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遺産を兄弟に独り占めにされたらどうする?相続に強い弁護士が解説!

遺産分割のトラブル
投稿日:2024年02月26日 | 
最終更新日:2024年03月18日
Q
私の父は、かなりの不動産を所有していましたが、昨年、遺書も残さずに亡くなりました。父は、母及び兄と同居し、次男の私と妹は実家を出て別のところで生活しています。

先日、実家に帰ると、父の遺産全部を長男が独り占めしていることがわかりました。
兄は、高校を卒業してからずっと、長年にわたって父と共に父の店の経営に携わってきたので、相続財産の維持や増加に貢献したのだから、遺産を全部もらって当然だと主張しています。そして、大学まで行かせてもらった私や、挙式費用を払ってもらっている妹に渡す遺産はないと言ってきました。

とても不公平だと思うのですが、許されるのでしょうか?次男である私にも相続権があると思うのですが、どこへ相談に行けばよいのでしょうか?
Answer
ご質問の事例では、父が遺言を残さず亡くなられていますので、法定相続人が、民法に定められた相続分に従って相続するのが原則です。

このケースでは、亡くなった方の妻と子、つまり、母と長男、次男、長女が法定相続人になります。そして、各法定相続人の法定相続分は母が2分の1、長男、次男、長女がそれぞれ6分の1ずつです。

しかし、兄が言っているように、相続財産の維持に貢献した場合や、他方、被相続人から多額の財産を譲り受けているような場合、法定相続分のままで遺産を分けると不公平となる場合もあります。

そこで、民法には、場合によって、この法定相続分を修正する規定があります。それが特別受益と寄与分です。あなたが大学に行かせてもらったことや、妹が挙式費用を払ってもらったことが特別受益に該当するのか、また、長男の貢献が寄与分に該当するのか検討が必要となってきます。

とはいえ、長男以外にも相続人がおり、それぞれ相続分がありますので、長男が勝手に遺産を独り占めすることはできません。

そこで、まずは共同相続人間で話し合うことが必要です。そして、話し合っても相互に納得できないのであれば、最終的に家庭裁判所で調停をすることが考えられます。しかし、調停は時間がかかり、心理的負担も大きいため、事前に弁護士等の専門家に相談して、できる限り話し合いで解決できる方法がないかを検討し、また、調停になった場合の対応についてもアドバイスを受けておいたほうがよいでしょう。

この記事では、遺産を独り占めする相続人がいる場合の対応について、詳しく解説していきます。

遺産の独り占めができるのか

亡くなった方と同居している方や家業を継いだ家族が、亡くなった方の相続財産を独占しようとしている等の相談がよくあります。
このように、一人の相続人が相続財産を独占することができるのでしょうか。

相続人が一人しかいない場合

亡くなった方に法定相続人が一人しかいない場合、一人の相続人が遺産を独り占めすることは可能です。法定相続人が一人だけであるため、特に問題になることがないからです。

相続人が複数人の場合

他方、法定相続人が複数人の場合、勝手に、遺産を一人の相続人が独り占めすることはできないのが原則です。ただ、遺言がある場合とない場合では扱いが異なってきますので、分けて考えてみましょう。

遺言がない場合

遺言がない場合、民法の規定に従い、法定相続人が法定相続分を相続するのが原則です。亡くなった人の相続権がある人を法定相続人といい、次のとおり定められています。

【法定相続人とは】
死亡した人の法律上の配偶者は常に相続人となります。
配偶者以外の人は、①~③の順で配偶者とともに相続人となります。
なお、相続を放棄した者は、初めから相続人でなかったものとされます。
   〇 配偶者
     +
   ① 死亡した人の子供
   ② ①がいない場合、死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
   ③ ①も②もいない場合、死亡した人の兄弟姉妹

また、法定相続分は次のようになっています。

【法定相続分と遺留分】

※子ども、父母及び兄弟姉妹がそれぞれ複数人いる場合の相続分は、上記の相続分を人数で割って算定します。また、子ども及び父母が複数人の場合の遺留分も同様です。

このように、法定相続人が、それぞれの法定相続分に該当する相続財産を取得するのが原則です。

しかし、共同相続人同士で話し合い、全員が同意すれば、法定相続分を修正して相続することが可能です(遺産分割協議)。ただし、遺産分割協議はあくまで相続人全員の合意が必要なので、勝手に一人の相続人が独り占めすることはできません。

