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【遺産分割調停・審判】手続や費用を相続に強い弁護士が解説!弁護士費用についても

遺産分割のトラブル
投稿日:2022年10月18日 | 
最終更新日:2024年11月08日
Q
父は高知県出身です。40年前から東京で生活していましたが、最近死亡しました。
長女の私は宮城県に、長男は東京に住み、財産としては東京に居住用の土地・建物が、高知県には山林がありますが、長男が財産を独り占めにして遺産分割に応じません。

遺産分割調停の申立てをするには、どこの裁判所に申し立てたらよいでしょうか?
Answer
質問者様の場合は、調停による解決を望んでいるようですので、その場合は、原則、相手方となる長男の住所地を管轄する東京家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをすることになります。

しかし、事情によっては、申立人であるあなたの住所地を管轄する仙台家庭裁判所に申立てることもできます。
本記事でわかりやすくご説明します。

はじめに

遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議することができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができることになっています。

遺産の分割を家庭裁判所に請求する方法としては、遺産分割審判の申立てと遺産分割調停の申立ての二つがあります。申立人の自由意思によって、どちらの申立てをしても問題ありません。

ただ、どの申立てをするかによって、管轄家庭裁判所が異なりますので注意が必要です。

審判と調停の違いや、手続について詳しく説明します。

よくわかる!遺産分割調停・審判の手続や費用について相続に強い弁護士が動画で解説

直法律事務所公式YouTubeチャンネルでも、動画にて解説しておりますので、ぜひご覧ください。

家事調停とは

(1)まず、調停は、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話し合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。

家事調停は、家事事件手続法別表第2に掲げる事項に関する調停(別表第2調停)、特殊調停、一般調停に分かれています。

今回の遺産分割調停は、第一次的には当事者間の話合いによる自主的な解決が期待され、主に調停によって扱われる別表第2調停です。

家事調停は、家庭内の紛争について、当事者間の互譲によって、事件の実情に即した具体的妥当な解決を得ることを目的とし、調停機関が紛争当事者の間に介在して、当事者の権利又は法律関係について合意を成立させることによって、紛争の自主的解決を図る制度です。

家事調停は、原則として、裁判官一人と民間の良識のある人から選ばれた調停委員二人以上で構成される調停委員会によって行われます。調停委員会が、当事者双方の事情や意見を聴くなどして、双方が納得して問題を解決できるよう、助言やあっせんをします。そのため、紛争の解決に健全な社会人の良識を反映させることができる上に、具体的妥当な解決が期待できます。家事調停手続は、非公開で行われることが決まっており、紛争の経過や内容等が他人に知られることがありませんので安心して進めることができます。また、和やかな雰囲気で十分に話合いが行われるように配慮されています。

家事調停は、訴訟に比べると、手続がゆるやかで、話し合いを進める方法や事件の関係人が意見を表明する方法について特別の制約がありません。また、事件の実情を明らかにするために、積極的に職権をもって、事実の調査や証拠調べをすることができることになっています。

(2)調停事件が終了した場合の効力については、事件の種類によって扱いが異なります。今回は、別表第2調停にあたりますので、合意が成立し、その合意が調停調書に記載された場合、その記載は、確定した審判と同一の効力となります。

(3)調停が不成立の場合は、審判手続が開始されます。

遺産分割の調停と審判

遺産分割は、今、存在している遺産を相続人の間で具体的に分けることが目的です。

相続人同士の感情的な対立は、遺産分割の調停を円滑に進めるための妨げとなることがあります。調停の主眼は、あくまでも「遺産をどのように分けるか」という点にあることを忘れないように勧めましょう。

前述のとおり、最初に調停として申し立てます。相続人全員の合計で約2時間が通常です。まとめて要領よく話をすることが大切になるので、言いたいことなどはあらかじめまとめておくことがいいでしょう。事案によっては、当事者全員一緒にお話をうかがうこともあります。

調停は、話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続でした。一方で、審判は裁判所が遺産分割の方法を決定する手続きです。

当事者間で話合いがつかずに調停が成立しなかった場合には、審判手続に移り、審判によって結論が出されます。つまり、遺産分割審判は「話し合い」ではありません。これまでの話し合いの中での結論や提出資料、当事者の希望などをもとにして、裁判所が審判を下し、遺産分割方法を指定することになります。裁判所の審判には強制力があるので、当事者は必ず守らなければなりません。

審判は裁判所が下すので、その結果は必ずしも当事者の希望に沿うとは限りません。

ちなみに、最初から審判として申立てをしても、裁判官がまず話合いによって解決を図るほうが良いと判断した場合には、審判ではなく調停による解決を試みることがあります。

具体的な内容について少し説明します。

借金について

被相続人の債務(借金等)は、法律上相続開始によって法定相続分に応じて当然に分割されます。したがって、原則、遺産分割の対象にはなりません。調停において、当事者間で特定の相続人が債務を相続する旨の合意が成立したとしても、あくまで相続人間の内部関係を決めたに過ぎないので、その内容を債権者に主張できるわけではないので気を付けましょう。

遺産を隠されている?

