有利に働く場合があります。

もっとも、内容証明郵便だけでは賃借人が受領した事実までは証明できないため、配達証明を追加して送付することが重要です。

ただし、配達証明で証明されるのは、賃借人の住所に配達されたという事実のみであり、賃借人本人が受領したことまでは証明できません。また、賃借人が受け取りを拒否する可能性もあります。そのような場合には、発送日時や発送した事実を証明できる特定記録郵便で同じ書面を送付する方法も検討する必要があります。

近年では、電子内容証明も利用できるようになっています。書面の作成・押印・郵便局での手続きが不要となり、簡単かつ低コストで送付することができるため、有効な手段といえるでしょう。

なお、賃料増額後の賃料を記載する場合には、その額が消費税込か否かも明記するようにしましょう。消費税の記載が曖昧だったために裁判へ発展したケースもありますので、書き方に不安がある場合には弁護士へ作成を依頼することをおすすめします。

「更新のご案内」との違い

契約更新時の「更新のご案内」は、原則として法的な賃料増額請求にはあたりません。

不動産事業者(不動産仲介業者など)は、賃貸借契約の契約期間終了時に「更新のご案内」を送付することがあります。この案内に契約更新に伴う賃料増額のお願いが記載されていても、それだけで法的な「賃料増額請求」をした認められることは困難です。更新のご案内は、あくまで提案やお願いの性質を持つものであり、賃料増額請求としての法的効果は生じません。

もっとも、このような案内は、賃借人との協議のきっかけとして活用することはできます。協議が可能な場合には、いきなり賃料増額請求をするのではなく、ます提案やお願いという形で話し合いを進めるほうが望ましいケースも少なくありません。

その際には、賃料増額が必要な事情を説明するとともに、合意できない場合には賃料増額請求を行う予定であることやその後の流れについても説明すると、合意に至る可能性が高まります。

そのためには、賃料増額請求が認められるための要件を十分に調査し、資料を収集したうえで交渉に臨むことが重要であり、この段階から弁護士等の専門家に相談することが有益といえます。

賃料増額請求書面の記載事項

賃料増額請求書面には、当事者・対象物件・増額後の賃料・賃料改定の意思表示などを明確に記載することが重要です。

賃貸人本人が作成する場合の、一般的な記載例は以下のとおりです。弁護士に依頼する場合や契約内容によっては、文言が異なることがあります。

記載事項文言例
当事者名(賃貸人・賃借人の氏名)賃貸人:通知人○○(以下「通知人」)
賃借人:貴殿、貴社など
目的物の所在地東京都○○区○丁目○番○号(以下「本件建物」「本件ビル」など)

※家屋番号・種類・構造・床面積等まで登記簿または契約書上の記載に従って記載することで、目的物を特定しやすくなります。
契約期間令和○年○月○日から令和×年×月×日までの△年間

※契約内容を特定するために必要であれば記載しましょう。
現行賃料月額○○円(消費税込)

※税込か税別かを明示しましょう。
増額後の賃料と発効希望日同年○月分以降の賃料額を月額○○円(消費税込)とします。

※税込か税別かを明示しましょう。
増額の根拠本件建物の賃料額は、本件賃貸借契約締結後の土地若しくは建物の価格の上昇、または租税公課の増加などの経済事情の変動により、近傍相場と比較して著しく低い賃料となっています。
意思表示の文言通知人は、本書面をもって本件建物の同年○月分以降の賃料額を月額○○円(消費税込)に増額する旨の意思表示をします。

※税込か税別かを明示しましょう。
回答の要請本書面受領後○日以内に通知人宛にご連絡ください。

増額後の賃料や増額の根拠は必ず明示しなければならない事項ではありません。しかし、あらかじめ記載しておくことで、賃借人との協議がスムーズに進む可能性があります。

記載のポイント

賃料増額請求書面は、「冒頭」「本文」「結び」の3つのパートに分けて作成すると分かりやすくなります。もっとも、一般的な記載例であり、すべての事項が必須というわけではありません。

