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弁護士コラム

親子など家族間贈与の贈与税はいくらから?非課税になる特例も解説

遺産分割のトラブル
投稿日:2024年09月30日 | 
最終更新日:2024年10月02日
Q
老後の生活資金には余裕があるものの、子供たちに今のうちに資産を贈与しておきたいと考えています。しかし、贈与税の仕組みや計算方法がよくわからず、手続きも煩雑に思えて不安です。

家族に対する贈与には特例や控除があると聞いたことがありますが、どのように活用すれば良いのでしょうか?
贈与税についての基本的な知識や、家族への贈与に関する特例も教えてください。
Answer
贈与税は、個人から財産を受け取った際に課せられる税金で、年間110万円までの贈与には非課税枠があります。受けた贈与のうち年間110万円を超える部分には贈与税がかかりますが、直系尊属(親や祖父母)から子や孫への贈与に適用される「相続時精算課税制度」や「住宅取得等資金の非課税制度」などの特例が利用できる場合があります。これらの特例が利用できる場合に、一定額までの贈与が非課税となり、将来的な相続税の軽減も可能です。

この記事では、贈与税の基本的な仕組みや、家族への贈与に関する特例を詳しく解説します。

親子間の贈与にかかる贈与税とは?

贈与税とは、個人から贈与によって財産を取得した時に、財産をもらう側(受贈者)に課される税金のことです。

例えば、親から子へお金や不動産などの財産を贈与した場合、その受贈者である子が贈与税を支払う義務を負います。贈与税が発生する場合、受贈者は自ら確定申告を行い、税金を納めなければなりません。

贈与は親子や兄弟といった家族間であっても税法上のルールに従う必要があり、一定の金額を超える財産を受け取った場合には贈与税が発生します。

しかし、配偶者や子供など特定の親族間の贈与について、特例や控除が適用される場合もあります。

贈与税はいくらからかかるか

贈与税は、暦年課税方式によって、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額が110万円を超えると課税されます。

この110万円は、受贈者が贈与を受けた財産のうち、非課税となる基礎控除額であり、これを超えた分について贈与税が課されます。したがって、年間110万円以下の贈与であれば、贈与税は発生せず、確定申告の必要もありません。

しかし、暦年課税方式には、贈与してから一定期間内に死亡した場合に、その財産の贈与時の価額を相続財産に加算して相続税を計算するという「持ち戻し」のルールがあります

持ち戻し期間は従来3年間でしたが、2023年の税制改正により、2024年1月1日以降の贈与から段階的に延長され、2031年1月1日から7年間が持ち戻し対象期間となります。

この点、詳しくは後述していますのでご参照ください。

これにより、相続税の計算に影響を与えることがあるため、計画的な贈与が重要です。

持ち戻しのルールにより、相続時の財産分割や相続税の負担に対する影響を考慮しながら贈与を進めることが求められます。

親子間の贈与税の税率

贈与税の税率には次の2種類があり、適用されるケースが異なります。

特例税率
一般税率

特例税率は、父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合に適用され、受贈者がその年の1月1日時点で18歳以上であることが条件です。

例えば、祖父から孫への贈与や父から成人した子への贈与がこれに該当し、通常の税率よりも低く設定されています。

一方、一般税率は特例税率が適用されない場合、例えば兄弟間や夫婦間の贈与、または未成年の子への贈与に使用されます。

この税率は通常の贈与に適用されるもので、特例税率に比べて高くなっています。

したがって、贈与者と受贈者の関係や年齢によって適用される税率が異なる点が特徴です。

税率の種類該当するケース
特定税率贈与により財産を取得した者が(贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者に限る)、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に使用
例:祖父から孫への贈与、父から子への贈与 など
一般税率「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使用
例:兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合 など

参考:国税庁|No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

特例税率の計算

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

参考:国税庁|No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

特定税率を用いた贈与税の税額は、贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額を引いた課税価格に、特定税率の税率をかけることで求めることができます。