相続人の一人が遺産の一部を隠しているという疑いがあっても、家庭裁判所の遺産分割手続は、遺産を探し出すことを目的とした手続ではありませんので、裁判所が積極的に調べるといったことはしません。ほかにも遺産があると考える場合には、原則として、自らその裏付けとなる資料を提出することが求められます。

遺産分割調停事件の管轄

遺産分割調停事件の申立てをどこの裁判所にしたらよいのでしょうか。これは、管轄の問題となります。これについては、

  1. 1職分管轄
  2. 2土地管轄

の二つを考えることができます。

①職分管轄

遺産分割事件は、家庭裁判所の専属管轄で、地方裁判所又は簡易裁判所に遺産分割の訴を提起したり調停の申立てをしたりすることはできないものとなっています。

②土地管轄

家事調停事件の土地管轄は、家事審判事件の土地管轄が事件の種別ごとに定まっているのに対し、一律に相手方の住所地の家庭裁判所と決まっています(家事手続245条1項)。

ここでいう「住所」とは、民法上の住所すなわち「生活の本拠地」(民22条)であって、戸籍上の本籍とは関係なく、住民票の記載とも一致しない場合がありますので気を付けなくてはなりません。

ご相談者の場合は、調停の相手方である長男の住所が東京ですので、その住所地を管轄する東京家庭裁判所に調停の申立てをすることになります。

しかし、例外的に特別な事情がある場合には、必要な上申書(自庁処理の申出)を添えて、申立人の住所を管轄する仙台家裁に申し立てることができます(家事手続第9条1項ただし書)。法律の規定により相手方に申立書写しを送付するため、申立書(原本)のほかに、申立書の写し(コピー)を相手方の人数分提出します。

土地管轄は、事件開始の時が標準となり、いったん適法に事件がある裁判所に係属した以上、当事者がその後に引っ越して住所が変わったとしても、そのままの裁判所で続けることができます(管轄違いになることはありません)。

また、家事調停については、管轄裁判所を当事者の合意で定めることが認められています。相手方の住所地を管轄する家庭裁判所以外の家庭裁判所を合意で定めることができるのです(家事手続245条1項)。そのため、当事者の合意があれば、仙台家裁で行うことも可能です。ただ、地方裁判所又は簡易裁判所を合意で定めることは許されないので注意しましょう。

管轄の合意は、書面でしなければその効力は生じません(家事手続245条2項、民訴法11条2項・3項)。この合意が家庭裁判所に通知されますと、合意で定められた家庭裁判所が当該事件について即時に管轄権を持つことになります。そのため、管轄の合意は、調停申立ての時に行うべきです。

また、前述したように、管轄の標準時は調停申立時なので、ある家庭裁判所に調停申立てがあった後に、それ以外の家庭裁判所を合意で定めたとしても、調停の申立てを受けた家庭裁判所は、その合意によって管轄権を失うことにはなりません。このような場合には、管轄家庭裁判所において、当事者が合意した家庭裁判所に移送する必要があるかどうかを判断し、その必要性が認められた場合は、その合意した家庭裁判所に移送することになります(家事手続9条2項)。つまり、必要性がなければ認められないことになります。

コラム

家事審判事件として申し立てる場合の土地管轄は、相続開始地の家庭裁判所となります(家事法191条1項)。調停不成立で審判に移行した場合には、審判移行時に、相続開始地を管轄する家庭裁判所で手続が行われていなかったときは、改めて管轄裁判所へ移送するか、自庁処理の裁判をすることになっています(家事法9条1項)。

調停の申立手続

遺産分割調停の申立ては、書面による必要があります(家事手続255条1項)。

家事調停の申立書には、当事者及び法定代理人、①申立ての趣旨及び理由を記載するほか(家事手続255条2項)、事件の実情の記載と、申立ての理由及び事件の実情についての②証拠書類があるときは、その写しを添付しなければなりません(家事手続127条・37条1項・2項)。

また、遺産分割調停の申立書には、共同相続人、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与の有無及びこれがあるときはその内容を記載し、かつ、遺産目録を添付しなければなりません(家事手続規127条・102条1項)。

なお、申立書の写しは、家事調停の手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるとき以外は、相手方に送付されることとなります。

