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弁護士コラム

特別受益者の相続分はどう計算する?具体例でわかりやすく解説!

遺産分割のトラブル
投稿日:2022年09月21日 | 
最終更新日:2024年05月01日
Q
特別受益者の相続人の相続分は、どのように算定するのでしょうか?
Answer
まず、相続開始時の積極財産(プラスの財産)の価格に、特別受益に当たる価格をくわえた、みなし相続財産を計算します。
そのみなし相続財産に、相続分をかけ合わせた算定額から、特別受益に当たる価格を控除します。
この控除後の残額が、特別受益者の相続人の相続分となります。

本記事で、わかりやすくご説明します。

特別受益者の相続分の算定方法

(※「特別受益」の意味については、「「特別受益」とは?具体的な事例とともにわかりやすく解説!」の記事をご参照ください。)

共同相続人中に、被相続人(亡くなった人)から生前贈与や遺贈を受けた相続人(特別受益者)がいる場合があります。

このような場合には、生前贈与や遺贈は相続分の前渡しといえます

したがって、共同相続人間の公平性を保つため、具体的な相続分の算定にあたり、各人の特別受益額を考慮することになります。

より具体的な、特別受益者の相続分の算定方法は、以下のようになります。

  1. 1相続開始の時に、被相続人が有していた財産(相続開始時財産)のうち、積極財産の価格を整理します。
  2. 2(①の価格に、)生前贈与に当たる価格をくわえた、みなし相続財産を計算します。
  3. 3そのみなし相続財産に、相続分をかけ合わせて、「一応の相続分」を計算します。
  4. 4(③で計算した)「一応の相続分」から、遺贈を加えた特別受益に当たる価格を控除します。

において、相続分は、指定相続分(※)があれば指定相続分にしたがい、指定相続分がなければ、法定相続分にしたがいます。

※   被相続人は、遺言により、共同相続人の相続分を定めたり、これを定めることを第三者に委託したりすることもできます(民902)。この遺言によって指定された相続分を「指定相続分」といいます。例えば、「妻には2分の1、長男には8分の1、次男には4分の1」などと指定することができることになります。

この計算後の残額が、特別受益者である相続人の、具体的な相続分となります。

例えば、相続人がA、B、C、Dの4人の子、相続開始時財産が2500万円、
特別受益として、Aに500万円(生前贈与)、Bに200万円(遺贈)があったとして計算しましょう。

まず、①相続開始時財産のうち、積極財産の価格を整理します。

今回は、2500万円ということになります。

②生前贈与に当たる価格をくわえた、みなし相続財産を計算します。

2500万円+500万円=3000万円 となります。

(遺言によって財産を他人に無償で与えること(民法964条)ができ、これを遺贈といいます。遺贈は、遺言者の死後の財産処分です。そして、共同相続人に対する遺贈は、相続開始時に存在する相続財産を構成する財産として扱われます(言い換えれば、相続財産から未だ逸出していない財産として扱われるということです)。

ですから、みなし相続財産の計算のときに、遺贈については、生前贈与とちがい、持ち戻して計算をする必要はありません。

具体的にあてはめるなら、今回のみなし相続財産は、2500万円+500万円+200万円=3200万円、とはなりません。)

※遺産分割は、分割時の時価によりますが、他方で、特別受益の金額は、相続時の評価額によります。そのため、実務では、相続時点での遺産総額に対する特別受益の割合を決めた上で、遺産分割時の時価に換算して遺産分割を行うことになります。なお、金銭の時価評価は、消費者物価指数をもとに貨幣価値を換算することになります。

③そのみなし相続財産に、相続分をかけ合わせた「一応の相続分」を計算します。

相続分は、指定相続分があれば指定相続分にしたがい、指定相続分がなければ、法定相続分にしたがいます。

今回は、指定相続分はありません。そして、4人の子でみなし相続財産をわけあうことになりますから、法定相続分に従い、

3000万円×1/4=750万円 となります。

④(③で計算した)「一応の相続分」から、遺贈を加えた特別受益に当たる価格を控除します。

今回、特別受益者はAとBですので、各人の具体的な相続分は、次のようになります。

A:750万円ー500万円=250万円
B:750万円ー200万円=550万円
C:750万円
D:750万円

少し詳しく

超過特別受益者の相続分の算定方法

超過特別受益者とは、上記の①~④の計算結果が、ゼロ以下となる共同相続人のことです。

例えば、相続人がA、B、C、Dの4人の子、相続開始時財産が2500万円、
特別受益として、Aに500万円(生前贈与)、Bに1100万円(遺贈)があったとしましょう。

①相続開始時の積極財産の価格は、2500万円です。

②みなし相続財産は、

2500万円+500万円=3000万円 となります。

③みなし相続財産に、相続分をかけ合わせた算定額(「一応の相続分」)は、

3000万円×1/4=750万円 となります。

④(③で計算した)「一応の相続分」から、特別受益に当たる価格を控除します。

今回、特別受益者はAとBですので、それぞれの具体的な相続分は、次のようになります。

A:750万円ー500万円=250万円

B:750万円ー1100万円=ー350万円(マイナス350万円)