例えば、贈与財産の総額が500万円の場合、基礎控除後の課税価格は次のようになります。

基礎控除後の課税価格:500万円 - 110万円 = 390万円

基礎控除後の課税価格390万円は、200万円超400万円以下なため、適用する税率は15%となり、贈与税額は以下のとおりとなります。

贈与税額:390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円

一般税率の計算

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

参考:国税庁|No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

一般税率を用いた贈与税の税額は、贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額を引いた課税価格に、一般税率の税率をかけることで求めることができます。

例えば、贈与財産の総額が500万円の場合、基礎控除後の課税価格は次のようになります。

基礎控除後の課税価格:500万円 - 110万円 = 390万円

基礎控除後の課税価格390万円は、300万円超400万円以下なため、適用する税率は20%となり、贈与税額は以下になります。

贈与税額:390万円 × 20% - 25万円 = 53万円

親子間で贈与税がかからないもの

親子や兄弟といった家族間の贈与の場合、特定の条件を満たす贈与であれば贈与税がかかりません。

まず、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものであれば非課税です。

例えば、学費の支払い、医療費の負担などがこれに該当し、贈与税の対象外となります。また、年間110万円以下の贈与は、「暦年課税制度」により非課税です。

この制度では、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産のうち、110万円までは基礎控除され、贈与税が発生しません。したがって、親や兄弟からの少額な贈与については、税負担を気にせずに行うことが可能です。

ただし、「暦年課税制度」により非課税となったはずの贈与が、「持ち戻し」制度により相続財産に加算される場合もあるので注意が必要です。

この点、後で詳しく解説します。

親子間で贈与税がかかってしまう注意が必要なもの

親子間の贈与でも、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で通常必要と認められるものに該当しない場合、110万円を超えれば贈与税の課税対象となるため注意が必要です

特に次のようなケースには注意が必要です。

・教育費や生活費に充てられない贈与金
・親が保険料を負担した生命保険金
・子どもの借金の肩代わり
・高級な美術品を安く贈与した場合の時価との差額分

前項で生活費や教育費としての贈与は非課税と紹介しましたが、そのお金を投資や趣味にあてた場合には贈与税がかかります。

また、親が保険料を支払った生命保険の保険金を子どもが受け取る場合、その保険金も贈与とみなされ、贈与税が課されることがあります。

さらに、親が子どもの借金を肩代わりした場合、その負担額も贈与と見なされ、110万円を超えた部分には贈与税がかかります。これは、親が借金を返済したことで子どもが利益を得たとされるためです。

加えて、高級な美術品や不動産を時価より安く子どもに譲渡した場合、その時価との差額が贈与とみなされ、その部分に対しても贈与税が課されます。

税務上、実質的な価値の移転が課税対象となるため、注意が必要です。

そして、相続税の課税価格に加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されることになります。

このルールにより、相続税の計算がより厳格になり、生前の計画的な贈与がますます重要となります。

暦年課税制度の持ち戻しルールに注意

暦年課税制度には、「持ち戻し」というルールがあります。

これは、贈与者が贈与後に一定期間内に死亡した場合、その贈与財産を相続財産に戻して相続税を計算する仕組みです。通常の贈与税に加えて、相続税も考慮する必要があるため、注意が必要です。

2023年の税制改正により、この持ち戻し期間が従来の3年間から7年間に延長されました。

この変更は2024年1月1日以降の贈与から段階的に適用され、2031年1月1日からは完全に7年間が持ち戻し対象期間となります。
具体的には、死亡日以前3年以内の贈与は全額が相続財産に加算され、3年を超え7年以内に行われた贈与については「4年間の贈与額の合計-100万円」が相続財産に加算されます。なお、加算対象期間内に贈与されたものであれば贈与税がかかったかどうかに関係なく加算されます。