申立書は、裁判所の書をご覧ください。

申立の趣旨

遺産分割の申立ては、遺産の分割という形成を目的とするものです。そのため、申立ての趣旨は「遺産を具体的相続分に従って分割することを求める」ということになり、特定の遺産(高知県の土地等)の取得を具体的に求める必要はありません。

証拠書類

証拠書類は、

  • 被相続人及び相続人の戸籍(戸籍等の全部事項証明書)・除籍謄(抄)本
  • 遺産となる不動産の登記事項証明書(平成16年法改正前の登記簿謄本にあたるもの)
  • 家屋・土地台帳

などを提出します。

申立前に入手できない戸籍等がある場合は、その戸籍等は申立後に追加提出することでも差し支えありません。

その他

家庭裁判所によっては、事件の迅速処理のための用慮があり、身分関係図その他の参考資料の提出を求められることがあるので、詳細は家庭裁判所の受付でお聞きください。

費用

申立書には、手数料として被相続人1人につき収入印紙1200円分を貼って提出します。

手数料のほかに、送達料・連絡用として郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。なお、各裁判所のウェブサイトの「裁判手続を利用する方へ」中に掲載されている場合もあります。)も必要です。

そのほか、事件の進行状況によって、遺産の鑑定を必要とするときは、その鑑定費用も、また、証人を必要とするときは、その者の旅費・日当を予納しなければなりません。

遺産分割調停での審理方式

遺産分割に関しては、遺言の有効性や解釈、相続人の範囲、その財産は遺産か否か等、いろいろな論点が絡んできます。

東京や大阪家庭裁判所などの大規模庁では、段階的進行方式といって、このような問題点に論理的な順番を付けて、一つ一つ解決していく審理方式が採用されています。

一つの問題点が解決すると、中間調書を作成し、合意事項について共通認識を持つことになり、合意ができなければ、調停を取り下げて、論点について地裁等で判決を経たのちに再度、調停を申し立ててもらう運用となります。

家庭裁判所の審判には既判力がなく、相続人の範囲や遺言の有効性、遺産の範囲については、家裁が仮に判断しても、地裁で異なる判断が出れば、家裁の審判が覆ることになるからです。

コラム

なお、調停不成立となった場合には、自動的に審判手続が開始され、家事審判官(裁判官)が、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮して、審判をします。また、相続人は、遺産の分割の審判、遺産の分割の申立てを却下する審判があった場合、これに対し即時抗告をすることができます。

【図解】遺産分割調停の流れについて

最後に、裁判所が発行している調停のしおりの「遺産分割調停の流れについて」を添付しますので、ご覧ください。

【図解】遺産分割調停の流れ

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弁護士に依頼するメリット

なるべくスムーズに争いを少なくして遺産分割を進めるには、客観的かつ冷静に判断できる弁護士に対応を相談するのがおすすめです。弁護士に遺産分割協議の代理を依頼すると、当事者同士で直接話し合う必要もなくなり、感情的な対立を防ぎやすくなります。調停や審判も有利に進められる可能性が高くなるので、困ったときには弁護士へ相談してみましょう。

具体的に、弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあります。

① 専門的な法的アドバイスの提供
遺産分割は相続法や税法など複雑な法律が関わるため、弁護士はこれらの法的問題について専門的なアドバイスを提供できます。これにより、相続人が不利な立場に立たされるリスクを軽減することができます。

② 感情的な対立の緩和
遺産分割協議では、相続人同士の感情的な対立が発生しやすいです。弁護士を代理人とすることで、相続人同士が直接交渉する場面を減らし、冷静かつ客観的に協議を進めることが可能になります。

③ 複雑な手続きの代行
遺産分割協議には、財産の調査、相続人の確定、相続税の申告など、多くの複雑な手続きが伴います。弁護士に依頼することで、これらの手続きを専門家に任せ、負担を軽減することができます。

④ 交渉力の強化
弁護士は交渉のプロフェッショナルであり、依頼者の利益を最大限に守るための戦略を立て、相続人間の交渉を有利に進めることができます。これにより、公平な遺産分割が実現しやすくなります。

⑤ 紛争の予防と解決
遺産分割協議がスムーズに進まない場合、紛争に発展することがあります。弁護士は紛争の予防や、発生した場合の迅速な解決に向けた法的手段を講じることができるため、長期間の争いを避けることができます。

特に相続関係が複雑である場合や、争いが予想される場合には、弁護士のサポートを受けることが重要です。

ただし相続トラブルをソフト・ランディングさせるには、一定のスキルが必要です。弁護士の中でも遺産相続関係に積極的に取り組んでいる専門家を選べばトラブルが生じにくくなるでしょう。

お困りの際、悩まれた際は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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