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遺留分侵害額請求とは?~具体例で算定方法も解説~

遺留分のトラブル
投稿日:2022年10月24日 | 
最終更新日:2023年07月14日

遺留分侵害額請求

はじめに

遺留分侵害額請求とは、被相続人による贈与や遺贈によって、遺留分権利者の遺留分が侵害されている場合に、受贈者や受遺者に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを請求するものです。

この請求をできる権利を遺留分侵害額請求権といいます。

たとえば、夫が亡くなった場合に、夫のすべての財産が親しかった友人に遺贈されたときには、妻としては、夫の財産を自己の生活費に充てるといった期待が害されるおそれがあります。

遺留分侵害額請求は、このような場合に妻から友人への一定額の金銭の支払いを請求することを可能にするものであり、これによって上述の妻の期待を保護しようとするものです。

ただし、請求できる金額には後述の遺留分侵害額という限界があり、贈与された全額の請求はできないので注意が必要です。

遺留分侵害請求権の消滅時効・除斥期間

遺留分侵害額請求権はいつまでも認められるものではなく、遺留分権利者が相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは消滅し、行使できなくなってしまいます(このような法制度を消滅時効といいます)。

「相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」とは、単に相続が開始したことと贈与又は遺贈があったことを知っただけではなく、当該贈与や遺贈が遺留分を侵害することを知ることが必要であるとされています。

また、遺留分侵害額請求権は、相続開始の時から10年間が経過した場合には消滅し、行使できなくなります。この制度を除斥期間といい、消滅時効が遺留分権利者の認識を要件としていたのに対して、除斥期間は当事者の認識を要件としていない点で異なります。

なお、遺留分侵害額請求によって生じた金銭債権については、通常の金銭債権と同様に消滅時効にかかりますので、改正民法(債権)施行前においては10年間(改正前民(債権)167①)、その施行後においては権利を行使することができることを知った時から5年間の消滅時効にかかることにご留意ください。

以上のように、遺留分侵害額請求権の行使には時間的な制限がありますので、問題が発生した場合には弁護士等の専門家へのお早めにご相談することをお勧めします

相当の期限の許与

遺留分侵害額請求権は金銭の支払を求める権利であるため、被相続人(亡くなった人)から受けた遺贈の対象財産が不動産や動産である場合であって、金銭に換えることが困難なときや、請求を受けた時点では十分な資金がない場合などについては、受遺者又は受贈者としては請求に応じたくても応じることができないという不都合が生じるおそれがあります。一方で、受遺者、受贈者の利益にも一定の配慮が必要です。

そこで、受遺者又は受贈者の請求により、裁判所は、金銭債権の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができることとされています(民法1047条5項)。

裁判所が期限を許与した場合は、当該期限の許与をした金銭債務の全部又は一部について、その弁済期が変更されることになります。この期限が許与されたときは、金銭給付の請求を受けた受遺者・受贈者は、その期限内は金銭債務につき履行遅滞に陥りません(遅延損害金が発生しない)。

期限の許与の請求の行使方法に関して、遺留分権利者が金銭支払請求訴訟を提起している場合には、期限の許与の請求につき、受遺者・受贈者は抗弁として主張すればよく、反訴又は別訴の提起を要しないと解されています。

他方で、受遺者・受贈者が遺留分権利者を相手方として期限の許与を求めて訴訟を提起する場合には、期限の許与を求める訴えを提起するもので、形成の訴えとなります。

請求方法

はじめに

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が行使する旨の意思を表示して初めて効果が生じる権利(このような性質の権利を形成権といいます)であるため、遺留分が侵害された遺留分権利者の意思表示が必要となります。ただし、この際に、遺留分侵害額が具体的にいくらであるか示すことまでは必要ありません。

また、遺留分侵害額請求をするためには意思表示だけで十分であるため、行使するために訴えを提起することは必要ではありません。

請求をする相手方

遺留分侵害額請求をする相手方は、遺留分侵害額を負担する受遺者、受贈者及びその包括承継人となります。民法1046条は、受遺者の定義として、「特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人」を含むと規定していることから、特定財産承継遺言により財産を承継した相続人又は相続分の指定を受けた相続人も、遺留分侵害額の請求の相手方となります。

遺産分割協議の申入れ

遺留分侵害額請求と遺産分割協議について、前者は贈与や遺贈の有効性を前提とするのに対し、後者は必ずしも前提としない点で異なるものであるため、遺産分割協議の申入れは直ちに遺留分侵害額請求の意思表示とはならないのが原則です。