つまり、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになる点、注意が必要です。

そして、相続税の課税価格に加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されることになります。

このルールにより、相続税の計算がより厳格になり、生前の計画的な贈与がますます重要となります。

親子間の贈与税が非課税になるケース

親子間の贈与で年間110万円を超える場合でも、特定の制度を利用することで非課税となる場合があります。

・教育資金の一括贈与の特例措置
・結婚・子育て資金の一括贈与の特例措置
・住宅取得等資金の非課税の特例措置
・相続時精算課税制度

まず、教育資金の一括贈与の特例措置では、親や祖父母が子や孫に対し、教育費を目的に一括で贈与した場合、一定額まで非課税になります。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例措置もあり、結婚や子育てに必要な資金を一括贈与する際、非課税が適用されます。

また、住宅取得等資金の非課税特例措置では、子や孫が住宅を購入するために資金を贈与された場合、一定額まで非課税です。

さらに、相続時精算課税制度を利用すれば、一定額までの贈与を非課税にし、最終的に相続時に相続税として精算されます。

これらの制度を活用することで、税負担を抑えつつ、計画的な資産移転が可能です。
ただし、それぞれ特例措置を受けるための条件や手続が定められているため、適用を受けたいと考えている場合にはしっかり調査をする必要があります。

教育資金の一括贈与の特例措置

この制度は、親や祖父母(直系尊属)が子や孫に対し、教育資金を目的に一括で贈与する場合、最大1,500万円まで非課税となる特例措置です。

大学や専門学校の学費、塾や習い事の費用など広範な教育関連支出が対象です。

適用要件
• 受贈者が30歳未満であること
• 教育資金として使用すること
• 贈与された資金は専用口座に預け入れること
• 受贈者の前年度の所得が1,000万円以下であること

この制度を利用する際には、贈与された資金が教育以外に使用されると贈与税が課される点に注意が必要です。

また、教育資金を使い切らずに受贈者が30歳を迎えた場合等も、残額に対して贈与税が発生します。資金の管理と適切な申告が重要です。(ただし、その受贈者が30歳に達した時点で学校等に在学している場合又は教育訓練を受けている場合で、金融機関等の営業所等に届け出た場合は除きます。)

参考:国税庁|No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

結婚・子育て資金の一括贈与の特例措置

この制度は、親や祖父母(直系尊属)から結婚や子育てにかかる資金を一括で贈与された際、最大1,000万円まで非課税となる特例措置です。

結婚費用は300万円まで、残りは妊娠・出産や子育ての費用が対象となります。

適用要件
・受贈者が18歳以上50歳未満であること
・受贈者の前年度所得が1,000万円以下であること
・贈与された資金は専用口座に預け入れること

この制度を利用する際には、贈与資金が結婚・子育て以外に使用されると贈与税が課されます。

また、結婚費用には300万円の上限があり、専用口座の管理や申告が適切に行われない場合、非課税措置が無効になる可能性があるため、注意が必要です。

参考:国税庁|No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

住宅取得等資金の非課税の特例措置

この制度は、親や祖父母(直系尊属)から住宅の購入や増改築のための資金を贈与された際、最大1,000万円(一定の条件下で)まで非課税となる特例措置です。

贈与税を軽減し、住宅取得の支援を目的としています。

【適用要件】
• 受贈者の年齢が18歳以上であること
• 受贈者の所得が2,000万円以下であること
• 贈与された年の翌年3月15日までに住宅取得資金を使用し、居住すること
• 対象となる住宅は一定の要件を満たす必要がある

この特例を利用する場合、贈与された資金を住宅取得以外に使用した場合や、申告が不適切な場合には非課税措置が無効となります。

また、住宅取得資金を使用する期限や居住開始期限を守らないと課税されるため、計画的に利用することが重要です。

参考:国税庁|No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、生前に贈与された財産に対して、一定の額まで非課税とし、最終的に相続時に贈与額を相続財産に加算して相続税を計算する制度です。

最初の贈与税の申告時に税務署に「相続時精算課税選択届出書」を提出すれば、累計で2,500万円までの贈与は課税されません。

【適用要件】
• 受贈者が20歳以上であること
• 贈与者が60歳以上の親や祖父母(直系尊属)であること
• 受贈者の前年度所得が1,000万円以下であること
• 受贈者と贈与者が特別の関係にあること(親子等)