遺言がある場合

では、遺言がある場合はどうでしょうか。

遺言とは、自分が亡くなった後に、自分の財産をどのように処分したいのかという意思を書き記したものです。遺言者の最終の意思を確認し、また、尊重して、その内容を実現するための制度です。そのため、遺言があれば、遺言に従って相続が行われるのが原則です。

そう考えると、もし、全財産を一人の相続人に渡すという遺言があれば、遺言の指定する通り、一人の相続人が独り占めできるようにも思われます。

しかし、遺留分を有する相続人には、遺留分の限度で一定の割合の相続財産が保障されます。なお、上の図の【法定相続分と遺留分】の表の赤字部分が遺留分の割合です。そのため、遺留分について、被相続人は遺言に記したとしても、自由に分配することができないのです。

相続人が複数でも独り占めできる場合

前述のように、法定相続人が複数人いる場合には、他の相続人の合意を得ない限り、勝手に一人の相続人が相続財産を独り占めすることはできません。しかし、次のようなケースでは、例外的に、一人の相続人が遺産を独り占めすることができます。

  1. 1他の相続人が相続放棄などで相続権を喪失した場合
  2. 2共同相続人が死亡した人の兄弟姉妹のみで一人に全財産を渡す遺言がある場合
  3. 3共同相続人が死亡した人の配偶者と兄弟姉妹のみの場合で、配偶者に全財産を渡す遺言がある場合

①の場合のように、他の相続人が相続放棄をした場合には、他の相続人には相続分も遺留分もないため、一人の相続人が財産を独占することができます。

また、②や③の場合、兄弟姉妹には相続分がありますが、遺留分がないため、遺言によりすべての財産を一人の相続人に相続させるということであれば、一人の相続人が財産を独占することができます。

遺留分については下記のコラム記事内でも詳しく解説しておりますので、ご確認ください。

遺留分侵害額請求とは?~具体例で算定方法も解説~

独り占めしようとする相続人への対処方法

このように、一人の相続人が勝手に相続財産を独占できるのは限定的なケースのみということがわかりました。しかし、実際に一人の相続人が相続財産を独占してしまっている場合や、独占しようとしている場合にはどうしたらよいのでしょうか。

遺言がない場合

遺言がない場合、法定相続人は法定相続分の相続財産を取得できるのが原則です。そこで、勝手に相続財産を独占している相続人がいる場合、その者に対して、遺産分割協議をするように求める必要があります。その際には、各相続人には法定相続分があり、一人の相続人が勝手に相続財産を独占することはできないことも伝えましょう。さらに、独占したい財産がある場合には、代償金を支払う方法もある等、遺産分割の方法が種々あることも伝えるとよいでしょう。

それでも遺産分割協議に応じない場合や合意できない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停では調停委員が、それぞれ取得すべき相続分に配慮して、独占しようとする者を説得してくれることが多いです。しかし、調停は当事者全員が合意しなければ成立しません。

調停で合意できない場合、自動的に家庭裁判所の審判手続に移行します。この場合、裁判官が法定相続分に応じて遺産の分割方法を決定します。

このように、相続人同士で話し合いをする場合や、遺産分割調停を利用する場合でも、相手側の根拠のない情報を鵜呑みにすると、理不尽な要求に気づかず不利な結果となってしまうことがよくあります。そうならないよう、弁護士等の専門家を活用して情報の真実性を確認し、法的に可能な主張が何か、しっかり整理しておくことが大切です。

遺言がある場合

一人の相続人に相続財産を相続させる旨の遺言がある場合でも、遺言書の有効性が問題となり、遺言が無効となる場合があります。偽造や変造されている場合のほか、必要な要式を満たしていないために無効となる場合もあります。そこで、しっかりと遺言書を確認し、写真やコピーを取るなどしておきましょう。そして、違和感があれば弁護士等の専門家に相談するようにしましょう。遺言の効力が疑われる場合、相続人同士の話し合いで解決できなければ、民事訴訟で遺言の効力を確定しなければなりません。なお、遺言の効力の確定は、遺産分割調停の対象ではない点、注意が必要です。