しかし、当該遺留分権利者が、遺贈が有効であることを前提に、受遺者に対して遺産分割協議を申し入れた場合には、通常、遺留分権利者は自身の遺留分が侵害されていれば当該侵害額について侵害者に請求する意思を有しているのが通常であるため、当該申入れには遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示が含まれているとされます。

他方、遺贈(遺言)が無効なものであると主張するように遺贈の効力を争うというときには、そういうわけにはいきません。つまり、遺贈の無効を前提とした遺産分割の申入れの趣旨であるという場合には、その申入れの中に当然に遺留分侵害額請求の意思表示を含んでいると解することはできません。

この場合には、遺留分権利者は遺贈の効力を争うことと同時に、遺贈の効力が有効であるとしても遺留分侵害請求をする旨の意思表示を仮定的に行っておく必要があります。

なぜならば、遺留分権利者が生前贈与につき訴訟上無効の主張をしさえすれば、それが根拠のない言いがかりであっても時効が進行しないとするのは相当でないとして、遺産のほとんど全部が贈与されている事実を遺留分権利者が認識している場合には、特段の事情が認められない限り、民法1048条の消滅時効が進行するとされており(最高裁平成10年6月11日判決)、遺贈が有効であると判断された場合でも遺留分侵害額請求権が行使できなくなる事態が生じるのを防ぐ必要があるためです。

最一小判平成10年6月11日(民集52巻4号1034頁)
「遺産分割と遺留分減殺とは、その要件、効果を異にするから、遺産分割協議の申入れに、当然、遺留分減殺の意思表示が含まれているということはできない。しかし、被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合には、遺贈を受けなかった相続人が遺産の配分を求めるためには、法律上、遺留分減殺によるほかないのであるから、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解するのが相当である。」

遺留分侵害額請求権の代位行使

遺留分を侵害された者の債権者は、自己の債権を保全するため、遺留分権利者に代位して、遺留分侵害額請求権を行使することができるかという問題について、判例は、遺留分侵害額請求権が行使上の一身専属性を有するものとみて、債権者による代位行使を否定しています。

遅延損害金

遺留分侵害額請求権の行使により生じた金銭債権に係る債務については、期限の定めのない債務となり、遺留分権利者が受遺者等に対して具体的な金額を示してその履行を請求した時点で初めて履行遅滞に陥ります。

遺留分侵害額の算定方式

算定方法と計算式

遺留分侵害額は、遺留分の額から、

①遺留分権利者が生前贈与等を受けている場合には、その価額を控除し、
また、

②遺産分割の対象財産がある場合には、遺産分割手続において遺留分権利者が取得する財産の価額を控除し、

さらに、

③相続債務がある場合には、遺留分権利者が相続によって負担する債務の額を加算することによって求めます(民法1046条2項)。

これを計算式で表すと以下のようになります。

遺留分侵害額
 =遺留分額(①)
 -遺留分権利者が受けた贈与、遺贈、特別受益の額(②)
 -遺産分割の対象財産がある場合における遺留分権利者の具体的相続分に相当する額(③)
 +遺留分権利者が負担する債務(④)

算定項目

遺留分額

遺留分額は、遺留分を算定するための財産の価額を、それぞれの遺留分権利者が有している遺留分の割合で除した額です。

詳しくは記事【法改正で遺留分制度はこう変わった!~例を用いて算定方法も解説~】をご参照ください。

遺留分権利者が受けた贈与、遺贈、特別受益

遺留分権利者が遺贈又は特別受益(民法903条1項)にあたる贈与を受けていた場合には、当該財産の価額が遺留分額から控除されます(1046条2項1項)。

特別受益とは、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として」受けた贈与(903条1項)をいいます。「婚姻若しくは養子縁組のため…受けた贈与」とは、持参金や嫁入道具、支度金などのことをいいます。他方、「生計の資本として受けた贈与」とは、独立して世帯を持つときに住宅を建ててもらったり、営業資金を出してもらったりした場合がこれに該当します。

また、普通教育以上の学費についても、当該学費を支出するのが被相続人の資力等から当然と認められない限り、受贈者にとって将来の生計の基礎か生活能力の取得の基礎になるものといえ、「生計の資本として受けた贈与」にあたるとされています。

特別受益については、【特別受益にあたる生前贈与は、遺留分侵害の対象になる?具体例も用いて解説!】の記事もご参照ください。

遺産分割の対象財産がある場合における遺留分権利者の具体的相続分に相当する額

遺産分割の対象となる財産がある場合には、遺留分権利者が遺産分割から取得すべき財産の価額を遺留分額から控除します(民法1046条2項2号)。

ここでいう遺産分割から取得すべき財産の価額とは、遺産が終了している場合でなくとも、遺言書による相続分の指定や特別受益(婚姻や養子縁組のため又は生計の資本としてなされた贈与)を考慮に入れた具体的相続分に基づいた場合に取得することができる価額をいいます。