相続時精算課税制度を利用すると、一度選択した後は暦年課税に戻れません。

また、相続時に贈与額が相続財産に加算されるため、相続税の負担が生じる可能性があります。
そのため、長期的な資産計画と税額の予測が重要です。
ただ、2024年1月以降の贈与について、年間110万円までの基礎控除が認められました(相続時精算課税に係る基礎控除)。年110万円までの贈与について贈与税がかからず、かつ、相続時精算課税制度の累計2,500万円の特別控除にも含める必要がありません。

そのため、相続時精算課税制度を利用するメリットが大きくなったと言えます。

参考:国税庁|No.4103 相続時精算課税の選択

親子間で贈与をする際の注意点

親子間で贈与を行う際には、以下の点に注意が必要です。

・贈与契約書・借用書を作成する
・贈与税の無申告や不適切な申告によりペナルティを受ける恐れがある

まず、贈与契約書や借用書を作成することが重要です。

口頭でのやり取りでは贈与があったことを証明できないため、贈与の事実を明確にするために書面で契約を交わしておくことが求められます。特に大きな金額を贈与する場合は、後のトラブルを防ぐ手段となります。

また、贈与税の無申告や不適切な申告をした場合、罰則を受ける恐れがあります。

税務署は銀行口座の動きなどを通じて贈与を確認できるため、税務署に気づかれないままやり過ごすことは大変困難です。

法的手続きを正しく行い、贈与税をきちんと申告することが大切です。

贈与契約書・借用書を作成する

親子間で贈与を行う際にも、贈与契約書や借用書を作成することは重要です。

贈与は親子間でも法律上の契約行為であり、口頭だけで済ませると、後に「本当に贈与があったのか」という争いが生じる可能性があります。

また、税務署に対して贈与が適切に行われたことを証明するためにも、契約書の作成は不可欠です。特に大きな金額の場合は、税務調査で疑問を持たれやすいため、証拠として書面を残すことが大切です。

具体的な作成方法としては、まず贈与者と受贈者の氏名、贈与する財産の詳細、贈与の日時などを明記します。

また、双方が贈与内容に同意していることを示すため、署名・押印を行います。

借用書の場合は、貸し借りの条件や返済期限も明記します。

作成時の注意点としては、単なる贈与であっても「借用」と見なされないよう、贈与の無償性を明確にすることが大切です。

また、契約書は原則として2部作成し、双方が各1部ずつ保管するようにしましょう。

これにより、贈与の事実を法的に明確にできます。

贈与税の無申告は「ほぼ」ばれる

親子間で贈与を行う場合でも、贈与税の無申告は必ずと言っていいほど税務署に把握されます。

理由は、銀行口座の大きな資金移動や不動産の名義変更などの情報は金融機関や法務局から税務署に報告される仕組みがあるからです。

不審な点があれば調査により親子間の贈与が確認される可能性が高く、無申告が発覚すれば後にペナルティが科されることになります。

申告においては、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告を行い、必要な税額を納付することが求められます。

贈与の際に適用できる特例(例えば、相続時精算課税制度など)を活用する場合も、この期間内に申告する必要があります。

申告する際の注意点として、贈与額や内容に誤りがないように正確な情報を記載することが重要です。

また、贈与契約書を添付することで、贈与の事実を明確にすることが推奨されます。

さらに、申告を怠った場合には延滞税や加算税が課されるため、期日までに確実に手続きを済ませることが大切です。

東京都千代田区の遺産分割に強い弁護士なら直法律事務所

家族間での贈与税は、親子間でも一定額を超える場合に課税されますが、非課税となる特例もあります。

贈与税は年間110万円を超える財産の贈与に対して課税されますが、教育資金や住宅取得資金の一括贈与や、結婚・子育て資金の贈与など、特定のケースでは非課税措置が適用されることがあります。

しかし、手続きを誤って余計に税金がかかってしまうなど、注意すべき点も多くあります。

そのため、弁護士などの専門家に相談するなどして慎重な検討をするようにしましょう。

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