遺言書の有効性に問題がない場合でも、他の相続人は遺留分侵害額の請求が可能です。冒頭の設問の例のように長男が相続財産を独占している場合、母は4分の1、次男と長女はそれぞれ12分の1の遺留分があるため、これを侵害する額について遺留分侵害額の請求が可能です。ただ、遺留分侵害額請求は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しないと、時効によって消滅してしまいます。そこで、1年以内に行使したことを証拠に残せるよう、内容証明郵便で遺留分侵害額の請求をするようにしましょう。

他方、遺言で相続をする者として指定された者とは別の相続人が相続財産を独占している場合、遺言書があること、遺言書の指定する通りに分割すべきことを伝え、応じなければ遺産分割調停を検討しましょう。ただし、遺言書の効力に争いがある場合には、別途、民事訴訟で有効性を確定する必要があり、注意が必要です。

寄与分による修正

では、設問の例のように、亡くなった人の家業を継いだ者や介護をしてきた者などが、その貢献を理由に遺産を独り占めしようとする場合はどうしたらよいのか問題となります。

この場合、亡くなった人の世話などをしていた者の貢献が、「寄与分」に該当するか否かを検討します。

寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持や増加に通常期待される程度を越える貢献をした者があるときに、相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とするというものです。

寄与分は次の要件を満たした場合に、相続人に限り認められます。

① 相続人自らが寄与行為をしたこと
② 当該寄与行為が「特別の寄与」であること
  ※特別の寄与とは、相続人と相続人の身分関係に基づいて
   通常期待されるような程度を超える貢献をいいます。

③ 被相続人の遺産が維持又は増加したこと
  ※精神的な援助や協力は寄与として考慮しません。
④ ①と③の間に因果関係があること

寄与行為の代表的な態様である家業従事型の場合、無報酬またはこれに近い状態で従事したという無償性の有無が問題となることが多いです。設問の例の長男が、十分に報酬を得ていたような場合には、寄与分が認められない可能性が高いです。

特別受益による修正

次に、設問の例のように、自分以外の相続人が亡くなった人から学費を出してもらっている場合や、結婚式の費用を払ってもらっていることを理由に、遺産を独り占めしようとしている相続人がいる場合はどうしたらよいのか問題となります。

特別受益は、共同相続人の中に、被相続人から遺贈又は生前贈与を受けた者がいる場合、相続財産の価額にその被相続人から受けた遺贈や生前贈与(特別受益)の価額を加えたものを相続財産とみなし(持戻し)、各共同相続人の相続分を算定し、特別受益を受けた者については算定した相続分から特別受益の価額を控除した額を相続分とするものです。

遺贈を受けた相続人がいる場合、包括遺贈であるか特定遺贈であるか、また「遺贈する」か「相続させる」という文言を問わず、すべて特別受益となるため、特別受益財産として自己の相続分から控除されます。

また、生前贈与を受けた相続人がいる場合、この生前贈与が特別受益に当たるか否かは、相続財産の前渡しとみられる贈与か否かを基準として判断します。

設問の例のように、次男が大学に行かせてもらったことや、長女が挙式費用を払ってもらったことは、特別受益に該当するのでしょうか。

大学等、高校卒業後の教育の学資は、親の子に対する扶養の範囲内とは言えませんが、相続人全員が大学教育を受けている等ほぼ同額の受益を受けている場合、通常は、特別受益として考慮しません。ただ、私立の医科大学の入学金などのように特別に多額なものについては、別途、検討が必要な場合もあります。

≪大阪高決平成19年12月6日(家月60巻9号89頁)≫
本件のように、被相続人の子供らが、大学や師範学校等、当時としては高等教育と評価できる教育を受けていく中で、子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情のない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。

一般的に、持参金支度金などは、婚姻又は養子縁組のための贈与として特別受益になると考えられていますが、価額が少額で扶養の一部といえる程度であれば特別受益にならないと考えられます。

他方、結納金挙式費用は、一般的には特別受益にならないと考えられます。

財産隠しが疑われる場合

このように、一人の相続人が勝手に遺産を独占しようとする場合の対応を見てきましたが、遺産の開示をもとめたところ、思ったより遺産が少ない場合、遺産を隠している疑いがあります。そのような場合にとるべき手段についてみていきましょう。