このように、①~④の計算結果が、ゼロ以下となる共同相続人であるBが、超過特別受益者です。

では、このように、超過特別受益者がいる場合には、どのように各人の具体的な相続分を計算したらよいのでしょうか。

計算方法の考え方は、4つほどあると指摘されますが、本記事では、もっとも一般的な計算方法をご説明します。

すなわち、超過特別受益者であるBを除く他の共同相続人A・C・Dは、①~④で計算された具体的相続分の割合にしたがって遺産の分配を受けるという計算方法です。

今回、A・C・Dはそれぞれ、

A:250万円

C:750万円

D:750万円

の具体的相続分が計算されました。

その割合は、250万円:750万円:750万円=1:3:3となります。

そこで、Bへの遺贈を控除した遺産の価格である、2500万円ー1100万円=1400万円を、

A:1400×1/7=200万円

C:1400×3/7=600万円

D:1400×3/7=600万円

と具体的相続分の割合にしたがって計算することになります。

なお、特別受益を控除した結果がゼロ以下となる、Bのような共同相続人(超過特別受益者)は、単に相続財産からは何も取得できないにとどまります。言い換えれば、マイナスとなった超過分(今回では、350万円分)を他の共同相続人に返還する必要はありません(民法903条第2項)。

相続債務がある場合の算定方法

相続開始の時に、被相続人が有していた相続開始時財産は、積極財産を意味します。

ですので、仮に、相続債務がある場合には、その相続債務を共同相続人間でどのように負担すべきかが問題となります。

相続債務とは、相続人に相続された被相続人の債務のことです。

この問題について、民法に特別の規定はありません。

本来の相続分によって分担するという見解が、公平かつ妥当であるとの指摘がされています。

今回、仮に相続債務が400万円あったとしましょう。

A、B、C、Dはいずれも子で、相続分は1/4ずつです。

そこで、相続債務についても、400万円×1/4=100万円ずつ負担する、ということになります。

寄与相続人がある場合の算定方法

特別受益者のほかに、寄与相続人がいる場合があります。

寄与相続人とは、共同相続人であって、「被相続人の財産の維持または増加」について「特別の寄与」をした者のことです(民法904条の2)。

例えば、寄与には、

  1. 被相続人の事業に関して労務を提供したこと、
  2. 被相続人の事業に関する財産上の給付をしたこと、
  3. 被相続人の療養看護をしたこと、
  4. その他の方法

が挙げられます。

このような場合には、特別受益者について定める民法903条と、寄与相続人について定める民法904条の関係が問題となります。

ここで、民法903条と民法904条の適用関係について、民法上優劣は定められていません。

そこで、同時に適用されると考え、次のように計算します。

まず、①相続開始時財産のうち、積極財産の価格を整理します。

②(①の価格に、)特別受益に当たる価格をくわえたうえ、さらに、寄与分が認められた者の寄与分額を控除して、みなし相続財産を計算します。

③そのみなし相続財産に、相続分をかけ合わせた「一応の相続分」を計算します。

相続分は、指定相続分があれば指定相続分にしたがい、指定相続分がなければ、法定相続分にしたがいます。

④(③で計算した)「一応の相続分」から、特別受益に当たる価格を控除し、または寄与分が認められた者の寄与分額は加算します。

この計算後の価格が、特別受益者である相続人や寄与相続人の、具体的な相続分となります。

例えば、最初の例のとおり、相続人がA、B、C、Dの4人の子、相続開始時財産が2500万円、
特別受益として、Aに500万円(生前贈与)、Bに200万円(遺贈)があったとしましょう。
さらに、Cに1000万円分の寄与があったとします。

①相続開始時の積極財産の価格は、2500万円です。

②みなし相続財産は、

2500万円+500万円ー1000万円=2000万円 となります。

③みなし相続財産に、相続分をかけ合わせた算定額(「一応の相続分」)は、

2000万円×1/4=500万円 となります。

④(③で計算した)「一応の相続分」から、特別受益に当たる価格を控除し、または寄与分が認められた者の寄与分額は加算します。

今回、特別受益者はAとBで、寄与相続人はCですので、各人の具体的な相続分は、次のようになります。

A:500万円ー500万円=0万円

B:500万円ー200万円=300万円

C:500万円+1000万円=15000万円

D:500万円

相続分の計算に困ったら、弁護士に相談を

いかがでしたでしょうか。

これまでご説明してきたように、特別受益者の相続分の算定方法には、原則的な計算方法から、

  • 超過特別受益者の相続分の算定方法
  • 相続債務がある場合の算定方法
  • 寄与相続人がある場合の算定方法

と、複雑です。

特別受益や寄与の範囲、財産評価、計算方法は、実務でも非常に悩ましい問題に遭遇することがよくあります。

具体的な相続分については、本記事もご参照なさりながら、専門家にも依頼し、誤りのないよう相続分を計算しましょう。

お困りの際は当事務所までお問い合わせください。

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