1. 冒頭部分

中央上部に「通知書」「通告書」などのタイトルを記載します。

続いて、「作成日」「賃借人の住所と氏名」「賃貸人の住所と氏名」を記載し、自身の氏名の横に押印します。

2. 本文

本文には、前述の記載事項を踏まえ、「契約内容」「現行賃料」「増額後の賃料」「増額の根拠」「賃料増額の意思表示」を記載します。

特に、「契約期間」「増額後の賃料」「消費税込か別か」「増額の根拠」は誤りのないよう正確に記載しましょう。

また、「本書面をもって、本件建物の同年〇月分以降の賃料額を月額〇〇円(消費税込)に増額する旨の意思表示をします」などと記載し、賃料増額の意思を明確に示すことが重要です。

3. 結び

最後に、賃借人へ一定期間内の回答を求める一文を記載すると、その後の交渉を円滑に進めやすくなります。

また、電話番号などの連絡先を記載しておくと、賃借人も連絡しやすくなり、その後の協議をスムーズに進めることができます。

【実務ポイント】内容証明郵便の送付後、どう対応するか?

内容証明郵便の送付後は、相手が無視しているのか、反論しているのかによって対応が異なります。

賃借人が内容証明郵便を受け取らない場合

賃借人が内容証明郵便を受け取らない場合は、発送日時や発送した事実を証明できる特定記録郵便を用いて、同じ書面を送付する方法を推奨します。

賃借人から連絡がない場合

賃借人が内容証明郵便を受け取っても、回答や支払いなどの行動を起こす法律上の義務が生じるわけではありません。そのため、何度送付しても連絡がなく、増額後の賃料も支払われないケースがあります。

この場合は、通常、民事調停を申し立てます。賃料増額請求については、訴訟を提起する前に調停による解決を図る調停前置主義が採用されているためです調停でも合意に至らない場合には、民事訴訟を提起します。

賃借人から反論があった場合

賃借人から反論があった場合は、その内容に応じて対応します。

協議の余地がある場合には、資料を示しながら賃料増額が必要な理由を説明し、賃借人の納得を得ることも考えられます。

もっとも、双方の利害が大きく対立し、協議が進まない場合も少なくありません。その場合には、民事調停を申立てることになります。

また、賃借人側が既に弁護士などの専門家に相談し、準備を進めている可能性もあります。その場合、安易に回答すると、不当な要求を受け入れるなどの不本意な結果になる可能性もあります。

反論があった場合や、賃借人の代理人弁護士から連絡があった場合には、速やかに弁護士へ相談し、慎重に交渉を進めましょう。

よくある質問(Q&A)

賃料増額請求や内容証明郵便について、実務上よくある疑問をQ&A形式で分かりやすく解説します。

内容証明郵便を送付しただけで賃料は増額されますか?

内容証明郵便を送付しても、賃料が直ちに増額されるわけではありません。

賃借人が増額に応じない場合には、調停や訴訟などの手続きが必要になることもあります。

賃料増額の理由はどのように説明すべきですか?

賃料増額の理由は、借地借家法第32条が定める事情変更や客観的な資料に基づいて説明することが重要です。

根拠を具体的に示すことで、賃借人の理解を得やすくなります。

内容証明郵便の送付によって関係が悪化することはありますか?

内容証明郵便の送付によって、賃借人との関係が悪化する可能性があります。

ただし、事前に十分な協議や説明を行うことで、関係悪化を避けられる場合もあります。

東京都千代田区の不動産に強い弁護士なら直法律事務所

賃料増額請求は、まず賃借人と協議を行い、合意に至らない場合には内容証明郵便によって増額請求の意思表示をします。賃料増額を実現するためには、借地借家法第32条が定める事情変更について、客観的な資料や根拠を示しながら説明することが重要です。

もっとも、内容証明郵便は、文言や送付方法によっては賃借人との信頼関係を損ない、交渉が難航するおそれがあります。また、物件の状況や契約内容に応じて、交渉方法や説明すべき内容も異なります。

賃料の高い物件や契約内容が複雑な物件について賃料増額請求を行う場合には、早い段階で弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

直法律事務所では、賃料増額請求に関する交渉や調停・訴訟対応まで、賃貸不動産に関する案件について豊富な経験を有する弁護士が丁寧にサポートいたします。賃料増額請求についてお悩みの方は、まずは一度ご相談ください。

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