遺留分権利者が負担する債務

遺留分侵害額の算定においては、被相続人が相続開始の時(被相続人が亡くなったとき)において有していた債務のうち、自身の相続分に応じた部分に相当する負債が加算されます。

ただし、相続人のうちの一人に対して財産全部を「相続させる」旨の遺言がされた場合、被相続人は当該相続人に相続債務を相続させる意思があったとみるべきです(相続分の指定がされた場合は相続債務も指定相続分によります)。

※別記事【遺言書作成のとき、「相続させる」と「遺贈する」では効力が変わる?

したがって、遺留分権利者の遺留分侵害額を計算するに当たっては、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を算入することはできません。

よって、上記の場合には遺留分権利者が相続によって負担すべき債務の額はゼロとなることに注意してください。

 受遺者が相続債務を消滅させた場合、消滅した債務の額の限度で、遺留分権利者に対する意思表示により、遺留分侵害額に係る債務を消滅させることができます。すなわち、民法1047条③前段は、遺留分侵害額の請求を受けた受遺者又は受贈者が遺留分権利者の承継する相続債務について免責的債務引受、弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって、遺留分侵害額請求により負担する債務を消滅させることができると規定しています。

計算例

最後に、まとめとして実際にどのように算定されるのかについて以下の例を題材に確認します。

夫Aが亡くなり、Aの相続人として妻B、子C、子Dがいます。
Aの遺産が4000万円であり、Aの債務として1000万円が残されました。
また、Aは亡くなる5年前に子Cに対して営業資金として1000万円を贈与しており、亡くなる3か月前に友人Eに6000万円を贈与していました。

この場合における妻B、子C、子Dの遺留分侵害額はそれぞれいくらになるでしょうか。

まず、遺留分算定の基礎となる財産額を求めます。この事例では、積極財産である遺産4000万円があり、亡くなる3か月前に生前贈与されているため、6000万円も加算されます(民法1044条1項前段)。また、亡くなる5年前に、子Cに対する営業資金としての1000万円の贈与がなされており、これは「生計の資本として受けた贈与」にあたるため、基礎財産に加算されます(同条3項)。

そのため、積極財産の合計額は11000万円となります。この合計額から債務1000万円が控除され、遺留分算定の基礎となる財産は10000万円となります。

そして、配偶者である妻Bの遺留分の割合は4分の1であり、子であるC、Dの遺留分の割合は8分の1です。そのため、Bの遺留分額は2500万円となり、C、Dの遺留分額は1250万円となります。

そして、相続によって得た財産額は、妻Bが2000万円(積極財産4000万円×法定相続分2分の1)であり、子C、Dが各1000万円(積極財産4000万円×法定相続分4分の1)です。

他方、債務の負担額は、妻Bが500万円(負債1000万円×法定相続分2分の1)であり、子C、Dは各250万円(負債1000万円×法定相続分4分の1)です。

また、子Cは特別受益に該当する1000万円の生前贈与を受けているため、子Cの遺留分から1000万円が控除されます。

そのため、妻Bと子Dは、Eに対してそれぞれ下記の遺留分侵害額請求ができることになります。

妻Bの遺留分侵害額
1000万円(遺留分額2500万円-相続によって得た財産2000万円+負債500万円)

子Cの遺留分侵害額
0万円(遺留分1250万円-特別受益1000万円-相続によって得た財産1000万円+負債250万円)

子Dの遺留分侵害額
500万円(遺留分1250万円-相続によって得た財産1000万円+負債250万円)

遺留分で悩んだら、弁護士に相談を

遺留分侵害額の計算例をご紹介しましたが、複数の贈与・遺贈があったり、債務があるとその計算方法は非常に複雑になることもあります。

遺留分侵害に関する交渉が効を奏しなければ、家庭裁判所に調停を申し立てなければなりません。

その場合の管轄は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所(家事法245条1項)となります。

民事訴訟法で認められている被相続人の相続開始の時の住所地(民訴5条14号)に管轄はないことにご留意ください。

遺留分侵害額を請求する場合・請求された場合どちらに関しても、当事務所ではお客様の状況・悩みに合わせて適切にサポートすることが可能です。

お困りの際は、お早めにお問い合わせください。

※遺留分に関する弁護士費用は、こちらのページからご確認いただけます

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