財産調査

遺産を独り占めしようとしている相続人が全ての相続財産であるとして提示する目録などがあったとしても、自分でも調査をしてみることが大切です。

例えば、不動産については、固定資産税の納付通知書や預貯金口座の取引履歴などを手掛かりに、また、市役所などで名寄帳を取得した上で、法務局の登記情報を確認します。

また、預貯金の場合、金融機関がわかればその金融機関から残高証明書や取引証明書を取得します。その方法や手順は、通常、各金融機関のウェブサイトなどに記載されていますので、参照してみてください。金融機関がわからない場合には、自宅から便利な立地にある金融機関や、郵便物やカレンダーなどから利用が推測される金融機関をあたってみましょう。有価証券についても利用していたと思われる証券会社等か証券保管振替機構に問い合わせて残高証明等を取得します。

預貯金口座の取引履歴などから、死亡した人が入院していて動けない時期などに度々引き出されているなど、使い込みが疑われる場合、医師の診断書を取得するなど病院等の協力を求める場合もあります。

口座凍結の流れ

亡くなった人の金融機関の口座から出金されている恐れがある場合、相続財産を保全するため、急ぎ口座の凍結をする必要があります。

金融機関の口座は、人が亡くなったからといって自動的に凍結されません。そのため、凍結までの間に、キャッシュカードなどを持っている人が勝手に金銭を引き出してしまう場合も多くあります。

亡くなった人が口座を持っている金融機関がわかる場合、その金融機関の窓口で口座の名義人が亡くなったことを伝えましょう。必要書類などは金融機関のウェブサイトで確認できる場合が多いので、事前に確認するとよいでしょう。

口座凍結をする際には、特定日時の残高がわかる残高証明書や取引履歴がわかる取引明細書を取得するようにしましょう。これらの証明書の取得には費用もかかりますが、生前から財産隠しや使い込みをしている疑いがある場合には争いになった時の証拠とするため、5年分の取引明細書をとることが多いです。

財産を取り戻す方法

財産調査の結果、使い込みなどが判明した場合には、証拠を集めた上で、まず、使い込んだ本人に返還を求めましょう。反論があれば確認し、話し合いましょう。結果として使い込みではなかったことが判明して円満に解決することもあります。また、遺産の分割方法と合わせて話し合いをすることで、よい解決方法が生まれる場合もあります。

しかし、解決できない場合は裁判所を利用することを検討しましょう。この場合、使い込みが被相続人の生前であったか、死後であったかによって紛争解決手段が異なります。死後の使い込みであれば、遺産の一部が使い込まれたことになるので家庭裁判所の遺産分割調停の中で解決することができます。他方、生前の使い込みについては、地方裁判所か簡易裁判所で不当利得返還請求訴訟や調停を行って解決する必要があります。この場合、遺産分割調停との前後関係が問題になりますが、不当利得返還請求訴訟や調停を先にするか、並行して行うのが通常です。

まとめ

遺言がない場合には、法定相続人全員で遺産分割協議をして、法定相続分を目安に遺産を分割する合意をする必要があります。もし、勝手に遺産を独占しようとする相続人がいる場合には、法律を味方に遺産分割協議をするよう求めましょう。そして、協議に応じない場合には遺産分割調停を申し立てましょう。

一人の相続人に全財産を渡す旨の遺言がある場合には、遺言の有効性を確認しましょう。遺言の効力が疑われる場合には、民事訴訟で遺言の効力を確定することを検討しましょう。他方、遺言が有効であることに問題がない場合には、遺留分侵害額の請求をしましょう。

また、遺産が隠されている疑いがある場合、自身でも財産調査を行いましょう。これによって使い込みや財産隠しの可能性が高いと考えられる場合には、その証拠を集めておきましょう。その上で、遺産分割協議や遺産分割調停などで遺産分割を求めていきます。

東京都千代田区の遺産相続に強い弁護士なら直法律事務所

このように、遺産の独り占めをする相続人に対する対応や対処法は多岐にわたり、また、親族間の争いとなるため精神的負担はとても大きくなることが多いです。感情の行き違いが、大きなトラブルに発展してしまうこともあります。さらに、相続税対策も必要な場合もあり、遺産相続の知識や注意点を熟知している弁護士に依頼してサポートを受けるメリットは大きいです。弁護士費用等のお金の心配があれば、初回は無料で相談できるところも多いので、サービスの詳細を確認の上、依頼を検討するようにしましょう。

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